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1998/12/18
政権運営委員会報告「新しい政府の実現のために」
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民主党政権運営委員会 座長 鹿野 道彦

目次

はじめに
第1章 政府の構造改革に向けて

1-1 政権への道−新しい政府のための改革課題
1-2 新しい政府の実現に向けて
1-3 日本政府もしくは内閣の構造的問題点
1) 政府の構成及び運営に関する問題点
2) 内閣の構成と運営上の制約
1-4 政府構造の改革のための「5つの焦点課題」

第2章 現行制度の下での政府の構造改革

2-1 内閣総理大臣補佐体制と内閣機能強化に係る改革課題
1) 内閣総理大臣のリーダーシップに係る問題点
2) 内閣官房機能の拡充と官邸体制の整備
2-2 対議会・対政党関係と省庁間調整の仕組み
1) 内閣と与党の一体化による政府の運営
2) 政府の対議会機能の充実と議会との相互協力体制の確立
3)政官インターフェイス機能の整備と政治主導の閣議案件調整
2-3 総理のリーダーシップ発揮と柔軟な内閣運営
1)「内閣協議会」の柔軟な運営と活用
2)内閣の意志決定と「閣議・内閣協議会・次官会議」関係
3)政府と国民との相互的な関係の確立へ

第3章 内閣システムに関する制度改革

3-1 内閣の法制度と内閣のシステム改革
3-2 内閣法改正に係る主な検討事項
1)内閣法の主な改正点
<提案>「内閣法改正試案」
3-3 内閣制度に係る包括的な改革事項
1) 内閣総理大臣の権限行使のための機構の整備等
2)「内閣等構成法」の制定

第4章 政権の構造改革に挑むために

4-1 政府の構造改革のためのプログラム
4-2 課題としての「政権政党への進化」について

政治の活性化のために−むすびにかえて−




はじめに

政権運営委員会は、<いま、民主党が主軸となった政権を手にしたなら、我々はいかなる政府を創り出すべきか>という観点から議論をスタートさせた。明治近代化時代以来続いてきた官僚依存型の政府運営ではなく、また、70年代から顕著になってきた政官融合の「族議員」型政治による政府の空洞化でもなく、国民の代表として選出された国会議員の中から国会において指名を受けた内閣総理大臣、すなわち首相のリーダーシップの下で統合的に運営される「責任ある政府」の姿を論議した。

 国民はいま、日本社会が国際化、高度情報化、地球環境問題の顕在化、少子高齢社会化、そして性差による分業の崩壊など新たな価値観とライフスタイルの出現にある種の戸惑いを抱きながら、その未来について政府が有効な役割を果たすことを強く希望している。それは、物不足を解消するための大量生産や勤勉社会の奨励ではなく、強者と弱者を選別して推進された単なる給付行政の拡大でもない、いわば既存の政府パラダイムの変革を求めるほどの大きな社会変容であり、それらに政治がどう対処するのかを不安と期待を混交させつつ寄せる希望である。

 政権を担うとする政党は、何よりもこうした国民の希望に応えなくてはならない。そして、そのために何が必要なのかを真摯に考え、構想し、行動しなくてはいけない。その一つの試みが、政権運営委員会の小さな取り組みであった。

 近代日本が直面したことのない新しい課題に挑戦する政府は、それ自体、新しい政権の構造を持たなくてはならない。容易に回答を見いだせない課題にもチャレンジし、変革に対して能動的な行動選択をとることのできるリーダーシップのあり方を問い、官僚組織の延長に据え置かれてきたこれまでの内閣運営のあり方を見直し、政府を担う政党の使命と機能そのものを問い質すことから始めなくてはいけない。

 折しも、政党はすべて、小選挙区制という新たな選挙制度の下で「政権交代のある民主主義」の定着に挑戦すべく期待されるようになった。政治改革を巡ってこの間、幾分の政権交代劇も見られたが、国民は政府の構造が何ら変わっていないことに失望の念を抱いている。確かに、長い間培われてきた政治の惰性は急には変わらないのかもしれない。しかし、政治に突きつけられている課題は悠長に待ってくれるわけではない。われわれは、少し先を急がなくてはならないのである。

民主党は、これまで、数々の政策提起や議員立法を通じて国民が納得できる政党活動を野党として試行錯誤の中で追求してきた。そして、われわれには、いま、仮に、民主党に政権を主導するチャンスが与えられるならば、政府の構造を変え、国民の期待と時代の要請に応えうる新しい政府の姿を確立する覚悟と用意がある。

 この提言を一つの素材として、大いなる議論が沸き起こることを期待する。

第1章 政府の構造改革に向けて

1-1 政権への道−新しい政府のための改革課題 われわれは、責任ある野党として、今日まで、政権交代を求めてその政党運営を進めてきた。それは現政権の限界を鋭く突き、新政権へ転換することこそがその限界を克服するための道であることを主張するものであった。

政権交代には、政府の基本構造を変えることなく行われるものと、政府の構造改革にチャレンジするものとの2種類がある。93年の細川政権は、政権交代という点で画期的なものであったが、政府の構造改革をめざすものとはならなかった。それは、むしろ結果的には、特定省庁の官僚に強く依存するものであった。

 構造改革にまで切り込む政権の実現には、相応の準備と政権基盤の変革が先行しなくてはならない。


 政権運営委員会における一連のヒアリングで鮮明となってきた最も大きな点は、政権の構造改革にまで突き進むうえでの決定的な条件として、既存の政党が「政権担当型政党への進化」をどの程度果たすことが出来るかという指摘であった。議院内閣制の下では、与党となった政党が政府を直接担うのであって、そのことは政党及びそれに所属する政治家の力量が政府運営の制約要件となるということである。政権交代はしてみたものの、どのように省庁をリードするのか、内閣の運営はいかにして行うべきなのか、その十分な備えなくしては政府の構造改革に切り込む政権運営はもとより、政府を通じた基本的な政治指導も果たされないことになる。われわれは、何よりもまず、この課題に回答していく義務がある。

 第二は、政府の中核を構成する「内閣」のあり方を変革するためには、内閣法改正などの制度改革と同時に、「首相のリーダーシップ発現のための基盤整備」及び「内閣機構の拡充」が極めて大きいという点である。また特に、長い間の慣行として定着してきた内閣運営そのものに改善を加えていなかくてはならないことであり、それは制度改革のみで成し遂げられるものではなく、政治の側の執拗な改革努力を必要とするものである。

 第三は、政府を構成する内閣と政党(与党)との一体的運営をいかに実現するかという実際的な問題があるということであった。政府運営の最大の問題点は、制度に起因する要因よりも、内閣と政党の関係そのものに因るところが大きい。橋本内閣の行政改革方針を阻害した最大の要因は、野党ではなく、省庁と関係団体の利害を代弁する与党議員の政治行動にあったとされている。これでは、政府は責任ある仕事を果たすことができない。

 第四は、政権の構造改革を使命とする政権の運営は、比較的中期の改革プロセスを必要とするものであり、それだけに戦略的思考に裏付けられた政権基盤の確立を執拗に追求し着実に準備する、「持続する政治意志」と「高い質のマネジメント能力」が不可欠であるということである。それは単に政治家の影響力増大だけでは達成できない知恵と工夫を必要としている。


1-2 新しい政府の実現に向けて

 今日の日本の政府システムは、官僚依存の自民党長期政権が続いたことも要因となって、国民生活の現在と将来や国益に必要な政治的リーダーシップを行使したり、その政府活動に関して明確な責任を負うということがきわめて難しいものとなっている。そのことは、一言で言えば、政府機能が十全に発揮することができなくなっていることにほかならない。

 それでも、経済成長が持続し、国をあげて産業政策を推進していかなくてはならない時期には、さして問題とはされずに済んできた。しかし、低成長時代に入り、少子高齢社会化、高度情報化、国際化、デフレ経済化など、政治が政府を通じて解決しなければならない困難な課題が一斉に顕在化した今日では、政府の機能不全に対して国民の厳しい目が向けられるようになっている。

 いま、求められていることは、「単に政権交代があればよい」というだけでなく、それによって樹立される新しい政府が真に国民生活の現在と将来に有効に機能するものであるか、日本の国益にかなった舵取りを政治の決断と責任において取り進めるものであるか、ということである。

 この課題を受け、現状の政府の機能が持っている問題点を明らかにし、その問題の克服に向けてチャレンジする政治家と政党の登場が望まれている。
 

 以下は、政権運営委員会に課せられた任務を「政府の構造改革を含む政権形成のプロセスと課題」を明らかにすることであるとの認識に立ち、数次に及ぶ専門家からの連続ヒアリングを受けてより鮮明になってきた論点を再整理し、その改革の方向を提言するものである。




1-3 日本政府もしくは内閣の構造的問題点

1) 政府の構成及び運営に関する問題点

(1) 政府運営の内閣・政党二元システム

 日本政府の構造的な特徴の第一は、実質上の政府の運営が「内閣」と「政権党」との二元構造になっている点にある。このため、イギリスの政府のように、対議会対策を含めて政府の職務と責任が一元化されている場合とは異なり、いわば<公式政府>と<非公式政府>との二元構造の中にその運営実態が分化しており、責任の曖昧性を生じる結果となっている。

(2) 行政官による政府機能への浸透

 諸外国との比較での政府の構造的特徴の第二は、各省の外局の長官に行政官を就任させたり、内閣官房においても首席参事官から首相付き秘書官まで各省からの出向者が配置されるなど、本来政治家もしくは政治的任用者のポストと思われる地位に行政官が充てられていることである。

(3) 政府の小さな政治機能の現状

 以上の2つの事情などから、政府の構成が比較的限定された政治家から行われており、その意味において、対政党・対官僚関係における「縮減された政府」が日本政府の特徴となっている。そして、このことが政府の権限と行動範囲を制約し、政府の政治的イニシァティブの発揮を大きく制限している。

 結果として、日本の政党政治家及び政府は、行政官とその官僚行政組織による補佐に全面的に依存し、その限界内において政権を担当するという現状を繰り返すこととなっている。


2) 内閣の構成と運営上の制約

(1) 内閣の構成の派閥均衡人事等に伴う制約

 内閣総理大臣は、閣僚を指名する人事権と罷免権を制度的に有しており、その範囲では広い権限が認められている。しかし、政権党の派閥構造が内閣人事を拘束し、実力主義ではなく、派閥均衡の内閣の構成が行われている。これにより、内閣総理大臣のリーダーシップが拘束され、改革の実行を先送りさせる要因ともなっている。 

(2) 族議員政治による制約

 70年代以降、それまでの官僚主導政治に対する変化として「族議員」の影響力に注目が集まり、「党高官低」が指摘されるようになった。この傾向は、行政に対する職業的政治家の関与が増大したことを意味するが、それは、いわば<内閣の外で>特定利害関心に基づく「部分政府」状況を創り出すこととなった。このことが責任ある内閣の活動の阻害要因となっている。

(3) 閣議の意志決定段階における省庁縦割りの制約

 「分担管理の原則」を基調とする国務大臣=行政長官制度が、行政各部(=省庁)における政治的任用及び政治家の配置の限定を伴って、合議制システムとしての閣議の中に<省庁縦割型>の割拠制をもたらしている。このことが、慣習としての全会一致制と重なって、閣議による総合調整、及び内閣総理大臣のリーダーシップを大きく制約している。

(4) 上記の制約要因から生じる首相のリーダーシップの限界

日本の内閣総理大臣のリーダーシップを制約しているのは、法制度要因よりも、その政治構造的要因がある。例えば、自民党政権の場合、政権党内の会派や派閥という分化構造、官僚と族議員のタテ割型分化構造の双方が、内閣総理大臣の統合的リーダーシップの発現のための阻害要因となっている。そのことは、具体的に内閣総理大臣の閣僚任免権それ自体が、派閥の構造を通じて制限され、いわゆる派閥均衡人事にとどまることなどに現れている。



