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2001/05/09
小泉総理の所信表明演説に対する代表質問(枝野議員)
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民主党 枝野 幸男

 小泉総理、総理は先日の所信表明演説において、痛みを恐れず、また、既得権益の壁にひるむことなく、構造改革を推進すると宣言されました。この言葉は、私が、政治活動を始めてから八年間、訴え続けてきた姿勢そのものであります。

 政党政治のもとで、小泉さんと私は党派を異にしています。しかし、政党のために政治があるのではなく、目指すべき政策を実現するために政党が存在することは言うまでもありません。改革が本当に前に進むのであるならば、私は、党派を超えてこれを全力で支援したいと思います。

 問題は、改革の具体的な中身であります。
 これまでも、改革という言葉、つまり総論だけは何度も繰り返し言われ続けてきました。しかし、具体的な中身となると、あるときは既得権益の壁に阻まれ、また、あるときは議論を尽くすという大義名分のもとに先送りがなされてきました。今、本当に改革を実現するためには、一刻も早く具体論を提示してその議論に入り、期限を決めて着実に成果を上げていく以外にはありません。

 私は、民主党・無所属クラブを代表して、こうした観点から、鳩山代表の質問に対する先ほどの総理の答弁と、小泉改革の具体的な中身について、重複を避けつつ、総理及び森山法務大臣に質問をいたします。

 先ほどの鳩山代表の政治姿勢に対する質問において、小泉総理の改革に向けた強い意欲はお聞きをいたしました。しかし、鳩山代表の質問は、小泉総理の意欲をお尋ねしたものではなく、森内閣ではなぜ改革が進まなかったのか、小泉総理御自身が森派の会長としてこれを中心となって支え、また、みずから歴代最高と言った森内閣で、なぜできなかったのか、その失敗の検証と反省がなければ、小泉さんにいかに強い意欲があろうとも、再び同じ失敗を繰り返すのではないか、そうした懸念からその政治姿勢をお尋ねしたものであります。

 改めてお尋ねをいたします。なぜ小泉さんが歴代最高とまで言った森内閣では小泉さんのような改革が断行されずに、内閣がかわることになったのか、端的にお答えをいただきたいと思います。

 次に、財政構造改革についてお尋ねをいたします。
 鳩山代表に対する答弁の中で、小泉総理は増税なき財政再建ということをおっしゃられました。ここはまさに大切なポイントであります。財政健全化に当たって増税を手段として認めるならば、総理がおっしゃっている歳出の徹底した見直しが骨抜きにされかねません。また、経済対策という観点からも問題があります。膨らむ一方の国の借金が、多くの皆さんに将来の大増税という不安を与え、その結果、財布のひもがかたく締まり、消費不況の一因となっているからであります。
 改めて、小泉総理が財政再建に当たっては増税をしない、明確に確認をさせていただきたいと思います。

 また、鳩山代表の質問に対する答弁においても、三十兆円以内という国債発行額の目標、公約がいつの時点のどういったところにかぶさってくるのかということが明確ではありませんでした。

 三十兆円以内に国債発行額を抑える、平成十三年度当初予算では二十八兆でありますが、平成十三年度を通してこの数値目標を掲げるのか。そして、平成十四年、三十兆円以内に抑えた後、平成十五年以降はどうなるのか。第二段階として、いわゆるプライマリーバランスをとるということを目標として掲げておられますが、プライマリーバランスをとるに当たっても、国債発行額を三十兆円以内に抑えるということは当然の前提になってまいりますから、自然に読めば平成十四年以降も三十兆円以内に抑えるという目標を掲げていると理解できるはずでありますが、それでよろしいのか、確認をさせていただきたいと思います。

 この質問を初めとして、鳩山代表から、幾つか我が党が法案を提案をした場合、総理は賛成されますかと、三十兆円以内に国債発行額を抑えるなどの法案について提起をされたことに対して、原則的に総理は法案が出てきてから考えるという御答弁をされておられます。

