1 政権交代で進める21世紀への日本大転換
民主政治は、政権交代によってその健全性が保たれます。歴史が示す通り政権交代のない民主政治は、いつか必ず崩壊します。55年体制以降の日本は、政権交代可能な健全野党が存在せず、真の意味で民主政治が機能してきませんでした。官僚システムに支えられた一党独裁の政治は、政・官・業の癒着構造を生み出し、保護主義、画一主義ともたれあいの構造の下で、経済も政治も時代の変化に対応できなくなってしまいました。旧来の思考と利権構造から抜け出せない旧体制を打ち破り、本格的な少子高齢社会の到来の前に、必要な改革を断行しなければ、21世紀の日本を「ゆとりと豊かさ」の中で人々の個性と活力が生きる社会に変えていくことは出来ません。
民主党は、納税者・消費者・生活者・サラリーマンの立場に立って、いつでも政権を担当できる民主的で健全な政党として誕生しました。民主党には既得権のしがらみはありません。まじめに税金を納め、働く人々の常識的な意見を代弁し、困難な状況にあっても自らの責任で自立を目指そうとする人々の立場を代表します。「市場万能主義」と「福祉至上主義」の対立概念を乗り越え、自立した個人が共生する社会を目指し、政府の役割をそのためのシステム作りに限定する「第三の道」を目指します。
民主党は、自ら政権を獲得したら何を変えようとするのかを、あくまで愚直に有権者に訴え、国民の多数の支持を得ていきたいと考えています。
このアクション・プログラムは、政権交代後4年間に民主党が日本をどう変えていこうとしているのか、21世紀に向けた日本改革のビジョンと具体的な手順を指し示すものです。このプログラムに示した改革の道筋は、決して生易しいものではありません。改革には痛みが伴うことを私たちは、率直に訴えたいと思います。しかし、改革の痛みを避けていては、日本丸は沈没していくばかりです。改革を先送りし続ける船長と乗組員を変えなければ、乗客の国民は救われません。
今こそ、21世紀へ向けて、大きくこの国の進路と舵取りを変える「日本大転換」の時なのです。
2 自由で安心できる国――21世紀日本のビジョン
民主党が目指しているのは、「自由で安心できる社会」の実現です。そのためには、「この国のかたち」をこれまでとは180度変えていかなければいけません。
自民党の長期政権の下で、この国は、官僚が統制する規制の下に置かれた産業がGDPの43%も占める経済的には不自由な国になってしまいました。一方で、私たちが納めた税金は、国民の将来の暮らしの安心を築く社会保障には十分には回されていません。政府歳出に占める社会保障費の割合は、先進国の中でも最低の水準です。それにもかかわらず、財政赤字が先進国で最大になるまで膨らんだのは、個々の事業の必要性をチェックせずに、談合体質を残したまま民間よりも高いコストの公共事業に湯水のごとく税金を注ぎ込んできたからです。国の果たす役割や税金の使い方を間違えてきたのです。
私たちは、もっと個人や企業が自らの責任で可能性を「選択する自由」のある社会、未来に希望を持てる国にこの国を変えていきたい。そのための機会を平等にすることに政府は力を注ぎ、経済活動への介入は最小限にしていくべきです。そのうえで、憲法が目指すように、すべての人が等しく最低限の文化的な生活ができるだけの生活基盤を、納税者が互いに支え合うことで、将来に対して「支え合う安心」の持てる充実した福祉社会を築いていきたい。それが、私たちが目指す「自由で安心できる社会」です。
現在求められている政治・行政の改革は、21世紀の日本社会を見据えて、この「自由で安心できる社会」を実現できる政治・行政へ転換する抜本的な改革です。民主党はこのような行政改革を実現するために「中央省庁の権限・財源を市民・市場・地方へ振り分けること」「官僚主導国家から国民主導国家へ転換すること」を基本方針としています。中央政府の役割を、外交・防衛、司法、年金を始めとするナショナルミニマムの確保など、国家と国民生活の根幹に係わる分野に限定します。それ以外は住民に身近な「基礎的自治体」が、それぞれの意思決定に基づきサービスを提供することで、柔軟・迅速・民意反映の政治・行政を実現します。地方独自の財源を十分に確保し、中央政府の役割を明確なルールに基づく地域間の財政調整などに限定するのです。
経済活動は、徹底的な規制改革を行い、情報開示など消費者が賢明な選択をできる条件を整備することで、市場が機能する「自由な市場経済」の実現を目指します。一方で、徹底した行政改革やGDP比で先進国の倍以上の水準である公共投資を削減することで、将来の負担増の不安を解消しながら、国民が安心できる社会保障制度の構築を推進します。政治家や官僚を利用しようとする一部の人の利益を擁護するのではなく、「国民に奉仕する政府」を作っていきます。
3 政権交代後4年間に実行する政策
第1章 この国のかたちを変える
1)地域主権国家へーー国と地方の行財政構造改革