1-4 政府構造の改革のための「5つの焦点課題」 日本政府の構造的制約の中には、現行法制度の枠の中で解決できるものと、現行法制度の改革を必要とするものの2つがある。このレベルの違いに配慮しつつ、本委員会にて議論を行い、以下の通り、政府のあり方をめぐる論点を「5つの関係」に係る課題として整理し、改革の方向を提言することとした。


(1) 政府と政党との関係

 現在の政府運営が、内閣と政権党との二元構造となっており、そのことが政府としての一体性の欠如や責任関係の曖昧性につながる要因となっている。イギリスの政府のように、政権党を内閣の中に統合し、内閣が責任をもって政府を運営できる構造にすべきである。

(2) 政府と行政との関係

 官僚主導型の政府運営となりがちな現在の内閣運営を改善するため、担当大臣制度や現行の事務次官会議のあり方を見直す必要がある。とくに、縦割り行政の弊害を克服し、内閣の統一した政策意志の下に政府の運営を行うための仕組みづくを検討すべきである。

(3) 政府と国会との関係

 政党間及び政党政治家間の政策論議を通じて国政の基本方向を明らかにしていく議会制の活性化を前提に、政府と国会との関係を再構築していく必要がある。政府委員が国会答弁に立つ方式を改めて、政党政治家及び政府責任者中心の審議を実現する。国会対策を政党に依存する現行の方式を改革し、可能な限り政府の主導の下に対国会対策機能を整備すべきである。
 
(4) 首相のリーダーシップと閣議又は内閣との関係

 首相のリーダーシップを発現させるために、全会一致制と「分担管理の原則」に基づく現行の内閣運営や閣議のあり方を改革する必要がある。この制約を除去し、首相の判断で行政各部を指揮監督することができる仕組みを、内閣法改正などの制度改革と首相スタッフの充実の両面で検討すべきである。

(5) 政府と国民との関係

 <首相候補者>と<政権政策>の提示による国民による直接的な政権選択の機会を提供するよう努める。それとともに、政府公報の充実や首相報道官システムの導入、審議会の活用などによる国民とのコミュニケーション機会の拡大、情報公開法や行政手続法の整備・改善による「国民内閣制」の実現を目指す。



第2章 現行制度の下での政府の構造改革

2-1 内閣総理大臣補佐体制と内閣機能強化に係る改革課題
1) 内閣総理大臣のリーダーシップに係る問題点
 内閣総理大臣は、内閣の首長として政府をリードする地位にある。閣僚の任命と罷免を行うなど内閣運営に係るもののほか、法律の下の行政を指揮監督する、外交政策では国を代表してその政治意志を表明する、多様な政治的軋轢を調整する、議会に向けては合意形成又は多数派の維持を働きかけるなど、その権限と責任はきわめて大きい。特に、民主主義が定着し、マスメディアを通じてその行動が日々国民の注視の下におかれるようになって以来、内閣総理大臣は国民的リーダーとしての資質も厳しく求められるようになった。

 これらの多様な機能と責任を果たす内閣総理大臣に必要なことは、その十全なリーダーシップの発揮である。総理は、なによりも国民の期待に応えなくてはならず、そのために克服すべき困難に立ち向かっていかなければならない。また、国の現在と将来を見通す優れた先見性と強い指導力を発揮しなくてはならない。総理はまた、行政に対しては優れた経営者であり、議会に対しては巧妙な調整者であり、国民に対しては魅力あふれるコミュニケーターとして立ち振る舞わなければならない。そして、日本政府の「顔」として海外に説得力あるメッセージを送り届けるリーダーとならなければならない。

 しかし、今日の内閣システムは、合議体としての内閣の補佐機構を優先して、内閣総理大臣の個性的・政治的なリーダーシップを発揮させるための補佐機能はきわめて脆弱なままにとどまっている。

加えて、戦後の自民党長期政権の下で、与党と内閣の二元構造が政府の動きを制約し、内閣総理大臣のリーダーシップの発現を大きく制限してきたという政治力学上の課題も抱えている。与党内の派閥力学に拘束されて国民が求める政治的リーダーシップの発現を困難にするこうした現状を変革していく必要がある。とりわけ、内閣総理大臣の政治的補佐機能のあり方を検討することが重要である。この点、現在進められている政府の行政改革会議の提言は、「政治抜きの機構整備」となっており、内閣総理大臣の政治的リーダーシップのための改革として中途半端なものにとどまっていると言わざるを得ない。総理大臣スタッフ体制の充実、政治任用及び政治家登用の枠の拡大などにより、内閣総理大臣が優れた政治的リーダーシップを柔軟に発揮できる基盤の整備を進める必要がある。

→現行内閣法の下における内閣総理大臣等の補佐体制の整備(添付資料参照)

2) 内閣官房機能の拡充と官邸体制の整備

内閣官房には、内閣システムを支える膨大な情報の収集と大量のスタッフの配属が行われている。それは、内閣主導の「政治と行政のインターフェース」を担う重要な要でもある。政治的補佐機能の拡充と任用の柔軟化を中心に、官房の充実整備を検討すべきである。

 内閣総理大臣の補佐機能の充実、内閣機能の強化、大臣の補佐機構の拡充のすべてに共通するものとして、政治任用の拡大・制度化の問題がある。政治の側が主要ポストの人事権を掌握することは政治的リーダーシップ発揮の基礎的前提条件である。将来的には、国家公務員法の改正も視野に検討する必要がある。全般的な政治任用(ポリティカル・アポインティ)の拡大、内閣スタッフの任用に関する内閣総理大臣の裁量権の拡大、身分保障システムの確立など検討すべき課題は多い。

(1) 内閣総理大臣の政治的補佐体制の確立

 現行内閣法を与件とした場合でも、官邸には、政治家もしくは国家公務員法上の政治任用スタッフとして計9人〔官房長官(1)、官房副長官(2)、総理大臣補佐官(3)、総理大臣秘書官(3)〕を配置することができ、第一次的なチームを構成することができる。ただし、秘書官については、現行配置されている3名をすべて政治任用の秘書官として行政の外からスタッフを配置する。

 さらに、上記の外、官職を有しないスタッフを内閣総理大臣の補佐として配置することも可能と考えられる。例えば、特別補佐、補佐及び秘書などである。また、各省庁からの出向により事務官を総理大臣秘書官として配置することも可能である。これらを含めると、総計20人規模のスタッフ体制を構築することができる。なお、官職を有しないスタッフの配置については、基本的に政党職員スタッフまたは党費による民間スタッフの調達が考えられる。

(2) 総理大臣の政治的補佐職の地位・権限の明確化

 内閣総理大臣補佐官及び内閣総理大臣秘書官については、総理直結のスタッフとして一体的な行動が可能となる地位と権限を持たせる必要がある。例えば、総理大臣室にて行われる会議や総理大臣が出席する会合及び閣議に陪席することができることとする。このため、総理は、官邸の運営について自らその指針を公にして新しいルールの確認を求める必要がある。

(3) 政官のインターフェースを担う内閣官房副長官

 政治家がなる二人の官房副長官のうち一人は、<政策調整>を担当することを明確にし、合同次官会議の運営など、効率的な政策・政治対応が可能な仕組みを検討する必要がある。官房副長官は、政府を構成する政党の政調会長を兼務する。また、その機能を補佐するため、具体的に、官房副長官の下に、政治家の官房長官補佐を非官職で配置し、政調機能を担当させることができるよう体制を整備する。他の一名は、院内の国対委員会との連絡調整や官房として求められる対外折衝などを担当する。 

(4) 総理の戦略的政策機能のサポート体制の確立

 内閣総理大臣の私的諮問機関その他民間人による政策会議の設置を検討する必要がある。大平内閣時代の「田園都市国家構想」や中曽根内閣時代の「第二臨調」の動きを支えた各種政策会議やタスクフォース型組織を積極的に活用すべきである。また、常設のアドバイザー・グループを設置して総理の専門家による補佐の仕組みとして活用することも必要である。なお、このような総理直轄型の政策会議についてはその柔軟な設置を可能とするよう基本方針に取り込むことが重要と考える。

(5) 内閣総理大臣の執行方針(演説草稿)に関する仕組みの明確化

内閣総理大臣は、重要な政策及び内閣運営に関する基本方針の作成を行う。これは、総理大臣の執行方針・施政方針(演説草稿)の作成をその典型とする。その実質的な総括責任者は官房長官であるが、草稿作成の作業は総理大臣補佐官が担うものとする。但し、作成された方針は、閣議を経て承認される。

(6) 報道官機能の整備

 現行の仕組みでは、報道官機能、情報収集機能、広報機能などが統合されておらず、総じて縦割型のままとなっている。これでは、総理のメッセージやイメージに関するトータル戦略は望めない。将来的には現行広報官の政治任用による専門的な広報体制を整備することをめざし、当面は、報道機能強化のために、報道担当秘書官を配置し、その連携の下に広報官室を有効活用する。将来的には、600人を超える職員を擁するドイツの新聞情報庁のように、総理のスポークスマン機能、国内外の広報対策、海外情報などの収集・分析機能、マスメディアに係るアドバイス機能を含めた組織体制の確立を構想する必要がある。

(7) 内閣の危機管理体制の確立

 内閣の危機管理機能については、すでに「内閣危機管理監」の設置(内閣法14条の2)をはじめ、非常時における司令塔機能の確保などが進められている。しかし、単に自然災害のみならず、テロリズムやその他の大量殺傷型事件の多発、情報パニックに起因する急速な社会的混乱、原発事故や化学工場の爆発事故など広域にわたって被害が波及する可能性の高い緊急事態等に即応する体制を確保するためには、予め閣議において確認された基本方針に基づいて、内閣総理大臣が必要な対応行動をとることができるようルールをより明確化しておくことが重要である。

 これらのためには、各領域ごとに予測される緊急事態に対応する専門的人材の配置とその任用期間の長期化を検討する必要がある。

(8) 総理府の積極活用と人事システムの改善

 現行の総理府を諸外国における「内閣府」と同様に拡充し活性化する。このため、その人事配置については官邸主導で行う。実質上、政治任用と同等の意味合いを持つものとし、官邸に対するロイヤリティの調達を確保し、総理府配属経験者はその後も、省庁横断的な人事において重要なポジションを占めるようシステム化することをめざす。

 また特に、各省庁の次官、局長クラスのいわゆる幹部人事については、その直接的な任免権は関係大臣に認めつつ、政治任用と同様に内閣及び内閣総理大臣の同意権を認めるべきである。

→内閣総理大臣補佐官を軸とするスタッフ体制の整備(添付資料参照)
→官房長官のライン・スタッフ配置図(添付資料参照)

2-2 対議会・対政党関係と省庁間調整の仕組み
1) 内閣と与党の一体化による政府の運営

 政府と与党との統合的運営は、責任ある政府運営の要であり、新しい政府の基本線である。このため、与党の党首、幹事長及び政調会長はすべて閣僚として入閣することとし、政府の外に与党が非責任主体のまま強力な政治的影響力を行使するという事態を避けるべきである。これまでのような、与党の幹事長が内閣の方針とは異なる見解を堂々と陳述したり、党税調や部会の政治的圧力が政府の決定を左右し拘束するといったことは解消されなくてはならない。責任を曖昧にする従前からの二元構造を解消する必要がある。

