(国家基本政策委員会合同審査会)
鳩山由紀夫代表VS小泉純一郎首相/党首討論第2回
○会長(本岡昭次君)
ただいまから国家基本政策委員会合同審査会を開会いたします。本日は私が会長を務めますので、よろしくお願いをいたします。(拍手)
この際、本合同審査会における発言に関して申し上げます。討議に当たって、各党首及び総理におかれましては、時間内に討議が終了するよう御協力をお願いいたします。本日の討議の配分時間は、鳩山由紀夫君二十四分、志位和夫君六分、土井たか子君五分、小沢一郎君五分であります。また、本日は時間表示装置を使用いたします。表示装置は残り時間を示し、配分時間が終了したときは赤色のランプが点灯しますので、御承知願います。それでは、国家の基本政策に関する調査を議題とし、討議を行います。鳩山由紀夫君。(拍手)
○鳩山由紀夫君
小泉総理、きょうは、特に外交問題に重点を置いてお尋ねをしたいと思います。
まず、もう三十年ほど前の話でございますが、ローマ・クラブが「成長の限界」という本を著しましたが、総理はお読みになりましたか、お伺いしたいと思います。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君)
これは読んではおりませんが、当時非常に話題になりまして、この「成長の限界」というものを国際会議でよく主張されていたのが福田元総理であると記憶しております。私は、何回か総理大臣、首相経験者が構成するOBサミットという会議に、非常に福田元総理は熱心でありまして、その会議にも随行として参加し、会議の模様を傍聴させていただいた経験があります。そのときに、よく福田元首相が言われていたのがこの「成長の限界」であると。資源は有限である、国民の要望、欲求は無限だけれども資源は有限であるということを考えて、これから経済成長も地球環境も地球全体のことも考えていかなきゃならない。特に、福田元首相が提唱されたのは、核兵器、何百回も地球、人類を殺しかねない核兵器、これを削減して、もっと人類のために有効に使える方法はないものか、それが総理大臣、大統領を経験した自分たちの責任ではないかということを熱っぽく説いていたことを、今、鳩山代表から言われて思い出しました。
○鳩山由紀夫君
よく御理解いただいて何よりだと思います。そこで、このローマ・クラブの会長でありますアウレリオ・ペッチェイさんという方が遺言として残された本がこの本でございます。後でぜひ総理にもお読みになっていただきたいと思っていますが、ここのこの信号のような、これは実は地球でありますが、今、御承知のとおり、世界は注意信号のような状況の地球である。これが百年たつと、例えば海面が上がって、このまま行くと日本の砂浜というものがほとんど消えてしまうと言われていますし、きょうの新聞によりますと、あと千年後には人類はもう生きていられないんじゃないかとホーキンズ博士がお話をされている。こういうぎりぎりの状況に今いるんだと思う。
それを私たちが大変な努力をして、青い地球に取り戻さなければならないというのが大変大きなテーマで、これが私は京都議定書だと思っています。その意味で、アメリカが京都議定書離脱を宣言されたということは大変に厳しい話だと思う。私は、まさに京都議定書なんですから、総理がリーダーシップをとっていただいて、日本がまず真っ先に批准を宣言して、そしてCOP6の再開会合に臨んでいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君)
今、日本政府としても、川口環境大臣を中心にいたしまして、何とかアメリカにもこの会議に参加してもらいたい、また建設的にこの京都議定書の定める大枠に従って、何とか温室効果ガス、この問題、削減するような前向きの姿勢をとってもらえないか、努力中でございます。世界第一位の経済力を誇るアメリカに参加してもらうということが、これからの地球環境保全、あるいは京都議定書の目指すものを実現させる上において非常に重要なものですから、何とかアメリカにもこの会議に参加し、建設的な方向で協力してもらえないか努力をしているわけでございますが、今回、この議定書に向けてアメリカ政府は、この議定書の目指すところについて致命的な欠陥があると表明されたことについては、私どもは極めて残念に思っております。
しかし、具体的にまだ提案がありませんから、今後まだあきらめずに、何とかこの問題に理解を示していただき、協力してもらえるような方策がないか、最後まであきらめずに努力を継続したいと思っております。
○鳩山由紀夫君
私が申し上げたいのは、先日発表されました中央環境審議会の報告でも、たとえ米国抜きであっても温室効果ガスの削減に関しては大変に効果があるんだという発表がありました。当然アメリカが加わればもっといいに違いありません。しかし、御承知のとおり、今お述べになったブッシュの新提案、とても私どもがのめるような話ではありません。
