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2000/09/26
首相の所信表明演説に対する代表質問(北澤議員)
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民主党・新緑風会 北澤 俊美

 私は、民主党・新緑風会を代表し、総理並びに関係閣僚にお尋ねいたします。

(災害)


 まず、質問に先立ち、伊豆諸島での火山活動や群発地震、ならびに先の東海地方を中心とする豪雨災害により、お亡くなりになった方、ならびにそのご遺族に対し心から哀悼の意を表します。今もなお不自由な生活を余儀なくされている皆様方に対し、心からお見舞いを申し上げます。
 伊豆諸島では、生活の糧である観光や農業・漁業等で大打撃を受け、住宅や公共施設にも多くの被害がでているにも関わらず、今日に至るまで激甚災害の指定が受けられていません。また、全島避難を余儀なくされている三宅島の方々は、現在、都営住宅や親戚・知人宅で慣れない生活のなか、いつ帰れるとも知れない日々を送っております。
 このような方々の不安な思いを少しでも解消するために、早急に同地域の激甚災害指定を行うとともに、住宅再建や就労の確保、インフラ整備など、被災地域の再生・活性化に全力をあげ、全島避難している三宅島の方々への的確な情報提供と生活物資、ならびに児童の就学態勢の確保に万全を期すべきであります。
我々民主党は先の通常国会で被災者支援制度のさらなる拡充を盛り込んだ「被災者生活再建支援法」と「災害弔慰金支給法」の改正案を提出しました。また、被災者の住宅再建支援についても現在、法案化を検討しているところであります。政府としてもこの際、災害支援制度の抜本改革を図るべきではないでしょうか。総理のお考えをぜひお聞かせ願いたいと思います。



(今国会の位置付け)


 具体的な質問に入ります前に、まず私の所感を申し上げたいと思います。景気対策のための補正予算、参議院の選挙制度改革などを声高に訴えておられますが、その実態はというと、所信表明演説でも「IT戦略」「日本型IT社会」など言葉が踊っていても、公共事業への切り込みは中途半端。選挙制度にしても、その発端は、「党費肩代わり問題」でこの七月の久世元金融再生委員長の更迭であります。そもそも、比例名簿の高い順位を獲得するために関係業界に名簿の提出を求め、それを党員とし、その党費を特定の業者に負担させるという自民党の構造上の問題であり、自らに責任があることを選挙制度の改革にすりかえているに過ぎません。本来、山積する重要課題を審議するはずのこの臨時国会が、次の参議院選を有利にしようとする与党の思惑で、あわてて選挙制度を変えようとする「党利党略のかけこみ国会」にしてしまったという暴挙に対し、強い怒りとともに断固阻止する決意を申し上げておきます。

森内閣は発足して、五ヶ月を経過いたしました。発足当初より、国民の低い支持率と与党内の求心力を欠いたままの奇妙な安定を保っているかのように報道されております。
しかし実態は、先の総選挙で大幅に議席を減らしたことの総括を先送りし、政権のカギを握る公明党の意向を伺いながら妥協を重ねる執行部に対し、党の主体性を主張することすら口を閉ざし、来年七月の参議院選挙の結果に対する責任を共有することを避ける思惑が広がっているからに他ならないのではないでしょうか。
そもそも森内閣は先の総選挙で、議席を大幅に減らし、国民の低い支持率の中で組閣されたのですが、その内閣が滞貨一掃などと揶揄される始末であります。私は山積する政治課題を一掃する意気込みかと誤解をしましたが、実は順番待ち解消の意味だと聞いて、こりゃひどいと思いながらも奇妙な納得をいたしました。
更に内閣の一員である大臣が、「森さんどうせ転がり込んだ総理の座なんだから、思い切ってやりなさいよ」と励ましたなどとテレビの政治番組で語っておられました。正にそのとおりかもしれませんが、不謹慎なことだと感じたのは私だけではないでしょう。これでは出来の悪いラガーマンが間違って監督かキャプテンに就任したようなものじゃないですか。
おまけに年末には内閣改造だと言われております。重要課題をこれから議論する相手が、今臨時国会が終了したらいなくなってしまう。議会は今、政治家対政治家の議論の場に変わり始めた矢先のことであります。まじめに議論する場を壊すような情報が乱れ飛ぶのは、政権にとって由々しいことであります。最後のとどめは森さんの後は誰それだなどという話が連立与党のパートナーや自民党内から飛び出している、しかも来年の参議院選挙後だ、などとまことしやかなことを言っているのであります。求心力が欠け、リーダーシップがないとは正にこういう状況をいうのではないでしょうか。森総理、私達は今国会でつかの間の議論をあなたや、あなたが選んだ大臣とするのでしょうか。ご見解をお聞かせください。
なお、国会の議論を活性化させるために導入された週一回の党首討論の実施は必ず果たすこと、さらには党首討論への出席をもって予算委員会への出席を減らすという国会対応は行うべきでなく、国会での与野党の議論を堂々と展開していただきたい。総理としての見解を伺いたい。

