日本の主体性をもって平和外交を実行する
日米関係の良好な維持とアジア世界の平和構築
Point-1 「平和を享受する日本」から「平和を創り出す日本」へ
Point-2 日本の意志と主体性が世界平和を築き上げる
Point-3 日米関係は今後とも重要であり、評価すべきである
Point-4 国連の活動に対して日本は積極的に関わっていく
Point-5 一時代前の防衛から現実的防衛対策への転換を
1.「平和を創る国・日本」をめざし、外交を推し進めます。
冷戦下における一種の世界秩序が崩れ、地域紛争や、貧困、人権侵害、環境破壊、国際テロ、麻薬、エイズ、難民、地雷など新たな脅威が顕在化しています。
第二次大戦後の日本は、冷戦構造の中、外交・安全保障上の判断と責任の多くを米国に依存し、自らは経済成長に専念してきました。しかし、世界で新たな秩序と平和のあり方が求められている現在、「平和の最大の受益者」であった日本が、その特徴や経験、得意分野を最大限活用して「平和を創る国」として積極的に貢献する時だと考えます。
1.日本の主体性構築と日米関係の創造的伸展のために
重要なパートナーである米国とは、経済、安全保障、文化・人的交流など多様な分野で協力関係を強化していくべきだと考えます。朝鮮半島問題の軟着陸、中国の国際社会への統合、ロシアとの協調などは、いずれも、米国との同盟関係を通じてより豊かな可能性を拓くことができると考えます。日本は、これまで以上に主体性をもって米国に対して建設的な意見を述べ、質の高い政策協議を積み重ねていきます。
2.アジアにおけるリーダーシップをとるために
日本がアジアの発展に対して最大限の責任を果たす姿勢を明確に打ち出します。
中国に対しては、歴史の共同研究を十年程度の計画で行い、それを通じて歴史問題に決着をつける一方で、民主化の進展を日本独自の方法で促していきます。また、日米中三者による政策協議を様々なレベルにおいて推進します。
韓国に対しては、二〇〇二年のワールドカップ共同開催を梃子として、特に金大中大統領の任期中、様々な産業・技術交流を活発化させます。北朝鮮に対しては、日朝政府間協議の早期再開を求め、日朝間の諸問題の解決をはかります。日本としては、韓国の包括的アプローチを支持し、特に、米国、韓国と緊密に協力し対応します。ロシアに対しては、北方領土問題を解決し、日ロ平和条約を締結する必要があります。そのためには、これまでのようなロシア政府内への働きかけのみならず議会や世論への有効な働きかけを行います。
また、中国、韓国、アセアン諸国、インドなどとの研究者や学生の相互交流を五年間で倍増させ、知的交流によって相互理解を深めていきます。
3.国連で日本の役割を果たすために
本年は二〇〇〇年国連総会が開かれます。その機会を生かしながら、新しい世界に効果的に対応し得る国連となるための改革を推進します。安全保障理事会については、その正当性と信頼性を強化するためにその拡大改組を行い、拒否権行使方法の見直しも行うように提案していきます。日本としても、国内世論と加盟国の支持を前提に、常任理事国入りをめざします。経済社会理事会の役割は、安全保障理事会と同じくらい重要です。経済社会理事会の審議権限を強化し、総合的な調整機能を高めていきます。
4.核軍縮・不拡散と核兵器等の廃絶のために
日本は、唯一の被爆国として、より積極的に行動します。具体的には、START2・3の完全実施や核保有国の核軍縮義務の強化を進めて、近い将来に戦略核を全世界で一〇〇〇以内に削減するよう求めていきます。また、核兵器の先制不使用の制度化などを働きかけていきます。さらに、軍縮NGOの事業を支援するとともに、政府と軍縮NGOとの連携を強めていきます。あわせて、生物・化学兵器などの大量破壊兵器の廃絶にも取り組みます。
5.より望ましいODAとするために
