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民主党アフガニスタン・中東訪問団報告書

6.主な会談概要

アフガニスタン
【アブドラ外相】
  • アブドラ外相は、日本に対する様々なレベルでの善意及び政界でも超党派でアフガン支援に取り組んでいることに対し謝意。
  • 鳩山NC大臣は、新憲法制定や大統領選挙の成功など喜ばしい発展を遂げているが、この流れを確実なものにしていかなければならないが、イラクに隠れアフガニスタンへの関心が低下していることに対し、民主党としてアフガン復興支援を継続していくことが重要との観点か
  • (鳩山NC大臣より、アフガン復興の進捗具合に関する質問に対し)順調に進んでいるが、治安問題に加え、麻薬問題など、問題がない訳ではなく、安定を確保するためには、政治過程への国民の信頼と民主化が不可欠であるとの見解をアブドラ外相は、示した。
  • (鳩山NC大臣より、我が国に期待する支援は何かとの質問に対し)アブドラ外相は、
    1. 全体的に見れば、農業の振興、教育面での支援がまず必要で、国家的事業への国民的支持の動員が必要であり、国民のアイデンティティーと国家の尊厳と信頼が国民の間に確立されるように是非手を貸して欲しい。
    2. とくに、麻薬対策を例にとれば、まず大統領自身が対策に乗り出していることが紹介され、麻薬の流通を阻止するために、地域協力に取り組んでいくとともに、大規模な撲滅作戦と、それを社会的に支援する広報活動、及び司法制度(しかも麻薬対策用の画期的制度)を確立していく必要性がある。更に農民に対する代替作物の提供や、DDR(武装解除、動員解除及び社会復帰)の推進も麻薬対策上見逃せず、多岐多彩な領域にまたがる作業を社会全体で行っていく方向である、との見解を示した。
    3. 藤田議員は、2年前アフガンを訪問した際、日本人NGOへの即時ビザ発給を決定してくれたことへの御礼を述べるとともに、アフガンのカリリ駐インド大使は、マス‐ド将軍の暗殺現場にいたが、生き延び、6日後に意識を回復した後、「敵を許す」というメッセージを発した。これが多くの日本人政治家の心を動かしたとの話を紹介した。(これに対し、アブドラ外相は、もう一人生き延びたのが自分の甥であると説明、会議後、執務室で彼を紹介してくれた。)
  • (藤田議員より、過去を克服して国民的和解に向かう精神がどれほど国民の間に根づいているかとの質問に対し、)将来に向けて、解決を見出す姿勢は重要である。同時に同じ過ちが繰り返されないための正義による裁きも重要であるとアブドラ外相は述べた。 また、マス‐ド将軍暗殺後、もし9・11が起こらず、9・11後の国際社会の協力がなければ、中央アジア全体がアル・カイダに蹂躙されるところであったとアブドラ外相は解説した。
  • (大谷議員より、いかなる高等教育機関に対する貢献が有益かとの質問に対し、)教育問題への当国の取り組みには長い歴史があるが、選挙を経て樹立された新政府はこれまでの発展の中身を吟味し、優先順位をつけて自立への道筋を立てなければならないと、アブドラ外相は返答した。
  • (藤田議員より、国際治安支援部隊(ISAF)の役割、またNGOがソフト・ターゲットとして狙われ始めている折りに、いかにNGOの安全を確保し、安全と支援を両立するかとの質問に対し、)アブドラ外相は、
    1. ISAFの存在は当国の治安維持上大変重要であり、来る議会選でもISAFがその役まわりを一層果たしてくれるようISAFを指揮するNATO事務総長に増派を要望する書簡を送ったが、現実的 にはそのプレゼンスは大統領選当時とさほど変わらないであろう。
    2. またNGOの復興支援活動に際しては、活動上のコーデイネーションを含め、当国治安機関への信頼を高めて欲しいとの期待を示すとともに、テロリストがソフト・ターゲットを狙うということは、ハード・ターゲットを狙えなくなりつつあるというテロリスト自身の弱体化の表れとも受け取れるとの見解を示した。
  • アブドラ外相は、米軍の反テロ戦略について、タリバンを「穏健派」と「強硬派」に区別するよりも、当国の国家建設の歩みに照らして考えれば、新憲法を受け入れるか、否か、実質的には民主主 義と法による支配を受け入れるか否かの基準で対応すべきであると説明。かつてタリバンに属していた人であっても、現在の憲法を受け入れる者はアフガニスタン社会に復帰できると考えるべきであると述べた。
  • また、アブドラ外相は、軍閥についても、軍閥をステレオタイプ化して一律に批判するのは建設的ではないと述べた。軍閥は麻薬、DDR面では否定的存在ではあるが、国家の安定にいまだ寄与する部分を排除できないし、かつ歴史的にも外国侵入勢力に対し、聖戦を戦っていると説明した。

