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2001/02/05
総理施政方針演説に対する代表質問(上田議員)
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衆議院本会議
総理施政方針演説に対する代表質問
上田 清司

 民主党の上田清司です。鳩山代表に続き、民主党・無所属クラブを代表して質問させていただきます。

 まず、KSD疑惑問題です。
 民主党の調査では、表に出ているだけでも総額20億円以上、中小企業経営者や個人事業主の上前をハネた中から政治家や自民党に支出されています。ある新聞報道ではKSD豊政連が資金提供した議員は112人といっています。

 森総理も関係ないような顔をしていますが、少なくとも95年9月、地元で開かれたKSD豊明会主催の有名女性演歌歌手の歌謡ショーチケットを400枚、事務所がタダでもらっているはずです。多分200万円分に相当すると思われます。
 また、翌年の96年の衆議院選で10万円の陣中見舞いを受け取っているはずです。事実関係についてお答え下さい。

 ものつくり大学を推進する国際技能工芸大学設立議連には中曽根元首相や故竹下登元首相が顧問で、会長が村上正邦参議院議員、幹事長に藤井孝夫元運輸大臣、世話人には森首相をはじめ、故小渕前総理、片山総務大臣、中曽根弘文前文部大臣なども名前を連ねています。

 橋本行政改革担当大臣も、首相時代、96年1月25日の参議院本会議で村上参議院議員の質問に対して「職人大学といった構想について興味を持って勉強させていただきます。」と答弁しておられます。さらに橋本大臣は、98年2月にはKSDが東京ドームで開いたイベントにも出席され、ヨイショ発言をしておられます。国民から見れば、元首相から現職閣僚、自民党最高幹部までまさにKSDに総汚染されているように見えます。

 森総理、ものつくり大学の趣旨そのものはともかく、施政方針演説にまで一民間の私立大学構想が挿入されていたことはまことに不自然に思えませんか。率直なご所見をお伺いします。また、文教問題に詳しい森総理に伺いますが、私立大学に国の支出は憲法上許されていないのではないのですか。

 自前の資金が3億8千万円で、労働省が85億円負担などという大学は私立大学の名に値しません。どのような事情と背景で、ものつくり大学開設資金を国が支出することになったのか、ご答弁ください。

 まじめな坂口厚生労働大臣にお願いしたいと思います。菅厚生大臣当時と同じようなことをすれば事実の解明ができるはずです。よろしくお願いいたします。

 額賀前経済財政大臣はKSDより1500万円の預かりという不明朗な行為に責任をとって辞めたといわれています。青木参院自民党幹事長は「国民に説明ができない」と辞任をすすめたと聞いておりますが、国民だけでなくKSDから供与された1500万円を半年も秘書が机の引き出しに預かっていたなどということは、ここにいる議員諸兄にもわからない不思議な出来事です。第一、政治資金規正法には「一時預り金」などという項目はありません。

 任命権者としての森総理は額賀前大臣からどのような説明を受け、どのように理解されたのか。また、不祥事による3人目の閣僚辞任について任命権者としての責任をどのように考えておられるのかご答弁下さい。

 KSDに関連して金融界の問題についても申し上げます。
 「KSD増殖のかげに金融機関あり」です。KSDの会員の大半は金融機関に勧誘されています。私の選挙区でもヒアリングをすると9割ぐらいが金融機関による勧誘です。
金融機関の勧誘が始まってからKSD会員数は一気に10倍になったのです。金融機関によってはKSD会員勧誘の強化月間があったりしているところもあります。よほどうまみのある条件があったのでしょう。
 今回、金融庁のアンケートに回答しただけでもKSD会員勧誘の見返りに金融界に六億円還流されています。回答を保留したり、無視している金融機関もあるので、実際はもっと還流されているはずです。
 この際提案します。本来、この種の勧誘は業法違反でありますから、金融庁は検査のとき厳しくチェックすべきだと思います。今後、金融機関による本業以外の勧誘や斡旋販売は一切禁止すべきです。また、金融機関に還流されたKSDの手数料等は会員に返却すべきものと考えます。
 総理のご所見を伺います。