○ 国の役割は、外交、安全保障、司法などのルールの設定・監視、年金をはじめとするナショナルミニマムの確保など国家と国民生活の根幹に関わる分野に限定し、これ以外の仕事は地方分権により地方自治体へ、規制緩和により市場へ、市民活動の促進により市民(NPO等)へ振り分けて中央政府をスリム化する行政改革基本法(仮称)を制定する。これに加えて、現業・執行部門のエージェンシー化を推進し、国家公務員を計画的に削減する。特殊法人等の整理・統廃合を推進する。
○ 住民に身近な基礎自治体を地方行政の基本的な単位として、全国の自治体の再編成を促進し、地方の行政改革を推進する。地方自治体の自発的再編成を促進する自治体合併促進法(仮称)の制定を図る。人口30--50万人程度の規模の基礎自治体に国や都道府県から権限と財源を大胆に委譲するため、地方自治法を抜本改正する。
○ 国と地方の税財源の比率を現在の「2対1」から「1対2」にすることを目標に税財源を再配分する財源再配分法(仮称)の成立を図る。義務教育費など非裁量的補助金を除き、個別補助金は原則廃止する補助金サンセット法を制定する。
○ 大臣の補佐をする複数の副大臣及び政務補佐官を導入する「国家行政組織法等改正案」の成立を図り、政治家と政治任命されたスタッフのチームで各省庁をコントロールする体制を作る。事務次官会議は廃止し、副大臣会議で政府部内の調整を行う。内閣の運営を政治家が実質的に行うことにより、政治のリーダーシップを確立する。官僚を任命する政府委員制度は廃止し、各省庁をコントロールする大臣・副大臣・政務補佐官が、国会で答弁する形に変える。
○ 議員立法の提出要件緩和や優先審議の制度化など国会改革を推進し、国会の専属スタッフの充実などにより、行政監視・立法機能・立法調査機能を強化する。国民に開かれた政党政治を実現するため、政党、民間の政策立案能力を高める体制を確立する。
○ 公共事業関係の長期計画に対する国会同意を義務づけ、事業費と経済効果の試算、環境への影響の評価などを事前に公表することにより公共事業の透明性を向上する公共事業コントロール法(仮称)を制定する。公共事業の評価に国民意見の反映を図り、公共事業に対する責任体制を明確にする。公共事業のコスト削減のために、原則として一般競争入札とし、公共事業に競争原理を導入するとともに、公共事業に関する情報を徹底的に公開する。インターネットなどを通じて入札に関する事前、事後の情報を誰でも入手可能とすることにより、誰もが公共事業のチェックを行えるようにする。
○ 国民の知る権利の保障を明記し、行政情報の原則公開を明確にした「行政情報公開法案」の早期成立を図る。情報公開は、中央省庁だけでなく、特殊法人・政府関係機関等も対象にする。
2)政治への参加機会を広げ、信頼を回復する政治改革
○ 選挙権年齢を18歳に引き下げ、被選挙権年齢も引き下げる公職選挙法の改正を実現する。インターネットを利用した選挙活動ができるようにする「公職選挙法改正案」の早期成立を図る。電子投票制度の導入について検討を進める。
○ 在外邦人投票制度を拡充し、選挙区選挙についても投票の機会を保障する公職選挙法の改正を実現する。長期にわたって日本を留守にする船員が、洋上で投票できるようにする制度も導入する。
○ 定住外国人が地方選挙で政治に参加できるようにする公職選挙法の改正を実現する。
○ 政治腐敗防止のため、政治家の地位を利用したあっせん行為によって、報酬を得ることを処罰する地位利用収賄罪処罰法を制定する。政治家が、歳費以外の収入が5万円以上あったときや、100万円以上の動産を得たとき、すべての株取引について報告を義務づけ、罰則を強化する「資産公開法改正案」の早期成立を図る。報告書は誰でも自由に閲覧・コピーできるようにする。
○ 公務員の汚職腐敗を防止するため、(1)係長級以上に1件2,000円を超えた贈答(接待含む)の報告を義務づけ、公開する、(2)総理府に独立した国家公務員倫理審査会を設置し、報告しない者、虚偽報告は1年以下の懲役又は50万円以下の罰金を課す、などを内容とする「公務員倫理法案」の早期成立を図る。
3)司法基盤の充実
○ 人権を保障する最後の砦としての司法の基盤を充実する。適正で迅速な裁判を実現するため、裁判官の大幅増員など法曹人口の拡大、法曹養成制度の充実、手続法の整備、法曹一元化などを推進する。
○ 国民の裁判を受ける権利を実質的に保障するため、法律扶助制度などを拡充する。
第2章 日本経済の再建に向けた構造改革
1)活力を引き出す経済の構造改革
○ すべての経済的規制を時限性として、延長する場合は、その理由を行政が明らかにする責任(アカウンタビリティー)を義務付ける規制サンセット法(仮称)を制定する。社会的規制は、基準を明確化し、透明化を進める。
○ 公共事業と輸出に依存する経済構造を民間主導の内需主体の経済構造に転換するため、公共投資の削減と情報通信・環境・福祉等のサービス産業分野での民間投資を誘発する規制改革、投資減税などの施策を並行して推進する。