 問題は、本当に真剣に検討していただけるかどうかであります。残念ながら、これまでの我が国の国会の慣例は、野党がどんな法案を提案しても、国会で採決にかけられるどころか、残念ながら審議すらしていただけません。審議するかどうかということ自体が、与党、つまり自民党を中心とした皆さんの多数決による力によって決定されるからであります。

 提案をしたら検討するという御答弁でありますから、当然、先ほど鳩山代表が申し上げた幾つかの法案を提案した場合には、審議に付し、採決をしていただけるものと理解したいというふうに思いますが、答弁をお願いいたします。

 なお、これまでの歴代内閣は、それは国会の話だからといって、こういった質問から逃げておられることが多くあります。しかし、当然のことながら、小泉総理は、日本国の総理大臣であると同時時に自由民主党の総裁であります。総裁としてリーダーシップを発揮していただければ、国会で審議をするかどうかということを決めることができるはずでありますので、ぜひ逃げた答弁をなさらないようにお願いを申し上げます。

 鳩山代表の質問の中に、農業土木予算を人への投資に振りかえるべきではないかというお尋ねをいたしましたが、これに対して総理の明確な御答弁をいただいておりません。ぜひ、この提案に対する総理の御見解を明確にお願いをいたします。

 次に、社会保障についてお尋ねします。
 総理は、所信表明演説で「給付は厚く、負担は軽くというわけにはいきません。」とおっしゃられました。確かに、社会保障改革においても痛みを伴うことはやむを得ないと思いますが、この場合、負担の増加か給付の削減かという狭い範囲ではなく、もっと大きな範囲で選択肢を示し、国民の判断を仰ぐべきではないでしょうか。

 少子高齢社会においては、多くの人が年をとり、年をとれば病気になる人もふえ、その中の少なからずの人々が介護の必要性を生じます。このことは、年をとっていく世代にとってだけではなく、私たち、それを支える次の世代にとっても大変人きな不安の種であります。また、経済がますます国際化する中で、競争も激しさを増していくでありましょう。失業や倒産の不安がますます拡大することも予想されます。今、日本を覆っている閉塞感は、こうした将来への不安が大きな原因になっていると考えます。

 一方で、私たちは、公共事業によって、より便利で、より快適な生活を実現してきました。まだまだ欧米諸国よりはおくれているという意見もありますが、しかし、世界を見渡せば、有数の社会資本が整備された国である、このこともまた間違いのない事実であります。

 こうしたことを考えると、私は、これ以上の便利さ、快適さ、これもないよりあった方がいいに決まっていますけれども、しかし、こうしたことを求めるよりも、老後や失業など将来の不安を少しでも小さくすることこそが、二十一世紀における政府の最大の役割であると考えます。

 痛みが避けられないのであるならば、まずは公共事業をあきらめて徹底的に削減をするべきであって、公共事業をどんなにあきらめて削減をしても、どうしても足りない場合に初めて、税金や保険料の引き上げということを第二段階として考えるべきであります。

 そして、その上で、効率化は当然図るべきでありますが、将来の不安を小さくするための政策手段なる社会保障の水準は、可能な限り維持をする。こういった姿勢のもとに痛みを伴う改革というのは進めていくべきではないかと思いますが、この三者の関係について、小泉総理の御見解をお尋ねいたします。

 ところで、具体的な社会保障の根幹にかかわる年金改革と医療保険改革が長年先送りされています。
 民主党は、将来にわたって安定した年金制度とするために、基礎年金の財源を保険料に求めるのではなく、国庫負担とすることを主張しています。こうした考え方に対する総理の見解と、また、年金改革をどうしていこうとしているのかという方向性をお聞かせください。また、具体的にはいつまでに抜本的な年金改革の案を示していただけるのか、その時期もあわせてお尋ねいたします。