【カルザイ大統領】
(要点)
  • 会談トピックは、大統領選挙、イラク情勢、NGOのための治安対策及びPRT(Provisional Reconstruction Team:地方復興チーム)への邦人援助機関の参加、日本のアフガニスタン支援へ の感謝。
  • カルザイ大統領は、イラクがアフガニスタンの経験から学び同じような内戦にならないよう願うとの発言。
  • カルザイ大統領は、日本の支援に感謝すると共に、鳩山NC大臣の口から帰国後国民に感謝の念を伝えて欲しいと依頼。

(概要)
[1] 過去3年間の成果
  • 鳩山NC大臣は、2001年12月のボン合意直後にアフガニスタンを訪問し、カルザイ大統領にお会いしてからアフガニスタンは大きく変化したと感じていると述べた。
  • カルザイ大統領は、特に政治プロセス面は大統領選を含め大きな変化があり、女性の役割が大きくなった点、とくに唯一の女性大統領候補が他候補よりタリバン票を多く獲得したことは特筆すべきであると応じた。
  • カルザイ大統領は、大統領選挙では、教育水準が高い地域では投票率が高い一方、教育が行き届いていない地域では投票率は低かったことからも、教育の重要性が明らかであるが、選挙の成功はア フガニスタン国民の意思と日本を含む国際社会の支援の2つが組み合わされたことが大きいとの見解を示した。

[2] イラク情勢
  • 大統領は、対ソ連戦争はアフガニスタンを破壊し、又、国内も分裂し、国力も大きく弱まったが、今ではアフガニスタンは国際社会からの支援を受けており、誇りに思っている。イラクはアフガニ スタンに比べ教育水準も高く、裕福であるが、経験を有していない。国を分裂させてしまったアフガニスタンの経験から学び、イラクが我々と同じ過ちを犯さないことを願う、と発言。
  • 藤田議員は、大統領選挙直後の11月5日にカルザイ大統領が、軍閥と麻薬ディーラーに対して厳しい姿勢を示す一方で、タリバン囚人に対し恩赦を呼びかけたことは大変寛大なことと受け取って おり、大統領が多大な支持のもと、メッセージを広く発信していることが成功の鍵でもあり、イラクの教訓になると思うと発言した。

[3] NGOのための治安対策及びPRTへの邦人援助機関の参加
  • 藤田議員は、ISAFの全国展開及び、PMC(民間治安会社)などによるNGOのための治安対策や、PRT(地方復興チーム)に日本のNGOやJICAが参加することについての意見を求めた。イラク戦争のため、アフガニスタンで活動する日本のNGOが当地ではNGOの看板を車輌から取り除いて活動せざるを得なくなっていると、東京で当地で活動するNGOから聞いたことを紹介しつつ、 PRTにより警備を受ける可能性もあるのではないか、と訪ねた。
  • 大統領は、アフガニスタン国民はISAFの全国展開も含め、国際社会から多大な支援を受けることを望んでいるが、問題は一部のテロリストにある。アフガニスタンでは、NGOは看板を外さず 逆に日本人であることを表に出したほうが良いと述べた。PRTへの日本の復興支援機関の派遣については、日本が自ら決断し望むようにすれば良いし、どのような決断であろうとも日本の決定を アフガニスタンは支持すると答えた。また、日本が率先して取り組んでいるDDRも、大きな進捗を遂げ、多大な貢献をしていると、述べた。

[4] 国民和解
  • 鳩山NC大臣は、アフガニスタンは様々な文明の交差点であり、そのために度々周辺諸国から侵略や攻撃に遭い、悲惨な内戦にもつながったが、その経験を生かし和解を必要とするものが集う和解センターを設置することを提案した。
  • 大統領より、提案への賛同の意が示された。

[5] 日本への支援への感謝
  • 大統領は、一行が日本に帰国された際には、メディアの報道を通じるのみならず鳩山議員自らの口から日本の国民にアフガニスタン国民が日本の支援に対して大変感謝していると伝えて欲しいと要望した。道路、女性の選挙参加、政府のキャパシティ向上、これら全てが日本の支援のおかげであり、国際社会の支援を受けて、メディアもTVが政府系1社に加え民放2社が放送を始め、ラジオ局もAINA等の支援を受け増えている。無論(1)麻薬、(2)軍閥主義及び余剰武器、(3)貧困等の大きな問題は残っているが、こちらは国際社会の支援なくしては解決し得ないものである、と述べた。

【ハリルザード駐アフガニスタン米国大使】
(要点)
右:ハリルザード駐アフガニスタン米国大使 中央:クリステンソン首席公使
右:ハリルザード駐アフガニスタン米国大使 中央:クリステンソン首席公使

