(国家基本政策委員会合同審査会)
鳩山由紀夫代表VS小泉純一郎首相/党首討論第3回
○会長(堀之内久男君)
これより国家基本政策委員会合同審査会を開きます。
本日は、私が会長を務めさせていただきます。
国家の基本政策に関する件について調査を進めます。
これより討議を行います。
討議に当たりましては、申合せに従い、野党党首及び総理は、配分時間を厳守し、相互の発言時間を考慮しつつ、簡潔に発言を行うようお願い申し上げます。
発言の申し出がありますので、順次これを許します。鳩山由紀夫君。
○鳩山由紀夫君
総理、私はこう思います。
日本という国は、歴史が動くときに、いつも過去に対してあいまいなまま、結論を出さずに次に進んできたのではないか、何が正しくて何が間違っていたかを必ずしも明らかにしないまま、歴史を動かしてきたんではないか。そのツケが今国民に押しかけてきているんだとすれば、大変な問題だと思うんです。
すなわち、小泉総理、真の構造改革というのは、私は、過去のあいまいさから決別することからスタートしなければいけないと思いますが、イエスかノーで、どうぞお答えいただきたい。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君)
あいまいさと決別すべき問題もあるでしょう。あいまいさがいい問題もあるでしょう。それは、その時々、事案ごとに判断すればいいものではないか。継続すべきものと断固打破しなきゃならないものがあると同じように、具体的問題を提起していただければ、それについてお答えしたいと思います。
○鳩山由紀夫君
非常にあいまいな御答弁をいただいたわけでありますが、それでは、具体的にお尋ねをしてまいりたいと思っています。
まずは、京都議定書の問題からです。
なぜ私が二週間連続で京都議定書の話を申し上げるのか。それは、私は、二十世紀から二十一世紀、新しい世紀に移った。日本だけではなくて世界も、新しい価値観、経済万能主義、あるいは経済効率主義、あるいは経済成長至上主義、いろいろ言われますが、何でもかんでも経済が先に来た世の中から、新たに、例えば資源そのものも大変な制約がある、その中で経済活動をしていかなきゃならない。大きな新しい制約条件のもとで、この国や世界を動かしていかなきゃならない。そういうときに、京都議定書、新しい価値観を求めた動きが出てきたんだと私は思っています。
先日、田中外務大臣がパウエル国務長官にお会いになりました。そこで、パウエル国務長官から、経済が悪化するから、だから京都議定書はのめないというような話があったと承っています。
私は、そのような古い価値観ではなく、新しい価値観のもとで、日本が、経済大国なんですから、まず率先をして批准をすべきだというふうに思います。改めて総理の決意を伺いたい。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君)
私も、環境問題、重視しているということはおわかりいただけると思うんであります。
そういう中で、どうして効果的な対策が打てるかということを考えますと、各国ができるだけこの協定に、締結に向けて参加してくれればいい、今その努力の真っ最中であります。川口環境大臣を中心にいたしまして、今、米国との関係、EUとの関係、発展途上国との関係、非常に微妙な難しい段階に来ております。私は、この問題、できるだけ多くの国が実効ある対策を打てるような形にどういう方法があるか、今苦心惨たんしているところでございます。
この前も、先週も、この党首討論で議論がありましたように、米国への働きかけをあきらめるのはまだ早いのではないか、粘り強く努力を傾注していきたいと思っております。
○鳩山由紀夫君
この間に相当事態が変化をしてまいりました。EUとアメリカの間では、もう合意はできなかった。アメリカは京都議定書を批准するつもりはさらさらないということが明らかになった。でも、私どもは、だから日本が率先して批准をすべきだというふうに申し上げているんです。アメリカが批准をしなくとも効果はあるということが判明をしています。生死はむしろ日本が預かっているんだというぐらいに思っていただいて、だから、日本が批准することによって、新しい価値観を日本がまず最初に世界に向けて示す必要があるんではないか、私はそう思います。
六月三十日が首脳会談だというふうに承っておりますから、その日までに決断をぜひなさっていただきたい、重ねてお願いします。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君)
