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2000/05/10
第6回党首討論
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〔本岡昭次君会長席に着く〕

○会長(本岡昭次君) ただいまから国家基本政策委員会合同審査会を開会いたします。

 本日は私が会長を務めますので、よろしくお願いをいたします。(拍手)

 議事に先立ち、御報告いたします。

 先ほどの両院合同幹事会におきまして、本日の合同審査会に際しまして時間表示装置を使用することといたしました。表示装置は発言者の持ち時間を表示し、ゼロになったときは赤色のランプが点灯しますので、御承知願いたいと思います。また、各発言者の最終発言は残り時間を考慮して行い、討議が割り当て時間内に終了するよう御協力をお願いいたします。

 それでは、国家の基本政策に関する調査を議題とし、討議を行います。鳩山由紀夫君。(拍手)


○鳩山由紀夫君 総理に質問いたします。

 まず、いよいよ総選挙も間近に迫ったという思いでございまして、そうなりますと前回の総選挙のときと比べてこの自民党を中心とする政権が三年半の間にどのような業績を残されたかということが国民にとって最も大きな関心事ではないかというふうに思います。

 そこで、さまざまなデータに基づいて業績の評価をいたしたいというふうに思っております。

 きょう、このパネルに示しております、これは四つの項目でございますが、GDP、これが三年半の間に九・二兆円、これは名目でありますが、経済は縮小しているという現実がございます。(図表掲示)

 一方で長期債務、いわゆる国と地方の借金でありますが、これも百九十六兆円、大変な借金がふえている、三年半の間に極めて大きくふえたという現実がございます。

 一方で、失業者は御承知のとおり、ここをごらんになっていただくとおわかりのように、二百二十六万人から三百四十九万人、百二十三万人、五四・四%もふえておりますし、また残念なことに自殺をされた方が二万三千人から三万三千人近く、ほぼ一万人近くふえてしまっているという現実がございます。

 まず、この四つのデータだけをお示しをいたしますが、これで失政と言わずして何と呼ぶんでしょうか。


○内閣総理大臣(森喜朗君) ちょうど日本の経済も長い間順調に歩んできて、そしていわゆるバブルという事態になり、そのバブルがはじく、はじかれるという事態、そういう状況の中で国際経済全体も低迷化していく、特に日本の周辺でありますアジアの経済が非常に悪化していく、そうしたことが相次いで交錯をしてきた。さらには、御承知のように二年前金融破綻ということになる。そういう極めて悪い状況に落ち込んできたということに対してこうした数字が出てきたことは、これも私たちはやむを得ないことだと思います。

 そこで、そのことをどうやって解消していくか、解決をしていくかということでこの二年間、我々としても最大の苦心を、当時小渕内閣がスタートして、そしてどうやら自力で回復できる傾向のところにまで何とか努力をしてきたということではないでしょうか。


○鳩山由紀夫君 やむを得ないどころではないと思っておりまして、そもそもバブルというものを起こしてしまったことも大きな政治、行政の責任でありますし、そのバブルというものを静めていくために起こした政策も明らかに間違えてしまった。そのツケが金融破綻ということになっていったわけでありまして、これは政治のミス以外の何物でもないわけであります。

 それを人ごとのようにおっしゃるのはやはりおかしな話だと私は思っておりまして、決してしようがない話ではありません。やりようによっては十分にこの三年半の間に経済を浮揚させることができたはず、それを怠ったという失政は極めて重いと私は思います。

 お尋ねを申し上げたいんですが、この二行をごらんになっていただいて、百九十六兆円も借金をふやして実際に経済は伸びなかったと。この百九十六兆円は、総理、どこへ行ったんですか。


○内閣総理大臣(森喜朗君) 財政状況がこういう形の中で悪化してきた。百九十六兆円という長期債務というものも増加をしたということは、やはりこれは当然日本経済ということが大変な状況、つまりデフレスパイラルという危機から何とかして脱却をしたいということであったと思います。

