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2001/05/11
小泉総理の所信表明演説に対する代表質問(小林議員)
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民主党・新緑風会 小林 元

 私は、民主党・新緑風会を代表し、小泉総理の所信表明演説に対して、総理及び関係大臣に質問を行います。
 
(はじめに)
 これまでの、小泉総理の所信表明演説、各党の代表質問に対する総理の答弁を拝見しておりまして、小泉総理の改革の姿勢は我々の認識と一致しておりますが、総裁選で政策論争がなされたにも拘らず国民が期待した具体策がほとんど示されておりません。勇気をもって改革の中身を国民に明示して活発なる議論を展開しようではありませんか。

 本日、五月十一日は、詩人萩原朔太郎の命日に当たりますが、彼は『猫町』という散文詩風の小説を残しています。その巻頭で、朔太郎は、「蝿(はえ)を叩(たた)きつぶしたところで、蝿の『物そのもの』は死にはしない。単に蝿の現象をつぶしただけだ」というドイツの哲学者・ショーペンハウエルの言葉を引用しています。

 小泉内閣も、自民党政治という現象をつぶしてはいるが、自民党政治そのものは死んではいない状況にあると考えます。あなたが主張する「新世紀維新」「聖域なき構造改革」の内容を具体的に一日もはやく国民に示していただきたい。 国会の論議は、イメージ合戦ではなく、あくまで政策中心でなければなりません。政治家・小泉総理の言葉で答弁をいただきたいと思います。

 昨日の勝木議員に対し本会議や予算委員会、国家基本政策委員会に積極的な対応をすると答弁されました。しかし、昨日午後与党側から早くも 五月中は国家基本政策委員会の開催を見送りたい旨の話がありました。足元から総理の答弁を踏みにじる動きについて改めてお答え願います。

(ハンセン病)
 まず、本日のハンセン病判決について伺います。伝染性の弱い感染症なのに、国は強制隔離による絶滅政策をとり、社会に根強い恐怖心を植え付けました。今もなお、元患者のみなさんは、死してなお故郷から拒否される事態が残っています。遅くとも一九六〇年以降、国家の重大な過ちで、筆舌に尽くしがたい苛烈な人権侵害が行われたことが司法の場で認定されました。また一九六五年以降、憲法違反の法律をそのまま放置した、私たち国会議員の立法不作為行為責任も認定されました。国会の責任も重大です。
 小泉総理、あなたは、豊富な厚生大臣の経験もあります。ぜひご自分の言葉でお答えください。

 あなたは、このハンセン病の元患者のみなさんに対する、国の責任をどのように考えておられますか。また、元患者のみなさんたちの貴重な残された時間を考えれば、控訴などはすべきではないと思いますが、総理はどうお考えですか。司法的解決は最終解決としては不十分です。今こそ政治が役割を果たし、社会から偏見を完全に除去し、元患者の皆さんの「ふるさとに帰りたい…」という叫びに応えなければなりません。今後、国としてどのような人権回復のための措置をとられますか。お答えください。

 さらに総理、元患者の皆さんたちが、今回の判決を受けて、ぜひ厚生大臣と総理大臣にお会いして、心情を訴えたいと希望しておられます。ぜひ厚生大臣には会っていただけるよう指示を出していただけませんか。また総理ご自身にも会っていただきたいと思いますが、いかがですか。

(地方分権・地域経済活性化について)
 次に地方分権についてうかがいます。
 昨年、分権一括法が施行され、分権改革はようやく緒についたばかりです。しかし、財源問題は先送りされ依然として国が権限と財源の多くを握り締め、陳情合戦に明け暮れ地域が本来持っているエネルギーを枯渇させています。

 民主党は結党以来、地方分権の旗を掲げてまいりました。私も地方自治に三十有余年たずさわり、地方分権の推進は最重要課題と認識しております。すなわち、「国のかたち」を変える大胆な地方分権を進め、住民に身近なサービスは市町村が行い、そこで対応できない課題は広域行政が担う、そして中央政府は、外交・防衛・通貨制度・福祉の水準など、国全体の共通性が求められる役割だけを担うこととする、効率的でスリムな政府を目指すことです。

 地域を再興するため、権限と財源を地方へ移譲し、自治体と住民が権限と責任を持ち、自ら決定できる大胆な地方分権を行う必要があると考えます。私は、国と地方の財源配分が全く逆転していることは、憲法に定める地方自治の本旨に反するものの考えております。特に財源問題について、第一段階として補助金は使途を限定しない一括交付金にする、第二段階として、所得税の一定割合を自治体の自主的財源に移譲することを提案します。この提案にどう応えるのか、総理の答弁をいただきます。