 以上申し上げましたように、このKSD事件の背後には自民党の有力政治家と、旧労働省の官僚達が、中小企業の経営者から預かったお金に群がり、政官業癒着のパイプを使って巨額の利益を得た、極めて悪質な行為以外なにものでもありません。
 まさに、KSDがその事業目的を達成するため、カネをバラまき、政界・官界を工作してきた構図がみえます。

 K・S・Dの『K』はカネ、『S』は政治家、『D』は抱き込む。
 K・S・Dの別称は『カネで政治家を抱き込む』ことであります。

 単に額賀前大臣や小山参議院議員が辞めたりして済む問題ではありません。KSD問題は、官僚のさじ加減による補助金、官僚OBの支配する公益法人、選挙制度をめぐる政官業癒着の大見本市ともいえます。 
 金額といい、関わった人数といい、これはリクルート事件以上の疑獄事件ではありませんか。真相を究明するヤル気はありますか。総理、ご答弁願います。 


〈外務省機密費流用問題〉

 次に外務省機密費問題について伺います。
 松尾氏の公金横領についての外務省調査は個人の犯罪と矮小化しています。本気で調査しているとは思えません。松尾氏が着服した金が5400万円という報告ですが、十四頭の馬を持ち、高級マンション、ゴルフ会員券購入など、到底5400万円では済みません。新聞報道によれば、約3億円近く、個人的に支出された疑いがあります。

 3億円と5400万円の差額は、どう理解すればいいのですか、外務大臣にご説明願います。また、なぜ、松尾氏が持っていた九つの口座のうち一つだけしか調査しないのか、ご答弁いただきたい。

 いずれにしても、個人の犯罪とはとうてい思いがたい。外務省ぐるみであった理解しています。

 着服した公金は外務省機密費なのか内閣官房機密費なのか明らかにしていただきたい。総理と外務大臣に公式見解を求めます。

 一方、外務省の予算を内閣官房機密費に上納したとすれば、財政法上、会計法上、法令違反となるが、事実を明らかにすべきだと思います。外務大臣、ご答弁いただきたい。
内閣官房機密費と外務省機密費がこの十年間、ほとんど使い切られています。

 政府は機密費について、「当面の任務と状況に応じて機動的に使用される経費」と説明していますが、年によってはバラツキがあるのが普通であって、計画的に支出されるわけでもないのになぜほとんど使い切ることになるのか。当面の任務と状況は、十年も変えられないということでしょうか。機動的とは言えません。本当におかしい話ですね。総理と外務大臣にご所見を伺います。

 松尾氏に使い込みされても、あるいは勝手に保管されてもわからなかったという金額だけは、本年度予算から削除できることになりますが、総理、削除してもいいですか。どうぞお答え下さい。


〈失われた十年の総括〉

 失われた十年の総括について所見を述べます。
 総理がダボスでもいわれましたように、二十一世紀最後の十年は、日本にとって失われた十年であるという見方も生まれています。そのとおりだと思います。金融問題を中心とする経済政策の「失敗の十年」を正しく総括しない限り、失われた十年は失われた二十年にもなります。

 鳩山代表にも指摘されたように、ダボス会議で、森総理は「日本経済はまもなく本格的な再生を終え、再び世界経済の最先端に立って貢献できる状況になる。」「日本は、バブルの負の遺産を解消し、完全に復活する体制を整えつつある。」などと述べておられますが、私は地下に潜む巨大な不良債権について総理の認識にズレがあるのではないですか。

 ご承知のように金融庁の調査によれば、全国の銀行の問題債権は2000年9月末時点で約64兆円あり、3月末よりも0.8%増えています。
 再生法ベースの不良債権の合計額も3月末と比べると1兆1千億円増え、32兆9千億円になっています。少しも不良債権は減っていないではありませんか。これぞバブルの負の遺産ではないですか。総理が解消したバブルの負の遺産とは何の事を示しているのか明確に答えてください。