 したがって、もしそうでなければ、ではどういう資金をどう使ってどう景気を浮揚できるのかということになるんだろうと思います。そういうまさに命運をかけてあらゆる手段を投入したその結果、まさに剣が峰にぐっとこらえて、そして何とか日本の経済を再起したいということであったと思います。そういう意味で、この財政出動はいろいろと御批判はあろうかと思いますが、やはり措置として、私は当時からここに至るまでの経済状況から見ていけば適切な措置であったと私どもは考えます。

 事実、橋本内閣のときにも民主党さんもこの財政構造改革を批判されたはずであって、そしてあのとき、財政再建を棚上げしてでも景気浮揚策をやるべきだということを当時強く主張しておられたと思います。そういう中で、私どもとしてどうやってこの景気回復をやるのかということを当時橋本内閣からそして小渕内閣へと大変な苦労をしてここまで来たというふうに考えます。


○鳩山由紀夫君 橋本内閣のときでありますからお間違えにならないようにいただきたいんですが、橋本内閣のときに確かに財政構造改革に対して、それは私どもも凍結に賛成をした時期があります。

 しかし、そのときに私どもが申し上げたのは、決して財政再建を放棄するという話ではないんです。規制改革などを初めとする構造改革は十分に行わなければいけなかった。それを全くおやりにならずに、いわゆるオールドエコノミーというゼネコン、銀行、規制に守られているそういう業界ばかり相手にして経済、財政の出動を行った。弱い経済をつくってしまったということが大変に大きな私は失政だと思っているんです。

 財政構造改革はあわせてできるんです。凍結をしながらも、プログラムは私どもは示せということはしっかりと申し上げていたんですが、財政再建のシナリオというものはいまだに、今でも皆様方は、与党側からは何にもメッセージが出てこない。それが余りにもひどい失政ではないかというふうに申し上げている。

 私は、オールドエコノミーからいわゆる情報関連、あるいは介護の産業もいいかもしれません、そういったニューエコノミーに対して早くかじを切りかえなければいけなかった。いまだに十分ではない。もう数年前からこの方向に、ニューエコノミーにかじを切るべきではなかったのか。それを切らずに構造改革をおくらせてきた結果がこのような大変悲惨な結果になったんではないかということを申し上げているのです。

 改めてお聞きしたい。


○内閣総理大臣(森喜朗君) ちょうど、日本の経済も産業も国際社会の中でやはり戦っていかなきゃならぬ、そういう事態の中でかなり思い切ったリストラも進んでいったと思います。

 構造改革が進んでいないということからいえば、我が国は資本主義社会、自由主義社会でありますから、企業が当然その対応に一生懸命に取り組んだわけですね。ですから、金融機関もそうでありますし、いわゆる日本の産業の中心であった自動車産業もそうですし、電機産業も、ありとあらゆる不採算部門は切って捨てて、そして我々から見ればかなり深刻な、例えば企業城下町のようなところの企業、工場もすべてこれを閉鎖するというような事態までも、踏み切ってまでも企業はそうした構造改善に取り組んだと思います。その結果、ここにも出ておりますような大変ないわゆる失業者がふえてきたということもこのことの現象から来るものだろうと思う。

 そういう一方では、改革を進めていく企業の中にあって、やはり企業、経済全体を下支えしていかなきゃならないし、それから即効性あるものをやっぱり育てていかなきゃならぬ。

 それから、これは同じ日本列島の中を見ましても、東京や大阪と鳩山さんのいらっしゃる北海道とは全く違うわけですね。だから、そういう北海道のためには非常に即効性のある経済の下支えをするということになればやっぱり公共事業をやっていかざるを得ないわけでありますし、それから、今金融機関のこともおっしゃいましたけれども、やはり金融機関も、大変残念なことでございましたが、北拓という都市銀行の一角が崩れる。そういうふうに、地方というものと中央との差というものはやっぱりあると思うんですね。