 医療保険については、医師会など関係団体の合意を得ることができずに、改革が先送りされています。私は、効率的で質の高い医療を実現するためには、サービス提供者の立場よりもサービスを受ける立場から、関係団体の圧力を排除していく、こうした姿勢が重要であると考えます。医療保険改革の断行に当たっては医師会などの圧力に屈しない、そうした総理の決意を求めたいと思いますが、この点についてお尋ねいたします。また、これについても具体案をいつまでに示されるのか、時期を明示してください。

 また、これにあわせて、カルテ開示の法制化について、医師会などの強い反対があるようですが、これを押し切る考えはないのか、お尋ねいたします。

 不良債権の問題について、鳩山代表の質問に答えて、不良債権と問題債権とは別であるというような御答弁をされました。確かに、不良債権と問題債権は、定義の上で別扱いをされています。しかし、過去の金融行政を振振り返ってみるとき、例えば日債銀や長銀の破綻処理の結果わかったことは何でありましょうか。それまで問題債権に分類をされていた債権、それどころか健全債権と分類されていた債権の中にすら、あけてみたら全く回収不能であった債権が多々あった。こういうケースが繰り返されてきたから、不良債権問題は解決しなかったのではないでしょうか。

 そうした視点からすれば、せめて問題債権については徹底した検査というものを行うべきであると思いますが、総理の御見解をお尋ねいたします。

 経済に関連して、多くの中小零細企業が、長引く不況の中で倒産、廃業に追い込まれています。大部分のケースでは、倒産が全財産を失うことに直結し、夜逃げとか、最悪の場合自殺という悲惨な事態まで生んでいます。その一方で、バブルに踊った金融機関の幹部や不良債権の借り手が、公的資金という名前の税金や債権放棄に助けられ、その経営責任を免れるとしたら、あまりにも不公正です。

 責任を追及するということは当然です。問題は、具体的にどういう方法でこれらの責任を問いただしていくのか。実際には、例えば銀行幹部の責任は、破綻をした場合に初めて追及できていますが、そうでない金融機関の過去の経営責任が問われた例を私は聞いておりません。具体的にどういう形でチェックをしていくのか、お答えください。
 関連して、与党内では、株主代表訴訟に関連して、取締役の責任を軽減しようという議論がなされていると聞いています。しかし、中小零細企業の経営者は、連鎖倒産の場合など本人にはほとんど責任がないケースであっても、個人保証を余儀なくされているために、事実上身ぐるみはがされる結果となっています。それなのに、大企業の取締役だけその責任が軽減されるというのでは、法律論としてはわからないではないですが、実態論としては明らかに不公正であります。

 本当に株主代表訴訟における取締役の責任を軽減するのであるならば、中小零細企業における経営者の個人保証の問題も同時に対処すべきであると考えますが、総理の御見解はいかがでしようか。

 さて、総理は長年にわたって郵政三事業の民営化を訴えてきました。しかし、所信表明演説では、具体的な民営化の道筋について説明はなく、民営化問題を含めた検討を進めるとの表現にとどまりました。

 一方、中央省庁等改革基本法の三十三条一項九号には、今も「民営化等の見直しは行わないものとする」との規定が残っています。この規定は、総理の持論や民営化の検討を明言した所信表明演説に抵触することになってしまいます。

 総理はこうした規定があることを御存じだったのでしょうか。また、この矛盾をどう解決されるのでしょうか。条文を一つ削除するだけでありますから、あしたにでも法改正を提案できる簡単な内容であります。当然すぐにでもこの法改正を提案されるものと考えますが、総理の御見解はいかがでしょうか。

 ところで、総理はどうして郵政三事業の民営化が必要だとお考えなのでしょうか。私は、もし民営化を議論する必要があるとすれば、その理由の一つには、宅配業者、銀行、生命保険会社などとの関係で、官業による民業圧迫になりかねないことが挙げられると思います。郵政三事業による民業圧迫について総理はどうお考えになっているのか、お聞かせください。

 本来、郵貯や簡保は民間金融機関の足りないところを補完的に補うものであります。ところが、現在、郵便局員の皆さんが新たな郵便貯金や簡易保険を獲得すると、それに対して奨励手当が出されるという制度になっています。