 昨年10月に協栄生命の破綻時に旧経営陣が発表した債務超過額は45億円でしたが、最近、更生管財人が発表した額は153倍の6895億円にのぼっています。
 同じ10月に千代田生命が破綻した時、債務超過額は343億円と金融庁から発表されましたが、専門家の間では一桁数字が違うと言われつづけています。新聞報道では15倍の5111億という数字がでています。
 生保も銀行も、潜在的な危機がまだまだ終わっていないと私たちは考えます。
 正しい認識がなくて本当の解決はできません。日本経済はバブルの後遺症にのたうち回っていると言えるのではないでしょうか。

 故梶山静六先生も「官房長官の時不良債権の正確な報告を受けていれば」と後悔され、その後、精力的に金融問題解決のための政策発表を続けておられたことは議員諸兄の知るところです。
 失われた十年の中で、長く総理や大蔵大臣として日本経済の舵取りの主役であったお二人が奇しくもこの席におられます。
 端的にお伺いいたします。橋本行政改革担当大臣、宮沢財務大臣、お二人にご答弁願います。日本のバブルの後遺症は解消されたのですか。答弁によっては株価が下がりますから、ご注意ください。

 続いて、宮沢財務大臣に伺います。92年8月の自民軽井沢セミナーで当時総理として金融機関の潜在的な危機について「必要なら公的援助をすることもやぶさかでない」と発言されておられます。
 危機を認識しておられたのですか。さすがだと思いますが、一方、危機を認識しておられながらなぜ見過ごされたのか、お尋ねしたいと思います。

 橋本行革担当大臣に伺います。
 97年3月、日債銀の検査結果を意図的にごまかし、生命保険会社等に増資を求める奉加帳をまわし、大蔵省ぐるみの詐欺的行為を行ったことをご記憶にあるかと思います。
その後、600億円資本注入したにもかかわらず、98年12月に結局破綻しました。当時の最高責任者として現在、どのように総括されておりますか。

 97年10月に、福徳・なにわ銀行を特定合併という奇妙なスキームをつくり「なみはや銀行」をつくりました。当時、不良銀行同士は合併できなかったのですが、大蔵委員会で強行採決までして特定合併の法案を通しました。当時、総理だった橋本行革担当大臣は、わざわざ大蔵委員会に出席し、まさに特定合併を認めるようお願いされました。
 その後、なみはや銀行は二次破綻しました。特定合併のときに3千億円、そして大和銀行を受け皿として4千億円、合計7千億円の破綻処理費用がかかりました。
 福徳銀行と、なにわ銀行のとき、破綻処理をしておけば少なくとも7千億円はいらなかったはずです。あのとき、誰がこのスキームをつくり、当時の橋本総理に説明したのですか。
 そして、橋本大臣は今、どのように総括されていますか。国民に損をさせた政治責任を感じていますか。

 98年の3月、公的資金の注入を決定する金融危機管理審査委員会委員長が金融安定化特別委員会の審議でうっかり、「私は何もわからない金融危機管理審査委員会の司会をしているようなものだ」 と発言し、失笑をかったことを記憶しています。このような方を委員長にして大手銀行に1兆8千億円注入したこともご記憶にあると思います。

 われわれが、日債銀と長銀は債務超過だから問題であると指摘しましたが、大蔵省も日銀も甘い査定で結局長銀、日債銀の破綻によってこのときの注入分2366億円が返らぬお金になってしまいました。金融危機管理審査委員会の決定を閣議で承認されておられますから、当時の総理だった橋本行革担当大臣はどのような責任を感じますか。
 参議院選惨敗による総理退陣でうやむやになった責任を改めて問いたいと思います。

 さらに、97年の橋本内閣による9兆円の負担増によって、上向いてきた景気が急速に悪化し、その後の日本経済に悪影響を与えた責任をどのように感じておられますか。ご所見を伺います。

 また、宮沢財務大臣に伺います。
 先頃発行された日本経済社の編集による「犯意なき過ち−検証バブル」で答えておられる内容には驚きました。読んでみます。よく聞いて下さい。

