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民主党アフガニスタン・中東訪問団報告書

ヨルダン
【ムアッシャル副首相兼首相府・政府業務監督担当国務相】
(要点)
ムアッシャル副首相(前外相、「ディプロマット・オブ・イヤー賞」受賞)より以下の点につき、発言 があった。

[1] イラク問題
  • 日本とは政治的にも経済的にも大変良好な関係を有しており喜ばしい。イラク支援についても、ヨルダンにおいてイラク人に対する第三国研修が行われている。またWFP等の国連・国際機関もヨルダンを拠点にイラク支援を行っている。
  • ヨルダンとしてもイラクが外国の軍隊に占領されている状況には反対である。しかし現在のような治安状況で外国の軍隊が撤退した場合、治安の維持を誰が行うのかという問題がある。治安の空白状態(security vacuum)は避けなければならない。この点に関し、米英軍がイラク軍やイラク警 察を解体したことは誤りであった。イラク暫定政府は、治安能力回復のための努力を行っているが、治安状況は改善していない。ヨルダンとしてもイラク軍やイラク警察の再建に協力している。
  • 経済面では、イラクに対する債務問題に関し先進諸国が合意に達しつつあることは朗報である。アラブ諸国もこの分野で協力してゆくことを希望する。
  • 来年1月に予定されている選挙について、スンニ派国民の参加問題がある。スンニ派国民は選挙から除外されるべきではない。来年1月の選挙はイラク全体で実施されるべきである。

[2] パレスチナ問題
  • アラファト議長の死去により、パレスチナ問題の力学(dynamics)が変化したことは確かである。アッバース前首相がファタハを代表して議長選挙に出馬することになったことは前向きな一歩である。昨年アッバース氏が首相だった当時、米国はアッバース氏に対し十分な支援を行わなかった。 このためアッバース氏はパレスチナ大衆の支持を獲得することができず、首相を退くこととなった。今回は米国、EU、国際社会が政治的にも経済的にもしっかりアッバース氏を支援する必要がある。なお米国はイスラエルに対し、東エルサレム住民による投票実現を働きかけているが、これは良いサインである。
  • (米国がアッバース氏に対する支援を明らかにすればするほど、アッバース氏がパレスチナ大衆からの支持を失うおそれはないか、との鳩山NC大臣の質問に対し)昨年アッバース氏が首相であった際、米国は結局口先だけの支援しかおこなわず、パレスチナ人の生活環境は何も変わらなかった。そのようなことを繰り返してはならない。例えば道路の検問の軽減だけでも実施されれば、人々の感情を変えることができる。
  • ロード・マップ(行程表)の実施についてイスラエルはこれまで、パレスチナ側が協力しない、アラファト議長が障害であると主張してきたが、早晩このような言い訳は通用しなくなる。ロード・マップを巡る環境は楽観を許さないが、実施に向けた環境は整いつつある。できる限り速やかに実施に移される必要がある。
  • (藤田議員が、ロード・マップとジュネーブ・イニシアティブの関係を質問したのに対し、)ジュネーブ・イニシアティブは最終地位交渉後のゴールを示したものである。一方、ロード・マップは、パレスチナ暫定国家樹立に向けたプロセス(行程)を定めたものである。ジュネーブ・イニシアティブは良いモデルであるが、ロード・マップとは異なる性格のもので、これに代わるものではない。しかし、過去の議論の積み重ねを踏まえてジュネーブ合意はできているので、実際に最終地位交渉 で合意される姿は類似したものになると思う。
  • パレスチナ被占領地は経済的にも疲弊しており、国際社会からの支援を必要としている。
  • ハマスは、パレスチナの指導者となることには基本的に関心がない。大衆(grass roots)に焦点を当て、自治評議員選挙に参加しようとしている。ハマスが政治プロセスに参加することは良いことである。将来的にはハマスが武装勢力ではなく、政党となることを期待したい。ヨルダンでもイスラム勢力はイスラム戦線行動党として下院に17議席を有している。

【キーラーニ元宗教大臣(イスラム・ワクフ相)】
(要点)
キーラーニ元宗教大臣
キーラーニ元宗教大臣
  • 鳩山NC大臣は、4月に日本人人質事件の際、イスラム聖職者協会会長であるキーラーニ元宗教大臣が、犯人側に対して人質解放を求めるファトワ(宗教的見解)を発してくれたことに対し改めて謝意。
  • 4月にファトワを発したのは、コーランの教えに基づくものである。預言者ムハンマドの後継者の一人であるアブー・バクル(注、第1代カリフ)は、イスラム軍に対し、子供、女性、老人を決して殺してはならないと命じた。理由無く虐げられる人々の権利は正当に回復されなければならない。またこのような考え方は、イスラム教が和解に基づく人間社会の実現を目指したものであることを示している。4月には藤田衆議院議員にご来訪頂いたほか、イスラミック・センター・ジャパンの サマライ師も訪ねてくれた。
  • (鳩山NC大臣より、イラク問題に対する民主党の考え方や22日にエルサレム、ラマッラを訪問したことを説明したことに対し)イラクは、石油利権を求める米国により軍事的に占領され、ファル ージャでは老人や女性、子供が殺害され、無辜の市民の住宅が理由もなく破壊されている。季節的に冬をむかえようとするこの時期に家屋が破壊されていることを心配している。パレスチナではシャロン首相が、イラクで米英軍が行っているのと同じことを行っている。自衛隊がイラクから撤退 すべきであるとのお話を聞き、嬉しい。
  • また今回貴議員団はパレスチナ被占領地を訪問され、直接自分の目でパレスチナ人の生活実態を見て来られたことを高く評価する。日本は既にイラクやパレスチナに対する人道支援で大きな役割を果たしているが、今後も引き続き一層大きな役割を果たすことを期待する。

