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2008/06/18
当面の米政策の基本的方向
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民 主 党

T:適正な米価形成と自給率向上に向けて
〜「転作作物としての米作」の振興〜

1.米価はどうあるべきか。
 米の価格が下落を続けている。米の市場介入による価格浮揚をねらい、政府、農業団体一体となって実施された「米緊急対策」も、米価の下落に一応歯止めをかけた形にはなっているが、根本的な解決策とはなっていない。

 米価の下落は農業収入の減少という形で農家経済を直撃し、地域経済疲弊の原因ともなる。その一方で、消費者は、所得が伸び悩む中で、大きな便益を受けている。世界の穀物価格が急騰する中で、主食である米の価格が安定していることは、国民生活の安定化に大きく寄与しているとみることができる。

 米価は需要と供給の関係で決まることが望ましい。「米緊急対策」のように市場介入などによって米価をつり上げることはやめるべきである。

 問題は、わが国の農業は米の生産過剰に陥りやすい構造にあることである。限られた農地の有効利用、自給率向上のためにも、この構造を是正し、生産過剰による米価の下落を回避すべきである。

2.米価下落(主として生産者にとっての米価下落)の要因
(1)米需要の縮小
 国民の米離れは一貫して続いてきた。平成18年度の一人当たりの年間消費量は61キログラムと40年前のおよそ半分である。

 食生活の多様化、高齢化の進展などに加え、これからは人口減少が米全体の需要を押し下げる圧力になると想定される。

 一方、世界的な穀物価格の高騰の影響を受け、パンなどの食品価格が上昇しており、価格が安定している米への回帰が期待されるが、それが米全体の需要増にどの程度つながるかは未知数である。

(2)食料として「米は特別」という意識の希薄化
 主食としての米に対する国民の見方は大きく変わってきている。若年層を中心に、パンやパスタをご飯と同列の主食とみるようになってきている。米は特別で、ある程度高くても構わないという国民の意識は希薄化している。米の価格もこうした食物との価格水準の比較で形成されやすくなっている。

 パンやパスタの原料となる小麦はその大部分を輸入に頼っている。国内麦価は、輸入麦の価格を基本とした調整が行われて形成される。米は高い関税で守られているが、国内米価は、麦価を通じて穀物の国際市場価格の影響を受けて形成されているともいえる。この意味で、関税によって形成される内外価格差は、麦などの価格から間接的な影響を受け、徐々に崩れてきているとみることもできる。

 世界的な穀物価格の高騰によって麦の価格は大幅に上昇している。しかし、国内の米価水準に比べ、麦価はまだ低いという構図は大きく変わっていない。

(3)働く者の所得の伸び悩みが米価にも影響
 最近顕著になった傾向として、同じ米でも国民は安い米を求めているということがある。米の品質が全体的に底上げされ、銘柄間の品質格差が少なくなってきたこともあるが、非正規雇用の拡大などによる働く者の労働報酬の減少などが背景にあると考えられる。米の総需要が伸びない中、安い米への需要が高まっている。

3.どのような対策が必要か
(1)米飯の消費拡大の推進
 米需要の拡大をはかることが第一である。
 このため、
1米飯の消費拡大に向けた国民的運動の展開
2学校での米飯給食の拡大(特に、全国学校給食会連合会が米飯給食推進に果たしている役割について、その実態調査を行い、必要に応じ役割の見直しを行うことも必要である。)など、積極的に展開していくことが必要である。

 特に、米の消費を増やすことが、自給率を上げ、農地を守り、農村を守り、国土の保全にもつながるとの観点から推進を図るべきである。

(2)米の生産費と市場価格との差を補填
 多くの生産者にとって米の市場価格が生産費を大きく下回っている状況を是正するため、意欲をもって取り組む販売農家を対象とし、生産費と市場価格との差を一定の考え方で補填する所得補償制度導入する。(農業者戸別所得補償法案)

(3)米の過剰作付けは抑制すべき
〜水田において主食用の米以外の作物の定着を図ることが鍵〜

 米価下落の大きな要因は、米の需要を上回る過剰生産である。米の過剰作付けを抑制し、需給調整を確実に実行することが、米価安定のため、さらには自給率の向上のための基本要件であることはいうまでもない。

 このため、生産者による自主調整に委ねられている需給調整体制をみなおし、国、自治体の役割を法的にも明示し、生産者と国、自治体との協働作業によって需給調整を実施する仕組みとすべきである。

