第1章 160回〜163回国会総括
国民にわかりやすい選択肢を提示し、
政権への道を歩む
160回臨時国会
2004年7月30日から8月6日(8日間)
第 20回参議院選挙において民主党は50議席を獲得、改選議席で第1党となる勝利を収めた。「与党が強行採決した年金法を撤回し抜本的な年金改革に取り組むべし」との民意が明確に示されたものであり、民主党は速やかに政府の年金法を廃止する法案を提出した。しかし与党は、国民の審判に背を向け、わずか1日のみの審議で廃止法案を葬り去る暴挙に出た。
岡田代表が無投票で再選
8月30日に民主党代表選挙告示。岡田克也代表が無投票で再選され、9月13日の臨時党大会で正式に承認された。同時に、第2次岡田『次の内閣』が組閣された(⇒参照)。
161回臨時国会
2004年10月12日から12月3日(53日間)
この臨時国会は、第 2次岡田『次の内閣』と第2次小泉改造内閣が初めて対決する国会となった。民主党は、 被災者生活再建支援法改正案、イラク特措法 廃止法案、年金抜本改革推進法案、政治資金透明化法案など、13 件の議員立法を提出し、論戦を挑んだ。しかし、小泉首相をはじめ政府・与党は、議論に正面から取り組むことを忌避し、とりわけ、イラクの自衛隊派遣延長問題、橋本元首相の 1億円ヤミ献金事件、被災者支援の具体策ではハグラカシの発言に終始し、説明責任を放棄した。
なお、台風等災害、中越地震、イラク日本人人質事件に対して民主党は対策本部を立ち上げ、地域組織を含めた全党的な取組みを展開した。
162回通常国会
2005年1月21日から8月8日(200日間)
郵政民営化を今国会の唯一最大の課題と位置づけた小泉内閣に対し、民主党は議論すべき問題は郵政改革のみではないと批判。住宅再建も含んだ被災者生活再建支援、政治とカネの問 題、地方主権確立をめざした分権改革、年金の抜本改革をはじめとした社会保障制度改革、外交問題などの諸課題についても国会論戦を展開した。
首相の国会冒涜に議長が注意
しかしながら、一貫して説明責任を放棄し不誠実な答弁を繰り返し、国会を軽視する小泉首相の政治姿勢を象徴する事件が冒頭に発生した。
施政方針演説に対する衆議院本会議質疑における岡田代表の再質問に対し、小泉首相はかたくなに答弁を拒否。議会制民主主義の根幹を揺るがす不誠実かつ不真面目なこの態度に本会議場は騒然となり紛糾、審議はストップした。
再開された本会議冒頭、議長が「答弁にあたっては誠意をもってするよう」と小泉首相に注意するという事態に至り、首相の恥ずべき行動は議会史上に汚点として記されることになった。
民主党予算案を掲げて論戦
2004年度補正予算案については、国が行うべき住宅再建をはじめとする被災者支援策が不十分であるなどの問題点があるが、被災者の生活支援、被災地の復旧・復興支援の一助となることも事実であり、異例ではあるが賛成した。
また 2005年度政府予算案に対して、民主党は3回目となる独自案を取りまとめた。マニフェスト記載事項をベースに、「子ども=子育て」「教育」「地方の活性化」を最重点項目とし、予算配分を「コンクリート(建物)」から「人」への投資に転換し、不要不急の公共事業予算等の徹底的な削減を行い、国債発行額を絞り込んだ予算案を示した。政府予算案については、歳出の構造改革がほとんど取り組まれていないこと、定率減税縮減など増税路線が国民生活や景気を直撃するものであること、などから反対した。
政治腐敗を温存させた自公政権
旧橋本派に対する日歯連のヤミ献金事件は、自民党本部 や国民政治協会ぐるみの事件として司法の判断を仰ぐに至った。国民の政治とカネに対する「憤懣」が高まる中、民主党は、国会における真相解明、そして迂回献金の禁止を含めた抜本的な政治資金規正法改正につなげることを主張し、予算委員会における橋本元首相らの証人喚問を強く求めたが、自公両党は拒み続けた。
年金合同会議で自公はまたも裏切り