 「これはちょっと脱線しちゃうけど、野党の若い諸君が法律をつくって日本の長期信用銀行をつぶした。そのコストが何兆円とは何事だとこっちに向かって言うんだよ。世が世なら何か言いたいけどね。ほっときゃ保護されてるはずのものを裸にしたわけですからね。金融債だって何だって。そしてそのコストが3兆だ何兆だって。おまえたちは何をやっているんだと言われても、法律をつくったのは誰なのか。いや、法律をつくったのが悪いんじゃない。毎日毎日(株価下落をあおるような)トークダウンをして、株価をゼロにするようなことをしたんですから。それはどこだってつぶれますわなあ。こんなことは言えないんで言わないんです。やっぱりつぶして処理するっていうのは、それは生きてるもの、ゴーイングコンサーン(存続している機関)を死なせちゃう。スクラップにするわけですから、利口な話じゃない。しかし、あの若い人たちにとっては、大銀行をつぶすのはエキサイティングなことだったんでしょうな、きっと。そうすりゃあ悪いやつもいるとかなんとかいう話になるから、えらいこう、白馬に乗ったヒーローみたいな気持ちになったかもしれないが」

 本当に脱線、大脱線ですね。
 大変失礼な話です。何度もいったようにすでに「つぶれている状態の長銀」を宮沢大蔵大臣が「健全だ」「健全だ」というのでわれわれが債務超過であることを明らかにしただけです。当時、有力経済紙なども債務超過であることをとっくの昔から分析していました。

 自らの無能無策ぶりを省みず、日本の金融危機を救う仕組みを作ってきた我々を愚弄し、責任転嫁するとは絶対に許せません。もし、公的資金の70兆円枠組みがなければ、日本の金融機関並びに日本経済は壊滅的なダメージがあったはずです。
 しかも、金融再生法は与野党で一緒に作った法律です。大臣は憲法99条で法律を遵守することを義務付けられています。その法律をコケにしています。

 宮沢大臣は大臣失格です。事実に反することを言っています。今すぐ辞表を出してください。野党がつぶしたというのなら、根拠を示していただきたい。

 森総理、宮沢財務大臣は閣僚として問題があります。ご見解を伺います。

 いずれにしても、この間、公的資金を26兆円使い、未だ不良債権のマグマが地下にたまっているのです。バブルの後遺症はまだ解決していないのです。
 改めて提案します。日本版ペコラ委員会を設置し、失われた十年を総括し、関係者の責任を明らかにすると同時に処罰し、速やかに不良債権の処理を行うことが必要です。この提案をどのように受け止めますか。
 この提案を受けなければ、森政権は「不良政権」として、国民に処理されるでしょう。森総理にご答弁願います。


〈農業〉

 次に、農林水産業についても少しお伺いします。
 森総理は、施政方針演説の中で農林水産業について、たった2行しか触れておられません。なんら農林水産業の展望を示していません。明らかに農林水産業軽視です。
 ウルグアイラウンド特別対策費として農業振興のため6兆100億円使ったにもかかわらず、食料自給率が年々下がっていくのはなぜですか。
 また、米の生産性をはじめ、日本農業の生産性は6兆100億円の支出によって著しく向上するはずだったのですが、本当に向上しましたか。統計上の係数でお答えください。


〈国民総背番号制〉

 最後に、国民総背番号制について伺います。
 与党は国民の大反対を押し切って、史上最大の悪法である改正住民基本台帳法を成立させました。日本人は日本史上初めて自らの氏名の他に11桁の番号を強制的に持たされることになりました。
 IT革命は、ネットワーク社会、すなわち横のつながり、人間の自立を保障するものであります。政府が番号、ICカードで国民を管理することは、タテ社会、つまり管理社会の道を進むことになります。政府が国民を管理するという改正住民基本台帳法による国民総背番号、国民総ICカード所持制は、自由社会の危機です。
 韓国でもICカードは廃止されました。総理、改正住民基本台帳法の廃止を検討すべきです。ご所見を伺います。

 人間の歴史はある一面では国家からの自由、権力者からの自由を確立する戦いの歴史でもありました。議会も王の勝手な微税権を阻止するため生まれたものと言われています。

 私は議員諸兄に申し上げたい。あなた方は国民の代表として国民の自由や権利を守るために戦うのか、それとも、国民を管理する社会システムに奉仕するのか。まさに、国民総背番号制は国民を管理する社会システムの道具になります。自由社会の限りない発展のため、改正住民基本台帳法を廃止する戦いに参加していただきますよう心からお願い申し上げ、代表質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。

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