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2012年3月
日中「交流協議機構」会長 輿石 東
同事務総長 平岡秀夫

日中(民主党・中国共産党)「交流協議機構」訪中団 報告

【実施期間】

2012年3月23日(金)〜25日(日)

【団構成】

団長輿石 東日中「交流協議機構」会長・幹事長
樽床 伸二日中「交流協議機構」会長代理・幹事長代行
山岡 賢次日中「交流協議機構」顧問・副代表
仙谷 由人日中「交流協議機構」副会長・政策調査会長代行
一川 保夫日中「交流協議機構」副会長・参議院幹事長
城島 光力日中「交流協議機構」副会長・国会対策委員長
平岡 秀夫日中「交流協議機構」事務総長・総務委員長
高橋 千秋広報委員長
近藤 洋介国民運動委員長
松井 孝治日中「交流協議機構」事務局長・筆頭副幹事長

【日程】

3月23日(金)
時 間 行 動 備 考
8:50 結団式 羽田空港
9:40 羽田空港 発 JAL 023便
13:30頃 北京空港 着  
15:30 習近平 国家副主席と会見 人民大会堂 新彊ホール
17:30 李源潮 中国共産党中央組織部長と会見 人民大会堂 新彊ホール
18:50 李源潮 中国共産党中央組織部長による歓迎夕食会
3月24日(土)
時 間 行 動 備 考
10:00 日中「交流協議機構」第4回会議
開会式
基調講演
『日中国交正常化40周年の回顧と展望』
  王家瑞 中連部長
  輿石東 幹事長
中連部 1号ホール
司会:劉結一 中連部副部長

各20分 同時通訳
10:45 休憩 ※中国中央テレビ局(CCTV)による輿石幹事長への取材
11:05 『日中間での政策に関する意思疎通、経済交流の強化、政治的信頼の増進』
  裘援平 中央外事弁公室副主任
  仙谷由人 政策調査会長代行
自由討論


各15分 同時通訳

逐次通訳
12:50 王家瑞 中連部長による歓迎昼食会 中連部16階 宴会ホール
14:00 『日中間での政策に関する意思疎通、経済交流の強化、政治的信頼の増進』
  方立 中央政策研究室副主任
  平岡秀夫 総務委員長
自由討論


各15分 同時通訳

逐次通訳
15:45 休憩
16:00 『日中間の新たな文化・人的交流の方法、国民感情の改善』
  王仲偉 中央外事宣伝弁公室副主任
  山岡賢次 副代表
自由討論
司会:揚燕怡 中連部部長助理

各15分 同時通訳

逐次通訳
17:10 総括演説
  劉結一 中連部副部長
  樽床伸二 幹事長代行
各10分 同時通訳
17:40 「交流・協力に関する覚書」 調印式
18:30 記者会見 駐中国日本大使館
19:30 丹羽宇一郎 駐中国日本大使主催夕食会 日本大使公邸
3月25日(日)
時 間 行 動 備 考
9:30 柳蔭街コミュニティ 視察 北京市西城区
12:00 劉結一 中連部副部長による送別昼食会 全聚徳 和平門店
13:50 中国メディアによる取材 北京飯店
16:40 北京空港 発 JAL 024便
21:05 羽田空港 着、解散  

【総括】

  • 日中国交正常化40周年となる記念の年に訪中し、習近平国家副主席、李源潮党中央組織部長との会談、「交流協議機構」第4回会議を通じて、率直な意見交換を行い、「心合わせ」ができつつある段階に入った。
  • 国交正常化以降の両国の発展の歴史を振り返りつつ、@戦略的互恵関係の一層の深化、A政治的相互信頼の増進、B国民感情の改善、について、様々な角度から未来志向の議論が交わされ、今後の政府間協議を後押しする成果を上げた。
  • 両党の友好交流と協力関係は日中関係の重要な構成部分であり、今次会議の開催が、日中関係の健全で安定的な発展に寄与するとの認識を確認した。
  • 国交正常化以降40年間、日中関係は飛躍的に発展し、大きな成果を収めていることを積極的に評価する一方、様々な課題も存在するとの認識を共有した。
  • 日中はこれまでにないほど緊密で相互依存の関係にあり、その関係は両国のみならずアジア、全世界にも影響を及ぼす重要なものだとの認識で一致した。

