第3号 平成12年3月22日午後三時開議
〔小里貞利君会長席に着く〕
○会長(小里貞利君)
これより国家基本政策委員会合同審査会を開きます。
本日は、私が会長を務めますので、よろしくお願い申し上げます。
国家の基本政策に関する件について調査を進めます。
これより討議を行います。
発言の申し出がありますので、順次これを許します。鳩山由紀夫君。
○鳩山由紀夫君
きのう、参議院の国民福祉委員会で、年金法案がかなり強引に自自公によって通過をいたしました。そして、きょう、参議院本会議で可決をされたと伺っております。
まず最初に、総理にお伺いをしたいんですが、大変国民にとって年金というのは重要な議論でございます。どのぐらい総理がこの委員会に御出席をされたのか、伺いたい。
○内閣総理大臣(小渕恵三君)
年金委員会に出席の回数ですか。(鳩山由紀夫君「はい」と呼ぶ)私は、国会のお呼びかけによりまして、出席する委員会にはすべて出席をいたしておるつもりでございます。
○鳩山由紀夫君
私の伺うところによりますと、今回の年金の議論に、一度も総理は委員会には出席をされなかったというふうに伺っております。
国民にとってこの議論は大変に重要な議論だという意味で私は申し上げているのでございます。一千万円、夫婦で一生を通じると手取りが減ってしまう、こういう法案です。一度も総理が委員会で説明をされなかった、審議に加わらなかったということは、総理の説明責任を果たしていらっしゃらないんじゃないか、そのことを申し上げたいと思っています。いかがでしょうか。
○内閣総理大臣(小渕恵三君)
年金法につきましては、まことに国民生活にとって重要でありますと同時に、これから長きにわたって、年金の受給者あるいは負担者、こうした方々に対して今までよりの条件が変化するわけでありますから、その重要性については私自身も十分承知をいたしております。
と同時に、衆議院におきましては、既に前国会におきまして十分御議論をされ、参議院に送付されておる問題でございます。したがいまして、私は、国会におきまして、委員会に求められれば当然出ますが、その内容につきましては、当然、この内閣といたしましては丹羽厚生大臣を初めとして、財政の責任者でございます大蔵大臣初め関係の大臣はすべからく出席をして、十分政府の立場はお答えをいたしておると思っておりますので、それを信頼いたしておるということでございます。
○鳩山由紀夫君
この国会において最も重要な法案だと私は思います。その法案に、それこそそれはさまざまな大臣がおられることはわかっておりますが、総理が野党側の再三の要求にも与党の論理で応じられなかったというのは極めて寂しいことです、これは。
あえてその関連で申し上げたいんですが、党首討論、何で先週行われなかったのか。国民はみんな不審に思っていますよ。これは、警察の不祥事で総理が運が悪かったとお話をされた、その運が悪かった発言の後遺症で先週お出にならなかったんじゃないか、逃げたんではないかと国民は思っておりますよ。いかがですか。
○内閣総理大臣(小渕恵三君)
たしか、民主党も加わって、この委員会の運営につきましては決定しておるんだろうと思います。したがって、そのルールに基づいて私は出席をいたしておるわけでございまして、何も私自身が逃げておるというようなことは絶対ありません。お呼びかけがありますれば、必ず出席をして私の考え方を申し上げておるつもりでございます。
○鳩山由紀夫君
今、大変総理はありがたいことをおっしゃっていただいたと思います。今、与野党で、この党首討論のあり方の見直しも含めて議論されようとしています。総理がみずから進んでお出になりたいというふうにおっしゃっていただいたことは大変にうれしいことでありまして、私どももこれは毎週一回必ず党首討論は行いたいと思っていますし、国民も心待ちにしてくれるようになろうかと思いますので、どうぞここで、私は毎週やりたいという意思をもう一度表示をしていただければ大変ありがたいと思います。
○内閣総理大臣(小渕恵三君)
しばしば申し上げておりますように、このいわゆる党首討論は、国会活性化というすべての問題の中で採用することになったわけでありまして、したがって、大臣、副大臣の制度もそうでありますし、政府委員を廃止するということと同じでございまして、そういう意味で、このいわゆるクエスチョンタイムも設けられたわけであります。これも、その先例となっておりますことを考えれば、それは、イギリス議会におけることが一つ参考になっておるんだろうと思います。
また、イギリスにおきましては、首相は、一週間三十分のクエスチョンタイムに出席すれば、他の委員会その他に出席をしないという仕組みにもなっておりまして、これも一つの参考になるわけであります。
したがって、総理大臣として各般の職責を全うするという意味におきまして、国会における出席につきましては、この出席についてもいろいろと御勘案いただいたわけでありまして、そのことは、民主党の羽田幹事長も、御本人が以前大蔵大臣、外務大臣、首相をされた経験から、そうしたことも踏まえまして、私は、民主党もお入りいただいてこのようなルールを策定したものと考えておりまして、それに私は準拠しておるということでございます。