そこで、だからこそ、例えばあの対人地雷の禁止条約において、オタワ・プロセスでカナダがそして日本が批准したことによって、嫌がるロシアやあるいはアメリカも最後に批准させた。そのように、例えば京都プロセスのようなものをつくって、そして日本がまず真っ先に批准をして、宣言をして、そして嫌がるアメリカにも最終的に世論の力によって批准をさせるようにしていかなければいけないんじやないか。どうも日本がアメリカの出方を待っているとしか思えないのですから、今こそリーダーシップを世界に向けて発言をするべきではないか、私はそう思います。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君)
鳩山代表のような御意見もよく伺っております。また、そのような要望をされる方も、私どもの方にいろいろな提言なり御意見を言ってきていただいております。しかし、そういう意見も考えながら、この問題というのは地球全体に影響するものですし、独自で判断していいべき問題とそうでない問題もあります。よく各国の出方、そしていろいろな立場を考えながら、できるだけ有力な国が参加し、この温室効果ガス削減に意味のあるような方向に日本としても努力していくべきではないか。今この時点で、アメリカの態度はともかく、日本独自で決めるという判断はしておりません。
○鳩山由紀夫君
それでは、別の方向から申し上げてまいりたいと思いますが、四月十八日にワシントン・ポストにこのような広告が載ったのは、これは御承知かもしれません。お渡ししておきます。(資料を手渡す)これは、実は田中眞紀子外務大臣、まだ外務大臣になられる前でありますが、また中谷防衛庁長官も中に加わっております。また民主党の議員もおります。アメリカが議定書離脱を宣言した、その抗議の広告を出したのでございます。
その五日後に実はアーミテージ国務副長官が川口大臣に会われました。その席でアーミテージさんから大変不快感が表明されたというふうに伺っていますが、そのことは御承知でありましょうか。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君)
このような文書は拝見したことはございますが、今、鳩山代表が言われたような詳しい事情は存じておりません。
○鳩山由紀夫君
それでは、ここに公電があるんです。この公電によると、アーミテージさんが川口環境大臣に対して、この広告に大変な強い不快感を示して、残念だ、無礼であり日本的でない、我々はよく思っておらず抗議をしたい、こういう内容を話されたということなんです。
すなわち、私が申し上げたいことは、田中眞紀子議員に対して、アーミテージさんは、実はこの京都議定書の問題、大統領選挙のことにも触れているわけなんですが、このことに対して田中眞紀子議員に対し無礼だというふうに思っておられたということが、どうも事実のようであります。
それで、田中外務大臣が誕生して、アーミテージさんが来日をした。そのときに、田中外務大臣は、応答要領を外務官僚に命じたというふうに聞いています。そこまで、応答要領まで用意せよと言っておきながら、実は御承知のとおりアーミテージさんとの会談がドタキャンされてしまった。今まで何でドタキャンされたのかわからなかったのだけれども、この理由が実は京都議定書離脱問題に対する抗議に対するアーミテ!ジさんの遺憾の表明であるということが明らかになったわけです。
私は、申し上げたいのは、このようなことで外交が停滞するということは大変残念なことだと思います。ようやく外交日程が入ってきたようでありますが、どうも大人と子供の会談になるんじゃないかと若干の懸念も禁じ得ないところであります。
いずれにしても私は、申し上げたいことは、田中眞紀子外務大臣は京都議定書の問題に対してはアメリカを厳しく批判されている。ところが、一方で、平沼経済産業大臣がきのうです、京都議定書に対して柔軟に見直すべきだみたいな発言をされた。政府の見解がばらばらではありませんか。総理としてはどちらの方に軍配を上げようとされているんですか。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君)
今、鳩山代表が言われたことは、鳩山代表の推測というものが随分入っていると思うのであります。私は、アメリカ政府から不快の念を催したという報告なんか一切入っておりません。六月の下旬にはプッシュ大統領との会談日程も入っております。