【成果】

  • 重大事件や突発事故の発生に備え、両党間での早急かつ効率的な意思疎通を実現するため、「ホットライン」を設置することで合意した。民主党側は樽床伸二幹事長代行、中国共産党側は劉結一中連部副部長を担当者とする。
  • 原発事故の風評被害対策のため、日本産食品・農産物への輸入規制や福島等への渡航自粛勧告の緩和、上海ー福島間直行便の早期復航を要請したほか、被災三県への観光数次ビザ発給の検討を表明した。
  • 東シナ海を「平和・協力・友好の海」とするため、東シナ海資源開発などの具体的な協力を前進させることで合意した。
  • 両党は、ウェブサイト等のメディアに日中関係に関するコラムを新設。また、適宜合同世論調査を行って、両国の国民感情の現状や問題点を把握し、その解決方法を探すことで合意した。
  • 中国共産党代表団の早期訪日を招請するとともに、「若手交流プログラム」を設立し、中国共産党若手幹部1名の日本留学を実施する。

【会議概要】

1.習近平国家副主席との会談

習近平国家副主席との会談 習近平国家副主席との会談

 冒頭、習近平国家副主席より、中国共産党中央委員会を代表して輿石幹事長をはじめとする民主党代表団の訪中と、両党「交流協議機構」第4回会議への出席に対し、熱烈歓迎の意が表された。日中国交正常化40周年の記念の年に、民主党代表団が中国側とともに40年来の歴史と経験を振り返り、両国の未来と発展を展望し、双方が党の運営、国を治める上での貢献について交流を深めることは大変重要であり、中国共産党は今回の訪問を重要視している。今回の訪問を通じて深く交流し、党間交流を通じて戦略的互恵関係をさらに推進するために、深く議論していきたいと述べた。
 輿石幹事長より、日中国交正常化40周年という記念すべき年に、与党幹事長として訪問できたことを大変うれしく思う。今日、東京を発つときは雨だったが、北京に降り立ったら晴れている。日中両国に明るい日差しが差すような、そんな2日間になればいいと挨拶。東日本大震災における中国からの物心両面にわたる支援と協力に感謝を示した。さらに、私は常々「人というものは出会って、顔合わせをし、心合わせをし、力合わせにつながる」というが、今日、習副主席とも顔合わせができた。このような会を積み重ねて、心合わせから力合わせができる交流をしていきたいと述べた。
 習副主席より、孔子に「40にして惑わず」という言葉があるが、日中関係もまさに不惑の年である。この40年間で両国関係は飛躍的な発展を遂げた。40年来の関係発展に尽くされた双方の国の指導者や国民の努力を高く評価しなければならない。両国は、アジア地域や世界の平和と繁栄に積極的な役割を果たしている。40年間の経験を総括すると、たくさんの有益な示唆が得られると同時に、これからの両国関係の未来にも参考になるとした。