小沢一郎代表が8日党首討論で、憲法9条、閣僚、与党の政策責任者の核保有・核武装発言、教育基本法改正と教育現場おけるいじめ、高校の未履修問題を取り上げ、安倍首相の考えを質した。
小沢代表は、安倍首相がフィナンシャルタイムズのインタビューで、憲法9条を時代に合わないから改正すべきと発言していることを取り上げ、憲法9条に対する首相の考えを再三質した。しかし、首相はまともには答えず、自民党の憲法改正草案に書いてあるとして、自らの考えを明確には示さなかった。
小沢代表は、こうした首相の姿勢に対して、憲法9条の条文の一部を示し、武力の行使、威嚇の禁止の考えは、国連憲章2章にも明記されており、決して時代にそぐわない考えではないと主張し、改めて憲法9条の意義を強調した。
核保有・核武装議論について、小沢代表は、日本の核保有は軍事的も政治的にもマイナスであるとしたうえで、国益を担い国を代表している人間の発言は慎重であるべきで、最近の発言は誤解を与え日本に対する信用・信頼を失墜すると批判した。さらに発言を止めるよう指示するべきだと首相に迫った。首相は、「『核武装に意味はない』ということを言うのも議論になる。その議論するものいけないというのは私は行き過ぎだと思う」と答え、議論を容認した。
教育問題に関しては、教育基本法改正案の成立で、今起こっているいじめ、高等学校における未履修問題などが解決できるのか、解決には、さまざま施策が必要ではないかとして、考えを質した。首相は「関係者が使命感をもっていただくことが必要。学校、教育委員会、家庭が一体となっていじめに対処すべき」だと答えた。また、教育基本法改正案に関しては、理念、原則を明示するもので、直ちにいじめ、未履修問題につながるものでないとした。
小沢代表は、教育行政に触れて、我が党の日本国教育基本法案には、国に教育の最終責任を負わせ、また、教育委員会を改廃し、関係者からなる学校理事会を創設し自立的・自主的に学校を運営する仕組みとする内容が盛り込まれていることを紹介した。そのうえで、「現状の制度を前提とした政府案でしかない」と批判、「政府案の成立をただ急ぐのでなく、真剣な議論を与野党で」と求め、討論を終えた。これに対して、首相はまともには答えず、「子どもが海で空き缶を投げたら注意しなければならない。また、投げないよう子どもに社会規範を身に付けさせなければならない」などと答え、政府案の早期の成立を望んだ。
主なやり取りは以下の通り。
■憲法改正
代表 前回も申し上げたが、占領軍の深い関与でつくられたといことを強調すれば、法律論として無効論になる。また、戦後に作られた仕組みの否定につながる。時代にそぐわないものとして、憲法9条を挙げた。インタビューで9条を変えなくてはと言っている。9条に対する考えは。
首相 自民党は憲法改正の草案を出している。自民党としてはそこに書いてある通り。
代表 9条をどのように考えるのかを言ってほしい。
首相 実力部隊の存在を明記、国際貢献も書くべき。
代表 自衛権を明記する、国際貢献を明記するという考えは一定理解する。今の9条の条文をどう考えるのか。
首相 総理として憲法尊重の義務がある。条文のなかに実力部隊の存在が書かれていないので、存在が分かりにくいという議論がある。
代表 9条を時代にそぐわないとは思わない。国連憲章2章にも同様な考えが示されている。
■核武装・核保有議論
代表 閣僚、政策責任者の核武装に関する発言をどう考えるのか。
首相 非核3原則の原則は今後も維持する。
代表 3原則を守ると言えば、自由に議論していいのか。
首相 政策論として我々は核を放棄。外務大臣の発言は核をめぐる議論を論評したのではないか。
代表 核武装の議論はしていい、と言うのか。
首相 核武装の議論をしていいとは言っていない。核をめぐる議論と言っている。
代表 誤解を与えるような発言。日本の信用・信頼を失墜させるような発言は慎むべき。本音はどうなんだということになる。日本にとって核武装・保有は政治的も軍事的にもプラスにならない。慎むべきと指示すべき。
首相 「核武装に意味はない」ということを言うのも議論になる。その議論するものいけないというのは私は行き過ぎだと思う。
■教育問題
代表 いじめ、高校の未履修がクローズアップされている。どうしてこんなことが起きるのか。
首相 子どもたちに規範を身に付けさせるべき学校が違反したのは遺憾。
代表 どういう施策が必要か。
首相 使命感をもっていただくこと。学校、教育委員会、家庭が一体となっていじめに対処すべき。
代表 教育基本法改正案が成立すれば、どこがどうなるのか説明を。
首相 基本法は理念、原則を示すもの。いじめなどは学校で種々に対処すべきものでは。
代表 教育委員会制度そのものの改革にいきあたる。今の制度では責任の所在がはっきりしない。我が党の案には国に最終責任があることを明記している。もう一度総理の考えを取り入れて、出し直したらどうか。
首相 教員免許制度などは基本法改正に後に個々の法律で。
代表 教育は国家100年、1000年の大計。現状の制度を前提とした政府案でしかない。真剣な議論を与野党で。
首相 子どもが海で空き缶を投げたら注意しなければならない。また、投げないよう子どもに社会規範を身に付けさせなければならない。今の子どもたちにしっかり教える必要がある。
|