 次に、具体的な政策課題についてお伺いしますので、総理及び関係閣僚のご所見をお伺いしたいと思います。
まず先立ちまして、おことわり致しておきますが、いわゆる「あっせん利得罪」法案と今後提出が予想される参議院比例区選挙制度の変更すなわち、非拘束名簿式法案についてはいずれも議員立法でありますが、二法案とも政治の根幹に触れるものであり又、国民にとって感心の高い案件であります。提案者で無い旨を以て形式的答弁をなさることなく、我が国政治のトップとして、又自民党総裁という立場をもって真正面からお答えを願うものであります。



(あっせん利得罪)


まず最初にあっせん利得処罰法について伺います。我々は、与野党の議論を国民にわかりやすく展開し、また意図的な議論のすれ違いを忌避するためにも、与党案との違いを鮮明にして、より強化した法案を新たに対案として提出いたします。
以下に与党案の問題点を申し上げるとともに、野党案の考え方を申し上げます。
第一に、「請託の有無」の問題があります。
現行刑法の「あっせん収賄」は、「請託を受け」たことを犯罪の構成要件としており、現実には密室で行われるこの「請託」を立証することは事実上極めて困難であるため、結果としてほとんど適用されてきませんでした。そもそも地位利用収賄罪・斡旋利得処罰法案の議論はこのような現状を踏まえ、「請託」などの要件をはずし、より立件しやすいようにすることを第一としたものであります。今回与党があえてこの要件を残したことは、事実上、適用しづらい現行法の問題点を何ら改革しないものと断ぜざるを得ません。如何でしょうか。
新たに提出する野党案では、当然のこととして構成要件から「請託」をはずしております。総理、そして、かつて我々と法案を共同提案したにもかかわらずいまや志を曲げてしまった公明党から入閣している続総務庁長官に伺います。
次に、「犯罪の主体」の問題があります。
先に提出した野党案は、まず立法者である国会議員が自ら範を示し、次に対象を広げていくという「段階論」をとっていましたが、今回与党案はいっきに対象を広げる方針をとりました。それはそれで評価すべきでありますが、であるとするならば「秘書」をわざわざ「公設」に限ったのはなぜでしょうか。敢えて「抜け道」をつくったものという他はありません。
新たに提出する野党案では、処罰対象として、国会議員、政策秘書、公設秘書、首長、地方議員に加え、私設秘書も含むこととしております。
また、与党案は第三者供賄処罰を法律に明記せず国会答弁で「政治家本人らの支配が事実上及ぶ場合は本人と一体とみなす」との与党見解を示し、政党支部や政治資金管理団体、政治団体、公設秘書、私設秘書、三等親以内の親族などが見返りを得た場合も対象に含むことにするといわれております。しかし、司法の独立、また、罪刑法定主義に照らしても、国会答弁等の実効性には大きな懸念があります。きちんと明文化すべきことは当然であり、立法の大原則であると考え、野党案ではこれを明記致しております。
総理、及び続総務庁長官にこれらについての見解を伺います。
その他、与党案は、対象となる行為について「契約の締結、行政処分」に限定したり、いわゆる未遂罪を対象としていなかったり、「報酬」の範囲を「財産上の利益」に絞ったりと、できうる限り甘いものとしようとしている姿勢がありありと見て取れます。総理、並びに続長官、これらの国民の批判にどうお応えになるのでしょうか。