 さらには、そうした地方独自の財源確保や市町村合併が進む中で、将来的には「道州制」の導入を行い、国と地方の役割分担を見直し、国のかたちを分権型連邦国家へと変えることを目指します。総理、道州制については、どのような所見をお持ちですか。

 次に、地域経済の問題についてお尋ねいたします。
 政府が失政を重ねたため、地方経済の疲弊は極めて深刻な状況に陥っています。失業者は増加し、新卒者にも厳しい状況が続いています。地域の商店街はシャッター通りと化しています。

 日本経済の再生には、不良債権処理と同時に、日本経済の潜在力を生かす積極的な構造改革と新しい経済対策が不可欠であります。

 そのため、情報通信、環境・バイオ・介護等先端産業やサービス産業を中心とした経済への移行が不可欠であり、こうした分野を重点として戦略的に規制緩和を進め、雇用創出をはかるべきではありませんか。総理の見解をうかがいます。
NPOに対する支援税制の確立も不可欠です。総理に、実現を約束していただきたいと思います。

 個人保証の要らない事業者ローンの実現、商業施設と住宅が結びついた「商住一体のまちづくり」の推進など、私たちの提案する中小企業政策に、どう取り組むのか総理の答弁を求めます。さらに、地域の下請企業が、親企業から地位の濫用等による不当なしわ寄せを受けることがないように、「下請代金支払遅延等防止法」の改正を進めるべきです。総理の答弁をいただきます。

 地域を支える農業を育てるために、農政の目標を「食料自給率の向上」と「地域循環型農業の確立」に努め、農業土木偏重から所得政策重視へ転換をはかり、環境保全のためにも多面的機能を持つ農業の振興と食の安全の確立に重点的に取りくむべきと考えますが、総理の具体的な答弁を求めます。

(教育問題への基本的姿勢について)
 次に教育問題に対する基本的姿勢についてお尋ねします。
 今国会を教育国会と位置付けた森総理は退陣されましたが、小泉総理も教育を最重要課題に位置付けますか。所信表明演説では教育改革の一言だけだったように思います。教育問題にどのような認識を持ち、どのような教育改革を目指しているのでしょうか。これまだ経済重視の成長路線に傾斜して教育改革に力を入れてこなかった長年の自民党政権に、教育の危機的状況の原因と責任があるといわざるを得ません。

 総理が言われた長岡藩だけでなく、米沢藩でも水戸藩でも苦しいときにこそ教育に力を入れた先達がおりました。小泉総理の教育改革は、森前総理と同じものですか。それとも新しく小泉流教育改革を打ち出すおつもりがあるのか、またその中味についてお尋ねします。

 森前総理は、教育改革国民会議に対し、教育基本法の根本的議論を求めました。あまりの性急さに国民会議でさえ、国家主義的な動きを危惧する声が上がり、教育基本法の改正の議論が国家至上主義的な考え方や全体主義的なものになってはならないと、歯止めがかかったところです。小泉総理どのような観点で見直しをされるのかお伺いいたします。
  
(三十人学級について)
 次に、教育問題に関する重点政策の提案をしたいと考えます。
 学校の第一の本分は基礎学力の定着です。民主党は、「三十人学級法案」を提出するなど、一貫して小人数学級の実現を目指してきましたが、学力低下や不登校に対応するには、なにより分かる授業を実現することが先決です。少人数学級で、一人ひとりの子どもに目がとどく教育をめざすべきです。

 政府・与党の非協力的な態度により、われわれの法案は成立しませんでしたが、小泉総理は、先進国並みの教育環境をつくるべきではありませんか。少人数学級の実現についての目標を示すべきだと思います。何時までにおやりでしょうか。総理より答弁をいただきます。

 さて、総理は自民党総裁選の公約において、「大学の研究と経営に競争原理を導入する」と掲げています。今、国立大学の独立行政法人化が文部科学省で検討されていますが、徹底的に競争原理を導入するのではあれば、中途半端な法人化よりも、思いきって国立大学の民営化を目指すべきとも言えます。総理はどのように、お考えでしょうか。答弁をいただきます。

 産業競争力の強化に資する教育の充実も重要であります。スイスのある研究所が公表した二〇〇一年版の世界競争力ランキングによると、かつて首位を占めたこともある日本は、四十九か国中二十六位に落ち込みました。起業家精神、大学教育においては、日本は残念ながら最下位であります。今こそ、新しい技術を産み出し、産業に貢献する、地域に根ざした大学を育成することが急務ではないでしょうか。この件についても、総理の御所見を求めます。