○鳩山由紀夫君
私は、今総理御自身の意思を伺いました。それで、総理がみずから進んで週一回討論に加わることは賛成だというふうにおっしゃっていただくならば、この見直しの作業の中ですぐに週一回の党首討論は、これは確立できると思います。私は大変にうれしく思います。
きょうは、実は経済の問題を中心にお話を伺いたいと思っております。その前に一つだけ、でも伺いたいと思っています。
台湾で、民進党の陳水扁さんが民主的なルールに基づいて次の総統選挙、当選をされたわけでございます。私は大変画期的なことだとむしろ思っているわけでありますし、これによって長期支配に対して終止符が打たれるということは、すばらしいことだというふうに思っています。腐敗の政治をむしろ浄化するためにはこのような政権交代が求められて当然だと思いますが、総理の御所見、伺えればと思います。
○内閣総理大臣(小渕恵三君)
台湾におきまして、民主的選挙によりまして陳水扁氏が当選いたしたことは承知をいたしております。しかし、総理大臣という立場で、それぞれの地域における選挙、あるいは選ばれた方々に対しての問題につきまして直接的に申し上げることは、これは避けるべきだろうと考えております。
ぜひ、選ばれた方がその地域の発展のために全力を尽くして御努力されることにつきましては、心から御期待を申し上げておるところでございます。
○鳩山由紀夫君
どうもまともにお答えいただけませんが、それならば別の角度から申し上げたいと思います。
陳水扁さんはガンジーさんを大変に尊敬をしておられる。彼の非暴力というものに対して大変尊敬をしています。私は、一つの中国を一つの条件のもとで実現をする、それは非暴力ということである、こういう発想で、中台関係の未来に対して、日本もそれなりのメッセージをお出しになったらいかがかと思うのですが、いかがでしょうか。
○内閣総理大臣(小渕恵三君)
陳水扁氏につきましては、私個人的には存じませんが、マスコミ等の伝えるところによりますと、大変な貧しき家から生まれて、大変な御努力をされまして今日の地位を得た、少なくとも銀のスープをくわえながら生まれてきたことではないということは承知をいたしております。
しかしながら、これからどのような政策を行うかということにつきまして、現在におきまして私が申し上げることは差し控えるべきであろう。ぜひ中国、台湾との関係が、平和的な解決によりまして、この地域がより安定することを望むということは、私として十分申し上げられる点でございます。
○鳩山由紀夫君
先ほどから総理はずっと逃げておられるような気がしてならないのでありますが、次に経済の問題でも、ぜひこの問題はまじめに、逃げないでお答えをいただきたいと思っています。
御承知のとおり、経企庁がこの間、GDPの実質経済成長率を発表されましたね。この十―十二月期のデータは、御承知だと思いますが、マイナス一・四%、残念ながらマイナスであります。年率では五・五%という、過去で三番目の大きな下げ幅になってしまっています。これはリセッションとアメリカでは呼ぶのです。二期連続でマイナス成長のときは、アメリカでは、景気が後退したというふうに呼ぶのでありますが、日本では、堺屋長官を初め、景気は回復基調だというふうにおっしゃる。どうも解釈がずれているように思えてならないのでありますが、これでは大本営発表と何ら変わらないんじゃありませんか。
○内閣総理大臣(小渕恵三君)
いずれにしても、一年間何としてもプラス成長になさなければならぬという考え方のもとに対応してまいりました。しかし、季節的に、申し上げられましたように、この二四半期においてマイナス成長になったことはまことに残念であります。
しかし、その内容をよく拝見をいたしますれば、その中で、これからの将来の経済の動向を非常に先行き見通すことのできる一つの指標としては、やはり民間の設備投資、これがプラス四・六%になっておる。年率でいうと二一・二%という高い水準でございますので、必ずこういう数字が、一―三月あるいはこれからの四―六月以降にあらわれてくるということでありまして、四半期ごとを考えて、それだけですべて経済を占うということは私は必ずしも正しいことではない、このように考えております。
○鳩山由紀夫君
私の知る限りにおいては、設備投資も、前期比ではプラスに転じていますが、前年度比ではまだマイナス、すなわち、一年前から比べれば、設備投資マイナスだということでありますよ。ですから、決して、設備投資もこれからどんどんプラスになるという方向ではない。むしろ私は心配しているのは、半導体の製造装置とか特殊なところ、IT関係は伸びていますが、必ずしも全体的に設備投資も回復基調だとは言い切れない状況だと思っています。
むしろ、私が申し上げたい、お伺いしたいのは、総理、この経企庁のデータの発表、いわゆるプレスリリース、プレスで発表されたときに名目の成長率が一切消えていたのは、これは何なんでしょうか。隠されていたんですか。
○内閣総理大臣(小渕恵三君)
