参議院行政改革特別委員会が18日、小泉首相出席のもとで開かれ、民主党・新緑風会の二番手として前川清成議員が質問に立ち、求められる国の形に関して首相との議論を展開した。
前川議員は、2003年末に民主党議員として立候補しないかと打診されるまで、政治とは無縁の世界で弁護士として生きてきたと前置きしたうえで、そうした自分にとっても小泉内閣の誕生はインパクトがあったと振り返った。以来5年を経過するなかで年金改革や定率減税の縮減廃止などが行われてきたと語った前川議員は、果たして国民生活は良くなったか疑問だとし、首相が思い描いていた未来とはどんなものだったのかと質問した。首相は贈られた米で現在の空腹をしのぐことを我慢し、先を見越して藩内の教育の充実をはかるための資金にあてた長岡藩の米百票の話を延々と論じたうえで、「今は苦しいけれど、今のことだけ考えていたら明日がないということだ」などとした。
そうした答弁に関連して前川議員は、昨今失われつつある教育機会の平等に言及。自らは昭和57年に六法全書を丸暗記して司法試験に臨んだことを紹介しつつ、それに対して小泉政権下では法科大学院制度が導入された結果、大学卒業後、国立では年間80万円、私学であれば130万円となる法科大学院の学費負担が可能な家庭の子どもでなければ司法試験を受験さえできなくなってしまった実態を明らかにした。前川議員は「親の財布で教育の機会に差が出ないよう、国がさらに積極的な役割を担うべきではないか」「国が積極的に子どもの未来のためにお金を使うべき」と述べ、教育機会均等の構築に向け、リーダーシップを発揮するよう、首相に注文をつけた。
また、有名私立中学への進学等を目指した場合、塾通いは当たり前といった現実があることも明らかにした前川議員は、学校の教師を増やし少人数学級を徹底することで塾通いしなくても学校で求める教育が受けられる制度を整えるよう、重ねて首相に求めた。
情報公開・透明性の確保の必要性についてお題目のように唱えている政府の姿勢に関しては大いに疑問を呈し、「この法案のなかに明文で情報公開に資するような条文をいれなければならなかったのではないか」と述べ、法案の不備を指摘した。
さらに前川議員は、金融庁と貸金業者との関係にも着目。サラ金やカード会社は、100万円未満の貸し金については年利18%、100万円以上については年利15%という、利息制限法の規定には違反し、ただ出資法の上限金利である29・2%の制限の範囲内という、いわゆる「グレイゾーン金利」で営業を続けていることを明らかにした。「100万円銀行に預けも年間で10円の金利しかつかない時代に、サラ金であれば100万円貸し付けた場合、一年間で30万円の金利を得ることが許されている」とも指摘。その結果、サラ金が巨額の利益を得ることとなっている実態を、マツダなどの営業利益が年間1234億円であるのに対して、アイフル・プロミス・アコムなどのサラ金業者は3000〜5000億円前後の営業利益を上げているとの数値を示すことで浮き彫りにした。
こうした実態をどう見るか質すと首相は「金利が高くてもいいから借りたいという人はいる」などと国民感情を逆なでするような答弁。前川議員はそうした首相の考え方を「金利が高くても貸して欲しいなどという人はいない。そうではなくて、高い金利でも手を出さざる得ないほど困った方々がいるということだ」と一括。首相であるからにはそうした方々に思いを致してほしいと強く求めるとともに、緊急時に低利でお金を貸すシステム等を検討すべきだと指摘した。
2007年1月には消費者金融の上限金利の見直しが行われることにもなると述べた前川議員は、その方向性を探る懇談会のメンバーにはアコム・レイク・オリックス社長といった貸し金業者が名を連ねているにもかかわらず、借り手側の消費者代表やヤミ金問題などを数多く手がけている宇都宮弁護士らはオブザーバーになることさえ金融庁によって阻まれた事実があることを指摘。そのほかにも、金融庁と貸し金業者の癒着振りを疑わせる事実を列挙した前川議員は、国民のための行政庁に求められる当たり前の公正さを早急に確立すべきだと重ねて注文をつけた。
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