日本にとって、ODAはPKOと並んで重要な外交手段です。それには何よりもまず、ODAで達成すべき目標・理念を明確にする必要があります。日本のODAについては、(ア)道路・ダムの建設などハードから人材育成・技術協力などソフトへと重点をシフトする、(イ)情報公開と事業評価を徹底し透明性と効率性を確保する、(ウ)NGOとの連携強化や国際協力専門家の育成など国民参加型のものへと充実する、などの観点から改革していきます。このため、インフラ整備への援助の三割カットや現地NGO向けの「草の根補償援助」の思い切った増額、NGOの活動・運営資金の拡充のための支援方策の整備などに積極的に取り組んでいきます。
6.官僚外交でなく、政治主導の積極外交とするために
予防・仲介外交の推進には、公式チャネルのみならず、内外のNPOや民間人などとの連携、協力が欠かせません。外務省だけの外交から脱却し、NPO・民間ネットワーク・議員を総動員する外交へと展開を広げます。大使館における民間人の登用を格段に増やすことによって、「官僚外交」からの脱却を進めます。
2.日本とアジアと世界の平和を守るため、安全保障体制を構築していきます。
日本の安全保障面における日米関係の重要性を十分認識しつつ、国としての主体性ある安全保障政策の確立をめざします。複雑かつ予測困難な安全保障環境のもとで、これからは単に受け身に対応するのではなく、自らの構想力によって対処しなければなりません。従来のイデオロギー対立に基づく安全保障論議を排し、安全保障面における日米関係の重要性を認識しつつ、日本の主体性ある安全保障政策の確立をめざす立場から議論を進めていきます。
日本の防衛政策については、戦後半世紀を経て、憲法の平和主義のもと(ア)個別的自衛権の行使を超えた海外における武力行使は行わないこと、(イ)専守防衛を堅持すること、(ウ)個別的自衛権行使のための必要最小限の実力を保持すること、(エ)集団的自衛権を行使しないこと、(オ)武器輸出三原則、(カ)非核三原則などの諸原則が国会審議を通じて確立されています。民主党は、これらの諸原則が現時点においても尊重されるべきものと考えます。
1.時代の変化にあった日本の防衛のために
東西冷戦の終結により、日本に対し大規模な直接侵略がなされる可能性は低下しました。しかし一方で、テロリズムやゲリラ的活動、生物・化学兵器の使用、領土・領海・領空(領域)への不法侵入、ミサイルや核兵器の拡散など新たな脅威の可能性が生じ、北東アジアには警戒を要する状況が残っています。このような安全保障環境の変化に柔軟に対応するため、防衛大綱の機動的な見直しを行い、前記の多様な脅威への対応に加え、災害派遣、PKO活動などの国際協力活動、周辺事態における日米協力、海外における邦人救出など、自衛隊が重要かつ多様な役割を果たせるようにします。
(a)ゲリラ的脅威に単独で対処できる体制をつくる
大規模直接侵略を主として想定して構築されてきた自衛隊の装備、配置及び構成について抜本的な見直しを行い、テロリズムやゲリラ的活動などの新たな脅威に、日本が原則として単独で対処できる体制を早急に整備します。
(b)緊急事態における自衛隊の活動ルールを法制化する
出動した後の自衛隊の活動ルールについては、法律の規定がほとんど存在していません。現状のままでは、日本に対する直接侵略などの緊急事態があった場合、自衛隊の活動が円滑に行われないことで国民の生命・財産に対する侵害が拡大するか、もしくは、自衛隊が超法規的措置を取らざる得なくなってしまう可能性があります。これを回避するため、あらかじめ緊急事態における法律関係について十分な議論を行い法制化を進めます。この場合、どのような緊急事態においても自衛隊などの活動がシビリアン・コントロールの下にあり、国民に対する必要以上の権利制限とならないよう、国民の権利、とりわけ憲法上認められた基本的人権・表現の自由を保障します。
(c)より望ましい装備調達を確立する
限られた防衛予算のもとで必要な装備を整備していくためには、陸海空横並びの考え方から脱却して、想定される脅威に対応した予算編成を行います。また、コスト削減の観点から汎用品については、その範囲を拡大しつつ、一般入札の積極導入をはかります。随意契約・指名競争入札の対象となる装備などについても、透明性・客観性・公正性を担保できるような装備調達方法に改革します。
技術研究開発における従来の体制も見直すとともに、どの範囲までの装備を日本の国産技術として保持すべきか、そのことの費用対効果や有事における補充はどうかといった点について今後基本的な検討を行います。
