衆議院予算委員会で14日、民主党・無所属クラブの三番手として長妻昭議員が質問に立ち、天下り問題、社会保険庁改革への安倍内閣の取り組み姿勢を質した。
冒頭、長妻議員は青森市の八甲田山で発生した雪崩について、救助に向けて全力を注ぐよう改めて防災担当大臣に要請するとともに、お見舞いの言葉を述べ、質問に入った。
まず、旧運輸省の職員3人が立ち上げた会社が設立前に作成した資料を示し、「財団経由で運輸省調査を0・8億円で請け負うため、当初より黒字経営が可能」などと記されている点を取り上げ、「お役所が民間会社の設立前に発注の約束をしている資料だ」と指摘。全部天下りで固められたこの状況をどう見るか冬柴国土交通大臣に質した。
冬柴国交相は「企画を述べたもので、国土交通省が承諾、約束した性格のものではない」などと答弁したが、長妻議員は株式会社という隠れ蓑をつくった天下りの構造に当たるとして、財団経由で受注が行われる形にすることで巧妙に実態を隠そうとしたものであるとの見方も示したうえで、冬柴国交相に対して調査を行うよう強く要請した。
そのうえで長妻議員は、安倍首相が所信表明演説で「根絶する」とした「押し付け的な天下り」について、政府が把握している件数を確認。ところが安倍首相は「文書で確認できるものはなかった。実態としてはあったのではないかと考えている。そういう認識のもとになくしていかなければならないと思っている」などと答弁。さらに渡辺行政改革担当大臣に至っては「あったかもしれないが確認していないということを意味している」などと語り、現在その制度設計を考えているところで、定義が確定していないので調べろといっても無理だとの回答。その答弁からは「定義さえしていないものを根絶する」と所信表明した安倍内閣の無責任体制が浮き彫りになった。
また、長妻議員が国民年金の実態を質したのに対する答弁からは、社会保険庁が管理する納付記録と本人の認識とが一致せず、年金給付額について41万人もの人が訂正要求をしたことが明らかになった。さらにコンピュータ化される前の台帳の記録がもれなく移行されたかどうか、台帳自体がフィルム化もされないまま破棄されたため、確認する術がないこともわかった。
それを受けて長妻議員が緊急事態宣言を出して、被保険者全員に納付記録を郵送してヌケがないか点検してはどうかと首相に質した。ところが首相は「緊急事態宣言を出すと不安を煽る結果になる危険性がある」などと答弁。長妻議員はその答弁に対し「チェックしていただくことが不安を煽るのか」と首相の認識に驚きさえ示し、むしろ信頼が高まると考えるべきではないかと指摘した。
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