 私は、一般論としては、公務員の給与にも実績給という考え方を取り入れることには賛成です。しかし、民間の補完機関であるはずの郵貯や簡保において、こうした手当によって新規の顧客を獲得させようとすることが本当に合理的でありましょうか。結果的に、民間の補完にとどまることなく、民間との競争になり、民業圧迫の原因となっているのではないでしようか。

 郵政三事業の民営化を唱える総理でありますから、この奨励手当についても当然さまざまな御見解をお持ちだと思います。それをお聞かせください。

 先ほどの鳩山代表の財政投融資に関する答弁に対してお尋ねをいたします。
 郵政民営化を議論しなければならないとしたら、その理由のもう一つの大きな柱には、特殊法人に対する資金の供給源を閉じること、これも大きな理由としてあるのではないでしょうか。そして、そうした視点から、ことし四月、いわゆる義務預託の制度をやめて、特殊法人は財投機関債や財投債を発行することになったはずであります。国民の貴重な郵便貯金や簡易保険、赤字で利息の支払いもままならないような公共事業に投資をされている、こうした特殊法人の実態を考えるならば当然のことであります。しかし、いわゆる義務預託という形で特殊法人への資金として自動的に流れるという制度こそ改められましたが、郵便貯金のお金で結局は財投債を買っていたのでは、実質的には意味は何も変わらないのではないでしょうか。

 マーケットを通じて買っているという反応が返ってきそうでありますが、例えば、平成十三年度、四十兆円余りの資金のうち、マーケットを通じて郵便貯金などに買ってもらうことを予定しているお金はわずか十兆であります。残りはマーケットを通じずに郵便貯金などの資金でこれらの財投債を買ってもらうという仕組みになっていて、マーケットを通じているからいいではないかという理由は成り立ちません。郵便貯金、生命保険、簡保の資金の動かし方について、今のような指摘を受けてどう考えられるのか、御答弁をお願いいたします。

 李登輝氏の入国ビザの発給についてお尋ねします。
 政府の姿勢は、残念ながら右往左往しました。北京政府との外交的な約束は尊重すべきですが、民間人が治療や観光目的で入国することには何の問題もないはずです。外交的配慮によって事態を長引かせたあげくに問題を大きくした失敗を、小泉内閣では繰り返すべきではありません。

 私は、他国の政府が何と言おうと、公職を離れた民間人であれば、台湾から政治目的以外の理由で入国を求めた場合、一般の民間人と同じ基準でビザを発給するべきだと考えます。また、今回のような混乱を再び起こさないためには、あらかじめこうした基準を明確にしておけば、今後、李登輝氏などから再び入国の要請などがあった場合に、対応に混乱することがないと思いますが、総理の見解はいかがでしょうか。

 金正男問題についてもお尋ねをいたします。確かに、入国管理法によれば、今回の処理も一つの適法な、法に基づいた処理の方法であります。しかし、.法律をよく読むと、例えば今回のケースで不法入国罪で刑事告発をすることも、これは入国管理官の裁量の範囲で可能であります。また、入国管理法に基づいて、もうちょっと長い間、さまざまな調査を続けて収容を続けておくことも可能でありました。いずれも法律に基づいた適法な処理の範囲であります。

 にもかかわらず、今回のような判断をその中から選択をした。それは、法務省の単独の判断なのでありましょうか。そうではなくて、明らかに官邸にも報告をし、外務省や警察も含めて協議をしたということは、政治的、外交的な判断をしたのではないですか。

 私は、金正男氏である疑いは濃厚だが、外交的判断も加えた結果、他の選択肢をとらずに送還したと率直にお認めになるべきではないかと思います。政治判断がきちんとなされたということが明らかになることで、その判断の是非、よしあしについては意見が分かれるかもしれませんが、少なくとも、危機管理のシステムが機能していたという安心を国民に与えることができると思います。このような重要な問題を法務省の審査官限りのところで法に基づいて処理したという扱いでは、安心することができません。