(d)情報収集・分析力を向上させる
専守防衛を国是とする日本にとって情報収集・分析・対応能力の向上は喫緊の課題です。そこで「日本が運営する情報収集衛星を保有すること」「情報本部の充実をはかること」の二つに最優先で取り組みます。今後見込まれるコンピュータ・情報システムの電子的脆弱性についても対応します。
2.より望ましい日米安全保障体制のために
民主主義と自由主義経済という価値観を米国と大枠において分かち合い、米国と安全保障・経済面で緊密な関係を構築してきたことが、戦後日本の安全保障と繁栄に大きく貢献してきました。国民の安全確保は、国家にとって最も基本的な責務であり、国の平和と安全を守るためには、日本自身の外交防衛努力が基本となることは言うまでもありません。しかし、これと並んで、日米安全保障体制もわが国の安全保障政策の最も重要な柱であると考えます。
従来の日米安保体制は、重要な意思決定を米国に委ねるという点で、真の意味での同盟関係とは言いにくい状況にありました。今後日本がとるべき態度は、国益を十分踏まえつつ米国との緊密な対話・協議を行う姿勢であり、その前提として求められているのが国としての主体性です。米国との緊密な話し合いを前提に、国内法令の整備などを通じて事前協議制度のあり方を明確にします。
(a)新防衛指針を注視し、正しく運用する
先に日米間で合意した新ガイドラインの必要性を認識しています。ただし、周辺事態に対応するための「周辺事態安全確保法」の運用に際しては、周辺事態の認定を含め、わが国の主体性を十分に確保するとともに、国の安全と国民生活に与える影響のバランスに細心の注意を払います。同法については、必要に応じて、国会関与のあり方を含めた不断の見直しをはかっていきます。
(b)米軍基地を常に注視・検討する
在日米軍基地のあり方については不断に見直します。「朝鮮半島安定後の極東における米軍のプレゼンスのあり方」「アジア太平洋地域の平和と安定を確保するための拠点としての在日米軍基地の位置づけ」などについて、中長期的な視点に立って検討を行います。また、日米地位協定の運用改善・見直しに向け、米国と交渉していきます。
3.アジア太平洋地域の安全保障のために
アジア太平洋地域において、経済的に圧倒的な存在である日米両国が外交安全保障両面で緊密な協力体制を築いていることが、この地域の安定要因になっています。またアジア太平洋地域における米軍のプレゼンスは、NATOのような集団的安全保障の枠組みを持たないこの地域の平和と安定に重要な役割を果たしています。当分の間、日米安保体制の実効性を高めることが、アジア太平洋地域の平和と安定のための重要な基盤と考えます。その際、日本としては、同盟国としての信頼関係を構築しつつ、米国の行動が米国の国益に偏りバランスを欠いたものとならないよう、率直に協議します。
また、日本が、核拡散などの防止や危機を未然に防止・減少させるための予防外交を展開していくために、近隣諸国との二国間関係の充実、地域的取り組み、国連を通じた取り組みを推進していきます。ただし、近隣諸国の不信感を解消しつつ、慎重に対応することが前提であることは言うまでもありません。自衛隊がアジア太平洋地域において単独で活動することについては、邦人救出など例外的な場合を除いて今後とも慎重に対応します。また、「周辺事態法」に基づく米軍への後方支援を行うにあたっても、その範囲が拡大しないよう厳格な運営を行っていきます。
(a)安全保障のための対話外交を積極的に行う
APECやARFは東アジア地域の安全保障の信頼醸成を高めるために重要であり、日本として、ARFなどが十分に機能するようにリーダーシップを発揮していきます。また、ARFなどの延長として、アジア太平洋地域における多国間安全保障対話の枠組みの構築や、朝鮮半島問題に関する四者会談を拡大した六者会談をさらに発展させ、北東アジアフォーラムを構築していきます。これら多国間協議の場において、安全保障関係者の交流、基地や施設への相互訪問、演習などの事前通報・情報公開、通信連絡手段の設置などの信頼醸成措置を積極的に実現していきます。また海賊情報も含めて安全保障情報の域内共同管理や情報衛星の共同運営の提案などについても、憲法の枠内で積極的なイニシアティブを果たしていきます。