おおよそGDPの発表につきましては、我が国としては、これは実質GDPの数字があらわれておるわけでありまして、これは外国も大体、そういうGDPのとり方としては実質成長率というものをとっておるわけでありますから、これに右へ倣えした、こういうことであります。
○鳩山由紀夫君
そんなことはありませんし、そして、特にこういう、経済がデフレ懸念があるときにはむしろ名目成長率の方が意味があるんだというふうに私は学んでいます。
それでは、まず総理にお伺いしたいんですが、名目成長率はどうだったんですか。国民に向かってぜひ、新聞ではなかなか発表していただけないものですから、総理がこの場でお話をしていただきたいと思います。
○内閣総理大臣(小渕恵三君)
名目成長率は、10―12月でマイナス一・九となっております。
○鳩山由紀夫君
マイナス一・九%、これは年率に換算するとマイナス七・二%。これは、先ほどの実質の場合は過去三番目の下げ幅でしたが、七・二%のマイナスというのは過去最大の下げ幅なんです。一番ひどく過去においてないほど下がってしまったから、この名目の成長率はどうも隠さなきゃまずいな、そんなふうに思ってデータを発表されなかったんじゃありませんか。
○内閣総理大臣(小渕恵三君)
いろいろと勘ぐってお考えかと思いますけれども、別に無理に隠したわけではないと思っております。我々は、この実質成長率というものが極めて指標としては非常に大切な指標だ、こう心得ておりますので、申し上げた数字を発表したわけでありまして、マイナス成長になったことはまことに残念であります。
しかし、これから先行き明るい見通しを持っておるということは、この月例経済報告でも申し上げておるところでございまして、我々としては、責任ある内閣としては必ず、二期マイナスになりましたけれども、将来にわたりましては明るい展望が開け得るものと確信をいたしておるわけでございまして、しからば、内閣をとろうという民主党におかれましては、一体どの程度の数字を今まで出しておるのか、お聞きをいたしておりませんが、内閣としてはそのような数字として考えておるところでございます。(発言する者あり)
○会長(小里貞利君) 御静粛に願います。
○鳩山由紀夫君
私がお伺いしたいのは、名目の成長率というのは、こういうマイナスの景気の非常に厳しい状況のときに、デフレ懸念のときには、むしろ実質の成長率よりも重要なんではないかということを申し上げておるのです。反論に、それは私どもも答えないわけではありませんが、全然お答えになっておられないものですから、私として名目成長率の重要性というものをもっと認識していただきたい。
企業の経営者から見れば、売上高が下がるわけですから、しかし債務というものは減らない。とすれば、企業の経営はますます厳しくなる、賃金を減らさなきゃならない。となると、サラリーマンの賃金は、これは減ってしまう。一方で、住宅ローンなどのいろいろな債務は減らない。したがって、サラリーマンもまた生活をどんどん小さくしていかなきゃならないという状況になる。こういう名目成長率でマイナスになってしまっているということは、まさに経済の失政そのものじゃないんですかということをお伺いしているのです。違うのなら、どうぞお答えください。
○内閣総理大臣(小渕恵三君)
ですから、十―十二月は下がっていることは率直に認めていますよ。問題は、それをいかにこれから回復させていくかということでありまして、その点に対しての明るい展望を開けるという意味でいろいろの指標もあるということで、先ほど申し上げたわけでありまして、その一期だけのマイナス成長でもって日本経済がだめになるようなお話は、私はとり得ないものと考えております。
○鳩山由紀夫君
それならば、むしろこの一―三月で取り戻せるというふうにお考えなんですか。この一期、二期だけでは判断するべきでないとおっしゃるならば、この一―三でぐんと盛り返して、いわゆる実質成長率〇・六%を達成できるというふうに思っておられるのでしょうか。
○内閣総理大臣(小渕恵三君)
ぜひそれが、目標が達成されるように、三月はもうわずかでございますが、全力訶癲爾禿慘呂鬚靴討い觝巴罎任瓦兇い泙后・・
しかも、確かに数字というものは厳正に考えなければならぬと思います。しかし、三月三十一日をもって、その数字だけが目標ということでないわけでありまして、それ以降の、十二年度にいかにこれから続けていくかというところが極めて重要な点でございます。
したがいまして、我々としては、残念ながら二期マイナス成長になっておりますけれども、年当初のプラス成長、マイナスからプラスになるという大きな変化をさせようということで全力を挙げているところでございます。
○鳩山由紀夫君
その全力の挙げ方がどうも間違っておられるんじゃないかというふうに申し上げたいと思っているのですが、堺屋長官が、〇・五%という所期の成長率の目標値をわざわざ〇・六%まで上方に修正されたんですよ。その〇・六%、上方修正されたものが果たして満たされるのかどうか。それは、公約をわざわざ修正されたんですから、当然果たしていただかなきゃなりませんし、もし公約が果たせられないということになれば、これは大変大きな私は総理の責任問題だと申し上げたいと思っていますが、もう一度お答え願いたいと思います。