(参議院選挙制度)


 次に、参議院の選挙制度についてお伺いいたします。現在、与党で議論されている非拘束名簿式の比例制度は、先にも触れましたが、久世議員の更迭に端を発したわけで、自民党の構造上の問題であります。現行制度発足以来違反事件もなく自民党以外の政党には何等問題のない制度であります。また参議院の在り方については、参議院独自の改革の取組みを従来から積み重ねておりますが、その積み重ねをどうするのでしょうか。
 自らの党と特定の圧力団体や業者との不明朗な関係という構造上の欠点を改めることなく、強引に選挙制度の変更にすり替えることは、物事の本質から国民の目をそらす、目くらまし戦術そのものであります。与党の提案の背景にあるのは、事前に党員集めや党費納入をさせるより、選挙戦に入ってからの候補者や支持団体の選挙活動に期待したいという思惑が次の選挙において自分の政党名では国民の支持が得難いという恐怖から逃れんが為の悲しき方便だと指摘されています。これが数の力を背景とした党利党略以外の何でしょうか。総理の見解を伺います。
 参議院選挙制度に関する協議が本年二月にまとめた報告書は、この問題も含め、議員定数や選挙区の配分定数、比例代表選出議員の政党間移動、解散した政党の名簿の有効性などについても、精力的な検討を進めており、「当面は現行の比例代表制と選挙区制という制度の基本的な枠組みは維持することを前提とし…」ということで意見が一致し、選挙を目前に控えた時期での抜本改革を見送っております。こういった与野党間の合意がある中で、与党の一方的な制度改革は、与野党間の信義にもとるものであり、議長の権威まで冒涜するものです。国民の代表たる議員の身分に関わる重大な問題を、各派協議会の結論を飛び越えて決められた今回の選挙制度の変更は、各会派の信頼関係に基いて積み上げられてきた真摯な努力を、根底から覆すものです。
 また、動機が不純なこの法案を審議するための特別委員会の設置を強行するなど、誠実な審議に対する姿勢がまったく見られないのは、言語道断の暴挙であり、こんなことでは、理性的な委員会運営は到底期待できないことを指摘しておきたいと思います。まずは、自民党みずから久世前金融再生委員長の記者会見での釈明と党見解の食い違いを国民の前でただすべきであります。
総理は、総理である前に自民党の総裁でもあります。単に参議院の問題ではなく、自民党の両院議員を束ねるリーダーとして、自民党の金権体質と参議院の選挙制度の問題をどう見ておられるのか、お答えいただきたい。その上で、自らの身勝手な都合で選挙制度に安易に手をつけ、更にポスターなどを含む経費を税金でまかなおうとしております。このことは国民をまったく無視したものだと思いますが、森総理の見解をお聞かせ願いたい。



(景気対策)


