参議院厚生労働委員会で審議が続いていた医療制度改革関連法案が、13日夜、与党側の強引な委員会運営によって、強行採決された。民主党は、審議がまだ不十分であるとして理事会等の場で採決に反対したが、自民党の山下委員長はこれを無視。多くの議員が反対の声を上げる中、審議を打ち切り、討論と採決を強行した。
反対討論には、円より子参院議員(同委員会筆頭理事)が立ち、これまでの32時間の審議において多くの重要問題が提起されたにも関わらず、「問題点・疑念が全く払拭されないまま、採決が行われるのは国民に対する裏切り行為だ」と厳しい口調で批判を展開。小泉首相の「やる気の無さ、責任放棄の態度が国会にまで伝染したのか」とし、採決欠席も検討したが、「どれだけこの法案が国民生活に密接に関わりのある重要な法案であるか、そして様々な問題点があるかを、更に知っていただくために反対討論をすることとした」と述べた。
そして円議員は、「わが国の医療制度が今、崩壊の危機にさらされている」として、相次ぐ産科・小児科の閉鎖や僻地における医師不足など悪条件の中、「医療従事者の皆さんは過重労働に耐え、自分の生活まで犠牲にして、医療の質が低下しないよう、涙ぐましい努力を続けておられる」と指摘。「医療現場の、純粋に患者の皆さんを救いたいという責任感と使命感だけで医療制度を支えることは、もはや限界に来ている」との認識を示した。
こうした状況に対し、小泉政権は「医療費適正化という美名の下に、医療費の削減や抑制を図り、医療現場を更に苦しめようとしている」と指摘した円議員は、「医療費抑制の結果、医療が荒廃し医療従事者の士気が大幅に低下した」イギリスでの例を挙げ、崩壊した医療制度の再建がいかに困難であるかを具体的に論じた。そして、「社会全体の共通の財産である医療を享受する機会の格差の解消に努め、結果の不平等を無くさなければならない」とし、「今回の医療制度改革は、医療費削減だけをめざした改革以外の何ものでもない」と批判を加えた。
円議員は、法案への反対の理由として、(1)合理的な根拠のない医療給付費の将来設計を元に、制度改革を実施しようとする点、(2)新たな高齢者医療制度の創設が、高齢者の医療の質の低下を招く危険性がある点、(3)検診・保健指導の手法に多くの懸念がある点、(4)療養病床の再編成が、行き場のない「介護難民」を生み出す可能性が高い点、(5)医師不足問題の課題に的確に対応できていない点、(6)医療事故対策が不十分である点、(7)公的医療保険制度の再編成の方針は、問題解決にほど遠い内容である点などを挙げて、法案の問題点を鋭く指摘した。
最後に、「覆水盆に返らず」で「医療制度が一度壊れてしまえば、もう元には戻らない」と改めて懸念を示した円議員は、「私たち民主党は、医療制度の崩壊を食い止め、日本の医療を再構築し、国民が求める理想の医療に一歩でも近づけるよう、これからも努力を重ねていくことをここに宣言する」と述べて討論を締めくくった。
こうした討論の後、医療制度改革関連法案は、多くの反対の声が委員会室を包む中、与党の賛成多数で可決された。採決の後、津田弥太郎参院議員が21項目に及ぶ附帯決議案を読み上げ、賛成多数で可決された。
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