○内閣総理大臣(小渕恵三君)
〇・五から〇・六にしたのは、これは、指標のとり方の問題だろうというふうに思っております。
そこで、政府としては、プラス成長にいたしたいという数字につきまして全力で努力をしておるところでございますけれども、これは、いわゆる公約ということをどう言っていいのかわかりませんが、政府としては目標にしたことは事実でありまして、その目標達成のためにあらゆる手段を講じて今努力をしておるということでございまして、この数字だけ、〇・六から前後全く変わってはいけないというようなことは、私は、結果的にはそういうことの数字は出てこないんだろうと思っております。
○鳩山由紀夫君
〇・六%を達成するのは、何か、官邸のどなたかの発言によれば、宝くじに当たるようなものだというようなことまでおっしゃった。 これはおかしな話で、国民に対して、この経済成長率の達成が宝くじに当たるというような話では本来ないはずで、そのために総理は、百兆円も超す百十六兆の赤字をふやされたわけでしょう。その赤字をふやされた百十六兆を有効に使えば、絶対にこんなマイナス成長とか〇・六%も達成できないというはずはないんです。明らかに経済の失政が招いた結果だというふうに私たちは思わざるを得ないんです。
もう一度、ですから、総理の経済失政、お認めにならないんですか。今までのような従来型の発想で、景気はこれから伸びていくとお思いなんですか。
○内閣総理大臣(小渕恵三君)
九七年にマイナス〇・一、九八年にマイナス一・九、マイナスが続きました。少なくとも、こういったマイナスになる、デフレ的なマイナス状況を、これをとどめなければならないということで、今御指摘のような、あらゆる手段を講じた中には御案内のような数字もあらわれております。
しかし、これをもってしてようやくプラス成長に望みが出てきたということでありまして、しからば、政府として国債も発行して努力をしたことに対して、いかなる点について民主党としてはこれがむだであったかということをお話しいただけませんと、我々は、これは下支えもいたしつつ成長に向けて努力した結果がこの数字である、こういうことでございます。
○鳩山由紀夫君
それじゃお答えいたしますが、私どもは、公共事業が従来型のばらまきを続けている限り、これは決して、すべてがむだだとは申し上げませんが、かなりむだな予算が組まれてしまっていますから、これは景気自体が浮上するということにはならない。
むしろ、そうではなくて、私は、IT革命、情報技術革命の分野にもっと投資をすべきだったし、そして介護保険、そしてさらに規制改革というものを本気で行って、現在四割近いものが規制で守られている、この四割を二割に半減をさせるような努力をすることによって、より柔軟な自由な市場というものを日本に生み出すことができるわけです。こういうものを怠っていながら、従来型の発想を続けているから、このような百兆を超えても景気は決してよくならないんじゃありませんか。 私どもが申し上げたいのは、百兆を超す借金をふやしておきながら、GDPでは名目が減っているわけですから、総理が就任されたときに五百兆あったGDPが、今四百八十五兆じゃありませんか。十五兆も、一生懸命ばらまかれた結果として、GDPを減らしてしまっているというのは、経済失政以外の何物でもないんじゃないですか。
○内閣総理大臣(小渕恵三君)
最善を尽くして今努力をし、マイナスからプラス成長に向けるべく、あらゆる手段を講じて努力をしておるわけでございまして、その結果、ようやくプラス成長の見込みがつきつつある、こういうことでございまして、したがって、どの点をどのように改善すべきかということで具体的にお話がありますれば、それは政府として対応しなきゃならないと思いますけれども、先ほどのお話のように、ITにもっと金をかけろとおっしゃりながら、ITのようなものにつきましては極めて問題が多いというお話をその前にはされておったようにお聞きをしたわけであります。
○会長(小里貞利君)
申し合わせの時間が参っておりますが、いかがいたしますか。
では、簡潔に。鳩山由紀夫君。
○鳩山由紀夫君
簡潔に申し上げます。お答えは要りません。
いわゆる小渕総理がオブチノミクスというふうにお呼びになっているものは、結果として何をもたらしたか。やはり政治は結果責任ですから、その結果が問われなければならない。結果として百兆を超す借金を国民に残して、そしてGDP十五兆円もマイナスということになってしまっているということは、経済失政以外の何物でもないということを改めて申し上げながら、こういう唯一の総理の公約すら果たすことができない、〇・六%の成長という公約すら果たすことができない総理であれば、もはや退陣をなさるしかないではないかということを申し上げて、終わります。
○会長(小里貞利君)
鳩山君の発言はこれにて終了いたします。
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