 次に私は、最近のわが国経済の動向と政府・与党が現在検討中の景気対策について総理にお尋ねします。
先日発表された四−六月期のGDPは実質一・○%の伸びであり、残る3四半期が横ばいでも今年度の成長率は一・九%になる計算になります。しかし、その数字は公共投資の十三・六%増によって支えられたものであり、民間主導の景気回復の基調は見え始めているとはいえ、なお脆弱な基盤の上にあると言わざるを得ません。
他方、今日明確になっていることは、国債増発による従来型の公共事業の積み増しという政策手法は、その経済的波及効果は明らかに低下しており、むしろ低生産性分野を温存し、経済構造改革を先送りする最大の要因になっております。
政府・与党は、九十八年の小渕内閣発足以来、毎年、大型補正予算編成を当然のように打ち出してきました。補正予算は、言うまでもなく、当初予算編成時には予見できなかったような真に止むを得ない事態の変化に対応して編成されるべきものであります。与党の諸君は、補正をやめれば景気が落ち込むからといいます。しかしその本音は、まさに、補正予算がシーリングや査定を気にせずに与党が自由に選挙対策に使える財源であるということにあるのではないでしょうか。当初予算も成立しないうちから選挙目当てに大型補正の必要性を論じるなど、与党の諸君は補正予算を既得権と勘違いし、政権存続のために私物化しているのであります。私たちは、断じてこのようなことを許すわけにはまいりません。総理の見解を伺います。
総理は、当面の経済対策の主眼をIT関連分野等に据えるとしていますが、これまでと同じ事業の看板のかけ替えにすぎないものがほとんどではないでしょうか。もし、総理が本気で旧来型公共事業から構造改革に資するIT関連分野等への投資に転換するというのであれば、財源や事業内容等具体的にご答弁を願いたいのであります。また総理は公共事業のビッグバンを実施すると述べていますが、本当に森内閣で行うつもりですか。いつの予算編成より行うのですか。どのくらい公共事業を減額するのか明確にお答えください。
また、総理は、補正予算の編成に当たり、歳出・歳入の見直し、昨年度決算剰余金の活用などにより、国債の追加発行を極力抑制すると述べました。税収見積もりを上方修正して増収分を財源に充てることも検討しているようですが、このような粉飾決算まがいの財源捻出は到底認められません。決算剰余金については、財政法のルールに従い、少なくともその半分をこれまでの借金の返済に充てるべきであり、ルールを変えてこれまた補正財源に組み入れるなどというやり方は、特に今日の財政状況のもとで、国債追加発行の抑制などと胸を張れるような代物でないことは明白であります。私たちは、このような形での補正財源調達についても、断じて認めるものではないことを表明しておきます。
以上述べてまいりました景気対策・補正予算のそれぞれの問題点につきまして、総理及び大蔵大臣のご所見を求めます。



(外 交)


  総理は、「戦略的外交の積極的展開」と言われました。しかしながら、わが党の鳩山代表や岡田政調会長に対する答弁も含め、通り一遍の形式的な答弁に終始し、全力を尽くされるとおしゃるばかりで、具体的な戦略についての総理のお考えは全く明らかになっていません。私は、ロシアとの関係及び東アジアの平和と安定に向けての総理の具体的戦略についてお伺い致します。
まず、ロシアとの関係についてお伺いします。最近、ロシュコフ・ロシア外務次官が、北方領土問題に関わる一九五六年の日ソ共同宣言及び一九九三年の東京宣言について、日露両国間に解釈の違いがあると発言し、波紋を投げかけています。さらに、ロシア将校による自衛隊の機密情報の漏洩に関るスパイ疑惑は、日露間の友好促進に水をさし、国民の間に不信感を引き起こしています。私は、日本側の領土問題解決と平和条約締結への国民の強い願いがどれほどロシア側に伝わっているのか、疑わざるを得ません。
クラスノヤルスク合意も、年内達成は努力目標とおっしゃるばかりで、どうやって達成に向けて交渉努力をされるのか、今後の戦略ついてのお答えはありませんでした。今後の日露交渉をどのように進めていかれるのか、総理と外務大臣にそれぞれ対露交渉におけるご決意の程をお伺い致します。
次に、朝鮮半島を中心とした東アジアの安全保障についてのお考えをお伺いします。本年六月の南北首脳会談以降、国際的に緊張緩和に向けた様々な動きがあります。オリンピックでは、南北が同時に入場行進を行うなど大変印象的でした。一方、わが国にとっては、ミサイル開発疑惑や拉致疑惑などの懸案があり、また北朝鮮の軍事的脅威があることに変わりはありません。去る二十四日、二十五日の両日、金大中韓国大統領が訪日され、総理は首脳会談がされたわけですが、その席で、大統領から北朝鮮の経済復興に向けてわが国の経済協力が強く要請されたと伺います。
総理は、朝鮮半島の平和と安定に向けての日本の役割をどのようにお考えでしょうか。その中で、第十一回国交正常化交渉をどう位置づけ、どのような戦略で臨まれるのでしょうか。また、十月には、朱鎔基・中国首相が訪日されますが、総理は、朝鮮半島情勢について中国とは、どのような協議をされるおつもりか、お聞かせ下さい。さらに、米国との緊密な連携を総理も表明されましたが、米朝協議の行方、さらに在韓米軍のあり方は、わが国の米軍基地の規模など東アジア全体の安全保障の根幹に関ります。米国とは、具体的にどのように連携をされていくのか。総理の戦略をお伺い致します。