アジア太平洋地域における多国間安全保障対話の枠組み構築と日米安保体制は、対立するものではなく、両立・補完関係にあり、同地域の平和と安定のため、それぞれ重要な役割を果たすものと認識しています。
(b)集団安全保障のあり方を追求する
軍事的強制力を伴う集団安全保障体制をアジア太平洋地域に構築することは望まれることですが、同時に解決すべき問題があることも認識する必要があると考えます。例えば、米国と中国のいずれかが参加しない集団安全保障体制は、参加しない国に対する同盟的色彩が強まり、むしろ有害ですらあるといえます。また、国連との役割分担やその関係づけについて検討する必要があります。
4.国連をよりよく機能させるために
国際連合は、非効率的な運営、軍事的強制手段の不完全性などの問題点を抱えながらも、国際的な平和と安定に重要な役割を果たしています。紛争解決能力の限界を指摘されてはいますが、重要なことは国連の限界を指摘し批判することではなく、国連がよりよく機能するように改革していくことです。国連改革を推進する一方で、幅広い国連外交を主体的・積極的に展開していきます。
(a)日本のPKO活動を充実させる
国連が行う国際紛争の解決に向けての交渉、仲介や平和維持活動(PKO)の展開は、世界の平和と安定のため重要な役割を果たしており、日本もより積極的に協力していく必要があります。PKO活動については、「PKO協力法」施行後七年を経て国民の間にも理解と支持が定着したと認識し、国際的な平和の維持に対する積極的な貢献を行う基本的な政策と位置づけます。また、現在凍結中の紛争停止や武装解除の監視、緩衝地帯における駐留・巡回などのいわゆるPKF活動についても、その凍結解除に向け、国会審議を開始します。
(b)多国籍軍への協力は慎重を期す必要がある
安全保障理事会で議論を尽くし、正式な決議が行われた場合には、その決議に基づく多国籍軍の役割は評価されるべきです。しかし一方で、日本国憲法は、多国籍軍の武力行使を伴う活動への参加を禁じていると考えるべきです。また、自衛隊が武力行使を行わない場合には自衛隊の多国籍軍への協力が憲法上可能ですが、戦争終了後の協力や資金協力を別とすれば、自衛隊の多国籍軍への協力については慎重を期すことです。
(c)国連軍には前向きに検討する
「国連憲章第四二条、第四三条の特別協定に基づく」という意味において正式の国連軍は未だ編成されたことがなく、当分の間その可能性は低いと考えられます。国連設立時の精神である国連を中心とする集団的安全保障体制の確立に向けて真摯な努力を続けるべきであり、正式の国連軍が編成される場合には、これに参加します。
ただし、日本が参加する場合に、現行憲法で可能かどうかについては議論があるところであり、今後十分に検討していきます。
3.沖縄の米軍基地問題の解決と経済の自立に着手します。
戦後五十年余が経過している今日、なお、沖縄に米軍基地が集中していて、多くの負担と犠牲を強いている状況を直視し、国内外への移設を含め、その整理・縮小のための解決方策の実現に積極的に取り組みます。とりわけ、普天間飛行場については、沖縄県民の意思が最大限尊重されるよう、米国政府にも働きかけていきます。
沖縄県における駐留軍用地の返還に伴う特別措置に関する法律(軍転法)の改正を行うとともに、日米地位協定の運用改善や見直しも併せて推進します。また、今後の米軍基地の整理縮小をより積極的に推進していく立場から、SACOUの検討に着手します。
沖縄の地域振興については、所得格差の解消や雇用の創出にも寄与する沖縄経済新法の制定をめざします。特に、一国二制度の導入、定時定速で快適な沖縄新交通システム整備、沖縄健康アイランド構想の支援などを進めます。
沖縄サミットの開催にあたり、アントレプレナー・サミット(起業家サミット)、レイバー・サミット(労働サミット)の開催実現をめざします。
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