与党各党の幹事長は、党務を指導するとともに、政府の構成的責任者として、与党内の調整と対議会関係の窓口となって政府の重要な任務を遂行する。このため、基本的に、無任所大臣としての地位を有しつつ行動する。政調会長は、少なくとも一人が官房副長官を担い、官房長官の指揮の下、内閣及び各省庁間の政策調整に当たる。与党の党首は、内閣総理大臣に就任する者を除いて、政府の副総理格の閣僚を担い、内閣総理大臣とともに政治的調整の頂点を担う。

内閣官房の中には、官房長官及び同副長官の外、内閣総理大臣補佐官、内閣総理大臣秘書官らが政治家及び政治任用として政党などから送り込まれ、与党と内閣補佐体制の一体的運営の要となる。


内閣主要閣僚の構成イメージ【二党連立政権の場合】
 内閣総理大臣   =与党Aの党首
 副総理格の主要大臣=与党Bの党首
 無任所大臣(特命) =与党Aの現幹事長
    〃     =与党Bの現幹事長
 官房長官     =与党Aの役員から
 官房副長官    =与党Aの政調会長
     〃    =与党A又は与党Bから
 閣  僚     =与党Bの政調会長

*上記はモデルケースであり、主要ポストをあらかじめ指定して内閣総理大臣の任命権を拘束するものではない。




2) 政府の対議会機能の充実と議会との相互協力体制の確立

 国会対策機能は院内に置く。ただし、幹事長を兼務する無任所大臣及び官房副長官の一人が院内と内閣の連絡調整に当たる。院内の与党議員集団をとりまとめ、かつ国会対策を担う総括的な責任者(以下、「院内総務」と呼ぶ)については、閣僚級の人材を配置する。院内総務は、閣僚には属さないものの、インナーキャビネットとしての「内閣協議会」(後述)に出席することができる。また、そのポストには、政務次官を経験したか閣僚を少なくとも一度は経験している議員、または与党三役経験者などを想定する。

こうした院内における統括者としての「院内総務」の下に、10名程度の院内幹事を配置する。院内幹事は、複数の省庁及び議会委員会を担当し、その政治的調整を行う。政治的調整の意味は、内閣の意を受けて、政治主導の下に各省庁の政策課題を議決すべき立法案件として調整し、合意の調達を推進するというものである。院内幹事は、院内総務の統括の下、院内においては議員集団を統率しつつ政治的調整を推進するが、当然、強力な野党との折衝や調整が重要な任務ともなる。
院内幹事は、省庁との調整、与党内の調整、委員会審議の促進、対峙する野党との折衝などを通じて、多角的な政治調整訓練を受けることになり、任期の終了後は、自ずと閣僚、主要政務次官等への任用が期待されることになる。

院内の主な役員体制

 院内総務=与党国対委員長
 院内筆頭幹事・院内幹事=与党議員(10名程度)

*各党の院内総務は、政府のインナーキャビネットとしての「内閣協議会」に出席することができる。

 これらの改革は、国会改革と並行して推進されなくてはならない。具体的に、政府委員制度の廃止、委員会における事実上の大臣出席義務化の改善、本会議における総理大臣の出席義務についても再検討する必要がある。国会は、政府の行動に対する監視機構としてその機能を充実するとともに、議員間の自由闊達な討論の場としての性格をより明確にしてゆく必要がある。総理大臣や各省大臣の議会における審議対応も、イギリスのプライムミニスター・タイムのような仕組みを設けるなど、改善すべきである。



3)政官インターフェイス機能の整備と政治主導の閣議案件調整

 これまで、内閣官房による実質的な調整が介入していたとは言え、官僚の長たる事務次官の会議が閣議案件の準備過程として慣習的に制度化されてきた。こうした事態は、最終決定権限が内閣にあることから、政治的に特に問題にされてこなかったものの、結果として、官僚主導の政策意思形成を許し、省庁割拠型の分散型政策決定をもたらして内閣及び内閣総理大臣の政治的リーダーシップを制約してきたことは否めない。

閣議案件の処理プロセスとしての事務次官会議はこれを発展的に改組し、政治主導の準備過程を確立する。具体的には、政務次官会議の機能を重視し、さらに官僚のトップとしての事務次官を組み入れた「合同次官会議」を設定する。これにより、閣議案件に係る政治的調整は政府を構成する政治家が自らの努力によって推進することとなる。このため、膨大な政策案件を処理するための補佐体制を大臣及び政務次官の下に可能な限り整備する。

 政務次官は、与党各部会の長を兼務し、政府と与党との直接的な連結の役割を果たすこととする。これにより、政府外におかれた政治家チームを行政機構の監視と管理に積極活用できるようにする。また、将来的には制度改革を含めて、各省大臣の下に官職としての秘書官の外、政治家の大臣政務官などの配置を行う。

 政務次官の下にも政務スタッフを配置する。これらの政治的配置構造を受けて、省内から有為の人材をスタッフ的な秘書官として複数配置することを検討する。

政務次官会議は、このようなバックアップ体制を基盤として運営され、閣議案件の準備と必要な政治的調整を推進するこことなる。

われわれは、政府が統治機構として執り行う「政治」とその政治意志に従って展開される「行政」とを明瞭に区分したいと考える。政府の運営は、むろん政治家のみで展開されるわけではなく、政治家と行政集団との協力関係の実現があって初めて果たされるものである。しかし、このことは政治本来の役割を官僚に委ねてよいという意味ではない。国民に対して直接責任を負う「政治」の役割は、自ら打ち立てた政策意志や政治課題に沿って官僚行政をコントロールすることにある。この点、コントロールすべき政治が官僚の調整活動に依存する現状は異様としか言いようがない。この現状を改革し、政治が主導する政官のインターフェース機能を確立する必要がある。与党の部会長を兼務し大臣と官僚との間にあって政策調整にあたる政務次官は、このインターフェース機能の中枢的任務を処理することを期待されている。

(1) 大臣の政治的補佐体制の確保

 省庁を統括すべき大臣の補佐機構はきわめて脆弱なものであり、その多くを官僚に依存している実状にある。これでは、政治的指導力を発揮すべき大臣が官僚に包囲される構図となり、官僚依存の現状を変えることは望めない。政治と行政との協力関係の維持は重要な課題であるが、政治がリーダーシップと責任をより確かなものとする仕組みに変革していかなくてはならない。

 将来的には副大臣制度の導入などを考慮しつつ、現制度下でも可能な条件整備に取り組む必要がある。具体的に各省庁に、担当大臣の外、政務次官、大臣秘書官が配置される。これらに加えて、政治家の大臣補佐、非官職の大臣付秘書スタッフを置くことも可能である。各省庁では、重要な意思形成及び省内調整の場として、大臣が主宰する「省議」が開かれることとなるが、省議には、上記の特別職や政治任用者などを同席や陪席させることができるものとする。

 なお、現行制度の下で可能な政治家もしくは政党スタッフ等による政治職の配置は、大臣、政務次官、秘書官、補佐もしくは秘書の5名程度となる。

各省庁における大臣の政治的補佐体制

 政務次官=与党部会長
 大臣補佐=与党国会議員
 大臣秘書官=政党スタッフ等

*政務次官は、与党の各部会長を兼務する。大臣補佐は議員がなるが、当面官職を有しない補佐にとどまる。秘書官は、政党が指名する非議員スタッフ。


(2) 政務次官の政策調整機能の充実

 政務次官は、政府を構成する政党の部会長を兼ねるものとする。これにより、政党は内閣と一体の政策運営に責任を持つこことなる、同時に、省庁に対する政治主導の政策調整を内閣の下でより可能にすることとなる。省庁間の政策調整については、政治レベルの調整機構として、各省庁の政務次官から構成される「政務次官政策調整会議」において行う。政策調整会議は、重点課題ごとに官房副長官が関係省庁政務次官を召集して開くこともできる。必要な場合は、官房長官が、関係大臣及び政務次官等の参加を得て関係調整会議を開くことができる。

 与党専門部会の長を兼ねる政務次官は、大臣補佐を含めて、秘書官もしくは非官職の秘書スタッフとともに、政策課題に応じて政党内の合意を調達する責任を負うものとする。党内調整を要するものについては、官房長官及び党幹事長相当職との調整に上げて、政策合意を実現する。

(3) 合同次官会議の設定と運営

 従来省庁間政策調整の仕組みとして実施されてきた「事務次官会議」を改組し、これに替えて、新たに「合同次官会議」を設置する。同会議は、閣議にかける案件について協議し、トップレベルの政治判断を要する事案については閣議に上げるなど、調整済み案件の閣議への報告や承認を求めるとともに、調整課題のレベル分けを併せて行うものとする。

 以上により、政府は、官邸チームを中心に、省庁間の政策調整チームとの連携の上で、全体としての政治指導を発揮することができるようになる。ここにおいて、議院内閣制の本来機能として、議会に対して責任を持ち、与党たる政党が主体となって、「官」に対する「政」のコントロールと、「官」と「政」との積極的な相互調整が現実的なものとなるのである


→内閣官房長官を軸とする合同事務次官会議の開催(添付資料参照)


2-3 総理のリーダーシップ発揮と柔軟な内閣運営
1)「内閣協議会」の柔軟な運営と活用

(1)閣議の活性化

 現在の閣議は形式的なものにとどまっており、文書への花押のサイン会になっているとの指摘もあるほどである。実質的な合意は事務次官会議の前に形成されていて、内閣としての政治判断を下すケースも少ないのが実状である。この要因として、(イ)内閣を構成する各大臣が行政各部の代表者にとどまり、自省に係る案件以外について国務大臣としての闊達な議論を行うことを回避する傾向にあること、(ロ)閣議にかける案件について内閣総理大臣が積極的に発議することが少ないこと、(ハ)事務次官会議など官僚調整の段階で実質合意を調達するといった慣行的仕組みが閣議の議論の必要度を低下させているなどが挙げられる。

 しかし、政治家たる国務大臣が構成する閣議の活性化を進めて内閣機能の強化をはかることは政治的リーダーシップ発揮のための前提条件である。すでに述べた合同次官会議の設定など合意形成のための政治調整を活性化する仕組みを確立すると同時に、閣議に行政課題を超えた政治案件を持ち込んで闊達な議論が生まれるよう内閣総理大臣の発議権をフルに活用し、最終的には総理の決断に収束することを前提に閣僚間の自由な討論が展開されるよう工夫することが重要である。


(2)内閣の意思形成のための柔軟な仕組みの積極活用 

そもそも、内閣の円滑な運営は、日本国憲法の規定に沿った議院内閣制の基本である。その点は、内閣総理大臣が最終意思決定を行う際には、合議体としての内閣の運営を通じて政府の舵取りを進めることが求められているという意味でもある。政府の最終決定は、閣議をもって行われなければならない。

 しかし、このことは、全員立ち会い型の閣議運営以外の政治的意思形成をいっさい認めないというものではない。すでに、閣議そのものが定期的・臨時的な会合として設定されるだけでなく、いわゆる「持ち回り閣議」という緩やかな運営方式をとっているうえ、危機管理の場面においては、総理の決定を優先して、事後的に閣議にかける方式も取り入れられていることからも、きわめて柔軟な運営を可能としていると見るべきである。ましてや、特定政策課題についての「関係閣僚会議」や「閣僚懇談会」に代表されるように、閣議形式とは異なる閣議事項の意思形成システムも認められているのである。

 政治主導の多様な仕組みを大いに生かして、迅速かつ効果的・指導的な政策的意思形成を促進すべきである。


(3)インナーキャビネット方式によるトップダウン型意思形成の確立 

われわれは、これらに加えて、重要事項について、総理が主導するためのインナーキャビネットの運営が重要な役割を果たすものと考える。イギリスでは、閣僚全員による閣議以外に、関係閣僚からなる「内閣委員会」が数多く設置されている。内閣委員会には、大臣のみが出席する大臣委員会、公務員のみで構成される委員会、政治家と公務員で構成それる委員会などがあり、その形態も多様である。