 そういう意味からいえば、全般的な経済をやはり何としても回復基調に乗せるということのためには、今御指摘あって、御批判あったかもしれませんが、やはり従来のいわゆる経済というものをしっかり立て直してあげる、支えてあげるというそのことがまず必要だったんじゃないかと思います。

 当時、小渕前総理は二兎を追うものは一兎をも得ずとおっしゃったけれども、決して違う方向にいるウサギを捕まえようということではなくて、まず一兎を捕まえて、そのことを捕まえなければ次のウサギにやはり取りかかっていけないじゃないかという意味のことを前総理はおっしゃっておられたと思います。

 私も、この景気回復が本当に自力回復をして、間違いなく公需が民需へと切りかえていくこと、そのことをしっかり確かめていくまでは、やはり今の日本の経済をしっかり立て直すまではしっかりとこの方向を支えていくということが大事だと私どもは考えています。


○鳩山由紀夫君 かなり認識が違うなというふうに思います。

 総理が、あるいは今、与党がなさっておられる景気の刺激というのは、今、総理が大胆にいろんなことをなさっておられるというふうにおっしゃっているけれども、私どもにはそうは見えない。まだ旧態依然とした産業群に対して、皆様方の例えば選挙のためという思いもあるんでしょう、そういうところにばかり景気の刺激をしている。

 確かに地方と国というものは、中央と地方は違うと思います。しかし、そうであっても、地方も今自立をしようとしてさまざまな新しいIT産業などを起こそうとしている努力があるんです。そういう方向にもっとかじを切らなければいけない。新社会資本整備の方に私どもは大いにある意味での公共投資をするべきだというふうに思っています。そうすることによって、財政出動をそれほどしなくとも経済というものが自立していくようなそういう状況をつくり出していかなければならない。今のはそうではなくて、財政出動をやめてしまうとあっという間にまた大きな不況というものの風にさらされてしまうような状況になってしまう。

 だから、弱い経済を幾ら成長させようとしてもだめなんだと。強い経済をいかに鍛え上げていくか、育て上げていくか、その方向に国民を、ある意味で職業訓練などを含めて変えていくという努力こそ今行わなければならなかったんじゃないでしょうか。それに対して相当おくれたということがこの現実になっているということを申し上げたいんです。

 そこで、いま一つ申し上げれば、総理は、少なくともこの自民党の「わが党の公約」、これはお読みになったかとは思いますが、ここには、「将来への負担を軽減するため財政構造改革を推進します」、「我が国の財政は最悪の状態です」というふうにもう三年半前にお話をされている。お話をされているにもかかわらず、結果として百九十六兆円というツケをさらにふやすということになってしまった。これは明らかに公約違反ですよね。これは正しいですね。


○内閣総理大臣(森喜朗君) 構造改革、財政構造の改革というのは、これはやはり常に政府として、また政治家として考えておかなきゃならぬことだと思います。ですから、日本の財政の状況を見て少しでも財政を健全化していくということは、当時の政権としてあるいは政府としては当然主張していくべきだろうと思うし、党としてもその公約を掲げることは当然なことだと思うんです。

 ただ、先ほど冒頭に申し上げましたように、ちょうど二年前からいろんな経済情勢というものが一種の交錯状況になって、そして結局金融破綻というところにまで来る。したがって、そういう状況の中でやっぱり健全な健康体にしていくということもまず考えなきゃならない。

 だから、この十二年度予算では、御指摘のようにミレニアムプロジェクトという新しい産業というものにも十分配慮をいたしましたし、公共事業につきましても、いわゆる物流の効率化、環境あるいは少子高齢化、情報通信というようなところに、集中的にこの四分野を重点化したというのも十二年度の予算でございますし、新しいものへの対応もきちんとする。しかし、日本の経済を一挙に全部新しいものに切りかえるというわけには、そうすればやっぱり切って捨てなきゃならぬという業界が出てくることになるわけでしょう。だから、やはり自然な形でその流れに少しずつ傾斜をしていく、少しずつ改革をしていくということも手法としては大事なことなんじゃないでしょうか。すべてに、IT産業だけ全部やれというわけにはなかなかいかないと思いますね。