○ 従来型の国土破壊型土木工事ではない、生活・福祉・環境・エネルギー・情報通信等に係わる未来創生事業(21世紀型社会資本整備)を、地方が主体となって実施する。このため、包括補助金制度を導入する。 ○ 従来型の既存企業における雇用の維持・安定に代えて、新規事業分野等における積極的な起業と雇用の創出、労働者の自主的な職業能力開発の支援等、わが国の経済構造改革に対応できる新たな雇用政策、周辺支援策を拡充・発展させる。
2)21世紀に向けた税制の構造改革
○ 「簡素・公平・透明」を原則に、納税者番号制度の導入を推進し、税体系における所得・消費・資産等のバランスのあり方と税と社会保険料の役割分担を見直す。納税者意識を高めるためにも給与所得者の確定申告制度をさらに充実させる。
○ 所得課税は、最高税率を先進国並みの50%程度に引き下げ、個人の所得向上のインセンティブを高める。所得税は当面、所得税率を引下げることで、約3兆円の恒久的な所得減税を実施する。当分の間、課税最低限は引き下げない。
○ 法人課税は、国際水準の40%程度まで実効税率を引き下げ、実質1.7兆円規模の恒久的な減税を実施し、企業の活力を引き出す。法人事業税の外形標準課税化などの検討、法人住民税均等割の見直し等を進める。各種優遇税制の適正化により、課税ベースを拡大する。
○ 消費税の欠陥の是正のため、インボイス制度導入や免税点・簡易課税制度の適正化による「益税」の解消、カナダのGST税額控除制度などを参考にした逆進性緩和策の導入など納税者に信頼される消費税への改革を進める。
○ 建物にかかる不動産取得税の廃止など不動産流通課税の軽減と資産課税の適正化により、土地の有効利用を促進する。
○ マイホーム、セカンドハウスや自動車の購入、高齢者にやさしいバリアフリー住宅へのリフォーム、教育資金等の負担を軽減し、消費を拡大するため、一定の要件に該当する新規ローンの利子を10年間にわたって所得から控除する「ローン利子減税」を今後6年間の政策減税として実施する。住宅建設費の9%(1.5%を6年間)を所得税から税額控除する住宅減税を実施する。家屋の取得・増改築については、住宅取得促進税制と比較して有利な方を選択できるようにする。
○ 持ち家から賃貸への住替えにも対応するよう、マイホーム買い換え時の譲渡損失繰越控除を拡充し、所有期間5年を超える個人の居住用財産の譲渡により損失が出たときは、一定の要件の下で翌年以後3年以内の各年の総所得金額からの繰越控除を認める制度を、今後6年間の政策減税として実施する。
○ 証券市場活性化策の一つとして、有価証券取引等の流通コストを高めている有価証券取引税・取引所税を廃止する。納税者番号制度の導入によるキャピタルゲインの総合課税化を早急に実現する。
3)経済再建による財政の健全化
○ 政府・自民党が野放図な財政運営を行った結果である今日の危機的な財政状況は、国民に将来の負担増の不安を与える重しになっており、財政再建は是非とも成し遂げなければならない。しかし、そのためには、まず深刻な不況を解決し、わが国の経済を立て直してから、抜本的な財政再建に取り組むべきである。景気回復こそが最優先課題とされている局面で、財政出動をしばるような財政再建策にこだわる政府・与党の姿勢では、いつまでたっても景気は回復せず、財政再建も達成できない。経済の再建が財政再建の近道であるとの認識に立って、機動的な財政運営にあたる。
○ 恒久減税の財源は、現下の経済情勢のもとでは、従来のいわゆる特例公債によらざるを得ない。当面は、規制改革など官民の役割分担の見直し、不良債権処理等を思い切って進め、個人消費や民間設備投資などを活性化し、自律的景気回復軌道に復帰させることで経済を再生させることを優先する。
○ 経済が再建し、自律的景気回復軌道に復帰した後には、公共事業をはじめとする歳出の徹底的な見直しと削減、国有資産の売却等の行財政改革によって、減税特例公債を可能な限り早い時期に償還するよう努める。
○ 恒久減税実施のため、財政構造改革法は施行を二年間停止し、赤字国債と建設国債の区分の廃止など財政再建の枠組みを抜本的に見直す。経済再建後に本格的な財政再建の取り組みをスタートする。
4)不良債権の早期処理と金融システムの再生
○ 今日の金融システム不安の根本的な原因は、バブル経済崩壊に伴う地価の急落により発生した多額の不良債権であり、金融システム安定化のため、不良債権問題を早急に解決することが不可欠である。不良債権の適正な償却を促進するために、金融機関の経営状態を公的に検査し、時価評価の経営情報の開示を義務づけるなどディスクロージャーを徹底する。
○ 金融監督庁を改組して金融庁(仮称)を設立し、金融の企画部門を大蔵省から移管する金融庁設置法案(仮称)の成立を図る。金融検査官を増員し、外国の金融検査の専門家や公認会計士等を新規に採用して、金融検査体制を充実する。