外国との交渉には非常に粘り強さが大事であります。私としては、今鳩山代表が言われたようなことも含めて、各国の本音と建前があります、その点もよく見きわめながら、まだ、六月三十日、首脳会談まで時間がありますから、じっくりと検討し、判断の材料、間違えないような判断をしなければいかぬと思いますので、私は、今まだどうするかという結論を出す段階にはないと思います。
○鳩山由紀夫君
私はあえて、二十世紀から二十一世紀へ入って、日本が新しい価値観を世界に向けて打ち出す絶好のチャンスだと、そういう思いで、ぜひ日米首脳会談において正しいメッセージを発していただきたい、そんなふうに願っているんです。
私たちは、だから、くどいようですが、アメリカがノーでも、日本は京都議定書イエスだと、その覚悟で臨みたい。経済成長至上主義から新しい価値観を見出す絶好のチャンスのときをぜひ総理がつかんでいただきたい、重ねてお願いをしておきます。
そこで、もう一つ問題があります。
経済成長至上主義のときには、確かに行政は中央集権の方が効率がよかった。だから、行政が肥大化をしてきた。行政自身が問題を起こすようになった。知らしむべからず、よらしむべしと、今でもお上という意識が国民の中に残っているし、私たち政治家の中にも残ってきてしまっている。その、ある意味で残滓が機密費の問題だと私は思っている。
この機密費の問題に関しては、お隣におられます、塩じいと言うと失礼なのかもしれませんが、塩川財務大臣、忘れたとおっしゃったら、今度は、三十年後にお話しします。忘れてないことじゃないですか。私に聞くのは勘弁してくださいなどという答弁が許されるはずもありません。
田中眞紀子外務大臣もこの件では大変、外務省と悪戦苦闘されておられるようです。官房機密費への上納問題に関してはどうも、でも歯切れがよろしくない。何か怪しいと思っておられるんだと思うんですが、お役人に聞いた、先輩の議員に聞いた、なかったと言ったからないのでしょうと。それでは許されないと私は思います。
どうですか、調査を私たち民主党の、若手がたくさんいますから、この若手議員をお貸しいたしますから、ぜひ調査、解明、私たちにやらせていただきたい。私たちなら、三日間あれば、この問題、解決してみせます。いかがですか。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君)
これは党首討論で、私に質問でしょう。田中大臣に質問じゃないでしょう。
これは、我が党においても、我が政府でもって責任を持ってやります。民主党にいろいろな意見があると思いますが、我が政府として責任を持って対処いたします。
○鳩山由紀夫君
いつまでたってもらちが明かないから申し上げているんです。これは、田中外務大臣のみならず、官邸に対する上納問題ですから、あなたが、官邸自体が巻き込まれている話だという御理解をいただかなければいけない。
私どもは、したがいまして、機密費に関しては徹底的に情報の公開を求めていきたいと思います。十年から二十年後には必ず公開をする、そして、使途を限定して大幅に削減する、そういう法案を私どもはもう既に提出をいたしましたから、ぜひ総理も、この法案、会期はあとわずかですが、賛成をして、超党派でやろうじゃありませんか。いかがでしょうか。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君)
その問題についても、政府として今真剣に対処しているわけですし、機密費というのは、公開できないから機密なんですよ。情報公開にしても、情報公開すべきものと情報公開できないものがあるのは、鳩山代表も御存じだと思います。
ですから、今までの機密費の扱い方について十分でない点はあったということは認めます。公開にすべきものもあると思います。しかし、機密費であるという限りは、どうしても明らかにできないものがあるということを御承知いただきたい。
○鳩山由紀夫君
私どもの法案の中でも、よくごらんになっていただくと、すべてを二十五年たって公表しろということではありません。そのときにもまだ公表すべきでないものがあることは認めています。しかし、大方の情報に関しては、十年から二十五年たてば、おおよそ公表しても十分であろうと。そのぐらいの年月がたてば大丈夫だろうと。
塩川財務大臣は三十年とおっしゃいましたが、今から三十年、ぜひ御長命でいただきたいと思っていますが、そのように、当然のことながら時間のかかわりの中で、必要なものを、しかし必ず、国民の皆さんに非公開であっても公表する場というものを求める必要があるというふうな法案を私どもは用意していますから、ぜひそのような内容を皆さん方にも理解をしていただいて、我々が出した法案だからほとんど意味がないなどとおっしゃらずに、正しい法案なら審議をしていただきたい。改めてお伺いしたいと思います。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君)