こうした多様な意思形成の仕組みは、総理の政策的・政治的意志決定を迅速化するシステムであり、かつ与党と内閣の統合的意思形成の仕組みとしてインナーキャビネットを積極的に展開する必要がある。インナーキャビネットは、イギリスにおける戦時内閣(ロイド・ジョージ内閣、チャーチル内閣)の先例によるもので、日本でもかつて「5相会議」「3相会議」などの先例のほか、「閣僚審議会」として制度化されたケースもある。特に、重要事項に関する審議は、内閣総理大臣及び副総理格の大臣の外、幹事長である無任所大臣、院内総務、関係閣僚の出席による迅速かつ効果的な意思形成のシステムを確立することによる政治的指導性の発現が望まれる。

◇内閣総理大臣が議長として主催する
 「内閣協議会」の類型

A)トップマネジメントの会議として主要閣僚及び政治家に限定するもの。

B)関係閣僚のみで構成するもの。

C)官僚、その他の公務員が出席するもの。

D)内閣総理大臣のスタッフとして民間人も出席するもの。




2)内閣の意志決定と「閣議・内閣協議会・次官会議」関係

 新たに設置される合同次官会議もしくは政務次官会議(政務次官政策調整会議)において、基本的な政策事項に関する省庁間調整を担うが、調整が困難な問題については閣議案件には上げないといった従前のやり方を修正し、それを内閣総理大臣が統括する内閣協議会に持ち上げて政策調整を行うこととする。

 内閣協議会は、総理大臣が自らの最高の調整権限を行使して、政治的・政策的調整に努めることになるが、実質的な政策決定はこの段階で実施される。場合によっては、内閣協議会で提案された案件が、トップダウン型で各省庁の大臣及び次官に指示案件としておろされ、それが合同次官会議にかけられるということも行われる。
こうして、内閣にとっては、省庁から発信されるボトムアップ型案件と内閣総理大臣が中心となったトップダウン型案件の双方を閣議案権として処理することになる。ただし、いずれの場合であっても、最終的に閣議を通じて内閣としての決定手続きを経ることとする。




3)政府と国民との相互的な関係の確立へ

(1)開かれた政府運営

何よりもまず、政府は国民に開かれたものでなければならない。新しい政府は、「国民の知る権利」に裏打ちされた情報公開制度の実現と定着を最優先する。「政府は何を議論したのか」「政府は、何を決定したのか」、国民は知る権利を有している。

院内における政治調整や政党間の駆け引きを実際的政治の処方として積極的に活用しつつも、それを国民の監視の外に置くことは望まれていない。国民の前に、その経緯を可能な限り開示し、開かれた政府の運営につとめる必要がある。いわゆる水面下の調整過程を余儀なくされたものであっても、事後的に国民にそのプロセスを開示できるよう記録し保存することも検討しなくてはいけない。

さらに、行政手続法の趣旨に従い、政策の決定過程に国民の関与が可能となる手続上の手法の開発も検討する必要がある。総理の周辺に公開型の政策会議を設置して、専門家や国民各層の代表的意見を積極的に取り入れるシステムを確保することも重要である。例えば、国民すべてが利害関心を持つ年金や税制及び環境問題などに関する各種の国民会議の運営に取り組むべきである。


(2)国民とのコミュニケーション重視型の政府

国民はまた、政府のリーダーであり、国民の政治的シンボルでもある内閣総理大臣のメッセージを受け取り、それを自らの判断の素材にしたいと考えている。マスメディアや各種の情報通信システムの発達により、そうした欲求はますます強まっている。総理は、政府が直面している問題について直接国民に呼びかけ、そのための政策の方向について問いかける努力をすべきである。テレビ映像メディアを通じて、新聞情報を通じて、日常的にメッセージを国民に向けて発信すべきである。インターネットを使った双方向のコミュニケーションは今や通常の手段である。このため、総理を主宰者とする国民フォーラムの開催などのほか、ドイツやイギリスのように、総理の補佐機能としてメディア関係の専門的アドバイザーの確保や報道官機能の確立を早急に検討し整備する必要がある。


(3)首相及び政権政策を実質的に国民が直接選択できる選挙の実現

小選挙区選挙制度は、国民が直接「政権与党」を選択する機会を提供するものとなった。具体的には、各党は「首相(総理)候補予定者」を確定し、国民に対してどの人物を総理として選択するかを求めることができる。また、政党はそれぞれ自党の掲げる「政権政策」を明示し、新たに形成される政府の基本政策を国民が直接選ぶことができるようにする。こうして、選ばれた首相(総理)とそれを選んだ国民とが直接結びつくこととなり、これまでのような<業界のための政治>ではなく、<国民のための政府>が誕生することになる。かくて、議院内閣制が「政党内閣制」として機能し、さらに政府と国民、首相(総理)と国民との直接的関係を軸とする「国民内閣制」への展開を展望することができる。

これらの国民との対話と国民選択の機会の拡張こそが21世紀日本の政治と政府に求められる重要な通過点である。




第3章 内閣システムに関する制度改革

3-1 内閣の法制度と内閣のシステム改革
 前章における改革提案は、基本的に現行内閣法の下での政府構造の改革を提起するものであった。しかし、議院内閣制の本来機能を十全に発揮し、現代の新しい政治・政策課題に対応する政府を形成するためには、法制度の改正を含めた抜本改革へと進み出していかなくてはならない。

 戦後の日本国憲法が内閣制度に取り入れた基本原則の最大の特徴の一つは、合議体としての内閣そのものの強化と同時に、内閣総理大臣を内閣の「首長」として位置づけ、その地位・権限を明確に強化したことにある。にもかかわらず、内閣運営の実際にあっては、戦前から続いている伝統的な行政法解釈に基づく<内閣中心主義>と<分担管理の原則>が、内閣総理大臣の行動選択及びその指導性の発現を制約するという事態を残してきた。

 そもそも、憲法に言う「内閣」とは、単なる合議機関ではない。それは、内閣総理大臣の指揮監督または統轄の下に成立する執政機関である。内閣総理大臣は、明治憲法下の「同輩中の第一人者」とは全く異にする地位を占めているのであり、具体的に日本国憲法66条において「首長たる内閣総理大臣」の規定をおいて、その他の国務大臣の上位に位置づけられたこと、同68条では国務大臣の任免権を規定して内閣総理大臣の優越的権限を明確にしていることなどによっても、そのことは明かである。

 すなわち、首長たる内閣総理大臣は、内閣の運営に関する優越的権限を背景とする「統轄権」を有しているのであり、その点を何よりも明確にすることが重要である。


 「内閣」と「内閣総理大臣」を分離し、あたかも内閣総理大臣が内閣の単なる一員のように法解釈するやり方には自ずと戦前からのイデオロギーが含まれているのであって、われわれはこの解釈に組みしない。

 こうした伝統的法解釈が働いたためか、現行内閣法については、その規定の順位や配置について整合性を欠くところが見受けられ、総じて、法の整備が不十分なものにどとまっている。

 第一に、内閣総理大臣の地位にふさわしい権能についての明確な規定を欠いている。具体的には、憲法にも規定されていない「閣議中心主義」の考えが導入されて、例えば、主任の大臣の権限疑義に関する内閣総理大臣の裁定までも、当事者が構成する「閣議にかけて」行わなくてはいけないかのような矛盾した規定を取り入れている(同法7条)。これは、内閣総理大臣が上位の地位に立って遂行すべき権限を曖昧にする規定の典型と言える。

 第二は、内閣の一体的・統合的運営に係る基本的規定を欠いている。その具体的事例が、他の法律に委任する形での「行政事務の分担管理」規定(同3条)であり、閣議の縛りをかけた内閣総理大臣の行政各部に対する「指揮監督」の規定(同6条)である。ここでも、内閣総理大臣の優越する権限を認めないとするかのような規定が残されている。

 第三に、各省庁を統合し、政治主導の下に一体的に運営するための規定も欠いている。内閣もしくは内閣総理大臣が一体的な政府の運営を遂行するために欠かせない政治任用のポスト(例えば、政務次官)や、中央行政機構を総合的に指揮監督すべき内閣機能に係る事項(例えば、内閣を構成する国務大臣としての「主任の大臣」の政治的補佐機構ともいうべき官房機構とその人事)であっても、国家行政組織法(政務次官の設置)や国家公務員法(特別職の規定)など分散規定されて、内閣の組織と運営のための基本法としての性格を不十分なものにとどめている。


 現行内閣法の改正を進めなくてはならない。それと同時に、将来的には、内閣法そのものを抜本的に見直し、日本国憲法が想定する議院内閣制の本来的な姿に対応する新たな法整備を検討する必要がある。

 また、すでに提起したような柔軟な内閣運営の実現とともに内閣総理大臣の本格的な補佐機構としての「首相府」の設置など、大胆な組織機構の変革も必要である。<最高の調整権限>としての内閣又は内閣総理大臣の権能を発揮させるため、現行の総理府を「内閣府」として整備し、予算編成権限についても実質的に内閣が行使できる仕組みも検討すべきである。
 



3-2 内閣法改正に係る主な検討事項
1)内閣法の主な改正点


(1)首長たる内閣総理大臣の統轄権を明記する。

【第2条2、第4条1】

 内閣総理大臣は、戦後の議院内閣制において「内閣の首長」としての地位を有し、内閣を組織すると同時に、閣僚を指導する権限を持っており、合議体としての単なる内閣の一員ではなく、あくまでも内閣の首長として政治的リーダーシップを発揮すべき役割を期待されている。

 現行法では、合議体としての内閣についての規定が目立ち、内閣総理大臣の首長としての地位から発生する統轄権限が不明確である。首長たる地位が占める機能と統轄権についてより明確にしておく必要がある。


(2)国務大臣の分担管理の指示は内閣総理大臣の権限であることを明記する。

【第3条】

 現行内閣法では、分担管理は「別に定める法律により」規定されるかのような記述となっている。こうした規定が、あたかも内閣総理大臣の権限の外に「主任の大臣」が存在する如き解釈をもたらしている。「はじめに行政ありき」という旧い思考に結びつく問題条項でもある。

 内閣総理大臣が国務大臣をして分担管理させることができるとの規定を原則とし、当然の法理として無任所大臣の存在を取り込むものとする。


(3)内閣総理大臣の発議権及び基本方針に係る権限を明示する。

【第4条3】

ドイツでは、内閣総理大臣は、基本方針を独立的に提起することができるだけでなく、それが本来の任務と観念されている。その場合、宰相主義の考えに基づき、閣議の了解を得るといった手続きも不要とされている。日本においても、首長としての内閣総理大臣に対して同様の役割が期待されている

 とみるべきであり、閣議はそのための手続きに過ぎないと考えるべきである。
 内閣総理大臣の基本方針提案・発議権は憲法や内閣法の解釈によっても与えられていると判断できるが、より明確な規定にする必要がある。 


(4)内閣総理大臣の指揮監督権を強調・明記する。

【第6条】

内閣総理大臣の本来的な権限たる「行政各部への指揮監督」について、<閣議中心主義>や<分担管理の原則>を理由に、その最小化をはかろうとする法解釈がまかり通ってきた。しかし、ロッキード・丸紅ルートに係る最高裁判決は、内閣総理大臣の権限がきわめて広範囲なものであることを認めるものであった。

 内閣総理大臣の行政各部に対する指揮監督権は、国務大臣の任免権と内閣の統轄権に基礎を置く固有の権限として行使されるべき権能である。これらの点をより明確にするため、必要な規定の削除を行う。