【ハッサン王子(前皇太子)】
ハッサン王子
ハッサン王子
(ハッサン王子はアブドラ国王の伯父にあたり、1994年のヨルダンとイスラエルの和平条約の立役者である。又、世界宗教者平和会議(WCRP)の会長を務め、宗教間対話を活発に行っている。)
(要点)
[1] 中東情勢
  • 中東を含む西アジア地域の安定のため、今日ほどG8諸国と地域諸国の協力が必要とされている時はない。中東地域を対象としたマーシャル・プランというのがこれまでも何度か提案されたが、中東地域に長期的な安定を実現するためには、社会改革計画(social revolution plan)が必要である。
  • 先般米上院外交委員会で証言する機会を与えられので、一極主義(unilateralism)を排し、パートナーシップを重視すべきであると強調してきた。今日の安全保障は、(i)従来の安全保障、(i i)大量破壊兵器の拡散等、に加え(iii)ソフト面と人間の安全保障(soft and human security)という3つの課題を含んでおり、これに対処するためには、従来型の情報機関(security service)だけでは十分ではない。今日の我々が直面している問題は、テロであり、無辜の市民の殺害である。今持っている枠組みでは取り締まることができない。

[2] パレスチナ問題
  • 自分が最初に密かにイスラエルと接触したのは69年のゴルダ・メイア首相との会談であったが、結局平和条約が結ばれるまでにはさらに35年の年月が必要だった。このような長い取り組みが本 当の和平プロセスである。
  • 議長選挙と自治評議員選挙の二つがあるが、前者がより重要。議長選挙は国際的な監視の傘の下で行われよう。またイスラエルの出口戦略(exit strategy)を確認し、治安の空白を防ぐため、国際防衛軍(International Protection Corps)が必要になるかも知れない。いずれにせよパレスチ ナ国家建設に向けたエクササイズがこれまで以上に重要である。
  • パレスチナ国家樹立は世俗主義と自由主義に基づくべきである。米国は民主主義を主張するが、人々が求めているのは行動や表現の自由である。先般、「イスラムと選挙」というワークショップを開催した。イスラム諸国と一口で言っても様々な民主主義が存在する。アジアのアイデンティティーが確立される必要がある。
  • 12日のワシントンでの米英首脳会談ではパレスチナ国家樹立を目指すことが明らかにされたが、少しがっかりしている。パレスチナ問題の解決にはより根元的な、長期的な視野をもった取り組みが必要である。米国の政策がより場当たり的(ad hoc)な傾向をもつものとなっていることを心配している。

[3] イラク問題
  • シャルム・アル・シェイク(エジプト)のG8+イラク周辺国会議であるが、自分の印象では、選挙実施に向けスピードと強さ(intensity)を与えるものである。選挙後に樹立される恒久政府について、アラウィー首相が目立っているが、別の世俗的な強い指導者が必要とされるかも知れない。 米国はそろそろ出口戦略(exit strategy)を検討していると見受けられる。いずれにせよイラク 全土で選挙を行うことができなければ、イラクがバラバラになるおそれがある。しかし現在作成されている候補者リストには、有力な部族指導者が除外されている。
  • (鳩山NC大臣より「当面の民主党イラク復興支援策」を手交しコメントを求めたのに対し)国連西アジア経済社会委員会(ESCWA)やアラブ・ソート・フォーラム(Arab Thought Forum)の会合や12月に予定しているイラク宗教者との会合でも意見を聞いてみたい。
  • 自分はカナダの大学と協力して、バグダッドに教育・心理学的復興センター(a centre for educ ational and psycology reconstruction)を作るプロジェクトに関与している。イラクの復興には、技術や科学だけでなく、社会学的なアプローチも必要である。イラクは文化的和解も必要としている。戦争の荒廃から立ち上がった日本やドイツには、中東地域に役立つものがたくさんあるはずである。
  • 米国は何かにつけ民主主義というが、問題は民主主義という枠組みではなく、その中身である。人々の間にパートナーシップを築くことが重要である。この意味でイラクで民主主義を成功させることができれば、イラクは社会発展(social evolution)の一つのモデルとなりうる。しかしこのため には、イラク国民の団結が必要である。ファルージャ攻撃がイラク国民の団結に否定的な影響を与えないような配慮が求められる。