法案は国会で審議していただきたいと思います。
○鳩山由紀夫君
積極的なリーダーシップを総裁として発揮していただきたいと心から願います。
それでは、この機密費よりも実は百倍も税金を食べている話をいたします。
渡り鳥の一生の話でございます。
この渡り鳥、くちばしがありませんから虫は食べれないんですが、税金を食っています。この渡り鳥、羽はないから飛べないんですが、しかし、自由自在に実は飛び回っています。
ある渡り鳥の一生の話を申し上げます。
その渡り鳥は、現在も御存命ですが、大蔵事務次官を退官した後、この十五年間の間に何と四回天下りをされています。四回の天下り、十五年間で、大体見積もりで五億円、退職金とそれから給料で払われているんです。こういうのが実態です。
全体を申し上げると、特殊法人、公益法人合わせて七年間で千名を超える方が天下りをしています。大変な数です。九八年一年だけでも二百四十二名天下りをしています。この実態をどのように感じておられるのか。
ある公団の理事長は、時給ですよ、時給四十三万円という計算になりました。総理の給料は時給二万円でございますから、かなり大きい。こういうむだ遣いがなされている実態をどのようにお考えになられるか、お聞かせを願いたい。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君)
行政改革、財政構造改革、聖域なき構造改革、私が一番やらなきゃならないのはその行政の構造改革だ、長年主張してきたことですよ。特殊法人、ゼロベースで見直すと言っている。小泉内閣になって初めて本格的な機運が出てきたと私は自負しております。
今まで、私は郵政三事業民営化を主張してきました。それは、特殊法人の大もとじゃないですか。本丸にだれも手をつけなかったことを私が言ったんでしょう。今まで、行政改革というと、特殊法人ちょっといじっただけ、二つ三つ合わせて、仕事は減らない。一番本丸に入れたのが小泉内閣ですよ。(発言する者あり)私は、何もしていないというのは、これから初めて本格的になるんだ。(発言する者あり)天下りも含めて、郵政三事業のあり方も含めて、特殊法人をゼロベースで見直すことも含めて、公益法人の天下りも含めて、すべて本丸でやろうというのが小泉内閣じゃないですか。どの政党よりも、どの野党よりも一番熱心なのは小泉内閣じゃないですか。民主党の人も主張している。自民党でもできなかったことをやろうとしているのが小泉内閣なんですよ。小泉内閣、小泉が総理になったから初めてこういう議論ができるんでしょう。野党の皆さんも、こういうことを今まで国会で触れることができなかったじゃないですか。
私は、本格的にやるということを再三再四言明しております。ぜひとも鳩山代表も応援していただきたいと思います。(発言する者あり)
○会長(堀之内久男君)
御静粛に願います。
○鳩山由紀夫君
特殊法人の改革に関しては、大いになさっていただきたいと思いますし、私どももかねてから主張してきた問題です。
ただ、特殊法人のみならず、実はそれよりもはるかに根っこが深いのが公益法人というもので、そこにどんどんと補助金がおりて天下りがあるのです。そこが、特殊法人が最近批判されていますから、むしろ公益法人が天国のような状況になっている。
天下りの問題、その団体先にお金も出、仕事も出る。だから、結果として公正な競争が妨げられてしまっている。まだ、官僚国家の聖域の部分に対して必ずしも十分なメスが入れられていない。先ほどお話をされましたが、天下りに関して必ずしも十分なメスが入れられていない。ぜひそれも期待をしたい。
私たちは、自由党そして社民党と協力をしまして法案を準備中です。この国会中に必ず提出します。それは、特殊法人と公益法人あわせて、ともに天下りを五年間禁止するという法案です。賛成してください。お願いします。(発言する者あり)
○会長(堀之内久男君)
静粛に願います。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君)
私は、民主党の鳩山さんよりも、どの野党よりも、一番本格的なことをやろうとしているのですよ。
なぜ、特殊法人、公益法人ばかり言って、郵政三事業のことを言わないんですか。三十万人の役人に振り回されて、今まで本格的に手をつけられなかったんじゃないですか。選挙で応援してくれる、いまだに郵政民営化を言えないでしょう、皆さん。私だけですよ、言っているのは。だから、これは、特殊法人を本格的に改革するんだったら、公益法人を本格的に見直すんだったらば、郵政三事業という本丸に手を入れない限りできないんだと言っていたのは私じゃないですか。いまだにはっきり言えないでしょう。私みたいにはっきり言えない。どの野党も言えないじゃないですか。