(5)内閣総理大臣の権限としての裁定権を明確にする。

【第7条】

 主任の大臣の間における権限疑義に関する裁定権は、国務大臣の任免権を有する内閣総理大臣のいわば固有の権限に他ならない。現行の内閣法では、その当事者が加わる「閣議にかけて」その権限が発動される規定となっているが、これでは首長たる内閣総理大臣の優越的地位から発生する権限を否定するものとなる。

 「閣議にかけて」の規定を削除し、内閣総理大臣の優越的地位に基づく固有の権限としての裁定権をより明確にする。


(6)中止権は内閣総理大臣の当然の権限であることを明確にする。

【第8条】

 行政各部の処分又は命令に関する内閣総理大臣の中止権の行使は、手続きとして閣議を経ることがあるとしても、各部を担当する主任の大臣の上位に位置する固有の権限と見るべきである。

 内閣を構成する大臣が当事者ともなる案件に係る中止権であることを考慮し、「内閣の処置を待つ」の条文を削除し、その権限を明瞭にする。


(7)副総理大臣の規定を置き、責任及び代理関係を明確にする。

【第9条】

 内閣総理大臣は、政府を代表して内外の多様な政治的・政策的任務をこなさなくてはならない。その一方で、議会から選出され議会に対して責任を負う立場から、国会質疑に多くの時間をさかなければならない。問題は、そのいずれについても内閣総理大臣の名において代理する機能が弱いため、すべてに忙殺されるという状態が続いてしまうことである。これでは、十分に練られた戦略構想に基づいたトップリーダーとしての行動をなかなかとれないことにもなる。

 現行の代理規定を廃止し、常設の副総理大臣を置く。このことによって、副総理大臣は、緊急時や総理大臣が欠けるとき以外であっても、対外関係はもとより、国会審議などにおいて、日常的に内閣総理大臣の代理の職務を遂行することが可能となる。


(8)副大臣及び政務官の規定を置く。

【第10条】

省庁行政を統括すべき大臣はその判断素材のほとんどを官僚に依拠しているばかりでなく、その権限の行使についても官僚スタッフに依存している。これでは、政治が官僚行政をコントロールするといった本来機能を発揮することは困難である。

 現行の代理規定を廃止し、副大臣を置く。このことによって、渉外関係はもとより、国会審議などにおいて、日常的に大臣の代理を可能とすることができる。また、政務官の設置規定を設ける。


(9)内閣総理大臣の発議に係る官房機能を整備する。

【第12条2】

これまでの閣議案件処理が各省庁からのボトムアップ型を中心とするものであったのに対して、これからは内閣が主導して改革提案、政策提案を積極的に行うことが求められている。内閣総理大臣の基本方針の提起とともに、内閣総理大臣が政策案件を発議できる仕組みを明確化し、閣議の活性化をはかっていく必要がある。

 内閣官房の職務に、内閣総理大臣が発議する一般方針作成及びそれに係る企画立案に関する事務及び内閣協議会に関する事務を補佐することの規定を 明記する。


(10)官房副長官を3人以上置くことができるようにする。

【第14条1】

内閣総理大臣の補佐機構としての官房長官及び同副長官の役割は、議会及び政党に対する総理の指導力の発揮にますます重要なものとなる。そのためには、組織機構の技術的・量的拡充のみならず、政治的補佐機構の拡充こそが重要であり、とりわけ官房副長官の配置数の柔軟化などな政治対応を可能とする仕組みの確立が求められている。

 官房副長官を3人以上置くことが出来るよう、総理大臣の裁量を可能にする規定とする。


(11)内閣危機管理監の任免は内閣総理大臣が行うと明記する。 

【第14条の2】

国務大臣を任免権を有する内閣総理大臣が、官房副長官の下に位する内閣危機管理監を任免する権限すら、「(内閣に)申し出」を行い「内閣において」のみ行使できるかのような規定には、権限順位の逆転が見られ矛盾がある。

 「申し出」と「内閣において」の条文を削除し、内閣総理大臣の任免権を明瞭にする。


(12)内閣総理大臣補佐官の員数を柔軟化し、その職務を整理する。

【第14条の3】

ドイツやイギリスでは、内閣総理大臣の補佐機構、とりわけ政治的補佐体制については、総理の個性的なイニシァティブが生かされるよう柔軟な運営が可能となっている。政治任用にかかるポストについては、詳細規定を設けることなく、内閣総理大臣の裁量が反映される柔軟な規定にとどめるべきである。

 内閣総理大臣補佐官の数を法規定から政令に移行し、その任用についても内閣総理大臣の裁量が生きる規定とし、その職務も、意見具申にとどめることなく総括的に「内閣総理大臣を補佐する」規定にする。


(13)内閣参事官、内閣審議官等の任用を柔軟なものにする。

【第14条の4-6】

上記と同様に、仮に行政官僚からの登用であっても、内閣運営の要であることから、基本的には政治任用として位置づけるべきであり、その人選はもとより、人事も政権とともにする仕組みを確保する必要がある。

内閣官房に、内閣及び内閣総理大臣の政策的アドバイス機能の担い手として「内閣専門官」を若干名配置することができるよう柔軟な規定を設ける。
内閣参事官らの任用については、政治任用も可能となる規定に切り替える。
ただし、これには国家公務員法第2条と国会法39条の改正を必要とする。


(14)内閣総理大臣秘書官の任用を柔軟化する。

【第15条1・3】

秘書官は内閣総理大臣の機密に関する事項を直接担当するポストであり、上記(8)と同様に、内閣総理大臣秘書官については、その定数及び任用については総理の裁量が生かされるよう、規定を柔軟なものにしておくことが重要である。

 内閣官房に属する秘書官と内閣総理大臣に附属する秘書官(内閣総理大臣秘書官)の区分けを明瞭にするとともに、その員数及び任用の詳細規定を政令に委ねる。


(15)内閣総理大臣を「主任の大臣」とする規定を廃止する。

【第18条】

 内閣官房に係る事項に関連して、内閣総理大臣を行政各部を担当する「主任の大臣」と同様な位置に置くことは、官房を行政機関と同一の位置に置くことにつながり、かつ内閣総理大臣を他の大臣と同格に置くという二重の問題点を生むことになる。

 内閣官房については、内閣総理大臣の統轄の下にあることを明記するにとどめる規定とする。




<提案>「内閣法改正試案」

内閣法改正は、内閣は国会に責任を持ち、内閣の独自の責任をもって運営することを基本とし、ここに最低限の事項を表記することに限定する。その他の事項については、内閣及び内閣総理大臣がその責任において判断すべき事は当然の法理である。
 以上の原則に従い、ここに、前述の改正提案に従って内閣法改正を試案として提示し、内閣制度及び内閣運営のための法的基盤づくりのための提案とする。


第1条【職権】
:内閣は、日本国憲法第73条その他日本国憲法に定める職権を行う。

第2条【組織、連帯責任】

内閣は、首長たる内閣総理大臣及び20人以内の国務大臣を以て、これを組織する。
内閣は、首長たる内閣総理大臣の統轄の下に行われる行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負う。
注)内閣を構成する国務大臣の数については、中央省庁の再編成と連動するものであり、その都度調整すべきものである。

第3条【行政事務の分担管理(削除;、無任所大臣)】
;内閣総理大臣は、内閣を構成する国務大臣を主任の大臣として、行政事務を分担管理させることができる。(削除;各大臣は、別に法律に定めるところにより、主任の大臣として、行政各部を分担管理する。
前項の規定は、行政事務を分担管理しない大臣の存することを妨げるものではない)

第4条【閣議】
閣議は、首長としての内閣総理大臣がこれを統轄する。
(削除;1.内閣が職権を行うのは、閣議によるものとする。)
内閣総理大臣は、閣議の結果を宣言する。
内閣総理大臣は、内閣の首長として、その政策及び内閣の運営に関す基本方針を発議することができる。
各大臣は、案件の如何を問わず、内閣総理大臣に提出して、閣議を求めることができる。

第5条【内閣の代表】
:内閣総理大臣は、内閣を代表して内閣提出の法律案、予算その他の議案を国会に提出し、一般国務及び外交関係について国会に報告する。

第6条【行政各部の指揮監督】
:内閣総理大臣は、(除去;閣議にかけて決定した方針に基づいて)行政各部を指揮監督する。

第7条【権限疑義の裁定】
:主任の大臣の間における権限についての疑義は、内閣総理大臣が、(削除;閣議にかけて)これを裁定する。

第8条【中止権】
:内閣総理大臣は、行政各部の処分又は命令を中止せしめ(削除;、内閣の処置を待つ)ることができる。

第9条【内閣副総理大臣(削除:内閣総理大臣の臨時代理)】
内閣総理大臣は、内閣副総理大臣を置くことができる。
内閣副総理大臣は、内閣総理大臣が必要と認めたとき、内閣総理大臣の職務を代理することができる。
内閣総理大臣及び内閣副総理大臣に事故のあるとき又は内閣総理大臣及び内閣副総理大臣が欠けたときは、その予め指定する国務大臣が、臨時に、内閣総理大臣の職務を行う。

第10条【副大臣(削除:主任の国務大臣の臨時代理)】
内閣総理大臣は、主任の国務大臣の下に、副大臣を置くことができる。
副大臣は、主任の国務大臣が必要と認めたとき、内閣総理大臣の承認を経て、主任の国務大臣の職務を行うことができる。
主任の国務大臣及び副大臣に事故のあるとき、又は主任の国務大臣及び副大臣が欠けたときは、内閣総理大臣又はその指定する削除国務大臣が、臨時に、その主任の国務大臣の職務を行う。
注)大臣政務官の設置に関する規定については、別途、関連法で整備する。

第11条【政令の限界】
:政令には、法律の委任がなければ、義務を課し、又は権利を制限する規定を設けることができない。

第12条【内閣官房等の設置】
内閣に、内閣官房を置く。
内閣官房は、内閣総理大臣が発議する政策及び内閣の運営に関する基本方針の作成並びに関連する企画立案に関する事務を補佐する。
内閣官房は、閣議事項の整理及び内閣協議会に係る事項その他内閣の庶務、閣議に係る重要事項に関する総合調整その他行政各部の施策に関するその統一保持上必要な総合調整及び内閣の重要政策に関する情報の収集調査に関する事務を掌る。
前項の外、内閣官房は、政令の定めるところにより、内閣の事務を助ける。
内閣官房の外、内閣に、(削除;別に法理の定めるところにより)必要な機関を置き、内閣の事務を助けしめることができる。


第13条【内閣官房長官】
内閣官房に内閣官房長官1人を置く。
内閣官房長官は、国務大臣をもって充てる。
内閣官房長官は、内閣官房の事務を統轄し、所部の職員の服務につき、これを統督する。

第14条【内閣官房副長官】
内閣官房に、内閣官房副長官若干名を置くことができる(削除;三人を置く)。
内閣官房副長官は、内閣官房長官の職務を助け、命を受けて内閣官房の事務をつかさどり、及びあらかじめ内閣官房長官の定めるところにより内閣官房長官不在の場合その職務を代行する。

第14条の2【内閣危機管理監】
内閣官房に、内閣危機管理監1人を置く。
内閣危機管理監は、内閣官房長官及び内閣官房副長官を助け、命を受けて内閣官房の事務のうち危機管理(国民の生命、身体又は財産に重大な被害が生じ、又は生じるおそれがある緊急の事態への対処及び当該事態の発生の防止をいう。)に関するもの(国の防衛に関するものを除く。)を統理する。
内閣危機管理監の任免は、内閣総理大臣(削除;の申出により、内閣において)がこれを行う。
国家公務員法(昭和22年法律第120号)第96条1項、第98条第1項、第99条並びに第100条第1項及び第2項の規定は、内閣危機管理監の職務について準用する。
内閣危機管理監は、在任中、内閣総理大臣の許可がある場合を除き、報酬を得て他の職務に従事し、又は営利事業を営み、その他金銭上の利益を目的とする業務を行ってはならない。