○ 不良債権問題の抜本的な解決のために、強力な権限を持つ公的債権回収機関(日本版RTC)を設立し、関係当事者の厳正な責任追及を前提条件に、金融機関の不良債権を実勢価格で買い取るなどして不良債権を金融機関から移して債権回収を進める。
○ SPC(特別目的会社)法による証券化手法を用いるに際しても、RTCが公的権限を背景にして担保不動産の複雑な権利関係などの整理を進める。SPC設立のための最低資本金の引下げや不動産取得税の軽減に加えて、不動産競売手続きの簡素化、更地など現状のままでは証券化が困難な不動産について民間都市開発推進機構などと連携した開発により商品性を高めるなどの措置を講じる。
○ 不良債権処理にかかる国民負担を最小にすることを大原則とし、金融機関の経営改善を求める早期是正措置を厳格に実施する。検査の結果、実質債務超過状態の金融機関は、経営陣を退陣させ、一時的に国家管理の下におくことを可能にする金融機関経営再建法(仮称)の成立を図る。国の関与は経営者の選任にとどめるアームス・レングス・ルールを定め、民間から経営者を起用して国家信用を背景に経営を再建させる。一時的に国家管理した金融機関は、事業の再構築などの経営努力によって自己資本が回復した時点で政府保有株式を売却して民営化する。
○ 自己申告を基準にした公的資金による金融機関の優先株等の買い取りは、国民の負担がいっそう膨張する恐れがあるうえ、淘汰されるべき不健全な金融機関を延命させるので、行わない。
○ 貸し渋りに苦しむ中小企業のための公的な融資制度を拡充する。国民金融公庫や中小企業金融公庫など政府系金融機関の融資枠を大幅に拡大させるほか、拓銀の破綻により特に事情が深刻な北海道においては、時限措置として、北海道東北開発公庫の運転資金融資も可能にする「北海道東北開発公庫法改正案」の成立を図る。信用保証協会の保証枠を拡大するなど、必要な資金の融資が受けられるような対策を講じる。
○ 中期的には直接金融から間接金融への金融システムの転換を推進する。店頭市場を含めて証券市場での起債や株式募集に関する規制を廃止し、情報開示義務のみとする。情報開示義務違反に関する刑事罰を強化する。
5)農林水産業と農漁村地域の再生
○ 農村地域の過疎・高齢化、後継者不足、国際化の波による競争力低下などで将来展望を失っている日本の農業を再生するため、現在の農業基本法を抜本的に見直し、新しい食料・農業・農村基本法(仮称)の制定を図る。持続可能な農業と地域の自主性を基本とした新たな農政ビジョンの確立をめざす。
○ 食料自給率の向上と食料備蓄体制の充実をはかるため、これまでの画一主義を排し、市場原理にも耐えうる大規模農業政策と、市場原理になじみにくい条件不利地域の農業政策を分けて立案・推進する。大規模農業の育成のため、農地流動化の促進など意欲ある農業者の農地集積を支援する。農業基盤整備事業は、意欲ある農業者にとって効果的なものに限定し、その効率化に向け計画立案段階での地域農業者の参画を進める。担い手対策としてUターン就農者や女性農業者への支援を強化するとともに、青年就農促進に向けて、就農準備金の充実など制度改正を行う。
○ 中山間地などの条件不利地域農業については、競争力を前提とする農業政策から、定住・国土環境保全・保健休養・都市との交流など「農村社会政策」への転換を進める。特に定住政策として、いわゆるデカップリング(直接所得補償)的手法の導入を検討する。
○ 消費者の関心の高い食料の安全性対策については、表示の徹底(使用農薬、遺伝子組換え食品など)、有機・無農薬・低農薬農業の振興、輸入農産物のポストハーベスト規制を早急に進める。
○ 森林資源の保全・再生のため、国内林業の再建をはかる。国産材の利用拡大を促進するため、民間林業事業体への支援や技術開発を充実する。天然林や公益的機能をもつ保安林の保全管理の取り組みを拡充する。国有林については、現在の木材生産重視から、国土環境保全や大気浄化、保健休養といった公益面を重視する政策に転換する。
○ 地球規模での森林保全・再生に向けて、輸入材依存体質からの脱却を進める。「国際熱帯木材機関」(ITTO)や「国連食糧農業機構」(FAO)などの国連機関の役割を重視し、これらの機ヨを通じて熱帯林などの保護・再生に向けた取り組みを推進する。
○ 資源管理型漁業や栽培漁業・養殖業といった「つくり育てる漁業」などの振興を通じて、海洋水産資源の保護・管理や海洋生態系の保全をはかる。日韓漁業交渉については、海洋法条約の精神に基づく新しい漁業協定の早期締結を推進する。○ 批判の多い漁港整備事業は、その目的・基準の見直しを行い、整備の効率化をはかる。漁港整備から漁村の上下水道や道路などの生活関連公共施設の整備に予算配分の重点を移す。
6)中小企業の振興
○ 中小企業の規模の不利是正に重点を置いた施策を転換し、高齢化・規制改革・国際化・高度情報化・環境保全などの時代的要請に応え、「きめ細かさ」「小回り」「個性」で勝負する中小企業、起業家を積極的に支援する。
○ 当面の緊急避難の施策として、政府系金融機関による貸付制度拡充等による貸し渋り対策を強化する。