 また、米の生産にかかる所得補償制度は、当該生産者が需給調整に参加することを要件とすべきである。

 需給調整を円滑に行う上で、大事なことは、麦、大豆など輸入に多くをたよる作物を転作作物として作るための経済的支援が不可欠だということである。基本的には米と転作作物を作ったときの収益差の補填を行うことが必要である。

 田耕地面積は253万ヘクタール(H19年)であり、畦畔面積14万ヘクタールを除いた239万ヘクタールが作付け可能面積(本地面積)となる。一方、20年産米の予定作付け面積は19年産米の作付け面積より10万f少ない154万fとなっている。85万fの水田において米に代わる作物を安定的に作る条件を整備することが必要ということである。

 この点、現行の政策は、
・産地づくり交付金は転作面積が増えていくにもかかわらず総額3年間固定(19〜21年度)となっており、単位面積当たりの交付額は薄まって行かざるを得ない。

・また、将来にわたって安定的に交付される仕組みとなっていないため、生産者の将来見通しを不透明なものにしている。

・品目横断的経営安定対策(水田・畑作経営所得安定対策(以下、「経営安定対策」という。)は、対象農家が限定されているうえ、交付額も過去実績に制約されており、転作面積の拡大にはつながらない。

・19年度補正予算で計上された10万fの生産調整面積の拡大に向けた500億円の予算も、5年間の継続実施を義務づけているにもかかわらず極めて低い支援水準にとどまっている。(現場では目標とした生産調整の拡大面積には到底届かないとの見方が広がっている。)

 など、極めて不十分である。

 こうした問題は、民主党が策定した農業者戸別所得補償法案の成立によってかなりの部分を解決することができる。

 このため、生産者、消費者を問わず国民に対し、法案の考え方の説明と意見交換を今後とも積極的に行い、法案への支持拡大を図るなど成立に向けた運動を引き続き展開することが必要である。

4.需給調整の円滑化と自給率の向上等に向け
 需給調整の円滑化、自給率の向上、農地の有効利用、農地面積の確保という観点から、主食用の米に代わる転作作物として、麦、大豆などの自給率の低い穀物の生産拡大を図るとともに、次のような政策を併せて推進していくべきである。

(1)転作作物としての米粉用の米生産振興
1米粉と米粉用の米生産の優位性
 米粉は
・これまで米と麦との価格差が大きいこと

・米パンや米パスタなどの利用拡大に必要な製粉技術が未確立であったこと
などによって、その利用は、屑米やミニマムアクセス米などの低価格の米に限られてきた。

しかし、
・米価の下落、国際的な小麦価格の高騰などによって両者の価格差が縮小してきたこと

・製粉技術が進歩し、微粒な米粉ができるようになったこと
から、その需要、生産の拡大が期待できる条件が整いつつある。

 現在、わが国は500万トンの小麦を輸入しているが、米粉100パーセントのパンなどの製品開発や小麦粉と米粉との混合粉の利用拡大などによって10パーセント(20パーセント)の輸入小麦が米粉に置き換われば、米需要は50万トン(100万トン)増加することになる。

米粉用の米生産は

・水田での米作の継続を可能とするため生産者にとって作りやすいこと(麦、大豆などの転作に適さない水田も多くある)

・主食用の米との収益差を埋めるために交付金の交付が必要であるが、既存の機械・設備等の利用が可能であり、また、慣れない麦、大豆への転作による経営リスクがないことから、麦、大豆に対する交付金より低い水準で生産者は生産を行うと考えられること

・主食用ではないが米消費拡大策として国民の共感を得やすいこと・古米であっても米粉としての食味に影響がないことから、政府備蓄を棚上げ方式に転換して上で、これを活用することが可能であることなどのメリットがある。

2Rice10(R10)プロジェクトの実施に向けて

 製粉業界、消費者団体の協力も得ながら、輸入小麦の当面10パーセントを米粉に置き換えることを目標とした(R10将来的にはR20)プロジェクトを国家プロジェクトとして推進すべきである。

 この場合、米粉の製造・流通は地域単位で行うことが望ましいことはいうまでもない。

 具体的には、以下の点について、立法措置を含めた支援策等の検討を進めるものとする。

○生産段階
・米粉用米の確保については、需給調整の一環として計画的な生産・流通を図るほか、政府備蓄米等の活用についても検討する。

・小麦粉等を使用している実需者の意向を踏まえた安価な原料米の実現を図るとともに、主食用米の収益との差を一定の考え方で補正する交付金を交付する。

○製造・流通段階
・加工適性に優れた小麦粉並みの微粉末の低コスト製造技術・機械の開発を支援する。

・地産地消の推進及び6次産業化の実現の観点から、地域の製粉工場における米粉製造設備・機械の普及・導入への支援等産地と実需者との連携を促進するための環境を整備する。

