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2000/09/27
森内閣総理大臣所信表明演説に対する代表質問(千葉議員)
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参議院本会議
森内閣総理大臣所信表明演説に対する代表質問
民主党・新緑風会 千葉 景子


 民主党・新緑風会の千葉景子でございます。私は、会派を代表して、先日の森内閣総理大臣の所信表明演説に対し、総理並びに関係大臣に質問いたします。

 まず、冒頭、昨日の、我が会派・北澤議員からの参議院選挙制度に関する質問に対する森総理の答弁に誤りがあることを指摘いたします。

 すなわち、参議院選挙制度に関する与野党協議は、当面は現行の比例代表と選挙区制という制度の基本的な枠組みを維持することで意見が一致しているものであり、総理のご答弁はこの合意と異なるものといわざるを得ません。誤りを訂正の上、再度、与野党合意についてどのように認識しておられるのかご答弁を求めます。 

 いま、国民の多くが、雇用や老後の不安の中で、暮らしています。子どもたちは、将来への希望も日々の喜びや楽しみも感じることができないまま、社会の重圧に耐えています。経済活動などが国際化し、日常、外国人と出会う機会は非常に増えましたが、国際的な相互理解が深まったとは到底いえず、むしろ外国人差別や相互不信の気持ちが日々再生産されています。

 このような現実に対して、政治は一体何をすることができたのでしょうか。GDP統計の数字ばかりを見て、景気は回復基調にあるといい、そうかと思えば追加的経済対策が必要だと言っては自分たちの支持基盤のために公共事業の大盤振る舞いをする。それによって国民生活の不安はいかほど解消したといえるのでしょうか。教育が問題になると、決まって道徳心・愛国心の欠如こそが原因だと騒ぎたてる人々がいます。少年非行の原因に目を向けずに、厳罰だけを求める人々もいます。それで、いったい子どもたちの心の平穏が戻ってくるのでしょうか。

 在日朝鮮・韓国人など、永住外国人の方たちの権利が問題になると、決まって「いやなら出て行け」という人々もいます。「帰化すればいい」という人々もいます。他国民との国際的な相互理解や国際貢献という日頃の掛け声とのあまりの落差に驚きます。

このような疑問に、総理はどのように答えることができるのでしょうか。私たち民主党は、こうした現実に真正面に向き合い、ニューリベラルの旗のもと「自立」「責任」「共生」の理念を現実の政策に生かし、誰もが生きることの喜びと誇りを感じられるような政治を実行してまいります。私は、この「ニュー・リベラル」を特に女性や市民の生活の視点からとらえ、質問をいたします。
 
さて、具体的な質問の最初に、永住外国人地方選挙権付与法案について与党3党それぞれの見解をお尋ねします。

ご存知のとおり、最高裁は95年2月28日の判決で「永住外国人に地方選挙権を付与することは憲法上制約がなく、立法府の判断で行なうべきだ」――と指摘しました。

民主党が、これらを受けて、当時の公明党会派と98年の10月に法律案提出してから、既に2年もの月日が流れております。

 いまや自民党以外の政党は概ね地方選挙権付与の立場を明確にしております。端的に言えば、自民党が無責任にも先延ばしを重ねているのが現状であります。
総理、自民党総裁として、これ以上いたずらに時を浪費することなく、党としての意見を集約する大きな責任とリーダーシップが厳しく問われていますが、どうお考えでしょうか。また、保守党は先に公明党と共同で法案を提出されています。

 あらためてこの保守党の立場を扇建設大臣に確認させていただきます。

 加えて、なんとしても今国会で法成立を図るというお考えをお持ちと伺っている公明党の決意を、続総務庁長官に伺います。

 次に教育改革についてお尋ねします。

 総理は、神の国発言、教育勅語の再評価など国民が驚くような時代錯誤的発言を繰り返してきました。その発言から、国粋主義的な発想が見え隠れし、国民の多くは、違和感とともに、強い不安を感じております。

 4月に前総理から引き継いだ教育改革国民会議初会合の挨拶で、総理は早速、教育基本法の見直しに言及しております。教育基本法の改正が改革の前提というお考えでしょうか。教育は、深刻な問題をたくさん抱えています。家庭や教育現場は、大きな不安の中にさ迷っています。これらの現実的な問題を一つ一つ拾い、話し合い、必要な制度改革を行う。その中で、教育基本法の問題が議論になることもあるでしょう。しかし、最初に法改正ありきの森総理の教育改革は、己の偏った教育観を国民に押し付けようとするだけです。  

 総理は道徳心などの言葉がお好きなようですが、現代の多様な価値観の中では、国家が心の問題に踏みこむことに懸念を抱く国民もたくさんいるのです。この多様性を有機的にリンクさせ、一人一人が伸び伸びと生きていくことこそ、今の日本が目指す社会なのではないでしょうか。教育改革に向けた総理のお考えをお聞かせください。

