第二章 『次の内閣』の活動環境 |
石綿健康被害救済法
隙間だらけの救済法 |
容器包装リサイクル法改正
容器包装廃棄物のさらなる削減へ |
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アスベストによる健康被害が深刻な社会問題となり、政府は164回通常国会に「石綿による健康被害の救済に関する法律案」及び「石綿による健康等に係る被害の防止のための大気汚染防止法等の一部改正案」を提出したが、これらは163回特別国会に民主党が衆議院に提出し、継続審査となった「アスベスト総合対策推進法案」(164回通常国会において審査未了)の一部を取り出した内容にすぎなかった。 「工場の内と外で命の値段が違う」民主党はノンアスベスト社会に向け、健康被害者に対する「補償」とともに、アスベスト製品の製造等の禁止、建築物からの除去、廃棄物の適正処理、建築物解体時の飛散防止など、既存アスベスト対策の重要性を指摘したが、政府は過去の検証に目をつぶり、不十分な金銭給付だけを強調した。特に新制度による給付は労災補償との格差が歴然で、政府が謳う「隙間のない救済」からはほど遠く、被害者にとって「工場の内と外で命の値段が違う」内容であった。民主党は通院費と就学援護費に絞った修正案を提出したが否決され、原案に反対した。なお、衆参両院ともに附帯決議が付された。大気汚染防止法等4法一括改正案は全会一致で可決された。 |
「容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律の一部を改正する法律案」は、1995年に制定された後、初めての改正であり、事業者団体、地方自治体のみならず多くの市民団体からも高い関心が寄せられていた。今回の改正では、容器包装利用事業者が再商品化の合理化の程度に応じて市町村に資金を拠出する仕組み等、所要の措置を講ずるとしている。民主党としては法案に問題点が多く残されていることから、最終的に164回通常国会において、項目数でこれまでで衆議院最多となる19項目の附帯決議を附し、政府案に賛成することとした。 附帯決議の項目としては、(1)ペットボトルの再利用について検討すること、(2)海外への輸出や不法投棄等、リサイクル名目で不適正な処理が行われることがないよう現行の規制を徹底すること、(3)事業者に対して製品に分別排出やリサイクル製品の利用等に資するような表示を行うこと、(4)次回の見直しにおいては各主体の役割分担の在り方についての検討を行うこと、(5)レジ袋の有料化に伴い発生した収入について環境対策等に資する使途となるよう事業者に対し必要な助言を行うこと、などが主な内容となっている。 |
環境部門では、164回通常国会において、(1)公害被害対策(アスベスト問題、水俣病問題、殺虫剤散布等の規制など)、(2)個別リサイクル法の改正(「容器包装リサイクル法」の改正など)、(3)地球温暖化対策(「温暖化対策推進法」の改正、「フロン回収法」の改正など)、(4)野生生物対策(「鳥獣保護法」の改正、野生生物保護基本法の検討など)、(5)森林・林業政策(持続可能な社会形成の観点から)などについて重点的に取り組んだ。
164回通常国会の会期中に、民主党の環境部門関連で設置された主な調査会・作業チーム・小委員会等は次の通り。「アスベスト対策作業チーム」、「水俣病対策小委員会」、「観光政策推進調査会」、「森林・林業再生小委員会」、ほか。
「地球温暖化対策の推進に関する法律の一部を改正する法律案」は、京都議定書発効に伴う改正であり、地球温暖化問題を重視する民主党としては特段反対する理由はなかったため、政府案に賛成した。その上で、(1)CO2排出削減に向けた国内対策に努力してもなお生ずる差分(1.6%)については補足性の原則を踏まえつつ、京都メカニズムを活用したクレジットの取得に万全を期すこと、(2)クレジット取得のためのプロジェクトの実施等に当たっては当該事業実施地の生態系、自然環境に与える影響及び地域住民に対する配慮を徹底することとし、広くその結果を公表すること、(3)脱温暖化社会の構築に向け、大量生産・大量消費・大量廃棄型の社会経済活動やライフスタイルの転換を促すための施策を早急に検討し、可能なものから順次実施すること、などを主な内容とした附帯決議を付した。さらに京都メカニズムの制度が動き始めた後に見直しを図っていきたい。