○ 下請け自立支援策の拡充、中小企業団体の機能整備、新規創業期の法人税免除等の中小企業減税、実効ある事業承継税制の確立、ベンチャーキャピタル育成や店頭市場改革等に取り組む。
○ 地域の創造的活動、伝統文化の保持にも重要な機能を分担している小売商業を育成する。大規模小売店舗立地法を厳正に運営するとともに、自治体ごとに住民各層の参加を保障し、地方主体のまちづくりを推進する。中心市街地での土地区画整理を進めるとともに、小公園、集会施設、医療福祉施設への都心部立地を誘導し、新規商業者と既存小売業者が共存するにぎわい空間の創出による商店街対策を進める。
○ ものづくりの基盤技術(鋳造、鍛造、金属プレス加工、金型製作、金属熱処理、めっき、プラスチック成形等)を振興する施策を総合的かつ計画的に推進するため、ものづくり基本法(仮称)の制定を図る。熟練労働者の養成、中小企業の経営基盤強化・取引条件の不利補正、民間の自主的努力の助長を基本理念とする。学識者、労働者、事業者等からなるものづくり基盤技術審議会から意見を聞き、国はものづくり基盤技術の研究開発、事業者と大学等の連携、熟練ものづくり労働者の養成確保と活用、ものづくり基盤産業の集積促進などに取り組む。
7)総合交通体系の整備
○ 鉄道、道路、空港、港湾が個々バラバラに建設されている現状を改革し、相互に連携した総合的な交通運輸体系の整備を進める。都市政策、産業政策との整合性をはかるとともに、環境への負荷の低減、高齢者・障害者への配慮、情報化社会への適応などを政策の基本とする。
○ 交通分野での規制改革を大胆に推進する。住民の声を無視して採算のあわない過疎地域から事業を撤退したり、コスト削減による利用者の安全性低下といった状況を招かないよう、地域交通に関する権限を地方に大幅に委譲し、地域実態にあった整備を進める。
○ 高齢者・障害者にやさしい交通政策(ノーマライゼーション)の実現に向け、鉄道駅などにおけるエレベーターの設置、リフト付きバスの導入など、道路環境、駅舎、ターミナルの整備を推進する。
○ 地球温暖化対策のため、電気自動車やハイブリッドカーなどの無公害・低公害車の技術開発支援や、貨物などのモーダルシフト(環境などを配慮した輸送分担の適正化)を積極的に促進し、二酸化炭素の削減に取り組む。自動車から排出される窒素酸化物や種々の微粒子を削減し、大気汚染や酸性雨、光化学スモッグの防止を進める。
○ 旧国鉄長期債務問題については、JR負担やたばこ特別税のような大衆課説に依るのではなく、政府の責任を明らかにしたうえで、行財政改革で歳出を削減して財源を確保し、債務を処理する。
8)高度情報通信社会の実現
○ 地域や、世代間の偏りがなく誰もが情報通信技術の進化の恩恵を享受し、生活の向上をもたらす高度情報化社会を築くために、光ファイバーをはじめとしたインフラの全国整備、利用しやすい機器の開発・普及、利用料金の低廉化を促進する。デジタル化など情報通信に関する政策誘導、規制改革を徹底し民間の活力、競争力を引き出す。事業者間の競争を促進するために、料金規制の緩和をはじめとした規制改革を徹底し、通信料金の低廉化、定額料金制などを早期に実現する。
○ 少子・高齢化、過疎化による生活実態の地域間格差の歪みを是正するために、全国の家庭まで光ファイバー・ネットワークを早急に整備する。民間事業者が進めている2010年を目標とした整備計画を加速するために、税制や資金調達などの支援策を大胆に行う。
○ 高齢世代や子どもたち、障害者が利用しやすい端末機器の開発・普及のため、研究・開発に対する支援策や、学校や公共施設での先導的導入によって製造コストを引下げる。
○ 地域の病院と大学病院などの専門医療機関を高精度の画像通信網で結ぶ遠隔地間医療ネットワークを整備し、全国的な医療の高度化、格差の是正を促進する。○ 次代のわが国の基幹的産業として位置づけられている情報通信産業分野の活性化は、高度な情報通信ネットワークを基盤として多くの産業分野の発展に波及するものであり、国際化時代に対応したわが国の産業政策上からも最重要施策として位置づけ、大胆に推進する。
○ 電子情報に関するプライバシー保護やネットワーク犯罪を防止するためのネットワークセキュリティーの確立、電子マネーの活用等に関する研究を急ぎ、必要な法整備を進める。
第3章 将来に不安のない国民生活
1)安心できる社会保障基盤づくり
○ 少子・高齢社会に対応した、「普遍」、「個人」、「自立支援」を原則とした社会保障制度を構築して、国民の将来への不安を解消する。社会保障システムは、従来の世帯単位から個人を基軸とするものに再構築し、高齢期等の所得保障や健康づくり、介護サービスの提供、バリアフリー住宅などを通じ、国民が自らの努力により自立して生活できる社会保障体制をつくる。ニーズがある人に対し、所得や資産の有無・多寡にかかわらず必要な給付を行う。