 次に少年犯罪及び少年法の見直しについてお聞きいたします。

 総理は、所信表明演説で、「少年法の改正については、与党の議論の結果を受けて適切に対処していく。」と述べられましたが、その与党における論議は、私の印象では、一部のセンセーショナルな事件に引きずられて、ただ刑罰を厳しくして威嚇すれば、少年犯罪は減るとの考えのように思えます。また、「青少年の凶悪化」というつくられた虚像に惑わされているのではないでしょうか。もちろん被害者やその家族の感情に対応できる制度的措置など検討すべき課題はたくさんありますが、性急な法改正で現在の保護主義的な枠組みの長所を失うリスクも考えなければなりません。

 森総理、あなたは、教育の重要性を訴えておられます。そして、「来年の通常国会を教育国会と位置づけたい」と宣言されています。私は、広い意味で教育の一環である少年法の見直しは、森総理が言われた「教育改革国会」で教育という大きなテーマと相まって、じっくりと論議すべきだと考えますが、総理のご見解を伺います。次に、私は、男女共同参画社会の構築に関してお尋ねします。現在開催されているオリンピックは、20世紀最後を飾るにふさわしい「男女共同参画オリンピック」だと思います。連日報道されている日本選手の活躍も、女性の躍進を印象付けています。このように、社会のあるゆる分野でジェンダーにとらわれない共同参画が進んでいます。

 政府の男女共同参画審議会も、昨日基本方針策定にあたっての考え方を答申し、その中で選択的夫婦別姓の導入や配偶者の優遇税制の是正等、世帯単位から個人単位へ制度を見直すよう指摘しています。総理は、これらの指摘をどのように具体化されるおつもりか、答弁を求めます。

 今後、少子高齢化が進み、経済的観点からも女性の労働力確保は重要な課題ですが、働きながら子どもを育てる家庭で必要と思われる制度の一つに「看護休暇制度」があります。

 企業に働く人たちの中には、「子どもが幼いうちの病気に備え、有給休暇は自分のためにとれない。」という声が多く聞かれます。労働省が7月に発表した「平成11年度女性雇用管理基本調査」によると、家庭看護休暇の制度がある事業所は全国で8%、さらに取得実績は制度がある事業所全体の9.7%にとどまっています。

 このような現状をみると、看護休暇制度の法制化は子育て支援への重要な検討事項だとおもいますが、総理はどのように思われますか。また、さらなる検討課題として既にある育児・介護休業法を改正し、子育てや介護を社会全体で支えるための「仕事と家庭の両立支援法」を制定すべきと考えますが、総理の見解をお尋ねします。 

 次に、情報技術革命――IT革命についてお尋ねします。

 沖縄サミットで「IT憲章」が採択され、政府はIT革命推進を重要課題としていますが、政府の取り組みは、「時流」に乗っているだけとの軽薄な印象が否めません。総理は、所信表明演説で「国民運動としてのIT革命」を強調されましたが、哲学・理念が不明確ですまた、IT革命は、知的成果物がどんどん生み出される社会が前提になっていることを忘れてはなりません。創造の担い手である企業や学者、そして大学等の研究機関が、安心して創造に取り組めるような環境が不可欠ですが、知的財産権に関する位置づけも不明確です。また、デジタルデバイド対策への取組みも不十分です。

 私は、インターネットをはじめとするITが官主導から民主導へ、中央政府中心からコミュニティ中心へ、男性主導から男女共同参画型へと社会を転換し、経済のボーダレス化を促進し、国際社会や国の仕組み、人間の生き方を根本から変えることににもなるものだと考えています。

 それだけに政府は、この国会に、IT関連法案を提出するとうかがっておりますが、IT革命の歴史的な位置付け、目的、市民や女性にとっての意義を明確にした上で、基本法制定や具体策の実施に取り組むべきだと考えます。この点について、総理の御所見をうかがいたい。

 更に、私は、ITに関連して具体的な施策を二つ提言します。

 第一は、女性のためのIT支援策です。特に、SOHO――スモールオフィス・ホームオフィス支援を柱として、女性の雇用創出、女性起業家支援を進めるべきです。このため、政府部内に「女性IT対策室」と担当スタッフを置くよう提案します。

 第二は、情報バリアフリー政策の推進です。高齢者、障害者のすべての人々が情報を発信し、情報にアクセスすることが保証され、その利便を享受できる社会をつくる必要があります。そのために、必要な法律改正などに取り組むべきです。以上の提言にどう応えるのか、総理の明快なる答弁を求めます。

 次に、社会保障の将来ビジョンについてお尋ねします。

 総理は、所信表明で「20世紀最後のこの国会を、21世紀の「日本新生」の礎を築く重要な国会にしたい」と主張されました。その意味で、社会保障制度の将来像を国民にわかりやすい形で今国会中に明らかにし、国民の将来不安を解消する国会にすべきだと思います。財源をどうするのかを含め、国民は具体的なビジョンの提示を求めています。「社会保障の有識者懇」の最終報告を踏まえ、いつ頃具体的なビジョンを出される予定か、総理の決意を伺います。