その上で、@日中間の政治的相互信頼の強化と増進、A日中間の互恵協力関係、B両国の民間交流の推進、C地域、そしてグローバルな課題における協力関係の強化ーーの4点について言及。特に、両国間には長い友好交流の歴史があり、これからも長く続いていく。その中で、政治家の責任、知恵が大変重要である。政治家一人ひとりの政治生命はせいぜい数十年、場合によって任期は数年かもしれないが、その責任は非常に重い。任期中、両国間には多くの問題が生じる可能性があるが、知恵を持って解決することによってはじめて、歴史や国民に責任を持つことになる。また、両国の政治家は両国の国民感情が傷つかないよう、非常に大切にしなければいけないとした。日中両国は、様々な分野における協力を通じて、戦略的互恵の正しい方向をしっかり把握すれば、両国の未来と発展は明るいと確信していると述べた。
 輿石幹事長より、日中国交回復40年だが、4000年に及ぶ歴史の貴重な財産がある。二国間の交流、信頼のカギは人と人の信頼と、お互いを理解し合うことから始まる。また、政治も経済も、我々が次の世代に何を引き継いでいくかということも大事である。日中のこれまでの交流や、中国の発展には目を見張るものがあるが、交流が深まり、信頼関係ができる一方、問題が起こる場合もあるとして、@東シナ海をめぐる国際約束締結交渉の早期再開、A原発の風評被害に関して、日本の食料品や農産品への輸入規制の緩和と福島ー上海間航空便の早期再開ーーについて尽力を求めた。また、我々も中国の国民感情に配慮しなければならないとして、歴史認識の問題に言及。1995年の村山談話に触れつつ、民主党は毎年、終戦記念日に談話を発出し、世界やアジアの皆さんに戦争という悲劇を再び繰り返さないとお誓いしていることを紹介した。そして、中国の子どもたち、日本の子どもたちが夢を持ってお互いに手を結ぶ、そんな国づくりをしていくことが、現代に生きる我々政治家の使命である。そういう意味からも、若い世代の交流や様々な分野における重層的な交流が、二国間の平和と繁栄につながっていくと述べた。
 習副主席より、東日本大震災は非常に大きな損失をもたらしたが、日本政府と国民のたゆまぬ努力と国際社会の継続的な支援により、必ずや復興再建を遂げるだろう。食品の輸入制限については、中国は食品安全に高い関心を持っており、安全性の確保に日本側のさらなる協力を求めるとした上で、「私自身も日本の食品が大好きだ」と述べた。東シナ海の問題は、原則的共通認識の実行を重要視し、事務レベルで早期交渉再開に向けた条件整備を行っているとした。また、歴史を直視することは大変重要であり、歴史を鑑とし、未来に目を向けることは双方の共通認識であり、両国関係の政治的基盤であるとした。
 輿石幹事長より、心合わせにつながる話ができたと述べた上で、「最後にお願いを一つ」として、先ほど日本の野菜や果物が好きだと言われたが、訪日の際にはぜひ、日本一の山梨の桃と、福島の桃を食べていただきたい、と要請した。