・既に広がりつつある米粉を使用したパン、麺、菓子製品等の改良に加え、米粉を利用した新たな商品開発を支援する。

・主食用米との混入を防ぐための制度を構築する。

○消費段階
・米粉製品の普及・定着に向け、国民に対して、米粉利用製品の優位性(国産原料としての安全性、食料自給率向上、エコ特性)について広報活動を積極的に行う。

・米粉による食糧援助の可能性について検討し、実現を図る。

(2)転作作物としての飼料米、ホールクロップサイレージ(WCS)の振興輸入飼料価格が高騰しており、自給飼料の生産拡大が求められている中、飼料米、WCSが注目されている。

 しかしながら、輸入飼料価格が高騰しているとはいえ、国内産の飼料米やWCSとの価格には依然として大きな隔たりがある。
 
 このため、生産者の収益確保のために主食用の米との収益差を補填する一定の交付金が必要である。この交付金の活用によって、主として生産コストの低い規模の大きい農家を中心に生産を拡大することを推進すべきである。

 また、需要を増やすための耕蓄連携の強化、国による多収穫米の開発、水田直播などの低コスト生産技術開発などの支援強化を図るべきである。

(3)産地づくり交付金の見直しの前倒し実施
 産地づくり交付金制度は、現行制度の中では、転作を推進する上で要となる助成制度である。しかし、転作面積が拡大しているにもかかわらず、21年度まで総額は固定されているため、転作作物の生産拡大には寄与しないなどの問題が指摘されている。早急に実態に即した見直しが必要である。

 具体的には
・総額の増額
・転作面積の拡大に伴う総額スライド制の導入
などを行うべきである。


U:ミニマムアクセス(MA)米の輸入について

1.国際的な米高騰下における輸入枠の取り扱い
 国際的な米価格の高騰が続き、米の輸入国の中には米の確保に困難をきたしている国が出てきている。また、輸出国には輸出制限をする国もでてきており、米の国際価格の高騰に拍車をかけている。米の国際市場は他の穀物に比較して流通量が少なく、価格は需給変動に左右されやすいといわれている。

 こうした中、国内的には生産調整を続けるわが国が、MA米の輸入枠全量を輸入し続けることは、米の国際価格をさらに高騰させる要因となる。国際価格が高騰している場合には、輸入枠をあえて全量充たすことはさけるべきである。

 このため、入札を行う場合の予定価格の設定にあたっては、過去の国際価格の趨勢を踏まえた上限価格を設定し、結果として不落札となることを容認すべきである。

 また、こうした方針、上限価格の設定の考え方などを早急に詰め、国際的にも明示すべきである。

2.援助用の米の取り扱い
 わが国は、食料援助規約に基づき、輸入したMA米の相当量を毎年援助用に回している。これについては、わが国に一度陸揚げし、保管した上で援助先に運送したのでは、かなりのコストがかかることから、MA米の輸出国から、直接、援助米の受け入れ国に運ぶなど新たなシステムについての検討を行うべきである。

以 上



=======米価問題等検討小委員会日程=======
第1回 4月24日(木)参−議員1 
農林水産省
「世界の食糧需給及び米を巡る事情について」

第2回 5月8日(木) 参−4
   農林水産省
「世界の食糧需給及び米を巡る事情について」

第3回 5月22日(木)参−議員1 
JA・JA全中
「米問題等に関するヒアリング」

第4回 5月28日(水)参−特別  
北海道農民連盟
   「米価問題等に関するヒアリング」

第5回 5月29日(木)参−13控室 
日本農業研究所 佐伯尚美 客員研究員
   「食糧危機下の米政策改革」

第6回 6月3日(火)参−1 
丸紅経済研究所 柴田明夫 所長
   「逼迫する世界の穀物需給と日本の対応」

第7回 6月12日(木)参−4 
   「中間報告案について」

第8回 6月18日(水) 
    中間報告案、NCにて了承。
農政クラブ、農林記者会にて発表。

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PDF 1米の消費量の推移、2米の生産量と需要量の推移
PDF 3水田面積及び米の作付面積の推移
PDF 4水田(本地)面積と減反面積の推移
PDF 5米粉パン等、稲発酵粗飼料、飼料用米
PDF 6ミニマム・アクセス米の輸入数量の推移
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