○ 現行医療システムの歪みを直し、ムダを省き、公正で効率性の高い医療をめざす。患者の選択と自己決定を尊重する観点から、患者の権利擁護や情報開示の仕組みをつくる。市場原理を活用しながら情報公開を徹底し、医療保険制度の抜本的改革を行う。
○ 老齢基礎年金等のレベルを生活保護基準まで引き上げ、最低生活を保障する年金給付を実現する。公的基礎年金部分は、負担における税の比重を高める方向で長期的に安定した制度に改革する。個人年金、企業年金の役割を充実し、転職しても通算できるポータブル年金化を実現する。世代間扶養の原則を踏まえつつ、世代間の不公平を解消する方策を検討する。
○ 2000年4月から施行される介護保険制度については、財源のあり方も再検討しつつ、さらに国民にとって利用しやすい制度になるように見直す。
○ 介護サービス不足に対応するため、新ゴールドプランを大幅に拡充したスーパーゴールドプランを策定するとともに、NPO活動を支援する。
○ 障害を持つ人が自由に移動できる「バリアフリー」のまちづくりをめざして、高齢者、障害者などが住みやすいように、鉄道の駅舎や公的施設にエレベーターやエスカレーターを設置したり、幅の広い歩道の設置や段差の解消、電線類の地中化を進める。
○ 身体機能が衰えた人でも、自立した生活を在宅で送れるようにするため、バリアフリーの住宅づくりを税制などで支援する。公的住宅はバリアフリー仕様とし、個人住宅の建築、増改築の際に、床の段差解消、階段・廊下への手すりの設置、浴室の改造、緊急通報システムなどの整備費用を税額控除または一定額を公的に補助する。これにより、入院や寝たきり防止のほか、在宅介護が容易になることから、介護費や医療費を長期的に節約できる。
○ 障害者に係る資格制度の欠格条項の見直しや障害者の権利擁護をはかる基盤づくりを積極的に進める。障害のあるなしにかかわらず誰もがともに地域で暮らせる社会づくり(ノーマライゼーション)を実現するため、新障害者プランを策定する。
○バリアフリー社会実現のため、視覚や聴覚、知的障害などをもつ人への選挙情報の提供や投票補助など、選挙参加のための条件整備を進める。選挙活動や選挙運営の改革など、政治参加に必要なバリアフリー化をめざす。
2)仕事と家庭が両立できる男女共同参画社会
○ 男女が仕事と家庭生活を両立できる社会を目指して、国や地方自治体が講じるべき施策と実施体制の確立を盛り込んだ男女共同参画基本法(仮称)の制定を図る。女性と男性がともに、社会的・文化的に形成された性差(ジェンダー)に縛られず、個人として自らの意思と責任にもとづいて政治、経済、社会のあらゆる分野の活動に参加し、方針や政策を決定する男女共同参画社会の実現を目標とする。
○ 労働者の健康維持と、家庭生活の充実のため、年間労働時間1800時間以内を目標に労働時間の短縮を推進する。
○ 育児・介護休業給付の所得保障は、現行の25%から60%に引き上げる。各事業所で育児休業・介護休業法にもとづいた制度が実施されるよう、労働基準監督署などを通して徹底させる。
○ 親の労働時間の多様化に対応できるよう、保育所の入所条件を緩和し、保育時間を延長するとともに、長時間開所型の託児施設を増設する。既存の育児・介護職場復帰プログラム(職場適応性や職業能力の低下防止、回復をはかる措置を講じる事業主に対して奨励金を支払う制度)を拡充して、育児・介護のために一時離職していた労働者の職場復帰を支援する。
3)雇用機会の増大と雇用の安定
○ 雇用の創出という観点から、情報通信・環境・福祉医療関連などを雇用創出効果が大きい産業と位置づけ、新規創業期の法人税免除などの方策を講じる。
○ 定年後の高齢者の活力を福祉部門などに活かすために、シルバー人材センターを拡充したり、高齢者の雇用機会創出に寄与したNPOへの公的助成を行う。高齢者が地域で生きがいを感じられる社会参加の機会を増大する。
○ J働者が雇用の流動化や労働市場の変化に対応できるよう、既存の職業訓練制度のカリキュラムを見直し、情報・環境・福祉関連の定員を拡充する。自発的な教育訓練や大学・大学院への再入学に対して費用の一部を財政的に支援する。長期訓練休暇制度を創設する。
○ パートタイム労働者の最低賃金など労働条件・処遇を改善するパート労働法の改正を図る。
4)循環型社会への転換を目指す環境・エネルギー政策
○ 資源循環型社会、ゴミゼロ社会をめざした資源循環基本法(仮称)を制定する。環境への負荷が大きい製品に課徴金を賦課する制度の導入を検討し、環境ビジネスを支援する。化学物質についての管理を強化し、ダイオキシン発生量に応じた課徴金制度の創設、廃棄物焼却施設の改修などダイオキシンや環境ホルモン対策を徹底する。
○ 環境の情報が広く市民に公開されるよう、環境情報公開法(仮称)と、学校や地域での環境教育を推進する環境教育基本法(仮称)の制定を図る。省エネルギーや節水に積極的に取り組む。
○ 環境問題への市民やNGOの参加、たとえば、河川の自然を守るための市民参加を保障する河川法改正などを図る。公共事業によって破壊される自然の価値を公共事業の評価に組み込む。