2.李源潮党中央組織部長との会談

李源潮党中央組織部長との会談 李源潮党中央組織部長との会談

 李源潮組織部長より歓迎の意が表され、自身も第2回会議に参加し、将来の社会建設に関する基調演説を行ったことが紹介された。その上で、日中両国は一衣帯水の隣国であると同時にアジア、世界の重要な国であり、両国の協力関係はアジアと世界の平和と安定、繁栄に大変重要な役割を果たしている。大きな枠組み、地域情勢からみると、日中両国が睦まじく共存することができればアジアや世界は安定し、逆なら安定しない。現在、世界は変化を遂げているが、日中はともに上昇する力だと認識している。過去の40年を振り返り、未来の40年を展望する時、目の前の利益に着目するだけではなく、長期にわたる利益を重視しなければならない。未来志向で、共通の戦略的利益に立脚した目線を持ち、政治的交流を強め、実務協力を拡大し、国民感情を改善し、適切に両国間の矛盾を処理することが大事だと述べた。
 輿石幹事長より、目先の利益にこだわることなく、全世界の平和と発展が二国間の役割であるという発言が印象的であり、だからこそ二国間の友好協力が大事だと改めて感じた。また、国民感情についてもお互いに配慮していかなければならないとした上で、常々「顔合わせ、心合わせ、力合わせ」という言葉を使うが、李部長とも、心合わせから力合わせにつなげられる機会にしたいと述べた。
 李部長より、心と心の関係を構築することを通じて、相互理解、相互信頼、相互尊重、相互協力という「真の友人」になる。中国の「真の友人」とは、お世辞ばかり言って、お世辞だけを聞き入れる関係ではなく、口げんかや衝突といった喧嘩を含め様々な試練に耐えられるような関係だ。日中は数千年の歴史の中で、お互いに先行する時期もあったが、変えられない2つの事実がある。両国は実に近いので、お互いを抜きにしては語れない関係にあることと、両国はずっと学び合い、お互いの長所を取り入れて自国の発展を遂げてきたことだ。両国間には不幸な歴史もあったが、両国が共存し、学び合ってきた歴史に比べれば、短い一部にすぎない。さらに大所高所から考えれば、世界経済の中心は現在、アジアに移りつつある。世界において米国と日本と中国は「大きな三角形」を形成し、アジアでは日中韓という「小さい三角形」も存在する。いずれも日本と中国はそのメンバーであり、日中両国はそれぞれが抱えている困難や問題を適切に処理し、解決することによって明るい展望が開けるだろうとした。
さらに、ここからは私個人の発言だと前置きした上で、自身の母の兄が戦死したことに言及し、自分の家族や親戚を亡くした中国人は、あの戦争を忘れるはずがない。しかし中国人の基本姿勢は「前事不忘、後事之師(前事忘れず、後事の師となる)」、再び悲惨な歴史を繰り返さないということである。また、中国は長い歴史の中で豊かな国だったが、ここ300年来の封建社会の腐敗による衰退は、中国人にとって耐えがたい屈辱であった。だからこそ中国人は、自分の努力を通じて民族の復興を実現し、世界で尊重される国にならなければならないと考えている。隣国の日本や米国、欧州が「現代化」を先に達成した中で、中国は大いに努力して経済を発展させ、「現代化」を実現する理想を持っている。「現代化」を実現する過程においては、他国の脅威になるのではなく、日本や世界各国とともに前進することに重点を置くとした。同時に、両国は相互理解に基づいてはじめて、相互信頼関係が樹立できるが、特に政治家同士の信頼関係が一番大事であり、「君子の間に信頼があってはじめて国が成り立つ」という古い言い回しがあると紹介。日中の協力関係には莫大な潜在力があり、領土をめぐる係争、感情的な衝突、利益をめぐる競争は局地的な部分にすぎず、広い視野に立って物事を考えなければいけない、と述べた。
 輿石幹事長より、戦争の悲劇を再び繰り返さぬよう、終戦記念日に談話を発出し、全世界に向けて約束していること、政治家に信頼を取り戻すことが先決との指摘を受けて、日本にも「信なくば立たず」という言葉があることを紹介。また、「日本を抜きに中国は語れない、中国を抜きに日本を語れない」との言葉に今後の両国のあり方が示唆されているとして、交流協議機構の枠組みによるホットラインを設置し、両党の関係を強化、深化させたいと提案した。
 李部長より、ホットラインの設置に大賛成であり、さらにハイレベルでの与党間の交流のメカニズムの充実や、若手責任者の交流など両党間の緊密な交流のメカニズムを樹立する必要があるとした。また、民主党の友人の皆様に中央だけではなく、地方の末端まで見ていただきたい、と述べた。

3.日中「交流協議機構」第4回会議

日中「交流協議機構」第4回会議 日中「交流協議機構」第4回会議

(1)基調講演「日中国交正常化40周年の回顧と展望」

<王家瑞 中連部長>

  • 両党の交流協議機構はこれまで3回の会議を重ね、真摯に深く対話し、多くの問題で共通認識を持ち、日中関係の改善と発展のため、重要な役割を果たしてきた。
  • この40年、日中は交流が密接になり、協力領域が不断に拡大し、相互隔絶から善隣友好へと向かった。多くの貴重な経験は、有効な示唆を与えてくれる。
  • 新たな情勢のもとで、戦略的互恵関係を引き続き推進するため、4つの政治文書の原則と精神に則り、@相互信頼を増進する友好的往来を保ち、A互恵協力関係の堅持し協力レベルを高め、B民間友好交流を密にし、C相違を適切に処理し、D国際協力を強化するーーことについて、友好交流と協力を全面的に推し進めていきたい。
  • 両党間においては、@戦略的交流を強化、A幹部の交流の拡大、B実務協力の展開、C民間交流の促進ーーについて、ともに努力することを提案する。