 現に、今ミスマッチのことをおっしゃいましたけれども、IT産業に関するような企業の雇用が出てきても現実にはなかなかそれに対応でき得る技術者がいないという、そういうミスマッチもあるわけでございますから、一挙にそこまでは切りかえるということは難しい。徐々に徐々に、そのためにはやはり日本の経済というものの下支えだけはしっかりやって、まずは健康体にしておくということが大事なんじゃないでしょうか。


○鳩山由紀夫君 ミスマッチを起こしてしまったのはやはり政治の姿勢なんです。

 できればというよりも、当然、何か古い構造を改革して新しい産業に人間を移していくということであれば、その前に、おっしゃるとおり新しい産業をしっかりと起こしていかなきゃならないし、それがITを初めとする情報技術革命であるということがまず、バイオもそうですが、そういう新しい産業がどんどん起きてきているときに、それに対する職業訓練などをもっとしっかりと起こしていくべきだった。それを怠ったというのはやっぱり大きなミスであるということはお認めにならなければおかしいんです。

 そこで、こればかり長く話しているといけませんが、もう一つだけ申し上げたいのは、総理は、総理に就任されて最初は財政再建路線に転ずるような発言をされたように私どもは期待をしてお聞きしておりましたが、その後、自公路線、いろんな圧力によってこの財政再建路線が見えなくなってきていますが、例えば公共事業の予備費を取り崩すとかいうような議論も起きているようでありますが、あるいは補正予算などというような話ももう既に出てきておるようですが、こういうことに対しては、財政出動というものはしないんだ、景気は大分回復してきたから大丈夫なんだ、そんなふうにお思いですか。


○内閣総理大臣(森喜朗君) 私は、財政構造改革というのは、これは常に頭に置かなければならないことだというアとは申し上げてきております。

 そして、所信表明で、みんなでいろんな痛みを耐えなければならないというのは、財政構造のことだけ申し上げたわけじゃありません。すべての改革について、あるいは規制緩和等、そういうことに対して思い切った改革をしていかなきゃならないだろう、お互いにその痛みを分かち合わなければならぬということは申し上げたと思います。

 しかし、私はいろんな機会に、構造改善、いわゆる財政の構造健全化の方向に走るのかということについては、今回、私は各主要国を回りましたときもそういう御質問が出ましたけれども、私はあくまでも、先ほど申し上げましたように、日本の国が本当に自律的な回復ができた、そして本当に民需がたくましい動きを見せたということが顕著にあらわれるまでは、今の経済、財政のこの方針は変えるべきではない、私はそういう考えを持っておりますし、それから、小渕前総理から受けた内閣というのは、私はこの考え方を継承してまいりますということも申し上げておるわけでございます。


○鳩山由紀夫君 これは平行線でどうしようもありませんが、一つだけ私から申し上げるのは、自律的回復を待ってからということになればいつまでたっても、今の自民党の政治では経済は自律的回復をしないんです。弱い経済ばっかり幾らいじっていてもだめなんだということを申し上げておきたい。強い経済というものをいかに行うか、それは痛みを伴いますよ。規制改革などを相当強引に行わなければいけないので痛みを伴う。痛みを伴うものをいつまでも先送りばっかりしているからこういう状態になっているんだということを申し上げたい。

 そこで、この結果として社会のモラルも、経済のモラルだけでなくておかしくなってきてしまっているということを申し上げなければなりません。

 凶悪犯罪がこの三年半の間にどのぐらいふえたのか、おわかりかと思いますが、三割も凶悪犯罪がふえています。自殺する方がここに書いてありますように四割ふえていますし、また失業者はこの三年半の間に五割もふえている。凶悪犯罪、自殺、そして失業、このクリーンアップで三割、四割、五割ですよ。三年半の間にこれだけふやして、これで平然としていられるわけがないじゃありませんか。なぜこういう状況に陥ったのか、これは単なる経済の話だけではないと思いますので、特に教育に御熱心な森総理にお尋ねをしたい。