 前総裁のもとで、自民党や与党の中に報道に関するさまざまな機関がつくられました。また、政府が提出を予定している個人情報保護法案には、出版や報道に関する過剰規制にもなりかねない内容が含まれていると伝えられています。確かに、報道やメディアのあり方にはさまざまな意見があるでしょう。しかし、少なくとも、公権力が報道やメディアに介入したり無言の圧力をかけたりすることは、許されるべきではありません。国民との対話を重視する新政権においては、報道統制を目指しているとも疑われかねないこうしした最近の風潮に歯どめをかけ、大きく転換するものと思いますが、総理の見解をお尋ねします。

 さて、私は、今回の内閣に五人の女性が大臣として起用されたことを、ある意味では当然のことでありますが、男女共同参画社会の実現を目指すから、率直に評価をいたします。もっとも、職場や社会において、多くの女性の皆さんが、今もなお男性中心につくられた社会の厚い壁と悪戦苦闘しています。特に議論になっているのが、選択的夫婦別姓の問題です。結婚によっていわゆる名字が変わることには大きな負担が伴いますし、通称使用の場合、戸籍名と通称の食い違いが問題になります。すべての人に別姓を強制するわけではありません。どうしても別姓にしたいというカップルに限ってこれを認めようとするものでありますから、別姓は嫌だという多数の皆さんに迷惑をかけることはありません。

 選択的夫婦別姓の導入に向け、長年にわたってリーダーシップを発揮してきた森山さんが所管大臣である法務大臣に就任したことは、強い期待を持って迎えられています。ぜひこの強い期待におこたえいただきたいと思いますが、御答弁をお願いいたします。

 最後に、財政や経済、高齢化など、日本の現状は、残念ながら大変危機的です。政党や過去のしがらみに縛られることなく改革を断行しなければ、手おくれになりかねません。総理が本当に一身を投げ出し、自由民主党の総裁ではなく、日本国総理大臣の職責を果たしていく決意であるならば、党内手続であるとか、与党の枠組みであるとか、あるいは自由民主党という存在そのものも、時には無視し、場合によっては破壊することになっても、直接一人一人の議員に向かって、そしてひいては一人一人の国民に向かって支持を呼びかけ、その理解と支援によって改革を進めていく必要があると考えます。

 私も、総理がそうした姿勢で改革を進めていただけるのであるならば、民主党所属の議員である以前に、多くの皆さんからの信託を受けている一人の国会議員としての立場で、さらに言えば、少子高齢社会を中心となって支えなければならない世代の一人として、改革の断行に向けてともに協力して、前進をしていく決意であります。

 問題は、総理が本当に政党や過去のしがらみを断ち切って、改革に向かって具体的に進んでいただけるかどうかであります。総理が志を最後まで貫かれることを強く期待することを申し上げて、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。

■小泉首相の答弁

 枝野議員にお答えいたします。
 まず最初に、森内閣でできないのがなぜ小泉内閣でできるのかというお尋ねでありますが、人間には個性があります。ある人にはできて、ある人にはできるということ、いろいろあるんじゃないででしょうか。

 まず、森内閣は、森総理個人の非常に多方面に気配りする御性格ということがありまして、党内バランスにかなり配慮をして、その中で昨年十二月はいい内閣を組織したと思います。私は、どちらかというと、そういう党内バランスを余り配慮しないで、いわゆる派閥の論理ではない、適材適所を貫くという形で、今までにない党三役、閣僚人事を断行できたと思います。

 それと、私は、大事なのは、よく自民党の若い議員に言っているんです、自分が最初に当選してきたころをよく考えてみると。中選挙区制時代は特に現職がいたはずだ、現職を押しのけて何で新人の自分たちが当選してきたのか。それは、当時、支持団体とか党員というのは新人に対して応援してくれなかったはずだ、しかし、党員でもない支持団体でもない、一般有権者に向かって共感を得た発言、行動をしてきたがゆえに当選してきたのではないか。一般国民、党員でもない支持団体でもない一般国民が支持したから、党員も支持してくれた、支持団体も支持してくれたんじゃないか、この視点を忘れてはだめだということをよく言っているんです。