(男女共同参画について)
 昨年九月の総理府の世論調査によれば、男性でも「家事や地域活動に妻と参加し仕事と両立させる」という考え方が、「仕事重視」の考えを上回っています。しかし実際には、育児や介護の多くを女性が担っており、子育てなどで一度退職すると復帰が難しいという雇用環境の厳しさも存在します。各人が能力を発揮し、男性も女性も共に仕事と家庭の両立ができる環境を社会全体で整えることが、これからの課題だと考えます。

 所信では「子育て支援」の重要性を、これまでの歴代総理の中でも抜きん出て強調され、保育所の整備などを掲げられましたが、子育て支援にはもう一つ大切な、「仕事と家庭の両立支援」という大きな柱があります。

 この国会に政府は「育児・介護休業改正法案」を提出していますが、その内容を見るとたとえば、病気の子供の看護休暇の請求権を規定しておらず、単なる努力義務ととどめているのは、先進国中日本ただ一国だけです。一体政府は働く親と子供の切実な要望を真剣に考えているのか、はなはだ疑問です。ご答弁をいただきます。

 さて、選択的夫婦別姓に関する民法改正についておたずねします。民主党は、希望すれば夫婦が別々の姓を選択できる「選択的夫婦別姓制度」の導入と、子ども自身に何の責任もない出生について、その子どもが不利益を被らないよう「婚外子の相続差別をなくすこと」などを内容とする民法改正案を今国会にも野党共同で提案しております。小泉総理はこの民法改正についてどのように考えておられますか。答弁を求めます。

 また森山大臣は、選択的夫婦別姓の実現に一生懸命取組んでおられますが、先日のご答弁は、あまりに消極的ではありませんか。大臣の答弁を求めます。

(えひめ丸)
 先般、愛媛県立宇和島水産高校の実習船「えひめ丸」が米海軍原子力潜水艦に衝突され沈没した事件について、ファーゴ米海軍太平洋艦隊司令官は、ワドル前艦長らに対する懲戒通告を行いました。処分内容は、ワドル前艦長らの刑事責任を問う軍法会議は開かれず、二ヶ月の減給処分など極めて軽い行政処分にとどまりました。
 遺族の方々は、憤りをあらわにされております。私たちも断じてこれを容認することができません。

 今回の決定により、日本国民の米軍に対する不信がさらに高まり、アジア太平洋地域の安全保障における日米協力関係が損なわれることを深く憂慮しています。引き続き、米軍が徹底的な綱紀粛正を行い、厳格に説明責任を果たすよう改めて要求していますが、政府においても十分な対応をすべきだと考えます。総理の答弁をいただきたい。

(京都議定書について)
 次に、地球温暖化問題についてうかがいます。
 米国は、地球温暖化防止のため、世界の英知を結集した「京都議定書」からの離脱を表明し、世界的な非難を浴びています。米国の行動は、国際世論に対する裏切り行為であり、わが国政府はもっと強く反省を促すべきでありませんか。

 本院は、先月、『京都議定書発効のための国際合意の実現に関する決議』を採択しています。この決議を重く受けとめ、政府は、米国に「京都議定書」に復帰するように説得する責務があるのではないですか。小泉総理の答弁をうかがいます。また、仮に米国が説得に応じなくても、日本が率先して批准をすべきと考えます。総理の見解を求めます。

 川口環境大臣は、先月、訪米して米国に働きかけてましたが、説得に失敗しています。その後、小泉内閣でも留任されましたが、いかにしてこの事態を打開するのでしょうか。具体的な方策をお示し下さい。川口大臣の答弁を求めます。

(むすび)
 私たち民主党は、「政策の党」として、日夜、政策立案に汗を流し、議員立法の策定に取り組んでいます。

 既に、この国会には、民主党単独で、「犯罪被害者法案」「NPO支援税制法案」「危険運転処罰法案」などを提出しております。また、他の野党と共同して、「三十人学級法案」「夫婦別姓など民法改正法案」などを提出しています。先日、鳩山代表が表明した法案もただいま早急に準備中です。

 小泉内閣が新しい政治を目指すならば、野党の法案なら、何もかも葬り去るという、これまでの独善的な与党の慣行を打ち破るべきではないでしょうか。議会制民主主義の健全な発展のため、政府提出法案も議員立法も対等に論議する政治を確立すべきと考えます。総理より答弁をいただきます。

 私は失われた十年のなかのこの六年間、国会審議に真摯に参加してきました。残念ながら、言論の府の中で良識の府たる参議院において、政府与党は少数意見に耳を貸さず数を頼んで審議の打ち切り、果ては強行採決がしばしば繰り返されました。憂慮にたえません。良識の府、参議院の復権と民主主義の原点に立ち返るために、民主党は努力することを表明し、質問を終わります。 

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