第14条の3【内閣総理大臣補佐官】
内閣総理大臣補佐官を若干名置くことができる。
内閣総理大臣補佐官は、内閣の重要政策に関し、内閣総理大臣に進言し、(及び)内閣総理大臣の命を受けて、内閣総理大臣を補佐(に意見を具申)する。
内閣総理大臣補佐官は、非常勤とすることができる。
前条第3項及び第4項の規定は内閣総理大臣補佐官について、同上第5項の規定は常勤の内閣総理大臣補佐官について準用する。

第14条の4【内閣官房の職員】
内閣官房に、内閣参事官、内閣審議官、内閣調査官、内閣事務官その他所要の職員を置く。
内閣官房に内閣専門官を若干名置くことができる。
内閣参事官は、命を受けて閣議事項の整理その他内閣の庶務を掌る。
内閣審議官は、命を受けて閣議に係る重要事項に関する総合調整その他行政各部の施策に関するその統一保持上必要な総合調整に関する事務を掌る。
内閣調査官は、命を受けて内閣の重要政策に関する情報の収集調査に関する事務を掌る。
内閣専門官は、内閣審議官、内閣調査官が行う事務に係る事項に関して、内閣及び内閣総理大臣の求めがあったとき、その専門的な助言を行う。
内閣事務官は、命を受けて内閣官房の事務を整理する。
内閣参事官、内閣審議官、内閣調査官及び内閣専門官の定数は、政令で定める。

第15条【秘書官】
内閣官房に内閣総理大臣に附属する秘書官10以内並びに内閣総理大臣及び各省大臣以外の各国務大臣に附属する秘書官1人を置くことができる。
前項の秘書官で、内閣総理大臣に附属する秘書官は、内閣総理大臣の、国務大臣に附属する秘書官は、国務大臣の命を受け、機密に関する事務を掌り、又は臨時に命を受け、内閣官房その他関係各部の事務を助ける。
   
第16条【職員の定員】
:削減(昭和44年)

第17条【内閣官房の内部組織】
:内閣官房の所掌事務を遂行するため必要な内部組織については、政令で定める。

第18条【内閣官房の統轄(削除;内閣官房の主任の大臣)】
:内閣官房に係る事項については、(削除;この法律にいう主任の大臣は、)内閣総理大臣がこれを直接統轄する(削除;とする)。


内閣法に係る関連法改正の主な事項

なお、上記の内閣法改正と同時に、国家行政組織法第17条、国家公務員法第2条、国会法第39条の改正等を並行して行う。

(1)大臣政務官の設置

国家行政組織法第17条を改正し、政務次官の規定を廃止し、替わって「大臣政務官」を設置する。

大臣政務官は、国務大臣でもある機関の長たる大臣を助け、政策及び企画に参画し、各部局及び機関の事務を監督する。政務官の任免は、その機関の長たる大臣が、内閣総理大臣と協議して行う。

(2)特別職枠の拡大

国家公務員法第2条・の規定を改正し、現行「2 国務大臣」の後に、「3 副大臣」を置く。また、現行「7 政務次官」を削除し、「大臣政務官」を置く。

現行「8 内閣総理大臣秘書官(3人以内)及びその他の秘書官(国務大臣又は特別職たる長の各々につき一人)」を改め、「内閣総理大臣秘書官(若干名)及びその他の秘書官(国務大臣又は特別職たる長の各々につき複数)」とする。

首席参事官、内閣内政審議室長、内閣外政審議室長、内閣情報調査室長について新たに規定を設け、特別職への道を開く。

新たに、内閣専門官(若干名)の規定を置く。

(3)国会議員の兼職規定の緩和

国会法第39条の規定を改正し、副大臣、大臣政務官の外、内閣総理大臣秘書官、首席参事官、内閣内政審議室長、内閣外政審議室長、内閣情報調査室長、及び内閣専門官を追加する。



3-3 内閣制度に係る包括的な改革事項


 内閣総理大臣もしくは内閣の最高の総合調整権たる予算編成権についてもより明示的な規定を整理しつつ、その職務を官邸に取り込むなど実体面での改革を進めることも必要である。特に、総合調整機能の整備として過去繰り返しその検討が積み重ねられている「首相府」及び「内閣府」について結論を得る必要がある。

 とりわけ、内閣総理大臣の個性的な政治的リーダーシップの発現を直接的に補佐する「首相府」の設置を急ぐべきである。また、特に、「内閣府」については、それが行政官の政府へのさらなる浸透につなって、それにより官僚的調整が一層強くなることのないよう、政治指導のための体制拡充と並行して整備することが重要である。

ところで、内閣法及び関連法の改正は制度改革のワンステップに過ぎない。議院内閣制の本来機能を十全に発揮するためには、内閣総理大臣の政治任用に関する権限や行政組織編成権限などに係る改革課題が残されており、長期的には、現行内閣法の改正にとどまることなく、内閣法そのものを廃止し新たに「政府構成法(法律名;内閣等に関する組織及び人事等関係法)」のようなものを創設することも検討する必要がある。これにより、省庁に属するものであってもその官房機能の整備や政治任命職等に係るものについては政府の優先的決定事項として位置づけるものとなる。



1) 内閣総理大臣の権限行使のための機構の整備等

(1)「首相府」及び「内閣府」の設置

 イギリスでは、内閣総理大臣の秘書機能と政策スタッフ機能、マスメディア関係のアドバイス機能、対外機能などを担う総合的な補佐機構を「首相府」として設置している。政策調整については日本の総理府に対応する「内閣府」が担当しているが、トップダウン型の積極調整や政策推進機能は「首相府」が主流となっている。

 議院内閣制をとっている国々の補佐機構は総合調整型を超えて政策推進型に発達していっている。これに対して、日本の内閣官房はいまだ官庁間の消極的調整の段階にとどまっているというのが実状である。内閣総理大臣のリーダーシップを背景とした政策推進・積極調整の仕組みを確立する必要がある。

 総合調整をより効果的に推進し、行政の統一性と政治のリーダーシップをはかるため、内閣の首長としての内閣総理大臣の積極的な総合調整及び指揮監督機能を補佐する「首相府」を設置する。また、これと並行して、現行の総理府を「内閣府」に改組し、内閣主導による省庁間政策調整の補佐機構として拡充する。「首相府」がトップマネジメント機構として政治的意思に係る指示を出し、「内閣府」は政治的意思の実現のための補佐機構として機能するとの関係を構築する。両者の連携により、内閣総理大臣及び内閣の政治指導が確保される。内閣府はまた、内閣総理大臣が主宰する「内閣協議会」の補佐を担当する。

「首相府」と「内閣府」との関係図(省略)

(2)内閣又は内閣総理大臣の最高の総合調整権としての予算編成権の取り込み

 内閣総理大臣の指揮監督権は、行政のハイアラキーにおける最高の総合調整権力であることを明確にし、その最高の総合調整機能の発現でもある予算編成権を内閣の下に移行する。具体的に、予算編成方針の策定については内閣が行い、内閣総理大臣が統括する予算編成のための内閣協議会がその総括的な編成権限を行使する。

(3)行政機構の再編成に関する内閣総理大臣の権限の強化

 イギリスは、成文憲法を持たず、行政組織編成に関する一般法・規格法である日本の国家行政組織法に相当する法律もない。省庁の設置についても、大蔵省・内務省の2省は、何ら設置法すら持たない。これは、行政組織の編成については内閣が権限を有するとの考えに基づくものである。ドイツの場合は、基本法第65条によって、連邦首相に行政組織の編成及び管理に関する強い権限が与えられている。
 内閣総理大臣の指揮監督権及び総合調整権限の発現をより効果的にするため、省庁等の行政機構の改廃に関する発議及び裁定の権限を内閣総理大臣に付与する。

(4)新官邸の整備と官邸機能の充実(危機管理及び情報モニタリング・システムの確立)

 内閣総理大臣の直接的な補佐機構たる「首相府」の設置が可能な官邸スペースを確保する。また、内閣の政策調整機能を補佐する「内閣府」と連結した施設構造とすることが必要である。将来的には、ニュージーランドのように、内閣を構成する国務大臣が執務をとり、相互に会議を実施できるための庁舎を建設すべきである。

 以上の外、高度情報システムを活用した官邸機能の整備をはかり、情報社会に対応するとともに、危機管理に即応できる情報伝達・情報収集機能を飛躍的に拡充する。また、日常的に行政各部の指揮監督のためのモニタリング機能を強めて、官邸の機動的な機能の充実に資するようにすべきである。



2)将来における「政府構成法(内閣等関係法)」の検討
 日本の内閣制度及び内閣運営の主要な問題点として、議院内閣制の本来機能として期待されている「政治」による「行政」のコントロール機能が曖昧にされ、「内閣」が行政機関の一つであるかのように解釈されている点にある。

 内閣は、外交交渉の展開や議会との折衝など「行政」にはとどまらない職務を遂行しているのであって、それは、行政という範疇を超えた存在として機能している。

 「内閣」が政治の領域に属する<執政>を担当するものであり、行政実務を遂行する官僚機構とは全く異なるものであることを示している。そもそも、日本国憲法第65条の規定(「行政権は、内閣に属する」)は、内閣イコール行政の意味ではなく、行政は内閣に含まれる、あるいは内閣の指揮監督の下に置かれるという意味に他ならない。

 ところが、これまで内閣は行政機関であるかのような解釈を受けてきた。このため、内閣の運営に対して直接責任を負う政党や議員の役割ともいうべき領域に「行政官」が配属され、政治の領域が著しく縮減されるという事態を招いて、内閣及び内閣総理大臣の政治的リーダーシップの機会を制約し、その政治責任を曖昧なものとしてきたことは否めない。

 戦後の有力な行政法解釈は、内閣と行政機関を一体のものとしてこれを一括し、「行政府」と呼んできたが、それは、戦前の行政法解釈が天皇と内閣及び行政を一体として捉えて、政党政治を排除してきたことにも由来する考えである。こうした旧い思考を克服し、内閣及びそれを補佐する総称としての「政務官」が、政治の責任において行政をコントロールするという新しい思考による内閣運営の姿を追求していく必要がある。内閣は何よりも「執政機関」であり、その下で「行政機関」が設置され運営されるのである。

 われわれは、「政」と「官」の間にこそ決定的な分離線があり、議院内閣制がその「政」の主導性を前提として成立しているものであることを改めて確認する必要がある。

 現行「内閣法」そのものを「政府構成法(内閣等関係法)」に転換し、内閣総理大臣の行政組織編成権、内閣制度及び内閣運営に係る関連する政治任用等についての規定などをその中に取り込む。これにより、広く、内閣を構成する各省庁の政治任用についての規定などを設けることができる。


(1)議院内閣制に関する一般的事項と内閣に関する基本的事項の記述

 内閣と政党との関係及び内閣と議会との関係について一般的な規定を置き、議院内閣制下での内閣と行政との関係についても記述する。また、現行内閣法に規定されている内閣及びその補助機関に関する柔軟な規定を設ける。

(2)内閣総理大臣の首長としての権限の列記

首長たる内閣総理大臣と内閣との関係を明示する。その上で、首長たる内閣総理大臣が有する各種権限を列記する。具体的には、閣議の統括、基本方針の設定、行政組織編成権、予算編成権、国務大臣の任免権など内閣総理大臣の統括的権限の発揮を明確にする規定を設ける。

