パレスチナ自治区 |
【エラカート・パレスチナ自治政府(PA)交渉担当長官】 |
[1] パレスチナ自治政府議長(ライース)選挙の見通し |
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ヨルダン・イスラエル(パレスチナ自治政府)国境、ヨルダン側 |
鳩山NC大臣は、日本国民を代表する国会議員としての立場から今般のアラファト議長の逝去に弔意を表した。故アラファト議長は日本でも非常に著名な方であったこと、議長亡き後、来年1月9日に予定されている議長選挙が最も重要であると感じていることを表明。アフガニスタンを先に訪問しカルザイ大統領と会談したが、選挙を無事成功させたカルザイ大統領は大変自信に満ちた様子であり、アフガニスタンの大統領選挙においては、高い投票率により国民の意思が強く表されるとともに、選挙実施に対する国際的な協力が成功をもたらしたとの、見解を示した。
- エラカート長官は、
- 丁重な弔意表明に感謝。歴史を顧みた場合、アラファト議長のような唯一無二のカリスマ的指導 者が亡くなった後、その空白を埋めるのは個人ではなく、組織体制(institutions)である。
- 1996年の大統領選挙の際には、日本から大規模な選挙監視団の派遣があったが、今回も日本 からの監視団の派遣による支援を得たい。前回監視団の団長は、後に日本の首相(故小渕元総理)になっており、民主党から団長を派遣頂ければ、後に首相が誕生するかもしれない。
- まさに今日、パウエル米国務長官が当地にてPA幹部と会談予定である。パウエル長官の今次来訪 は、選挙を予定どおり実施すべしとのブッシュ大統領のメッセージであると受け止めている。原理主義者の温床となっているイラクやアフガニスタンと異なり、パレスチナは識字率が97%を超え、26もの政党があり、選挙を実施する環境は十分に整っており、米国はまず、パレスチナから民主主義の再建を開始すべきである。イスラエル軍のパレスチナ自治区からの撤退は、無条件に行われなくてはならない。すべての有権者が投票権を行使するため、自由に移動できる環境が整えられなくてはならない。
エラカート・パレスチナ自治政府交渉担当長官 |
- (鳩山NC大臣の質問に答え、)マルワン・バルグーティ(次世代リーダー。イスラエルにて投獄中)の立候補の可能性は、政治的にはない。個人的には、若い世代にも野心があるのは理解するが、今回彼らはアブ・マーゼン(アッバース前首相)を支援すべきだと思う。ただし、アブ・マーゼンもアブ・アラ(クレイ首相)も70代であることを考えると、彼らはつなぎの役目を果たし、次の次の選挙では世代交代が実現されるだろう、との見解を示した。
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[2] 中東和平全般 |
- 民主党一行より中東和平全般について、以下の点についての発言があった。
- ジュネーブ・イニシアティブ(GI)に対する長官の評価。
- (大使館担当者より、去る7月に我が国において信頼醸成会議が開催され、エラカート長官にも参加いただいたとの指摘を受けて、)わが国は、パレスチナ・イスラエル双方に対してバランスのとれた対応をとれる国であり、まさにこうした会議を行うための場所を提供するような地域でありたい。
- 日本出発前に、シアム在京パレスチナ代表に会ったが、同代表は、第二次インティファーダ勃発以降、我が国のパレスチナ支援が減少し続けていると述べていた。
- 中東和平への貢献策として、イスラエル軍の入植地からの撤退に伴う費用の一部をわが国が負担してはどうかというアイデアについて、どのように考えるか。
- これらに対し、エラカート長官は以下のとおり発言した。
- GIについては、イスラエル・パレスチナ双方の関係者は非常に勇気ある行動をとったと思う。たとえ社会的、経済的なテーマであったとしても、双方の対話を試みるあらゆる会合を歓迎したい。GIは、パレスチナとイスラエルの間で合意可能であることを証明した点に大きな意義がある。
- 日本は信頼醸成の場所を提供したほか、パレスチナに対する有力ドナー国であり、カルテット(四重奏:四者協議)参加の資格も満たしていると考えるし、中東和平プロセスにおいて、重要な役割を担っている。
- 日本の支援は減少しているが、他国の新たな支援もある。例えば、米国はPA財務省に対し直接、2,000万ドルの財政支援を実施することを決定した。米国による直接支援は初めてのケースである。また、米国は、アラブ産油国に対しても対パレスチナ支援の増加を働きかけている。
- イスラエルの撤退費用を負担するというアイデアは、我々が求める以上のものである。現在我々が12月での会議での提案を検討しているのは「Third Party Role」(第三者の役割)という支援策である。例えば、イスラエルのガザ撤退に際し、国際的な回廊、空港、港等の治安維持のため、米、EU、日本等第三者が人員を派遣するというものである。現在、世銀との間で詳細を検討中である。
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【ワリード・サレムNGO「パノラマ」エルサレム事務所所長、ジュネーブ合意関係者】 |
(要点)
アラファト議長の墓前 |
アハマド・アブド・アル・ラヒマン・アラファト氏顧問兼パレスチナ自治政府大臣 |
- 故アラファト議長は、ジブリール・ラジューブ西岸保安警察長官(現治安担当長官顧問)をGIの発表式典に自分の名代として派遣し、更にベツレヘム大学のマニュエル・ハサシアン教授に自分の祝意のスピーチを代読させた。このように、議長は(シャロン首相とは反対に)ジュネーブ合意を理解し、支援してくれていた。
- 議長選挙を成功裏に実施するためには、エルサレム住民が選挙に参加できること、イスラエル軍が 西岸諸都市から撤退し、2000年9月以前の状況が回復されてパレスチナ住民の移動の自由が確保されること、が前提条件として必要である。1月9日に予定されている長官選挙については既に多数が立候補を表明している。地方(自治体)選挙は、12月23日に第1段階目の選挙が行われる予定であり、その後4段階にわたって選挙が実施される。
- パウエル長官が選挙実施のため軍を撤退させるようイスラエルを説得するとしているのは非常に重要であり、こうした働きかけが奏功することを期待する。米国以外の国際社会にも協力を求めたい。
- 昨日、ラマッラの北側チェックポイント付近のレストランでアクサー殉教者旅団の活動家3名がイスラエル軍により殺害された。いつもイスラエル軍は、今回のパウエル長官のように、外国要人が 訪問する直前というタイミングを見計らって、パレスチナ過激派への挑発活動を繰り返している。過激派側が挑発に乗って報復に出れば、パレスチナ側を非難し、和平プロセスの停滞の原因はパレスチナ側にあるとの主張が繰り返されることになる。過激派が報復を控えることはもちろん重要であり、自分達はそう望んでいるが、かかる挑発行為が行われる限りイスラエルとの信頼関係は育たない。(同じ話が、アハマド・アブド・アル・ラヒマン・アラファト氏顧問兼パレスチナ自治政府大臣からもあった。)
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