また、アーミテージ氏と田中外務大臣が会談されなかった、アーミテージ氏が日本に来られたときに外務大臣と会談されなかったことに対しても、アメリカ政府から不快の念を持っているという報告など一切来ておりませんし、今後とも日本との関係については友好関係を維持していくという態度に日米双方とも変わりないと思っております。現在のその京都議定書に関する環境大臣と経済産業大臣の発言も、私は、大臣の立場として、必ずしもいつも一致していない場合があると思いますが、最終的には政府の方針、協議して一致していくものでありまして、何ら心配しておりません。
○鳩山由紀夫君
閣内不統一はできるだけ早くこれは修正していただかないと、政府の方針というものが定まらない。大変大きな問題だと思います。そして、今、推測だというお話をされましたが、実際に公電でそのことが伝えられているという、これを事実として申し上げておきたいと思います。
そこで、建設的な話を一つ申し上げたい。いよいよあと一ヵ月でCOP6の再開会合が開かれます。その半月ほど前に日米首脳会談が開かれるということになったと思います。小泉総理からぜひブッシュ大統領に対して、日本は京都議定書を先に批准します、待っていますからぜひアメリカも参加をしてください、力強くそのことを言っていただきたい。私たちは先に京都議定書を批准しますから、だから待ちますよと。いかがですか。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君)
これから、ブッシュ大統領と会談に臨むには日本の総理大臣としてどのような態度で臨むか、また何を言うべきかということをじっくり研究いたしまして、その会議に臨みたいと思います。何を言うべきかは、これからじっくりと検討していきたい。そして、今、鳩山代表がそういうことを言うべきだという意見も頭に入れて検討をしていきたいと思います。
○鳩山由紀夫君
ぜひ頭に入れていただきたいと思います。
私は、この問題に対してアメリカに遠慮する必要は全然ないと思います。私たち民主党は、たとえこの問題に関してアメリカがノーでも、民主党はイエスだと力強く言うのが外交姿勢だということを改めて申し上げておきたいと思います。
そこで、次のテーマに移りたいと思いますが、ミサイル防衛システムの議論でございます。
この議論、先週も私も拝聴いたしました。ブッシュ大統領の新しいミサイル防衛構想というものが発表されたわけでありますが、この構想は、今までは、日本は日本のミサイル防衛をすればいい、アメリカはアメリカでやりますという話であったものが、実はこの二つを一体化しようという提案であります。これは大変人きな日本の防衛議論変更を余儀なくされる可能性があると思っています。
一番私が懸念をしていますのは、これが軍拡競争につながるのではないか、軍拡の引き金を引くおそれがかなりあるということを指摘せざるを得ませんが、総理はどのようにお考えでしょうか
○内閣総理大臣(小泉純一郎君)
軍事面においては、常に盾と矛の関係が出てくると思います。そういうことを考えれば、軍縮のために、軍備管理のためにやるといったとしても、それは軍拡につながるおそれがあるといえば、可能性があるといえば、可能性はないとは言えないでしょう。
それは今までの軍事技術すべてそうです。そういう問題も含んでおりますが、科学技術は日進月歩であります。今我々の、普通人の考えからいきますと、あの弾道ミサイル、あれを途中で撃ち落とすというのが、これはすごい技術なのか、本当に可能なのかと不思議に思うくらい、この技術は今の科学技術の先端を行っている一つだと思っておりますが、この点の問題については、これは軍備管理、さらにはアメリカだけでない世界の安全保障の問題に大きく影響を与える問題でありますので、慎重に研究、検討する価値があるのではないかと思っております。
○鳩山由紀夫君
慎重にという言葉をつけ加えられたことは、私はよいと思います。この問題は本当に慎重に扱わなければならないと思います。
なぜならば、まさに小泉総理がお話をされたように、矛盾、盾と矛の関係ですから、盾をふやせば当然矛もふやしたくなる、それが国と国との関係で十分にあり得る議論だからでございます。そして、その中に日本が組み込まれてしまうということが、自動的に組み込まれてしまうということが大変私は気がかりでございます。
すなわち、日本の周辺の国へ、アメリカに対してもしミサイルを発射したとしたときに、日本のイージス艦から迎撃ミサイルを飛ばすという議論になるからでございます。となれば、好むと好まざるとにかかわらず、日本の周辺国と日本との間が交戦状態になる可能性がある。アメリカのおかげでそのようなことが起きる心配が出てきてしまう。したがって、私は、極めてこの問題に関しては、小泉総理がお話しされたように、慎重に慎重に、慎重の上にも慎重を期して議論をしなけれぱならないことだと思っています。