  • 会談トピックは、アフガニスタン選挙及び議会、麻薬対策、治安分野改革支援、テロ掃討作戦。
  • 来年構成される議会の懸念は、政党が多いため小数ずつ議席が分散し、政策決定合意がスムーズに行えなくなること。有能な人材がアフガン政府に欠如していることも問題。
  • DDRで日本は貢献をしており、道路、復興分野でも日米協力は密接。麻薬対策として代替作物支援分野等で日本が貢献できる可能性もある。
  • 有志軍による対テロ作戦が治安改善に効果を挙げていることは10月の大統領選挙の成功からも明らかとの分析。軍閥主義改革など、DDRにより効果を上げている一方、タリバン掃討は引き続き必要。国民和解も重要。
  • ISAFと有志軍の統合については、懸念を示す仏・独の説得を行い積極的に進めていく意向。

【邦人NGO】
[1] 日本NGO支援無償の案件審査期間の問題
  • JVCより、外務省担当者の交替による引継ぎが上手くいっていない可能性があるとの指摘があった。
  • JENより、支援無償で2件実施したが、いずれも案件承認までに1年を要した。その間に資機材費が急騰し対処に苦慮したと、指摘。
  • JCCPより、審査にあまり時間を要すると、地域コミュニティとの信頼関係に影響が及ぶことを懸念。但し外務省側(民間援助支援室)も大変頑張ってくれていることは十分承知しているとの見解が示された。
  • 大使館担当者より、特に日本人の場合は安全に対する関心度が高い。慎重にやっているからこそ、これだけの支援活動をしていながら、これまで邦人援助関係者に一切の事故がなく済んでいるという点も評価されるべき。民援室としては、今年から毎週プロジェクトに関する室内会議を実施し、個別案件について室全体として管理する体制を整備するなど、行政手続きとしての迅速化には最大 限留意している。最大の問題は、申請書内容の修正に多大な時間を要することにあり、しかも概して本部(及び本省)と現地駐在事務所(及び大使館)との間でそれぞれの動きについて十分に把握していない場合が多い。更に、アフガニスタンの案件については、イラクをはじめとするこれまで 想像も出来なかったような治安情勢(NGO職員を対象としたテロ等)の悪化を受け、本省内でも 関係部局間で対処方針を固めるのに時間を要した、との説明があった。

[2] 安全対策関係
  • JCCPより、安全対策として、サイト事務所の防護壁や衛星携帯電話の購入といった経費も支援 対象として欲しい。(大使館担当者より、既に支援対象としている旨回答)また、以前のように、大使館からのインマルサットの貸出を再開して欲しいとの要望があった。
  • HANDSより、米国の場合は、契約書の中に「安全についてUSAIDは一切責任を負わない」と明記されているとの指摘があった。
  • JVCより、特に地方部を念頭に置いて、「治安対策指導チーム」のような形で巡回指導してもらえると有り難いとの要望があった。
  • 大使館担当者より、(急激な物価上昇への対応にも関係するが)現行制度上、予備費的な経費が一切支援対象として認められていないために、各NGOが不便を感じているという点は良く承知している。これは、「委託(国連等)」と「支援(日本NGO支援無償)」という基本的な発想の違いに起因していることもあり、根本的なところから議論が必要となろう、との指摘があった。

[3] NGOと大使館との連携など
  • JVCより、NGO側が申請書の書き方を理解していない場合があるのも事実。申請書の書き方等を教わる機会を提供して欲しい。また、地方へも大使館・JICA職員に出張してもらい意見交換の機会を設けて欲しいとの意見が出された。
  • 大使館担当者より、年数回、日本各地で、日本NGO支援無償に関するセミナーを開催しており、是非こういった機会を活用願いたい。当地では、まず毎月開催されるNGO懇談会(NGOと大使館)の場をもっと活用していきたい。また、最近は特に資金の適正使用の確保に重点が置かれるようになっていることもあり、当館としては、現在進行中のみならず過去の案件についてもより確認調査をしっかり行っていきたいと考えており、そのような館員等の出張の機会を捉え、NGO関係 者との意見交換を促進していきたいとの返答があった。
  • JEN他より、最近はメディアでもイラクばかり報道されておりアフガニスタンの状況がなおざりになっている印象がある。現地のニーズを鑑みれば、ここで支援活動を中断することはあり得ないので、ここが正念場と考えているが、マスコミでの報道ぶりは一般寄付の拡大に直結するだけに、政治指導でアフガニスタンの現状をもっと国内に広報して欲しいとの強い要求があった。
  • 鳩山NC大臣は、今回自分たちが当地を訪問したのも、まさにそこに意味がある。この時期に日本国民がアフガニスタン復興を決して忘れていないことを強調することは、大統領をはじめアフガニスタンのためにも重要と認識しているとの見解を示した。