参議院総務委員会で29日、生田日本郵政公社総裁を参考人に迎え、日本郵政公社平成16年度財務諸表の報告に基づき閉会中審査が行われ、民主党・新緑風会の高橋千秋議員が質問に立ち、民営化後の郵政公社事業の在り方について質した。
高橋議員は「小泉総理にとって郵政民営化法案は成立がゴールだったようだ」と語り、それ以降は郵政民営化に対する熱意は感じられないとの見方を示すとともに、一方、国民や郵便事業関連業務従事者にとっては郵政民営化はゴールではなくスタートだと指摘。そのスタートに伴い各地・現場で不安の声が上がり、問題も噴出している実態をふまえ、再度議論する必要があると問題提起し、質問に入った。
「決算の報告もあったが、経営環境は厳しくなっていく」との見通しを示した上で高橋議員は、生田総裁の見解を質した。総裁は「全般に関して楽観していない。深刻かつ真剣な取り組みを要する」と明言し、3事業の経営に関しては公社法の枠を外し、市場から客観視すると経営は極めて厳しいといわざるを得ないとの認識を示した。平成17年度3月期における郵便事業の26億円の黒字ついても「1兆9000億円も売り上げがありながら、26億円というのはゼロと考えざるを得ない」との厳しい見方を提示。労働コストの上昇によって期待した利益は望めなかったとも分析し、予断を許さない状況であるとした。郵便貯金事業も簡易保険事業も、楽観を許さないとの認識を示した。
こうした答弁に高橋議員は、民営化に前向きに明るくという雰囲気には程通り現状を改めて深刻に受け止めるとともに、経営努力の不足もあるだろうが、郵便事業はそもそもそれほどの利益を見込めないのが前提であり、郵便業務を貯金・保険業務で補うと同時に、郵便業務があるからこそ貯金・保険業務も成り立つという形で業態が成り立っていたと分析。法案成立前の委員会審議でもそうした点を問題視してきたことに改めて言及し、そうした業態を十二分に理解・考慮した事業展開を考えていくべきだと指摘した。
また、郵政公社に関わる事件・事故が発生し、業務改善命令も出ている点も取り上げ、民営化を控えては国民の信頼を得るためにコンプライアンスの徹底は極めて重要だと指摘。真剣に取り組んで行くよう、生田総裁に注文をつけ、総裁は総点検し、全社を上げて取り組んで行くと応じた。
高橋議員はさらに、民営化後、現在4700局ある集配郵便局のうち1000局が廃止され、3600局の時間外窓口が廃止されることになる見通しである点について、サービス低下に繋がりかねず、住民の不安も根強いと指摘。質疑からは、郵便物の集配業務が打ち切られる郵便局のある自治体996のうち99が反対を表明していることが明らかになった。こうした議論を踏まえて高橋議員は、集配廃止・時間外窓口の廃止によるサービス低下は明確であると重ねて指摘。国民の利便性には万が一にも支障は生じないとの姿勢を示してきた竹中郵政民営化担当大臣はじめ、小泉政権の、国民を欺く行為とも言えるその姿勢を批判した。
同時に、人員配置に関しても、配置計画もないまま確保の見通しが立っていない現状を前に高橋議員は、民間業者なみの配達など到底見込めないと指摘。この点からもサービス低下に繋がりかねない実態が浮き彫りになったとして、真に国民のためのサービスとなるよう努力するよう求め、答弁を終えた。
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