(警察情報の公開)


 度重なる不祥事を受けて、警察もようやく情報公開に、重い腰をあげつつあるようですが、遅ればせながら警察庁は、都道府県の情報公開条例に際して、情報公開条例の実施機関となるよう指示しております。が、この間、公開しても問題のないような情報が、犯罪捜査情報の秘密や個人のプライバシーの保護といった名目によって聖域化し、結果として、その過剰な保護が様々な警察内部の隠蔽体質を助長し、その間、数多くの警察官による犯罪や不正行為の温床となったのではないかと思われることです。通達には、「行政の透明性の確保や説明責任の遂行」とあり、いわば当たり前のことであります。国家公安委員長の警察改革に臨む決意のほどを伺いたい。
更に今、宮城県では知事と県警が対立しており、知事を説得できない県警側が公安委員や県議会に働きかけていると報道されておりますが、このことについても見解を伺います。
 従来から、行政情報公開の推進を主張していたわが党は、一連の警察不祥事を受けた去る四月に、「警察情報といえども、捜査情報、プライバシーや企業秘密などに関すること以外は原則公開すべき」であって、「全ての都道府県が条例改正により警察情報を公開対象とするよう要請」しております。
 総理。警察情報の公開については、所信演説の中でも、「国民の警察に対する信頼を回復するため、…警察の刷新改革に全力を挙げて取組む」とされていることも含め、この問題について、どのような見解をお持ちか、ご所見をお伺いしたい。
 


(所信表明所感)


最後に所信表明演説をお聞きして感じたことを申し上げつつ、二、三の質問を致します。
演説はなかなか良く読めたのではないでしょうか。声量も良く、抑揚もきき、聞きやすかった様に思います。しかし中味については、今国会を二十世紀最後の国会と位置づけながら、二十世紀への総括もなく、また次なる二十一世紀に対する社会像、国家像を提示されませんでした。聞き終わって、とっさに感じたのは“巧言令色鮮仁”でありました。総理をストレートにそのように申し上げるつもりはありませんが、あくまでも印象であります。
IT革命を連発され、教育の変化を述べ、少子高齢化対策、経済構造改革等々にふれ、公共事業ビックバンまで飛び出して、あれもこれもに言葉たくみに言及されましたが、その後に来るものが我々には見えませんでした。結局お言葉に従えば全力を尽くして、“重いボール”を何処かへ持って行くと結ばれておりますが、良く判りません。
さて、総理のIT革命論でありますが、「日本型IT社会」を目指すと言っておられるが総理はいったいどんな国づくりを考えているのか全く理解が出来ません。すなわち総理の述べられたのは単なる手段であって、目指すべき社会ビジョンが全く描かれていないのであります。又学校教育の情報化は早くから呼ばれながら政府の動きが一向に見えないのは何故でしょうか。
更に沖縄サミットであれだけ話題になった、“デジタル・デバイド”への対応が全く触れられていないのでありますが、お忘れになった訳ではないでしょう。お答えいただきたいと思います。
次に教育改革について強調されておられますが、三十人学級については実施される決意がおありでしょうかうかがいます。
また百四十七国会における参院文教科学委員会が、民主党本岡議員他二名提出によるいわゆる三十人学級推進の法案をベースにして、全会一致で教育改革推進に関する決議をされたことを承知されておられるのでしょうか、総理に伺います。
最後に教育基本法の見直しについてはどの様なお考えを持っておられるのかお伺い致します。更に「教育改革国民会議」の中間報告が為されましたが、これに先立って中曽根前文部大臣があらかじめ総理の意を体して、報告内容に介入したと報じられておりましたが、もし事実であれば国民会議の任務をゆがめるものでありますが、その様な事があったのかお答え願い、私の質問を終わります。
 ご答弁によりましては、再度質問に立たせていただきますのでよろしくお願い致します。





