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2006/06/14
【参院本会議】足立議員、医療機会平等訴え政府医療改革案に反対
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参議院本会議で14日、一括審議された内閣提出の「健康保険法等の一部を改正する法律案」及び「良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律案」に関して、民主党・新緑風会を代表して足立信也議員が反対討論を行った。

 足立議員は冒頭、13日の厚生労働委員会の審議について「理事会の合意もないまま、委員長より審議の終局が提案され、2法案は委員会で可決された。審議時間は32時間、強行採決された衆議院厚生労働委員会の審議にも遠く及ばなかった」として、政府・与党の強引な手法を批判。昨年成立した介護保険法改正案、障害者自立支援法それぞれと比較しても格段に多い440項目にのぼる政省令事項があるからには、「確たる方向性を示すためには、開かれた審議を国会の場で行う義務がわれわれ政治家にはある」と表明。改めて委員長の職権乱用に断固抗議する姿勢を示した。

 高齢化が進展する一方、厳しい財政状況下で効率的・安定的に国民に保健・医療・介護を提供していくのはOECD加盟国に共通する最重要課題であると足立議員は指摘。であるが故にOECDは一昨年に保健大臣会合を開き、それに合わせて詳細なデータ収集・分析を行い、『世界の医療制度改革』を刊行したと説明した。にもかかわらず、昨日の委員会審議において「読んだことがない」と答弁した川崎厚労相に対し、「世界がどのように立ち向かい、反省をし、どんなアクションプランを描いているのか、感心すら示さないということはゆゆしき自覚の欠如と断ぜざるを得ない」と指摘した。

 世界一の医療制度と評され、世界一の健康寿命・平均寿命を達成した今日の日本は、医療従事者と患者・家族間で培われた信頼関係のなかで成し遂げられたとも分析した足立議員は、しかしながら最善の医療を受けるのが難しいばかりか、生命すら脅かされる危険が日常的に生じ、8割を超える国民が不満を抱いている実態があると論じた。「今こそ、必ず最善の医療がうけられるという安心を国民の心に取り戻さなければならない」とも述べ、財税的観点からのみの医療費削減を断行しようとするのが政府の医療制度改革だと改めて指摘。「このままでは医療が守るべき国民の命を削ることになりかねない。命の値段は削れない」と厳しい口調で訴えた。

 そうした見解を表明したうえで足立議員は主な反対理由を提示。まず、健康保険法等の改正案に関しては、政府が医療費増大の根拠とする医療費の将来推計値が恣意的に補正されたものであり、高齢者は3・2%、一般は2・1%の伸びとされているが、それぞれ水増しされたものである点に言及。「この水増しがなければ、今回の医療給付費抑制策の成果とほぼ同額となり、根拠のない作り話といわざるを得ない」と指摘した。

 また、現行の老人保険制度において、「現役世代と高齢世代の費用負担関係が不明確であること」「医療費の支払いを実施する市町村と実際の費用を負担する保険者が別であるため財政運営の責任主体が不明確である」といった批判がありながら、改正後も基本的構造が何ら変わっていない点も問題視した。さらに足立議員は、「高齢者医療制度に基づき、医療費適正化計画の策定、実行、評価のプロセスが組み込まれていることが、最大の問題点である」とも述べ、高齢者医療を標的に「医療費の適正化」とは名ばかりの医療費抑制を図るための仕組みとして機能することになるのではないかとの見方を示した。同時に、現行の老人保健法に基づく保険事業、国及び地方公共団体がこれまで担ってきた住民の健康の保持・増進を目的とした保険事業を実施する責務を、今回の改正によってこともあろうに削除してしまった点を足立議員は極めて深刻に受け止め、政府の姿勢に疑義を呈した。あわせて、高齢者にも原則として現役並みの自己負担と、療養病床における住居費・食事の自己負担を求める内容となっている点を取り上げ、望む医療が受けられなくなる危険性があるとして「断じて容認するわけには行かない」と強く主張した。
 
 続いて医療法等の改正案に関する反対理由にも言及。「世界は医療抑制の時代を超えて評価と説明責任の時代だ」と指摘した足立議員は、医療に対する国民不満の原因は「情報の非対称」「自己決定権が尊重されないこと」「相談体制の不備」「医療事故ならびに死亡事故の究明体制の不備」「提供される医療の質に対する客観的評価体制の不備」にあるとした。この一つ一つを解決することが医療の質を高めることにつながり、「生命の尊厳」と「医療を受ける者の自己決定の尊重」につながるにも係らず、政府案は問題の羅列に過ぎないと指摘した。医療従事者の責任感と使命感に基づいた献身的な努力にのみ頼るのは限界に達しているとの見方も示し、人材確保の必要性にも言及した。
 
 また、「健康格差社会」も生じているとして、医療における機会の不平等の多くは、生命をも奪うことを意味し、取り戻すことができないと指摘。これ以上、自己負担増加を加えれば健康格差を助長し、健康格差に対する公費医療費は増大するとの見方も示し、「民主党はわれわれの財産である日本の医療をすべての国民に効率的に平等に分かち合える医療制度を目指す」と改めて表明。政府案に断固反対の姿勢を示し、反対討論を締めくくった。

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