民間にできることは民間に任せよう、財政投融資制度から特殊法人についても、今、石原行革担当大臣にはっきり言っています、徹底的に、中途半端なことはしないでくれと。思い切りやってくれと。民間にできることは全部民間に任せると。その趣旨で野党が賛成するかどうか、私は注目していますよ。私は、選挙で応援してくれるから黙っちゃう、そんな態度とりませんから。
国民のために何が大事か、税金をいかに有効に使うか、この視点から行政改革が大事であり……(発言する者あり)
○会長(堀之内久男君)
静粛に願います。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君)
特殊法人改革が大事であり、公益法人の見直しが大事だと言っているんですから。私は他のだれよりも、この問題について今まで熱心に語りかけていたし、本格的にやるということを御理解いただきたい。
だれも言えないことを言ってきた。ようやく、小泉内閣だからこういう議論がオープンに議論されて、そして、皆さんが真剣にこの問題に取り組もうという機運が出てきたんだと思います。(発言する者あり)
○会長(堀之内久男君)
皆さん、静粛に願います。
○鳩山由紀夫君
天下りのことに関しては一切お触れになりませんでした。なさる気がないのかなと残念に思います。
郵政の事業の民営化の問題に関しては、一言申し上げれば、小泉総理の立場と私の立場は何ら変わっていません。全然変わっていません。そこだけは御理解ください。
あと時間がわずかになりましたから、総理のお得意の分野の靖国神社公式参拝問題に入りたいと思います。
靖国の問題、実はこれも、過去の清算がうまくいかないから今でも尾を引きずってしまっていると、情けない思いです。私は、総理と当然同じ、あるいはそれ以上に、私のじいさんの鳩山一郎がシベリア抑留者問題で力を注いだだけに、戦没者の慰霊をする気持ち、その人たちのもとにこの国があるという感謝の気持ち、そして二度と戦争を行ってはならないという平和に対する気持ち、人後に落ちない、私はそう確信をしている。その私の思いからして、しかし靖国神社の公式参拝は、全く反対です。これだけはやってはならない。アジアの国々、まだ痛みからいえていません。その人たち、合祀の問題があるだけに、また傷口に塩を塗られるのか、大変つらい思いです。
でも、それよりも、私はむしろ憲法の問題も取り上げなければならない。憲法二十条、国家が政治活動をしてはならない、それに対する疑いの思い、失礼、宗教活動をしてはならない、その疑いが極めて強いと言われている。その中であえて総理が靖国公式参拝、私は、決してすべきではない。
最後に、私どもから提案をしたい。
田中外務大臣がアーリントン墓地に行かれた。私は、大変すばらしいことだったと思う。気持ちがみんな和んだ。そのように、海外の人たちも、多くの人たちが、戦没者の慰霊、他国であっても……
○会長(堀之内久男君)
時間が参りました。簡潔にお願いします。
○鳩山由紀夫君
訪れるような環境をつくるべきではないかと私は思っています。
千鳥ケ淵の墓苑の拡充でもいいと思いますが、国立墓地というものをつくって、政府が堂々とですよ、堂々と、公的だとか私的だとか区別をしなきゃならぬとか、わけのわからないことではなくて、堂々と参ることができる施設をつくろうじゃありませんか、そうすることによって戦後の清算ができるんですから。総理、やろうじゃありませんか。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君)
千鳥ケ淵墓苑をさらにより立派なものにしていこうということについては、私はいいと思います。
靖国神社に私が参拝すると言っているのも、二度と戦争を起こしてはならないと。心ならずも戦争に行って亡くなった方々、こういう犠牲の上に今日の平和と繁栄があるんだという気持ちを込めて、私は、戦没者の方々に敬意と感謝を表するとともに、我々政治家として、二度と戦争を起こしてはならないという誓いも込めて、靖国神社に参拝するということを改めて申し上げます。
○会長(堀之内久男君)
鳩山由紀夫君、もう時間です。
○鳩山由紀夫君
人間小泉純一郎の気持ちはわかりますが、総理小泉純一郎としては、その考え、私は失格だと思います。
終わります。
○会長(堀之内久男君)
これにて鳩山君の発言は終了いたしました。
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