○ 多様な生物を育む良好な自然環境を守るために、保全地域の拡大と規制強化を行う。コンクリートで固められた河川を自然の姿に復元するなど環境に配慮した自然復元型公共事業を推進する。自然回復のための事業を市民参加で行うことができるような制度を作る。
○ 森や山、川や海と共存しながら生活ができるよう、定住政策として直接所得補償制度の導入を検討する。アメリカのようにNPOが税などの優遇措置が受けられるような制度を構築する。
○ 遺伝子組換え食品について、消費者の選択の自由を保障するために、可能な限りきちんとした消費者にとって意味ある情報の表示を義務づける。
○ 大量生産・大量消費・大量廃棄のライフスタイルや産業構造を環境負荷の少ないものへと転換するために、経済的措置の導入を検討する。太陽光発電や風力発電など、環境にやさしいエネルギーを推進するために、国の施設や学校での太陽光発電の設置を義務づける。製品がどれだけ環境に負荷を与えているかを表示させる。
○ オゾン層破壊物質であり強力な温暖化物質であるフロンの回収を義務づける法律の成立を図る。
○ 環境立国日本をめざし、熱帯林保全や砂漠緑化、途上国への環境にやさしい技術の支援など、森林保全、水環境の保全、砂漠化防止などの自然環境保全を積極的に行うなど国際社会における環境面での貢献を積極的に行う。
○ エネルギーの安定供給と環境との調和を達成するため、原子力発電の安全性向上と国民的合意を形成するとともに、新エネルギーの積極的な開発・普及、省エネルギーの推進をはかり、エネルギーのベストミックスを実現する。エネルギー供給国との対話を強化する。
5)人権の擁護と差別のない社会
○ 憲法や国連の人権に関する諸条約の規定に基づいて、性別・社会的身分・門地・人種・民族・国籍・年齢・障害などによる差別の解消をめざす。教育啓発や差別禁止、被害救済など、人権保障のための法制度や施策の改革に取り組む。また国際人権規約B規約選択議定書など、未批准の人権条約の批准を推進する。
○ いじめや差別をなくすために、市民やNGOがすすめている「人権教育のための国連10年」などの活動と協力し、国や自治体などでの人権教育・人権啓発に関する取り組みをすすめる。
○ 様々な差別事件や女性や子どもへの性的虐待・暴力などに対して、被害者の避難や救済を行うシェルターやオンブズパ?ソンなどの活動や、問題解決にあたる人材の育成を支援する。総合的な人権保障システムを確立するために、人権擁護行政の抜本的な改革に取り組む。
○ 障害者基本法や障害者プランの見直しなど、障害を持つ人たちが差別なく生活できる社会づくりをすすめる。
○ 子どもの人権擁護の観点から、児童買春や児童ポルノを禁止して違反者を処罰するこどもの権利基本法(仮称)を早急に制定する。いじめに悩む子どもの救済機関として、児童相談所を改組し、「子どもオムブズマン」(仮称)を創設する。
6)個性豊かな人材を育てる教育改革
○ 受験競争の過熱化、いじめ、非行、不登校や相次ぐ暴力事件は、教育行政の根本的な改革を求めている。子どもたちが主役となる学校に変え、多様な価値観を持つ子どもたちとして自立させる「個性を育む教育」に転換する必要がある。次代を担う子どもたちが成熟した市民、国際人として生きることができる力を育むため、教育改革を推進する。
○ 受験地獄を解消し、個性豊かなゆとりある教育を実現するため、中高一貫教育を推進する「中高一貫教育の推進に関する法律案」の成立を図る。公立高等学校の授業料の無料化を法律で規定し、父母の教育費負担の軽減をはかる。本人への開示など内申書のあり方を検討する。
○ 21世紀に向けての教育改革の柱として、育個性を育む30人学級の実現、障学校の自主性を尊重し、地域の特色が活かせる教育の地方分権、組大学入試制度の抜本見直し、者だれもが必要に応じて受けられる奨学金制度の改革、活教職員の一層の資質向上をめざす教員養成課程の見直し、などの施策を推進する。
○ 学校教育修了後においても、リカレント教育をリードし、地域の公民館活動の活性化や大学等の図書館開放など生涯学習環境を整備し、地域スポーツにおいても校庭開放と付帯設備の充実、各種スポーツ指導者の育成に力を注ぐ。
○ 教育こそが人づくり、国づくりの基本と考え、未来への先行投資としての教育投資を大胆に行う。
○ いじめ、ナイフ等を使った暴力事犯、子どもたちがいわゆる簡単にキレてしまう現象の根絶のため、カウンセリングの充実や情報の公開を進めるとともに、学校、子ども、父母、地域等が協力して問題解決、未然防止に努める体制を整備する。心の教育として、人間の生命と尊厳を尊重する姿勢、自らの育った歴史的、文化的土壌を大切にするとともに、他国の民族や文化にも尊敬の念をはらう思いやりの姿勢、自ら体験して学ぶボランティア精神、公共心と協調性の重視などにより、豊かな人間性の育成をめざす。
第4章 平和を創造する外交・安全保障
1)外交立国を目指して