(3)行政組織法からの政治任用ポストなどの切り離し。

 現行行政組織法には政治任用職についても一般職の設置と一括して規定されているが、これでは、「政」と「官」の区分が曖昧となり、責任関係を不明にする可能性がある。内閣運営に責任を持つ「政務官」とその指揮の下に行政実務を処理する「行政官」との違いを明確にしつつ、前者の任用についての一般的規定を置く。
 
(4)大臣官房等に係る組織及び任用に関する一般的規定の設定

 省庁の内部局設置や一般職員の配置数などのいわゆる行政機構問題と、大臣の政治的補佐機構としての大臣官房など政府運営にも係る組織体制問題とを切断し、内閣の下での統一的な政府運営を可能とする仕組みとして、省議の構成及び各省庁の大臣官房等に関する一般的規定を新たに設ける。




第4章 政権の構造改革に挑むために

4-1 政府の構造改革のためのプログラム
 この間の各種ヒアリングや文献調査及び委員相互間の論議、議院内閣制の先進国の訪問調査などにより次の点が明らかになった。

 まず、日本の内閣制度の機構と運営の実態は、同様に議院内閣制度を採っているイギリスやドイツとは似て非なるものと言えるほどに、その違いが大きいという点がある。官僚組織をリードする首相及び内閣を支える補佐機構のスケールや運用のあり方といった実体面の差違は当然として、根本的に、政治と行政の関係に関する思想に決定的な相異が見られる。そもそも、<議院内閣制度は、内閣を通じて政治がリーダーシップを発現するための装置である>という基本認識がその基盤にあって成り立つものであり、<最初に行政ありき>というわが国の内閣制度はこの点でいまだ異質と言わねばならない。この意味では、このわが国の現状は戦前の変形内閣制度の特質を戦後に引き継いだものと見ることも可能であり、その変換は体制転換にも等しい政治改革テーマである。

 そもそも、内閣システムは、政治集団が官僚組織をコントロールするために、国会によって特別に設置された1委員会に他ならない。その権源は、従ってあくまでも国会にある。具体的に、国会は内閣総理大臣を指名することにより、内閣の構成を総理大臣に委任する仕組みとなっている。実際的には、議会において多数を占める政党もしくは政党連合から内閣総理大臣が選出され、政党(与党)とともに官僚組織を管理し、その政治的責任を負うことになる。

 政府の構造改革への道は、単なる制度改正によって達成されるものではなく、政党の自己改革と国会改革を伴って初めて実現できるものである。それらはまた、相応の準備と取り組みを必要とするものであり、政権政党としての道を追求する政党集団は、そのための具体的課題に次々とチャレンジしていかなくてはならない。

政治が行政を十分にコントロールする議院内閣制の本来機能を確立するためには、概ね、以下の4つのステージを通過することが必要となる。

(1)ステージ1;野党の段階における「政権担当型政党への進化」

まず、第一に、政党自体が、政府の構造改革に挑戦し得る政権担当型政党への発展を遂げなくてはならない。政党は、その政策形成機能を官僚に依存したり、単なるイデオロギー集団にとどまることもなく、自立した政策集団を持ち、政府を運営するに足る組織力や経営能力を磨かなくてはならない。このため、内閣総理大臣となるべき政治家は、自らの周囲にそれらのマネジメントを担い、かつ組織的・継続的に政治的リーダーシップを発揮するための固有のスタッフ・チームを形成する必要がある。

 ドイツやイギリスでは、野党は政権を獲得しそれを実際に運営するためのチームを早くから準備し、いわゆる総選挙に臨んでいる。それは、内閣総理大臣の補佐機構たる「首相府」や「内閣総理大臣官房」と同型の秘書機能、政策形成及び政策アドバイス機能、マスメディア関連のスタッフ機能、そして情報収集機能及び外交政策機能を兼ね備えており、そのまま、実際の政権運営を担当するほどの体制構築である。政権がなすべき政策(政権政策)もこの枠組みを通じて形成されている。そして、これらの政治指導体制が、政治による行政又は官僚集団のコントロールを現実的なものとしているのである。

 政権交代を求める野党は、そうした政権運営の担い手とシステムの確保に全力を挙げて取り組んでいく必要がある。

(2)ステージ2;現行法制度下における「最大限内閣」の形成と運営

 第二は、現行法制度下での創意工夫ある内閣運営の実行、そのための与党と統合した最大限内閣の構成と政治指導体制の確保である。

 国民はいま、静かではあっても、着実に改革を実行できる政府の登場を待ち望んでいる。この期待に応え、改革を担える統合された内閣の創出に努める必要がある。そのためには、内閣と政党との二元構造を維持して、政府の責任を曖昧にする現行の政治システムを変革し、内閣と政党が一体になって改革にチャレンジする政府のかたちを実現しなくてはならない。

 政府を担当する政党や政治的リーダーは、改革が困難であることの理由を現行制度の制約や議会の抵抗に求めて、その結果責任を回避するという姿勢を続けてはならないと考える。対議会関係や対政党関係はもとより、世論に対する対応もまた自らの任務として対処し、改革の実効性を発揮する必要がある。

 インナーキャビネット方式の積極活用による迅速かつトップダウン型意思形成の展開、大臣補佐体制の拡充のための各種の工夫・改善や政務次官の職務の活性化、国会内における院内総務の体制整備と無任所大臣らによる議会与党と内閣の連結機能の充実などがこの段階で試行的に展開される。それと並行して、内閣法等の改正作業に着手する。

 この間、確立された政党内における人材のリクルートシステム、すなわち、部会と連結する政務次官政策調整会議の実際的経験や国会内における院内総務及び院内幹事らの政治調整技能の錬成、各種の補佐機構への組み込みなどによる政治調整訓練などを通じて政府運営の担い手人材の育成が進行する。

(3)ステージ3;内閣法等改正により拡充された「実力内閣」の構成と運営

 第三は、内閣法等の改正による新たな内閣機構と運営体制確立の段階である。政権を担うことになった政党集団として、例えば、内閣総理大臣の政治的補佐機構の拡充、省庁間の消極調整から積極調整への転換、政府委員制度の廃止や副大臣制度の導入、政治任用可能な特別職枠の拡大などを通じて、「政」が「官」をコントロールするにふさわしい制度基盤を確立する。最高の政治意思決定と経営判断及び政治指導を可能とする組織体制の整備、具体的に「首相府」及び「内閣府」の整備を進めて、内閣及び内閣総理大臣の政治的リーダーシップが十全に発揮されるようになる。すでに、第2ステップで育成された人材の配置がなされて、政治主導の政府運営の担い手も着実に確保される。

 この段階では、内閣総理大臣の統轄の下、各閣僚は広義の政務官のサポートと専門官的スタッフの補佐を受けつつ、行政官及び行政機関を指導する。国民に対しては、その政治責任がより明確な政府運営が実現する。

 また、これにより初めてその実現が可能となる政策上の改革課題を政治日程に挙げることができる。

(4)ステージ4;政権基盤の安定の上に築かれた「新しい政府」の確立

 制度改革に加えて、政権を通じた総選挙の実施などを経ての安定的な政治基盤の確立を前提に、改革のための本格的な政府、「新しい政府」の実現である。

 内閣総理大臣の政治的補佐体制の充実、内閣と政党の一体的運営の定着、総理と国民との直接対話の機会の保証など政府運営のシステムが安定的に確保され、本格的な中央省庁の再編成、地方分権改革の断行、情報公開制度の定着と開かれた政府運営、特殊法人の抜本的な整理改革などは、この段階で着手すべき政府の課題となるものである。

 とりわけ、現在進められている中央省庁再編成については、単なる数あわせ的なものにとどめることなく、地方分権や行政評価システムの導入などを取り入れた実効性ある改革へと組み替えていく作業を進める。しかし、そのためには、「官」を制御し、政官癒着の構造からくる政治的圧力を排除して、改革のためのリーダーシップを行使できる強い政治意志と補佐チームの存在が不可欠である。

 内閣もしくは政府の運営の改革は、それ自体を自己目的とするものではない。そのねらいは、政府が担うべき政策的改革課題に勇断をもって実際に取り組む政府の能力を確立することにある。第4ステージとは、それが現実となる段階のことにほかならない。



4-2 課題としての「政権政党への進化」について

 今日の議院内閣制は、与党たる政党が政府の運営を直接担当するという意味で、「政党内閣制」でもあると見ることができる。政府の構造は、政権を担う政党がいかなる構造を有しているかによって大きく規定されることになる。

 すでに指摘したように、「政権交代のある民主主義」を実現することが当面の第一課題である。しかし、政権交代によって新たな政府が誕生しても政府の構造が変わらず、政策の実行範囲もさして変化なく、相変わらず永田町近辺の政治駆け引きゲームで重要な物事が決定されていく仕組みをそのまま継続する場合と、政府の構造を変革し、国民に開かれた新しいタイプの政府の確立をもたらす政権交代の場合とでは、政治に対する国民の信頼や期待は大きく異なってこよう。

 われわれは、日本社会が直面している様々な改革課題を先送りすることなく、これを着実に実行する「責任ある政府」の実現こそが、いま、国民の求めている政権交代であるとの基本認識に立っている。それには、先ず政権をとってからという姿勢ではなく、政府の担い手たる政党が自己改革にチャレンジし、新たな政権の実現とともに改革を実行しうる政治集団として進化させていることこそが当面の使命となる。すでに示した4段階の改革プログラムがこの政権政党への進化から始まっているはこのためである。

 われわれは、これらのことをイギリス及びドイツの調査によって、実地体験として知らされることとなった。 

 イギリスやドイツの事例に共通する最大の教訓は、政権担当能力のある党とは、単に政権の座にある党であるとか、あるいは政権交代をはかりそうな政党ということではなく、政党が自前の政策産出機能をシステムとして内蔵し、かつ政権運営のための人材をリクルートし鍛錬する仕組みを確立しているということであった。

 そしてまた、いずれの国のケースも、政党自体が幅広い自立的な社会基盤を持ちかつ強いリーダーシップの構造を有していることであり、また政党が傘下の議員を党の十分なコントロールの下に置いていることである。このことが、議院内閣システムを通じて、官僚制度をコントロールし、政府としての高い応答能力と明確な責任を発揮する前提条件となっている。

 責任ある政治的リーダーシップの発現については特に、首相候補者を軸に相互に強い信頼関係と高い専門能力とによって結合されたトップマネジメントのためのコアチームが野党のときから形成されており、それが首相の強い権限行使の政治的要件となっているという点が挙げられる。ブレアも、シュレーダーもともに、団塊の世代やさらに若い世代から成る強力なスタッフ構造を確立していた点で共通する。政策形成力、政治調整力、報道対応力、危機管理能力、イメージ戦略やアピール力のすべてのレベルがリーダーシップ行使のためのワン・パッケージとして用意されている。政権党となった段階で、これらのパッケージもしくはコアチームがそのまま内閣に移行することとなり、首相の政治的リーダーシップの発現は当然の流れとなる。

 また、政党自身は、その高い政策産出力を生かして強い影響力を確保し、官僚行政をコントロールすることを止めない。これらが、議院内閣制を文字通り政党内閣制として作動させるための決定的条件となっている。

 以上の教訓を踏まえて、政権運営の力量を画するいくつかの課題を導き出すことができる。以下のテーマ(宿題)は、政権担当型政党のための「7つ道具」とも言うべきものである。われわれは、この課題の実行に向け、いま直ぐにも挑戦する覚悟と用意がある。