(再質問)


(参議院の在り方)


 先の参議院の選挙制度に関して質問いたしましたが、本来、参議院の選挙制度の改革は、二院制における参議院の役割をどうしていくかという極めて、その存在価値そのものにかかわる問題です。最後に、その参議院の存在意義を考えるため、重要な課題である決算審議の在り方を例にとって、私見を申し上げ、森総理の御所見を再度お聞きしたいと思います。
 申し上げるまでもなく、参議院は、昭和四十六年に河野議長が誕生して以来、歴代議長の下で参議院改革が進められて参りました。
 このニ十九年間にわたる足跡について改めてここで述べようとは思いませんが、参議院がニ院制度の下で衆議院に対して抑制、均衡、補完の機能を遺憾なく発揮して参りますために、数々の工夫が重ねられ、それは調査会の設置や事項別委員会構成、押しボタン式投票の導入など、具体的に成果をあげた例も数多くございます。
しかしながら、国民の視点から見て、今もって参議院の存在意義が十分に評価されているとは言い難く、一層の改革努力が求められていることは議員各位もご承知の通りであります。
これを単に選挙制度の変更にすり替えてしまった愚については、先に申し上げましたので、繰り返しませんが、このような改革の努力を踏まえ、斉藤議長におかれても、昨年の四月に、私的諮問機関として「参議院の将来像を考える有識者懇談会」を設置されるなど精力的な取り組みを重ねてこられましたが、この懇談会が今年の四月に議長宛に出された「参議院の将来像に関する意見書」では、「参議院は予算審議の在り方を再検討し、審議の重点を決算審査に振り向けるようにしてはどうか」という提言を行っております。
この決算審査の在り方につきましては、参議院改革協議会が、昭和五十七年ニ月二十四日の報告書において、審査日程の確保、総括質疑及び警告決議に関する三項目の改善事項を答申したという経過がございます。
 決算審査の充実につきましては、この後も、斎藤議長の下で設置された「参議院制度検討会」が平成八年に行った答申において、決算審査充実の前提となる決算の早期提出及び早期提出を確実なものとするための財政法等の改正を具体的に提起しています。
 そして、この実現に向けて、当時の下稲葉議院運営委員長は、平成九年三月十九日に梶山官房長官に要請を行って参りました。
 このように、参議院が決算審査の充実に力を注いで参りましたのは、衆参両院の機能分担を鮮明にし、そのことによって参議院の存在意義を高め、国民の期待に応えるためであります。
 かような視点に立って私は、決算報告書の審査、及び予算執行に関する評価を次々年度の予算編成に反映させることができるようなシステムを確立することが必要であると存じますが、総理としてこれに応える意思をお持ちかどうか、そして与党第一党を率いる総裁として決算審査の充実を期するための国会運営の改善に積極的に協力する意思をお持ちかどうか、決意の程をお聞かせ願いたいと存じます。 
 なお申し上げておきますが、この考え方は、先の「有識者懇談会」の考え方とも軌を一にしているばかりでなく、公明党・国民会議が平成四年年十一月に行った提言の趣旨とも一致することを申し添えておきたいと存じます。
 また、この際申し上げておきたいことは、先の第百四十七回国会において、決算の概要報告が行われた本会議への総理のご出席がなかったことであります。
 これは、日韓首脳会談が同日行われたという特殊事情があり、それはそれで理解できるところではありますが、一方、本院は、昭和四十五年四月二十五日の議院運営委員会理事会において「決算審議の本会議には、原則として総理と大蔵大臣の出席を求める」旨の決定があり、決算審議を重視する参議院のよき伝統でありますから、今後におかれては、これを遵守されるよう、改めて確認して私の質問を終わります。

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