○内閣総理大臣(森喜朗君) 凶悪犯と自殺者というのをちょっとリンクされてお話しされると、なかなか答弁申し上げるのは難しいんですけれども、自殺者が出られたということは本当に痛ましいことでありまして、我々にとっても残念なことだと思います。

 しかし、逆に言えば、鳩山議員が今おっしゃいましたように弱い者にばかり目をかけているということになれば、経済も、もうこれ以上前に続かないような経済だからといって切り捨てればますます自殺者が出てくるんじゃないですか。私は、そういう面が自律回復、自律で動けるようにできるだけのやっぱり手厚い手当てをしていくということも政治にとっては大事なことじゃないかと思うんです。

 確かに、産業というものは大きく変わってきますから、時代の環境とともに変わる、時代の趨勢によって大きく変わります。私たちの子供のころに栄えていた御商売は、今、御商売として成り立たないものもたくさんあります。それは北海道でもそうだと思う、私の石川県でもやはりそうだと思います。しかし、皆さんが少しでも新しいものに自然な形で転化していけるような、そういう指導や助成政策というものも大事だと思うんです。

 自由民主党に対して、何か古いところにばかり目を向けている、こうおっしゃいますけれども、自由民主党は、多くの皆さんができるだけ自助、独立がしていけるように、弱い者であっても、時代からだんだん離されていくような者であっても、できる限り手厚く手当てをして、そして皆さんが自律的に新しい分野に転化できていくようにしていくことが自民党の政策として誇り得るものだと、私はそう思っているんです。


○鳩山由紀夫君 総理、政権与党の方から、特に経企庁長官から、桜の花が咲くころには景気がよくなるというふうに何回伺ったか。もう二度も三度も桜が散っても景気がよくなっていかない。これは今、総理が理想的な話をされました、確かに。自律回復を待つ、それはいいことだと思うんです。私どもがむしろ政策として掲げているのが、自律をさせていくため、地域もそう、産業もそう、人間自身もそう、自律をさせていくためにどういう政策を国が行うかということが大事なんです。そうではなくて、自律をする必要がないからというような政策を今まで特に政権与党側が行ってきたようにどうしても感じるものだから、だから幾ら桜が散っても景気がよくならない、弱い経済ばかりいじくってしまっているんだというふうに申し上げているんです。

 私は、あえてここでこの経済のモラルの破]から社会のモラルの破綻にお話を変えさせていただきますが、同じ現象が私は起きているというふうに思っているんです。

 総理に伺いたいのは、今回、特にゴールデンウイーク中に起きた二つの悲惨な事件がございました。一つは、愛知県豊川市で起きました十七歳の少年が主婦をめった刺しにして殺してしまったという事件がございました。もう一つが、これは西日本鉄道のバスのハイジャック事件、これも御婦人が亡くなられるという大変痛ましい事件でございます。同じ十七歳が犯人でございます。私どもは、この亡くなられた方に心からお悼みを申し上げたいと思うし、御家族の皆様方を思うと本当にやるせない思いで、沈痛な思いでございます。

 私は、根源的にこういう問題は解決しなければいけない、先ほど森総理に期待を申し上げて、教育改革ということを盛んに主張されておられますから、教育の部分が相当大事ではないかというふうに思ってあえて申し上げているのでありますが、大人の責任があるというふうに、大人に責任があるということを総理はどこかでお話をされた。

 私は、高校生だったと思いますが、高校生のいろんな世論調査で、大人がだらしないから、だから私たちはいじめとか暴力というものを振るうんだというようなことがデータとして載っていました。

 そのことに関して、では、総理はどういう大人の責任だというふうに思っておられますか。


○内閣総理大臣(森喜朗君) 少年犯罪というのは、基本的にはまずは本人自身の問題であって、そしてやはり規範というのが薄れているということだろうと思うんです。やっていいこと悪いことというものの意識が薄れているということだと思うし、もう一つは青少年問題のやはり環境、これは社会、家庭、学校というのがあるんだろうと思いますが、そういうところで本来教えておくべきことを教えていなかったという面もあるので、そういう反省はやっぱりしなければならぬだろうと思います。