<輿石東 幹事長>

  • 40年前の9月、日中両国は長い間の不正常な状態に終止符を打ち、両国関係に新しい歴史の一頁を開いた。日中間には乗り越えねばならない幾多の困難、問題があったが、両国が、様々なレベルで、時には激しい議論も重ねながら大きな決断を下していった成果が国交正常化交渉であり、日中共同声明だ。先人の努力の重みを改めてかみしめ、井戸を掘った者を忘れてはいけない。
  • 日中関係はこの40年の間で飛躍的に成長し、大きな変化を遂げたが、より長い歴史の大きな流れの中で、両国国民を結ぶ心の絆は変わらない。私の地元の郷土料理「ほうとう」は、実は遣唐使によって伝えられた「はくたく」がその由来とも言われており、今でも陝西省では「ホウトウ」はワンタンを意味すると聞いた。千年の時を超えた食文化の親近感を実感する。
  • 武田信玄が軍旗に記した「風林火山」は、孫子の兵法から引用したものだ。諍いの芽を事前に摘んで、平和友好の道を開く。孫子の兵法は、古代中国に生まれた世界で最初の「非戦の哲学」だと私は捉えている。
  • 日中は文化の根を同じくする一衣帯水の隣国であり、古くから人々の間で心の絆が育まれていた。日中間の心の絆を改めて確認したのが、2008年の四川大地震と、昨年の東日本大震災における両国の助け合いの精神だ。
  • この40年の日中関係は、歴史認識や主権をめぐる様々な懸案の歴史でもあったが、お互いに立場を尊重し、安定的で良好な関係を築いてきた。さざ波を立てる動きが今も存在するが、小さなろうそくの火が大火事につながるような事態は絶対に避けなければならない。両国の指導者は、大いに議論はしつつも、最終的には大局を踏まえて決断することを常に心がけるべきだ。
  • 日中間の最大の大局的問題は、日中両国の国民的感情である。両国の指導者が心を砕き、両国民の交流を促す努力を惜しまなければ、必ずよりよい方向に向かうだろう。具体的な行動として、3つの分野での協力を提案したい。@海洋分野における協力、A東日本大震災を受けての協力、B更なる人材・文化交流、特に未来を担う若者間での交流の推進ーーである。特に、沖縄に加えて、被災三県を訪問される中国人観光客への数次ビザの発給について、前向きに検討する用意がある。そのほか、日中で合作映画を製作することや、共同で書道展を開催することも有意義な試みだ。
  • 40周年という「不惑の年」を迎え、我々は「承前啓後」「継往開来」という、過去を受け継いで未来を導くこの言葉を、まさに実践する時である。

(2)日中間での政策に関する意思疎通、経済交流の強化、政治的信頼の増進

<裘援平 中央外事弁公室副主任>

  • 大局的かつ戦略的な視野で日中関係を認識し、正しい方向に発展させなければならない。「友人は選べるが隣人は選べない」。グローバル化する世界において、各国の相互依存が深まり、共同で臨む課題が増えている。両国の戦略的互恵こそが両国と国民の根本的利益である。
  • 中国の台頭を脅威と捉えて行動したために、自国の発展のチャンスを失った人たちもいる。政治家間の相互信頼なくして、戦略的相互信頼はあり得ない。
  • 客観的かつ友好的な社会世論の環境をともに作っていかなければならない。
  • 相手国の内政問題は、特定の勢力に巻き込まれて利用されないように警戒が必要であり、干渉行為は相手国の民衆の怒りを引き起こすだけである。