○ 国際社会と協調しつつ、わが国の主体性を実現していく「外交立国・日本」をめざす。国連を中心とする世界平和を構築することを目標に、主体的、かつ重層的な外交を展開する。
○ 世界の平和と繁栄こそがわが国の国益であるという認識から、ODAなどの非軍事的貢献や多様な枠組みでの対話・信頼醸成などを通して予防外交につとめる。唯一の被爆国として、核不拡散と核兵器の廃絶を強く訴えていく。
○ わが国の重要なパートナーである米国とは、経済、安全保障、文化・人的交流など多様な分野で協力関係を強化し、様々なレベルでの関係を一層緊密化することにより、日米関係の成熟化をはかる。
○ 先の戦争の反省を踏まえ、近隣諸国との基礎的な信頼関係の構築する。アジア地域の安定と繁栄を維持のために、アジア各国との外交・経済関係を深化につとめる。アジア太平洋地域の平和と安全にとって重要な存在である中国に対し、長期視点に立った友好・協力関係を発展させる。
○ 新生EU・ロシアをはじめ、各国との幅広い分野での友好関係を築き、相互理解の増進につとめる。
○ 国際社会の一員として非軍事的な貢献を積極的に実施していくために、政府開発援助(ODA)のあり方を見直し、地球環境重視、自立支援、人道主義といった視点をもつ援助に重点を移して推進する。ODAの実施基準を明確に定め、総合的な事後評価を実施し、結果を公開する。
○ 国際社会が抱える地球規模の問題の解決のため、超国家的な連携を推進する。市民、NGO、企業シンクタンクなどによる援助活動をはじめとした、国際政治への積極参加を支援する。
○ 国連を中心とする世界平和をめざして、国連がその機能を発揮しやすくするための改革を推進する。安全保障理事会の構成・運営のあり方、開発問題に関する南北対立、財政状況の悪化、国際機構の非効率性など、様々な問題の解決に向け検討を進める。国連の枠組みの中で、核の廃絶、軍縮、地球環境、人口・エネルギー問題、国際人権問題、貧困の撲滅などの積極的に取り組む。国内世論と加盟国の支持を前提に、安全保障理事会の常任理事国入りをめざす。国連平和維持活動には、憲法の枠内で積極的に参加する。
2)主体的な防衛・安全保障・核軍縮の推進
○ 専守防衛に徹し、集団的自衛権を行使しないこと、非核3原則を守ること、海外における武力行使を行わないこと、文民統制を維持することなど、戦後防衛政策の諸原則を今後も遵守する。
○ 日米安全保障条約を引き続きわが国の安全保障政策の基軸に据える。アセアン地域フォーラム(ARF)を充実・発展させ、アジア太平洋多国間安全保障の確立に努力する。
○ 基地問題については、現状固定的に捉えるのではなく、将来は状況に応じて変化しうる要素があることに着目し、日米両国が、米軍基地のあり方等を協議・模索していく。特に、沖縄米軍基地の整理・縮小・移転について引き続き努力する。
○ シビリアン・コントロールや基本的人権を侵害しないことを原則としながら、有事・危機に際して超法規的措置をとることがないよう関連法制の整備を早急に進める。
○ 日本の平和と安全に重大な影響を与える事態が日本周辺で起きたとわが国が判断する場合に、日米が適切な防衛協力を実施することは、日本の安全保障と地域の安定への日本の貢献という観点から、非常に重要である。わが国が本当に必要だと認めるような事態において日米防衛協力を行う「主体性の原則」を確立し、憲法9条が禁ずる海外における武力行使とならない範囲で行う必要がある。わが国の主体的な判断を確保し、シビリアンコントロールを徹底する観点から、周辺事態にィける自衛隊等の活動については、基本計画等の事前の国会承認と国会による計画の定期的見直しを義務づける。特に緊急を要する場合においては、一定期限内に国会の事後承認を得るものとし、国会の決定による計画の変更を可能にする。
○ ジュネーブ軍縮会議において、核兵器を保有または核実験をしている国による多国間の核軍縮会議を開催するよう各国に働きかける。核軍縮会議において、目標期限を定めた核廃棄の行動計画を策定するよう求めていく。
○ 核拡散防止条約(NPT)第6条を改正するか、または新しい国際条約によって、期限を設けて核保有国の核兵器の削減を義務づけるよう国連で提案する。インド・パキスタンを含む全世界の国にNPT条約への加盟と批准、新しい国際条約への加盟を求めていく。
○ 核兵器の先制不使用に関する国際条約の締結を提唱し、各国に働きかけていく。
3)危機管理体制の充実
○ 海外における緊急事態や国際的な自然災害、テロリズム、海難事故等の大規模な事故・災害・緊急事態に対して、迅速かつ適確に対応できる内閣官房を中心とする危機管理体制を整備し、国民の生命と財産を守る。
注1)文中のかっこ書きの法案は、民主党単独または超党派ですでに国会に提出した法案である。
民主党政権構想起草委員会
事務局長 玄 葉 光一郎
石 毛 B 子
枝 野 幸 男
岡 田 克 也
島 聡
松 沢 成 文
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