 今回の総裁選挙が、これは私に当てはまるんですよ。国民の声を党員が素直に、真蟄に受けとめてくれた、国会議員がそれを受けとめて私に総裁になれということで支援を与えてくれた、この気持ちを大事にしていこう。まず代議士として一番大事なのは一般有権者なんだ、この層が一番多いんだ、そういう観点がこれからも大事じやないか。

 私は、政策を遂行するに当たり、もちろん党員の意見も大事にします、支持団体の意見も大事にします、しかしそれにとらわれません。最も大事なのは、一般有権者、国民がその意見を聞いて理解を示すか、賛同するか、これに最大限の配慮をして、私の内閣においてかかわるべき政策を推進していきたい。そういうことについては自民党議員の多くも必ず話せばわかる、そういう議員が自民党ではないかと私は信じております。

 十四年度以降も三十兆円以下に国債発行を抑制するのか、いわゆる財政構造路線についての御質問がございました。
 私は、この方針は十四年度以降も堅持していきたいと思っています。その中で歳出の徹底した見直しをやる。ただし、今までよくとられていた手法として、各省庁一律削減という方法はとらない。ふやすべき予算がある、そうすると減らさなければならない部分がある。これが、経済財政諮問会議で非常に大事な仕事であります。これを何とかやっていきたい。

 民主党の提案に対してはよく検討するかどうかというお話であります。内容によってはよく検討していきたい、場合によっては、民主党と協力できることがあったら協力していきたい、そう思っております。

 そして、先ほどの御質問と関連しますが、社会保障に関して、あるときはふやさなければならない予算もある、給付は厚く、負担は軽くという私の主張に枝野議員も少なからぬ理解を示していただきました。将来にわたって安心した、安定した社会保障制度を構築することは、私の内閣にとっても大変大事なことであり、重要な課題だと思っております。そういう際には、当然減らさなければならない部分もある。

 これは念頭に、枝野議員は公共事業関連を頭に置いているのだと思いますけれども、この予算配分の優先順位については、私は、どの予算を削減するかを、経済財政諮問会議など政府・与党におけるさまざまな議論の場において今後検討を深めていきたいと考えております。

 年金制度についてのお尋ねでありますが、基礎年金の財政方式につきましては、「自助と自律」の精神のもとに、社会保険方式を基本としつつ、保険料と公費を適切に組み合わせることにより給付に要する費用を賄っていく必要があると考えております。

 よく、保険方式か税方式かという議論があります。今の日本の年金制度においても医療制度においても、私は、二者択一ではない、保険と公費、両方とも入っているのです。問題は、保険料の負担をどのぐらいにするか、税金投入をどのようにするのか、個人の負担をどのようにするかで、調整の問題であって、日本の今の社会保険制度にしては、税方式か保険方式かと短絡的に二者択一はととらない。我々は、よく総合的な判断で、安定的な、お互いが支え合うような社会保障制度を構築していきたい、そう思っております。

 そして、年金制度の改革の時期と方向性につきましては、次期財政再計算を平成十六年度までに行うこととされていることを踏まえまして、国民の老後を支える公的年金の役割を将来にわたって果たしていくことができるよう、世代間の給付と負担の均衡を図り、お互いが支え合う、持続可能な制度を構築していかなければならないと考えております。

 医療保険についてでありますが、この医療保険制度はすべての国民の生活を支える基本となるものでありまして、利害や立場を超えた国民的な合意なくしてその大きな改革は困難であります。

 私は、単に医師会の要求がだめだと思っていません。医師会の要求にも合理的ななるほどと思わせる要求もある。ただ、それだけがすべてではない。医師会もあれば健保連もあれば国民多数もある。総合的に勘案して、今後あるべき医療保険制度を国民の合意が得られるようにやっていきたいというふうに考えております。