 そういう意味で、子供たちが子供の時代から、あるいは家庭にあるときから、学校にあるときから、教育というのは、私は今、教育改革国民会議の皆さんにもお願いしておるのは、制度を変えることも大事かもしれないけれども、優秀な科学者ができていくことも大事かもしれないが、まず人間としての基本である全人教育というものにウエートを置く、そういう教育の仕組みというものをぜひ私は考えてほしいということを申し上げているんです。

 そのためには、やはり果断に取り組んでいかなきゃならぬテーマが多いと思うし、あるいは教育基本法にしても、私は教育勅語のことを言ったらまたきょうは新聞に批判されましたけれども、何も教育勅語を私は戻せと言っているわけじゃないし、ああいう超国家的なことを私は何も賛成しているんじゃないけれども、その中にあるような大事な事柄がいろいろある、そういうことは時代を超えても普遍的な私は哲学だろうと思う。

 そういうようなことをもう一遍しっかりと子供たちが子供のころから教わっていけるような、そういう教育改革というもののあり方をぜひやってほしいなということを希望しているわけでございます。

 これは、単に政治論議ではなくて、またどの政党がどうだということではなくて、お互いに日本じゅうの政治家がみんな心して、また日本じゅうの大人が心してこのことにみんなで深刻に取り組んでいく大事なときが来ているというふうに私は考えております。


○鳩山由紀夫君 全人格教育というのは私も大事だと思います。

 そこで、お尋ねしたいんですが、先ほどの世論調査によりますと、今の社会は強い者が弱い者を抑えつける仕組みになっているから、だからいじめや校内暴力はなくならないんだというふうに七割の方が答えておられるという現実があります。大変に私はショックだったんです。

 この今の社会というのは、むしろ権力を持っておられる方が権力というものを振りかざして何が何でも自分たちのためにといって相当剛腕に行うというこの社会のモラル、特に政治のモラルが今一番退廃しているんじゃないかというふうに思っていまして、政治が身を正すということが最も大事なことではないかというふうに思うんです。

 政治家の言動というのは常に見られています。特に総理の言動などは一番よく見られているわけでありますから、そういう総理が例えばこの本を出されて、その本の中に、入社試験で白紙の答案を出して、みずからの言葉でおっしゃっているわけですが、まるで恫喝のようにして入社したというようなことが書かれていますね。

 こういうことを私は書かれる感性というものがわからない。子供たちが夢を持って生きようとしていくときに、いやこれは恫喝で入社すればいいんだとか、コネで入社すればいいんだとか、お金を配ればいいんだみたいな話を堂々と本の中に書かれる感性というものが子供に対して決していい影響を与えないと思っていまして、そういう方が本当に教育改革を語る資格がおあ閧ネのかということを私は申し上げたいと思っておりまして、ぜひその思いで仕事をしっかりとなさっていただかなければならないと思います。


○内閣総理大臣(森喜朗君) 私は、あの本を書きましたのは、三十年自分が国会議員の生活をやってきていろんな人からいろんなことを教わった、そういう教わったことの教訓を私はずっとまとめてきたものでありまして、あのことは何も恫喝をしたということではなくて、やはり入社試験というものをペーパーテストだけでやるということは間違っているんではないかなと、あらゆる角度から人間性を認めてほしいということを私は絶えず言っているんです。文部大臣のときからも言っているんです。だから、みずから私はこのことを自分でこういうふうにしてペーパーテストではなくて人間性を認めてほしいということを主張したということを、私はそのことを記したかったからああいうふうな書き方をしたわけでありまして、ぜひそこは理解をしていただいて、あなたも私も一緒にやってきた友愛精神そのものだと私は思っているんです。


○会長(本岡昭次君) 以上で鳩山由紀夫君の発言は終了いたしました。

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