囲碁に、「大場」と「急場」という言葉があります。それに例えて言えば、今日の日本の状況は、「大場より急場」、つまり、当面の急場を救うことを優先しなければなりません。しかも、国民生活の急場を救うことで、新しい日本という大場を切り開くことができる、と私は思います。
例えば、地域社会の担い手である農業者の所得を補償することで、食の安全・安心と安定確保を実現する。高速道路を無料化することにより、現在の物価高に歯止めをかけるだけでなく、永続的に国民の生活コストを下げていく。そのような構造転換こそが求められているのであります。
それは、政治・行政の仕組みそのものをつくり替えない限り、絶対に実現することができません。強固な官僚組織に守られ、それに乗っているだけの自公政権では、手を着けることさえできません。なぜなら、仕組みを替えることは、自民党自身が自らの政権基盤を破壊することになるからであります。私たち民主党が新しい政権をつくることで、初めて可能になるのであります。
そして、仕組みをつくり替える際の大原則が、私たちの掲げる「国民の生活が第一。」であります。
政治とは生活である。政治は、国民の生活を守ることである。それが私の確信であり、政治の原点であります。その原則を貫徹することでしか、国民生活の「急場」も日本の「大場」も打開することはできないと、私は固く信じております。
そのような考え方のもとに、先に皆様にお示ししたのが、「新しい国民生活をつくる」と題する「新しい政権の基本政策案」であります。それは、新しい九つの仕組みをつくることで、「格差がなく公正で、ともに生きていける社会」を築こうとするものであります。
つまり、
一、年金、医療、介護で、全ての国民が安定した生活を送れる仕組み。
二、子ども手当ての創設をはじめ、安心して子育てと教育ができる仕組み。
三、「働く貧困層」の解消はもちろん、まじめに働く人が報われる雇用の仕組み。
四、農林漁業と中小企業の再生により、地域社会を守り、活性化させる仕組み。
五、物流コストをはじめ、国民の生活コストを安くする仕組み。
六、特別会計の廃止などによって、税金を官僚から国民の手に取り戻す仕組み。
七、本当の地方分権を実現し、地域のことは地域で決める仕組み。
八、国会も政府も、国民の代表である国会議員が担い、国民自身が政治を行う仕組み。
九、地球環境の保全と国際社会の平和で、日本が地球のために頑張る仕組み。
この新しい仕組みづくりの要諦は、前半の五本柱で示したように、社会保障、子育て、雇用、農林漁業、中小企業などできめ細かな「日本型セーフティネット」をつくることであります。そして、それと同時に、明治以来の官僚を中心とする国の統治機構を根本的に改革し、国民自身が政治・行政を行うようにすることであります。
その統治機構の改革によって、セーフティネットの財源も十分に確保できると考えます。また、この九本柱をつくることが、新しい国民生活を切り開くことになり、その結果、選挙目当てのばら撒きなどとは本質的に異なる、本当の経済対策にもなるのであります。
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