 カルテ開示についてのお尋ねがありました。
 カルテ開示の法制化については、関係審議会での議論を踏まえ、患者の側の認識や意向の推移、医療従事者の取り組みの状況などを見た上で判断してまいりたいと考えております。また、政府としては、カルテ開示等の普及、定着に向け、カルテテの記載の適正化や用語の標準化、医療機関における診療記録の管理体制の整備などに取り組んでいるところであり、このような環境整備にさらに推進してまいります。

 不良債権の処理に当たっての責任追及についてのお尋ねですが、銀行経営の責任は、不良債権の適切な処理ができず、銀行が破綻に至った場合に生ずるものであり、こうした場合の責任追及については、民事、刑事の責任追及も含め、現行の破綻処理制度のもとで適切に行われていくこととなっております。

 また、債権放棄と借り手責任との関係については、いわゆる資本増強行の債権放棄に関し、従来より、残存債権の回収確実性や当該企業の社会的影響を十分考慮するとともに、借り手企業の経営責任を明確化することにしております。中小零細企業の個人保証責任についての御指摘ですが、中小零細企業の経営者が倒産により財産を失う等の悪影響に対して、特に経営者に過失のない連鎖倒産の防止対策として、政府系金融機関や信用保証協会等を通じ、円滑に資金が供給されるよう措置を講じるとともに、中小企業倒産防止共済制度を実施しております。

 今後とも、連鎖倒産の危険など、中小零細企業の経営の安定に不測の支障を生じないよう、金融面での適切な対応等に努めてまいりたいと考えております。郵政事業の民営化についてでありますが、中央省庁等改革基本法と民営化の検討との関係についてのお尋ねです。

 基本法は、郵政三事業について、国営の新たな公社を設立するために必要な措置を講ずる際の方針の一つとして、民営化等の見直しは行わない旨を定めております。しかし、これは公社化にするための基本法なんです。公社化後のあり方を検討すること自体は基本法に反するものではないのです。

 私は、これは今後大事な問題でありまして、公社化後のあり方については、先般の与党王党合意を踏まえ、早急に懇談会を立ち上げ、民営化問題を含めた具体的な検討を進めて、国民的議論を大いに行っていきたい。

 そして、郵政三事業による、この質問は、私は枝野議員は非常に勇気がある質問だと思って、敬意を表しています。この問題は実に大きな問題で、与野党を通じて私は反省してもらいたいと思っているのです。

 まず、民間にできることは民間に任せる、この基本姿勢は私の内閣は貫いていきたい。そういう観点に立って、今後これは、郵政民営化の問題は特殊法人の改革にもつながっていく問題であります。枝野議員も特殊法人の資金源について言及されました。まさに最も大事な行政改革だと言っても過言ではない。そういう観点から、枝野議員の御意見には私も賛同するところが多いのですよ。

 まず公社化は決まっています。公社化は、平成十十五年度に公社化に進めていく。その後の問題は白紙で検討します、もちろん民営化も含めて。今回は、民営化はタブーで触れられなかった。私の内閣になったからタブーじゃなくなったのです。国営化しかないという前提はとりません。

 そして、この公社化に進む過程においても、これからの問題ですが、私は、郵便事業についても民間参入を促進することについて、できるだけ民間にできることは民間に任せていくという方針を貫いていきたい。かつてのように、商品券は民間企業が配達してよい、しかし地域振興券は民間企業が配達しちゃいかぬという旧郵政省のわけのわからない論理は、小泉内閣には通用しないということを銘記していただきたい。

 こういうことに対して、民主党の議員の中には言っている方がいました。しかし、ほとんどの政党は言わなかったじゃないですか。こういうことから変えていかなきゃならない。

 過去の郵政省の事業を見ていると、むしろ民間企業の活動を妨害している面がある。こういうことは小泉内閣では断じて許さない。

 李登輝氏の訪日についてのお尋ねですが、今回の訪日に当たっては、前内閣のもとで、我が国を取り巻く国際環境、人道的観点等さまざまな要因を勘案しながら検討を行い、あくまでも我が国の国益に立って自主的に判断が行われたものと承知しています。