政権担当型政党への進化のための7つの課題

1.独自の政策形成力及びシンクタンク機能の確保
2.政党の統率力と政党経営能力(マネジメント能力)の確立
3.首相候補者として党首コアチームの形成と運営
4. 国民との対話を重視する政党マーケティング力の発揮
5.優れた情報収集力と危機管理システムの形成
6. 候補者人材の調達と選挙における政党主導の発揮
7.政権運営能力を培う人材リクルートシステムの整備


(1)独自の政策形成力及びシンクタンク機能の確保 

 民主党は、党内に設置された政策調査会やそのプロジェクトチームなどを通じて様々な議員立法や対案をとりまとめてきた。しかし、その多くは、当面する国会審議や政治日程となった制度改革に対応するもので、中長期のビジョンの構築とそれに裏打ちされた戦略的政策課題の絞り込みにはそれに対応する仕組みが不可欠となっている。

 各分野にわたる研究者やその他の専門家らのネットワークを構築し、それらを生かした創造的に政策形成機能を確保する必要がある。同時に、ヨーロッパやアメリカの政党の例のように、政党独自のシンクタンクもしくは政党が固有に連携することが可能なシンクタンクの確保に取り組むべきである。

(2)政党の統率力及び政党マネジメント能力の確立

 政府に対して政権交代を迫り、それを実現して実際に政権運営を担うという仕事は、野党の地位にある政党の総力を挙げた取り組みである。これを達成するためには、時々の政策課題や選挙争点にとどまらず、政党が獲得すべき組織目標や政策課題について、長期的な視点からそのプロセスと手段を描き、着実にその成果を収めることができるよう、トップマネジメント機能をシステムとして確立しておく必要がある。

具体的には、政党経営の専務でもある幹事長を軸に経営的責任を有する政党幹部のチームを編成するとともに、政党マネージメントのためのアドバイザー・スタッフを配置することを早急に検討すべきである。

また、トップの意志が党内に浸透し、所属する議員やその他の政党員が一斉に党の政策や方針の広報担当として機能するようにすることや、戦略的課題について共通の認識と統制のとれた行動が遂行されるようモニターし指導する体制を確立する必要がある。

(3)首相候補者としての党首コアチームの形成と運営

上記のトップマネージメント機能とは別に、首相候補者としての党首のリーダーシップを補佐するチームを編成しておくことが重要である。党首の演説原稿や記者会見用メモの準備、イメージアップのための方策、マスメディア関連のアドバイス、その他機密に属する情報の収集、知的支援者のネットワーキングなどを総合的にサポートする補佐体制の整備を進める必要がある。

すでに触れたように、内閣を統轄する総理大臣の場合、個人に係る秘書機能とともに、こうした総合的な補佐機能が不可欠であり、それは野党党首のときから準備されなければならないものである。ただし、こうした仕組みを確立するためには、党首の比較的裁量的な補佐体制の運営を許容する空気が党内で作られることが必要条件となる。

(4)国民との対話を重視する政党マーケティング力の発揮

 「政権交代のある民主主義」の時代は、イデオロギー対立の時代とは異なり、比較的に政党間の政策距離が近く、むしろ、有権者が何を望み、いかなる事に不公平感や不満を抱き、どのような場面で政党支持の態度を決定したりするのか、ということに政党がどれほど反応するかによって競われることが少なくない。優れたリーダーのイメージもそうした政治市場で選択されているとみるべきであろう。こうした政治意識の下では、政党は誰と手を組み、どの集団や市民運動と連携して政策の実現に当たるのかが極めて重要なこととなる。政治は、政党と国民との対話の中で動くのである。

 政党が展開する政策PRがどのように国民に受容され、いかなる評価を受けているのかについて、不断にモニターし点検して、政党のより効果的なメッセージの発信に努めることも要求されている。既存の業界組織に依存せず、自立的な市民組織や企業家精神旺盛な人々とのコミュニケーションを重視しつつ政党の支持基盤を広げていく政党であれば、それだけ決定的な重みを持つと言うことが出きる。求められているのは、政治市場における鋭いマーケットセンサーなのである。

(5)優れた情報収集力と危機管理システムの形成

 政権獲得への道は、単に政策を作成したり、議員立法活動を展開したり、国会での駆け引きを首尾よく推進したりするだけでは達成できない。また、優れたリーダーのアピール効果によってもそれは難しい問題である。

政権の構造改革にまで切り込むいわば質的な政権交代を実現するには、対抗する政党の弱点を突き、世論の動向を的確に把握し、連立政党集団を引き寄せ、国内外の情報を一瞬にして調達する能力と判断力とが求められる。広く海外にもネットワークを張り、政権運営にもつながる優れた情報収集力を開発しておくことが必要である。

同時に、政党の信頼を一気に損ねる問題や、突発的でかつ政党の即座の反応が求められる出来事が発生した場合に、迅速に対処しうる危機管理の仕組みを確立しておくことも重要である。こうしたことは、統治を担うことを前提とする政党の基本的要件でもある。

(6)候補者人材の調達と選挙における政党主導の発揮

 経営体としての政党が繰り出す商品は、政策と首相候補者と個々の選挙区における候補者及び議員そのものである。候補者をどのように掘り起こし、有為な人材を確保するかは政党にとっての重大な先行投資の場面でもある。党首らが率先して候補者人材の発掘に努めると同時に、公募方式による人材確保や各種の政治スクールによる人材の育成に全力を上げ、政権を担いうるにふさわしい候補者数と人材の調達を行うべきである。この場合、特に、政党活動に新規参入してくる専門家などの新人の確保に優先的に取り組むことが重要である。

議員集団としての政党が一貫した政策に基づいて統率力ある行動をとるための大きな要件は、選挙において政党が主導となった支援活動を行い、政党と一体の選挙を実践することにある。現職議員はともかく、新人候補者の擁立に当たっては党主導の選挙態勢を構築していく必要がある。

(7)政権運営能力を培う人材リクルートシステムの整備

 内閣の運営システムの改革と同時に、国会内における院内総務の仕組みを確立する、議会の委員会やプロジェクトの運営を通じて関係省庁や議会法制局との連携や他党との調整を体験させるなど実践的なポストを積極的に活用して若手人材の育成を意識的に行う必要がある。あるいは、党首や幹事長らの補佐スタッフとして活動し、戦略的な機密事項に関する情報収集や情報の加工・組立などの訓練を経るなど、政治調整のためのノウハウを実際的に体得する機会を活用する方法もある。

 また特に、地方自治体における首長やその補佐経験者、自治体与党議員経験者らは実践的な政府運営を担ってきたという蓄積がある。この段階からコアチームの組織化やそのマネジメントを積み重ねるならば、優れた政府運営人材の育成機関として地方政府が作用することにもなる。長期的な視野に立ち、地方議会や地方自治体の首長の選挙に取り組み、中央政府の運営に有意義な人材を育成するチャンスとして生かすことも必要である。

 こうした多様な訓練の場を創り出すとともに、能力を発揮した議員には、政権の運営に当たっては実力主義の発想で積極登用していく道を開くべきである。

 ドイツの実例は、異なる2つ以上の政党が政府を構成するとき、十分な時間とエネルギーをかけてとりまとめた詳細な政策協定が国民に信頼される政権運営を可能にさせる基礎的条件であることを教えている。百数十ページにも及ぶ政策協定文書が、国民に対する政権の公約となり、政権に参加する政党及び政府の行動を契約的に拘束する仕組みである。

今日では、政権実現への道は、連立の可能性を探ることによってこそ、より現実的なものとなると思われる。政党の政権政党への進化と同時に、政権政策をとりまとめて、連立政権のための政策協定への準備を着実に進めておくことがもう一つの課題であると考える。



政治の活性化のために−むすびにかえて−


 民主党は、「官主導」の政府運営を変革し、「民主導」の政府を実現することを基本目標として誕生した政党である。提言は、その具体的構想を提示するものであり、この提言を一つの素材として国民的議論が沸き起こることを強く期待し、ここに公表するものである。

 われわれは、参院選挙直後の党内討議を経て9月に委員会をスタートさせた。以来、27回に及ぶ会合及び研究会を通じて党内外からのヒアリングや委員会論議を行うと同時に、11月には、議院内閣制の母国イギリスとヨーロッパ大陸系の議院内閣制を代表するドイツの二カ国に調査団を派遣して実態把握と比較研究に努めてきた。また、その間、実務者を中心に専門家との共同作業を進めるなどして提言のとりまとめに取り組んできた。

 そして、われわれは間もなく、政府もしくは内閣の運営についての様々な考察の中に「政党」が登場してこないという奇妙な事実に気づいた。選挙で国民の多数の支持を得た政党集団が政府(内閣)を担当するということが議院内閣制の基本構造であるにもかかわらず、内閣はその成立とともに「政治」ではなく、「行政」の範疇にカウントされ、いつの間にか、政治と対峙する位置に置かれている。

 日本では、長い間、政党が内閣を軸とする政府の中心に位置づけられることがなく、政府の中心には常に官僚がその座を占めてきた。その構造を正当化する考えが、議会と政府を対立させ、行政を政党の関与や指導から遮断する「行政の中立性」であり、内閣を行政機関の一つであるかのように捉える伝統的法解釈であった。そうした構造の中では、常に責任が分散し曖昧にされ、ついには無責任な体制が作られ、内閣総理大臣すら個性的な「人格」を有するものとしては現れず、「顔のない機構」へと押しとどめようとする力が働いてきた。

 しかし、議院内閣制は、現代のリバイアサンとも言うべき官僚機構を政治がコントロールするシステムに他ならない。われわれが、政党が内閣の中心を占め、与党たる政党に信任を与えた国民に直接責任を持つ政府の実現を提案したいと考え、議会によって直接選ばれた内閣総理大臣の個性的なリーダーシップが発揮できる政府の構造を探求したのもこのためである。

 世界ではいま、20世紀末の新しい政策課題・地球規模の難題に直面し、これに創造的な姿勢でチャレンジする政治的リーダーの出現の時代を迎えている。アメリカのレーガンやクリントン政権、イギリスのサッチャーやブレア政権はその代表例である。今日、ドイツやイタリアなどの国々を含めた各国の指導者が一斉に「第三の道」を模索しているのも、過去に先例を見ない政府の課題に挑戦する意志の現れにほかならない。

 そして、いま、日本は、明治近代化以来の大転換のときを迎えている。内閣制度と内閣運営のあり方を変革するわれわれの提案は、その大転換に対応する政治的リーダーシップを確立することに基本的ねらいがある。政府は、日本と国民生活の将来に向けて確かな舵取り(ガバメント)をすることに本来の役割がある。

 そのためには、第一に、国民の選択に基礎を置く政治の活性化が不可欠であり、国民が直接的に政府を選択できる政治主導の内閣を実現することが重要である。それは、まさに、民主主義の深化である。第二は、政治的リーダーシップの質を国際社会の水準に引き上げることである。内閣総理大臣がそのリーダーシップを十全に発揮できる仕組みを確立し、日本のみならず世界に対しても責任を果たす政府を確立することである。

明治維新期、日本の「立国」の原理をいかなるものとするかを巡って激しい政争が続く中、福沢諭吉は、イギリスの議院内閣制こそ、民が力を持った時代にもっともふさわしい政治制度であるとして、次のように語っている。

「大主義とは何ぞや、責任宰相、議院内閣の主義是なり。蓋し現今に於いても最も大切にして、最も大なる争は、我邦をして独逸流の帝室内閣にする乎、英国流の議院内閣にする乎の一点に外ならず。」

しかし、近代日本はこの後、政党を内閣から排除してゆく歴史を刻むことになるのである。

どうやら、われわれは一周しただけなのかもしれない。いや、ここに新たな政府の歴史が開始されると見るべきなのかもしれない。

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PDF 資料:現行内閣法の下における内閣総理大臣等の補佐体制の整備
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