年金の抜本改革を衆参の垣根を越えて全会派で議論する場として、年金合同会議が設置された。設置の前提となる国会決議では、「今秋までに改革の方向付けを行い骨格の成案を得る」とされた。
しかし、自公両党は合同会議が始まるやいなや「現行制度は画期的なもの」とうそぶき、年金の抜本改革の議論を棚上げにし続けた。これは、 159回通常国会において年金法改正を強行した暴挙に続く国民への裏切り行為に他ならない。
なりふり構わぬ郵政法案審議
通常国会開会から3ヶ月以上たった4月27日、政府は「郵政民営化法案」を国会に提出した。このような重要法案を会期後半に提出することは極めて異例であり、この法案が自民党内の政争の具であることを示すものでもあった。
民主党は、この法案が真の郵政事業改革にはほど遠く、名称だけが「株式会社」となった官業が民業を圧迫する本末転倒の改悪であること等審議を通じて追及したが、小泉首相、竹中郵政担当相はすり替えやゴマカシ答弁に終始した。
その上、提出が遅れた自らの責任を省みることなく、政府・与党は会期の大幅延長を強行した。
民主党は、政府案を廃案にし、解散総選挙を実現することを最大の課題として取り組みを進めた。対案も検討したが、廃案に追い込むための戦術的判断から提出は行わなかった。その結果、参議院において法案を否決に追い込んだ。
しかし小泉首相は、自らが提出した法案を自らが総裁を務める自民党議員の反対票で否決されるという屈辱を恥じることなく、無責任にも、「身内を切ってまで郵政民営化を行う」という劇場効果を計算したパフォーマンスにすり替えた。結果として、民主党が対案を提出しなかったことで、国民には郵政改革に対する選択肢が無く、自民党に「法案反対の民主党は『改革抵抗勢力』」とのレッテル貼りを許すこととなった。
すべての課題が置き去りに
小泉首相のなりふり構わぬ郵政法案中心の国会対応のために、その他の多くの課題は置き去りにされた。外交とりわけ冷え切った関係に拍車がかかるアジア外交、政治腐敗防止、被災者生活再建支援、アスベスト対策、年金抜本改革……、いずれも国民の関心が高く、また生活に直結する重要課題について、民主党は様々な議論を提起したが、政府・与党はこれに応えず、国民から負託された責任を放棄した。
マニフェストでは評価を得るも
8月8日の衆議院解散を受けて、民主党は「3年間で10兆円のムダづかい一掃」、「年金一元化」、「月額1万6千円の子ども手当」などを柱とするマニフェストを発表。「郵政法案成立」のみを謳い具体的政策を記さず国民に「白紙委任」を迫る自民党の“マニフェスト”との比較において、彼我の差は明らかであった。しかし、争点設定では、民主党の包括的な政策提起に比較して、自民党は郵政民営化のアジェンダ設定に力点を置いて成功を収めた。選挙戦全体の中でマニフェスト活用をどのように位置づけるか、新たな対応が 求められることとなった。
岡田代表辞任、前原新代表を選出
岡田代表が総選挙敗北の責任を取り退任を表明したことを受け、民主党の新代表を選ぶ両院議員総会が 9月17日に開かれ、衆参両院の国会議員の投票の結果、前原誠司新代表が選出された。また、20日の両院議員総会において前原『次の内閣』が組閣された(⇒参照)。
163回特別国会
2005年9月21日から11月1日(42日間)
前原民主党は「提案主義」(政府・与党が国民の声に背を向けて必要な法整備や施策を怠っている場合には速やかに法案・政策を提案の形にまとめ実現を図る)、「対案主義」(国民生活を直撃する法案・政策に対しては具体的対案を掲げ堂々と論戦を展開する)を掲げてこの国会に臨んだ。
会期が短い特別国会にも関わらず、郵政改革や障害者自立支援等に関しては対案を、政府・与党が先送りしたアスベスト対策や議員年金廃止等では提案を取りまとめ、 19件の議員立法を提出し、国民にわかりやすい具体的な政策論戦に挑んだ。その中には、高齢者虐待防止や会計検査院の機能強化等、民主党の提案に与党も賛同し成立した法律もあり、提案・対案路線は一定の成果を挙げた。