ただ、政府がお決めになるだけではなくて、これはアメリカやヨーロッパにおいても超党派で盛んに議論が今進められている問題であります。なればこそ、私は提案として、衆議院、参議院においても、ミサイル防衛の議論だけでも一つの特別委員会を設けて激しい議論を超党派で行うべきだというふうに思っております。このことを提案申し上げますが、総理としてお答えがあれば伺いたいと思います。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君)
国会には、外交、さらには安全保障、防衛関係の委員会がございます。その場で十分議論していただきたいと思っております。
○鳩山由紀夫君
ぜひ積極的に自民党総裁としても臨んでいただきたいと思っておりますし、このような問題で、先ほどの京都議定書の話とあわせて、何でもアメリカの言うことを聞かなきゃならないという、そういう外交はもはや遠慮する必要はない、自分たちの、日本の国の意思というものをもっと強く持っていただきたい、あわせてそのことを求めておきます。
さて、時間があと四分になりましたから、外交から、やはり経済の話をしなければならないと思います。御承知のとおり、1−3月期のGDP成長率、実質でマイナス0.8%下がってしまったのであります。そこに対して、やはり今までの自民党中心の経済政策が誤っていたということが明らかになったと思う。三年続けて減少して、十兆円の国の富がどこかへ消えてしまった計算になります。
私は、小泉総理が、だから構造改革なんだというふうに言われることはそれは正しいと思う。ただ、一方でマーケットが反応していません。一万三千円を割ってしまうという状況になりました。小泉さんが総理になってもっとマーケットが反応するかと思ったら、そうではなかった。ここは何の原因だというふうに総理はお考えになりますか。
○内閣総理大臣(小泉純一郎君)
それはいろいろな要因があって、一言でこれが原因だと言えないのが、経済は生き物であると。なかなか思うようにいかないのが世の中のことでありまして、私の頭でこれが原因だと言うほど私はうぬぼれているわけではございません。
しかし、言いましたように、今までの行き方が通じなくなってきたなと、経済を回復させるための手段というのは限られてきたと思います。そういう中で、構造改革をしないと日本の経済発展はないということで、もろもろの改革に取り組まなきゃいかぬということで、今、私ども一生懸命取り組んでいるわけでございますが、今後厳しい状況が続くと思いますが、私の所信表明演説にも詳しく述べておりますように、今の痛みに耐えてあすをよりよくしていこうという姿勢を現実のものにするべく一生懸命頑張っていかなきゃいかぬと思っております。
まだこれからいろいろ問題は出てくると思いますが、一日一日の株価も大事であると思いますが、そういう一日一日上がった下がったということに一喜一憂しないで、一つの方向を目指してあるべき姿を進めていかなきやならない。
現実の問題を考えてみましても、国債発行を三十兆円以下に抑制しようという民主党の心強い御提言もございますが、この問題についても、厳し過ぎるという意見もあると思えば甘過ぎるという意見もある。逆に、痛みを伴うという私の発言につきましても、痛みを伴って万が一失業者が出たらこれは改革ができなくなるぞという声がある反面、そのくらいの改革をしないと本当に日本の経済は立ち直らないよ、痛みを恐れていたんじゃいつまでも改革は進まないよという声が、両論あるわけであります。
しかしながら、私どもとしては、これから構造改革なくして景気回復なしという目標を掲げた限りは、その方向に多くの国民の理解と協力が得られるように精いっぱい努力をしていきたいと思っております。
○会長(本岡昭次君)
時間が来ておりますので、簡潔にお願いします。
○鳩山由紀夫君
わかりました。簡潔に申し上げます。総理がマーケットの反応がおわかりにならないようですから簡潔に申し上げます。私は二点あると思います。(発言する者多し)その点は、不良債権の処理やあるいは規制改革に対して具体的なメッセージがまだ出ていないというのがあります。早くこれを具体的なメッセージとして出されることを期待します。もう一つは、総理の後ろにおられる方々です。すなわち、構造改革に対して、もう既に麻生政調会長などは、これに対して補正予算を組むなどと、信じられないような話もされているわけです。
○会長(本岡昭次君)
簡潔にお願いします。
○鳩山由紀夫君
道路特定財源の一般財源化にも反対だと明言されている。(発言する者あり)あなたの後ろに、ゾンビのような、改革に抵抗する人たちがいるからこのような状況になるということを申し上げて、私の討論を終わります。(拍手)
○会長(本岡昭次君)
以上で鳩山由紀夫君の発言は終了いたしました。
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