 同氏の訪日については、今後とも、その時々のささまざまな要因を勘案しつつ、関連の情報を収集し、適切な判断を行っていきたいと思います。

 金正曰氏の長男ではないかとされる人物が不法入国した件に関し、その対応についてお尋ねがありました。御質問の趣旨はよく理解できますし、国民に説明して理解を得る必要があることも、私は枝野議員の言っていることはよくわかります。

 私としては、今回の事案については、民主主義国家として法令に基づいた処理を行うことが第一と考えるとともに、本件の処理が長引くならば内外に予期しない混乱が生じるおそれなどもあり、そうした事態を避けるためにも、総合的判断を加えた上で強制退去の措置を行ったものでありまして、適切な対処措置であったと今でも考えております。

 報道やメディアのあり方などに関するお尋ねがありました。
 言論、出版その他の表現の自由は、憲法上保障された極めて重要な権利であり、最大限尊重されるべきことは言うまでもありません。また、時に、公権力を批判する立場にある報道やメディアに対して、政治家が謙虚でなければなりません。他方、報道に伴う個人の名誉やプライバシーの侵害などのような問題が発生する可能性があることも否定できません。こうした問題に対しては、細心の注意が必要です。そうした意味で、報道に関しては、政党を含めて、さまざまな視点からさまざまな形で検討が行われていくことは重要なことであると私も考えております。

 いずれにせよ、私としては、報道の主体であるマスメディアが人権などに十分配慮するなど、常にみずからを律しつつ行動していくことが基本であると考えております。

 個人情報の保護に関する法律案についてのお尋ねでありますが、近年、民間企業や行政機関等全般にわたり、ITを利用した大量の個人情報の処理が拡大しており、その流出が社会問題化するなど、個人情報の取り扱いに対する不安感が広がっているほか、国際的にも整合性を保った国内法制の整備が急務となっております。

 このような観点から、個人情報の保護に関する法律案は、国民が安心してIT社会の便益が受けられるよう、個人情報の適正な取り扱いのルールを定め、国民の権利利益の侵害を未然に防止しようとするものであります。

 御指摘の報道分野については、法律案の第五章「個人情報取扱事業者の義務等」を適用した場合、事前規制となるおそれがあることから、報道機関が報道の用に供する目的で個人情報を取り扱う場合は適用を除外しております。

 他方、基本原則は何人にも適用されることとなりますが、法律上、一律かつ具体的な義務を課すものでなく、個人情報の保護のために自主的に努力すべきことを定めるものであり、また主務大臣による関与もないことから、報道機関の正当な報道道活動を制限するものではありません。このように、本法律案は、報道や出版など報道機関の自主性を尊重し、その活動を制限することのないような制度とされているところであります。残余の質問については、関係大臣から答弁させます。

■森山法務大臣の答弁

 結婚届を出すときに、希望する者が、夫婦、法的に別姓を名乗れるという道を開くのが選択的夫婦別姓と承知しております。そのことについてお尋ねがございました。

 国民の価値観が多様化いたしまして、男女ともにさまざまな生き方が求められている時代になっております。特に女性の間で関心の高いテーマでございまして、私もこの問題に重大な関心を持ってやってまいりました。

 自民党の男性先輩議員の中でも、応援してくださる方が少なくございません。しかし、国民各層、各関係方面にさまざまな御意見がある、中には反対の方も相当ありまして、意見がなお分かれているということも承知しております。

 いずれにせよ、社会や家族のあり方など国民生活に重大な影響を及ぼす事柄でありますから、法改正は、国民の大方が理解をすることができる状況というのが必要であると思います。そのような意味で、近く、五年ぶりに世論調査を行うべく準備いたしております。その結果を注目したいと思っております。
 さらに、この機会に国民各界各層や関係方面で議論が深まることを期待しておりますし、特に国会における御議論の動向を見守りながら対処してまいりたいと考えます。

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