<仙谷由人 政策調査会長代行>

  • 日中関係の安定的な発展のためには、日中間の政策に関する意思疎通、政治的信頼の増進が不可欠であり、首脳を含むハイレベルの頻繁な往来、接触を行うことがまず重要である。同時に、党間交流も大切である。
  • 日中間の経済交流は飛躍的に拡大した。殊にアジアにおいては、10数年前からダイナミックな域内分業体制が確立し、「世界の工場」として一大サプライチェーンを形成している。欧米発世界経済金融危機で、アジア生産ネットワークも大きな打撃を受けたが、その中で中国の存在感は増すばかりである。
  • 中国は改革開放以来、めざましい経済発展を遂げてきた。我が国は約3.5兆円のODAを供与したが、そのほとんどが円借款であり、これまで中国は一度も期日に遅れることなく、これまで円借款総額の3分の1を上回る計1兆円余りを返済した。人材育成の面でも非常に良い経済協力が行われた。
  • 今後も日中間では幅広い分野、特に省エネ・環境、防災、感染症対策、金融について、具体的な協力を進めることが重要である。
  • 経済関係のさらなる進化のためには、民間企業の円滑な活動を確保することが不可欠であり、社会保障協定など二国間の枠組み、日中韓FTA、知的財産権の適切な保護などについて、対話や協力が強化されることを強く期待する。レアアース問題は、WTOルールに則って適切な解決を図ることが、関係者の利益につながる。
  • 日中間には、処理を誤ると両国関係に大きな影響を及ぼし得る敏感な問題が存在する。日中間で領土問題は存在しない。海洋をめぐる問題が互いのナショナリズムを刺激しやすい状態にあり、注意して取り扱う必要がある。重層的な危機管理メカニズムの構築が極めて重要である。
  • 中国の軍事面での動向に、日本のみならず世界各国が注目し、一部の国は懸念を持って見ている。透明性の向上に更なる努力を期待する。また、北朝鮮の挑発行動に対して、共同歩調がとれるようお願いしたい。

<自由討論>

  • 歴史や人権、海洋権益、北朝鮮問題などについて、意見が交わされた。
  • 日本側から国連安保理常任理事国入りについて支持を求め、中国側から安保理改革に関する立場の説明があった。

(3)日中両国の発展戦略の一致点についての討議、日中間の実務協力の拡大

<方立 中央政策研究室副主任>

  • 昨年策定した「第12次5ヵ年計画」は科学的発展と経済発展モデルの転換を決定。今年は経済成長目標を7.5%に下方修正した。
  • 日中経済は補完性が強く、様々な分野での協力に大きな可能性がある。二国間の他、日中韓FTAとアジア一体化の推進、国際金融システムの改革、気候変動、保護貿易主義への反対などにおいて、交流と協力を深めるべきである。
  • ハイレベルな協力を実現し、循環型経済や防災、金融など重点的協力を強化する。中国のことわざに「家が和すれば万事順調にいく」とあるが、「日中が和すればアジアが振興する」である。

<平岡秀夫 総務委員長>

  • 日中両国が属するアジア太平洋地域は、世界の成長センターとなっている。地域の経済的連携をどのように進めていくかが重要な課題である。わが国は、TPPによって中国を除外する意図は全くなく、むしろ中国も含むFTAAPへと発展していくことを望んでいる。
  • 欧州政府債務危機への対処や、日中両国間の拡大する経済関係を支えていくため、金融面での共同歩調を進めていくことも重要だ。また、高度成長を続ける中国の膨大な需要に応えるため、インフラ整備、医療・福祉、環境改善などの分野において、日本が供給力を提供することによって共に発展していくことができる。
  • 東シナ海における実務協力を拡大していくことも重要である。また、東日本大震災からの復興においても、実務協力を要請したい。