「特定製品に係るフロン類の回収及び破壊の実施の確保等に関する法律の一部を改正する法律案」が164回通常国会で議論された。フロン類は、強力な温室効果ガスであるとともに、オゾン層破壊物質でもある。さらに、大気中に放出されても安定しており、寿命も長いことから、地球環境に対して長期間大きな影響を与えることになる。したがって、フロン類の回収を適正かつ効率的に進めることが必要であり、改正案の方向性は支持できることから、政府案に賛成することとした。法案は成立した。
子どもや化学物質に過敏に反応してしまう方々からの殺虫剤等による健康被害の相談が多く寄せられてきた。現行の法体制では、規制が縦割りであるなどの事情から、対応が不十分であった。そこで、民主党は、殺虫剤等による国民の健康被害を未然に防ぐために2つの法案を164回通常国会に提出した。1つは、殺虫剤等の使い過ぎや不適切な使用から生活環境を保全するため、表示の義務付け・一定の散布などの規制を行うとともに、殺虫剤等の有害な影響の低減を推進する「殺虫剤等の規制等に関する法律案」であり、もう1つは、防除業者による健康・環境被害の防止を図るための「害虫等防除業の業務の適正化に関するの法律案」である。
2006年5月1日、公害の原点ともいわれる「水俣病」の公式発見から50年という節目の年を迎えた。当日、エコパーク(熊本県水俣市)にある慰霊の碑の前で、犠牲者慰霊式典が開催された。時折激しく降る雨の中、式典には患者・遺族をはじめおよそ1000名もの人達が参列し、民主党の国会議員らも多数参列し、水俣病問題の全面解決に向け、改めて決意を新たにした。
民主党では環境部門の下に、「水俣病対策小委員会」を設置し、患者団体との意見交換会を積極的に開催し、患者・被害者の生の声に触れながら、全ての水俣病被害者に対する「国の謝罪」の明確化と、不可逆の健康被害に対して、必要な医療を最低限の「国の責任」として補償する「水俣病に係る被害の救済に関する特別措置法案(仮称)」の制定を中心とした独自の「民主党水俣病総合対策」の取りまとめを急いでいる。
「鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律の一部を改正する法律案」について、2002年の改正では、次の改正までに取り組むべき諸課題と前々回の同法の改正時に約束した抜本改正を附帯決議に付した上で賛成したが、2004年の「外来生物法」以外、ほとんどその内容が実現しておらず、改正内容にも反映されていない。そこで民主党としては、今回、「くくりわな」及び「とらばさみ」を使用する猟法を禁止することや、捕獲等の目的での所持・販売・頒布を原則として禁止することなどを盛り込んだ修正案を提出し、政府案には反対した。政府案は賛成多数で成立したが、民主党としては、今後も修正案に盛り込まれた論点に即して問題点を追及していく。
野生生物対策については小手先の改正だけでなく、常に抜本的な改正が求められてきた。そこで民主党では、市民団体や有識者らと連携しながら「野生生物保護基本法」の策定に向けて作業中である。
持続可能な社会の形成は、民主党環境政策の根幹の一つであるが、164回通常国会では、森林の違法伐採問題、バイオマスエネルギーなどの問題に取り組み、積極的に視察等を行った。また本年、「サステナビリティの科学的基礎に関する調査報告書2006」なども発表されたが、この中にも取り上げられているエコロジカル・フットプリントのマティス・ワケナゲル氏、同志社大学助教授の和田喜彦氏を招き意見交換を行った。
さらに、森林・林業政策の所管は農林水産省ではあるが、環境部門としては「環境」の視点から、森林・林業再生小委員会の運営に関与し、民主党農林漁業再生本部、民主党森林環境政策議員懇談会、農林水産部門と連携しながら、「民主党森林・林業再生プラン」の策定を進めている。
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