 今国会で再提出される「健康保険法改正案」など医療保険改革法案について伺います。

 本改正案について、所管大臣の津島厚生大臣は14日の閣議後の会見で、「国民が今求めているのは、安定した医療保険、社会保障制度の姿を見せてほしいということで、今回の法案はその要請に応えるものではない」と発言されています。医療保険改革の法案について、総理と厚生大臣には大きな認識の違いがあるように思われますが、厚生大臣の発言について総理のご見解を伺います。
 制度実施から半年を迎える「介護保険」について質問します。
 制度を支える現場の市町村では、介護サービスの基盤不足の問題をはじめ、痴呆性高齢者に対する要介護認定の問題、介護保険における家事援助サービスの課題など、様々な問題が浮き彫りになっています。政府はこれら課題を整理し、早急に対処すべきだと思いますが、いかがお考えですか。
 また、「痴呆性高齢者向けグループホーム」や「宅老所」などの地域に身近で家庭的なケアができる施設が利用者に大変好評だと聞きますが、利用者の自立支援のためにも、こういった施設への支援を大いに進めるべきと考えますが、総理の見解を伺います。

 本年11月に、オランダのハーグで気候変動枠組条約第6回締約国会議(COP6)が開催されます。

 2002年までに京都議定書を発効させるためには、シーリング問題、遵守制度、吸収源の範囲、途上国との調整等解決しなければならない問題が数多く残っています。とりわけ、技術移転問題などでは、わが国に先進国と途上国間の橋渡し役が期待されています。わが国としてどのように役割を果たしていこうとしておられるのか、総理の決意をお伺いします。

 また、議定書発効に向けた国内の条件整備について、環境庁長官のお考えをお聞かせ下さい。

 自立した市民社会を構築するために、NPOが十分に活動できる基礎をつくりあげなければなりません。そのためにもNPO支援のための税制を速やかに構築すべきであり、民主党もその案を公表しておりますが、政府として,NPO税制につき、どのような日程で今後取り組むつもりなのかお伺いします。

 次に、司法制度改革についてお尋ねします。
 民主党は、すでに「市民が主役の司法へ 新・民主主義確立の時代の司法改革」という司法制度改革案を発表していますが、その柱の一つは、司法への国民参加です。司法審も国民参加を制度化する方向で議論が進んでいるようです。
市民が陪審員として裁判に参加する制度である陪審制度の導入は、司法について公的な責任を果たし、司法が常に市民の話題となることで、解かりやすい裁判の実現や迅速な裁判の実現といった課題について、重要な役割を果たすものだと思います。司法の場が身近になることで、自らが主権者であるという自覚を促す効果も期待されます。

 検察審査会の実績も踏まえ、陪審制度の導入を積極的に検討すべきだと思いますが、総理はどのように思われますか。

 総理が学生時代に売春取締条例違反の検挙歴があると報じた月刊誌を相手取って、森総理は「事実無根」だとして訴訟を起こされています。これについて、裁判所は、「公益の利益に関わる事であり、記事に公益目的がなかったとは言えない」としたうえで、事実認定を行うため警視庁に対して「検挙歴照会」を決めました。

 しかし警視庁は、回答を拒否しています。回答拒否は司法制度を否定し、裁判所への協力を怠り、真否を明らかにするデータを隠蔽するものであります。新潟女児監禁事件や桶川ストーカー殺人事件等で明るみに出た警察の不祥事と同様、警察の情報隠蔽体質が問われる事態といわなければなりません。

 もちろん、買春は、それ自体許すことのできない犯罪です。総理もそれは十分ご存じのことと思いますのであえて、お尋ね致しません。

 むしろ、総理は、警察をめぐる不祥事が続発したことを受けて、警察法の改正に全力で取り組むと表明されているのですから、この際、ご自身の潔白の証明もかねて、まず自ら進んでご自身の検挙歴の有無について警察資料の開示を求めてはいかがでしょうか。そのことを通じて、警察改革のリーダーシップを国民の前にぜひとも見せていただきたい。総理のご決意をうかがいます。

 私たち民主党の目指す「ニュー・リベラル」は、多様な価値観、文化、生活様式に対して寛容であるということです。その対極にあるのは、政府が国民に向かって、上から道徳心や特定の価値観を押しつけたり、冷静な議論よりも力ずくで物事を決定するような偏狭な政治です。市民はこのような政治にはもううんざりしているのです。総理、いらぬおせっかいや党利党略に奔走するようなことをやめ、もっと国民を信頼し、その自立性を尊重しようではありませんか。そして、いざというときに、安心できるセーフティーネットをしっかり確立するためにこそ、政治のリーダーシップを発揮していただきたい。これを、もうまもなく迎える二十一世紀へ向けた願いとして申し上げ、私の質問を終わります。

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