<自由討論>

  • 日中双方から、気候変動やポスト京都議定書の問題について、多くの意見が表明された。また双方から、日中韓FTAへの強い期待が示された。
  • 日本側から中小企業金融に関する提案があり、中国側から食品の残留農薬に関するポジティブリストの問題について提起があった。

(4)日中間の新たな文化・人的交流の方法、国民感情の改善

<王仲偉 中央外事宣伝弁公室副主任>

  • 日中友好協力を促進するため、しっかりした「国民的基礎」が必要である。我々政治家や政党は、@仕事や言動を通じて国民間の友好増進、A両国間の歴史問題、文化的差異、実務的な交流に関する問題への適切な対処、B顔と顔を合わせた意思疎通ーーが重要である。
  • 何か問題が生じたとき、すぐにマスコミを通じてクローズアップするのは、問題解決にはマイナスになる。
  • 東シナ海の開発、中小企業金融、観光、レアアースなど実務的な課題は、「交渉」で解決すべきものであり、「感情」に結びつけるべきではない。

<山岡賢次 副代表>

  • 両国の若い世代がお互いをよく知り、交流することが、中長期的に安定した日中関係の基盤となる。
  • 東日本大震災に際し、日中国民がお互いに助け合うことで、新たな心の「絆」が生まれた。震災からの復興という共通の大きな目標に向かって日中が助け合う中で、両国の国民感情も改善していくと信じる。
  • 中国人観光客の来日を促進するとともに、風評被害の払しょくのため、中国政府の措置の緩和、解除を要請する。
  • インターネットの普及などにより情報が与える国民感情への影響に留意し、報道や情報への冷静な対応を求めるとともに、重層的なホットラインの構築を提案する。
  • スポーツ・文化交流を推進し、長い歴史の中で培われてきた文化の共通性を双方が実感できるような交流事業の継続的な実施が重要である。

<自由討論>

  • 日本側より、民主党三重県連が姉妹都市である河南省に小学校を建設した例が紹介され、中央だけではなく、地方など様々なレベルでの重層的な交流の重要性を指摘するとともに、中国側に渡航制限の解除を求めた。
  • 安全保障の問題について、中国側の立場の表明があった。

(5)総括演説

<劉結一 中連部副部長>

  • 友好的な雰囲気の中、様々な論点について誠実で深い議論が交わされた結果、以下の共通認識を得た。@友好協力は日中関係の主流、A相互補完や互恵協力分野の拡大は両国にとって大きな発展の機会となる、B大きく変革する世界における政治の相互信頼関係の深化、C様々な分野での協力拡大と世代友好、D両国間の課題への適切な対応、E両党間の交流協力の促進ーーである。
  • 次回の第5回会議を楽しみにしている。

<樽床伸二 幹事長代行>

  • 大変有意義で、率直な意見交換ができたことに感謝。
  • 隣国同士であることは、天命とも言える地理的要因であり、局地的な問題は発生することが宿命であって、課題は乗り越えるためにある。お互いの意見が違うのは当然であって、意見の違いを前提に、どうやってその間を埋めていくかが重要である。
  • 孔子は「恕(己の欲せざるところ、人に施す勿れ)」と教えたが、隣国同士がこの精神を持ち、お互いの立場をしっかりと守りながら進んでいかねばならない。特に、我々政治家が、これを「実行できるか」にかかっている。
  • 「戦略的互恵関係」という言葉は難解であり、日本国民に内容を理解してもらうには「共存共栄」という表現になるが、中国ではあまりイメージが良くないと聞いた。なかなか難しいものだが、両国関係の重要性について、お互い国民に説明を尽くさなければならない。
  • 中国共産党の若手幹部1名の日本留学を招請するとともに、中国側の早期訪日を歓迎したい。

(6)「交流・協力に関する覚書」調印式

「交流・協力に関する覚書」調印式