【5】農林水産・環境・エネルギー
環境
森林伐採・開発などによる自然環境の破壊や生態系の破壊、化学物質の拡散、化石燃料や金属類資源の枯渇など、人間の活動に起因する環境負荷の増大により、「環境の許容限度」や「人体の許容限度」が限界に近づいています。このような環境問題に対応するために、現在の「大量生産、大量消費、大量廃棄」社会から、持続可能な社会へと変革し、将来世代にツケを残さないようにしなければなりません。民主党は、持続可能な社会をめざし、環境容量内での循環型社会システム構築に向け、積極的に取り組んでいます。率先して地球環境の保全に取り組むとともに、日本が国際的に地球環境保全活動の先導役を果たします。また、環境対策技術に国として支援していくことなどによって、国民の健康で文化的な生活の確保に寄与するとともに、地球環境の保全を通じて積極的に世界に貢献する国づくりをすすめます。
地球温暖化、水問題をはじめとする地球規模の環境問題がその規模を拡大しています。また、自然破壊や土壌・水質汚染など、地域での環境問題も後を絶ちません。環境の悪化とそれに伴う脅威は増大し続けています。美しい自然や生命を育む地球を将来の世代に受け継いでいくことは、いまを生きている私たちの責任です。環境問題を解決し、持続可能な社会をつくるためにも、環境意識の向上・市民参加・情報公開・公正な市場構築・良好な自然の保全・NGO中心の国際貢献などの施策を推進します。
開発途上国を中心とした人口の急増と貧困等により、地球環境の悪化が各地で顕在化しています。開発途上国への環境保全技術の積極的な援助、被援助国の民主化促進、環境マインドを育むための「人づくり」支援強化、森林保全・水環境の保全・砂漠化防止などの自然環境保全への支援強化などを積極的にすすめ、日本が環境分野でのリーダーシップを発揮すべきです。そのため、支援の際の国際的な環境基準の設定を国際社会に積極的に働きかけます。
地球温暖化問題やオゾン層破壊問題などに率先してリーダーシップを発揮し、環境外交を推進します。人類と自然との共生の理念に基づいて、日本が世界に貢献する戦略的外交課題として、地球環境保全活動をすすめ、地球全体の環境保全という理念を明確にし、地球環境保全に向けた法案の策定も視野に入れ、具体的な検討をすすめます。
地球温暖化を防止するには、国内におけるさらなる温室効果ガス削減が必要です。しかし、温室効果ガスの排出削減義務を定めた京都議定書は、「究極の目標」に向けた第一歩に過ぎません。民主党は、国内における温室効果ガス削減の長期目標を設定します。その上で、エネルギーの需要抑制、省エネルギーの推進、再生可能エネルギーの普及促進、フロン回収の推進、のために、地球温暖化対策税や、フロン税などの経済的措置を導入します。また、キャップ・アンド・トレード方式による国内排出権取引制度、国内または海外で発生したクレジットを国が買い取る制度などを導入し、CDM(クリーン開発メカニズム)は補完的な活用にとどめます。同時に、諸外国との環境対話を積極的に推進し、地球温暖化の進展を食い止めるために、環境ODAの増額なども視野に入れ、より実効性のある施策を実施します。そして、ポスト京都議定書に向けた新たな国際的枠組みに対する主導的役割を果たすため、環境外交を推進します。
経済活動の地球環境に与える影響(外部費用)を内部化し、適正な市場経済における価格決定システムに組み入れる必要があります。特に、京都議定書の達成が極めて困難となっている地球温暖化対策では、いわゆる経済的措置の導入は喫緊の課題です。化石燃料の使用抑制・効率化と、省エネルギー・新エネルギーの技術開発や環境関連投資促進に資する地球温暖化対策税を創設します。CO2排出量(炭素含有量)に着目し、炭素1トンあたり3000円程度課税します。電力については、現在の電源開発促進税を一部組み替えて課税する炭素・エネルギー税とします。ただし、その際には他に転換不可能な原料炭・ナフサ等の原材料としての使用については課税の対象から外し、産業界等の温暖化ガス発生の抑止への効果的な取り組みに対しては税の軽減もしくは還付制度を設け、わが国産業競争力の維持・強化をはかります。また輸入石炭についても一定の措置を設けます。税収は、省エネルギー・新エネルギーの技術開発、設備投資、普及等に優先的に配分します。これにより、環境技術立国として、環境と雇用を両立させた持続可能な社会を構築します。なお石油税制についても、そのあり方を含め今後検討します。
フロン類は強力な温暖化物質であり、オゾン層破壊や地球温暖化の原因となるなど、地球環境に大きな負荷を与えることから、その回収破壊・代替物質への転換が重要になります。また、大気中での寿命も長いことから、一旦大気中に放出された場合、地球環境に対して長期間大きな影響を与えることになります。ところが、フロンの販売価格が非常に安いことから、安易に新品のフロンが使用され、大気中への放出が続いているのが現状です。民主党がかねてから主張していたフロンの回収義務化法がようやく2001年に成立しましたが、スプレー缶や断熱材への使用規制が行われていないなどの問題があります。民主党は今後も環境負荷の少ない代替物質への転換、使用規制、フロン税の導入などを強力にすすめます。
日本国内で流通している化学物質は約5万種類あると言われ、また、毎年数百種類の化学物質が新たに製造・使用されています。人工の化学物質が環境中に排出された場合の人体及び生態系への影響が十分に把握されていないことから、被害の未然防止を基本としたリスク対策が必要です。民主党はこれまで、さらなる情報公開を求め、政府の「化学物質排出移動登録(PRTR)法案」への対案を提出しました。また、環境基準の設定などを盛り込んだ「ダイオキシン対策法案」、焼却炉対策を強化した「廃棄物処理法改正案」を提出しました。今後、「化学物質の審査及び製造に関する法律」を改正し、予防原則を貫いた化学物質の製造から廃棄までの全体を包括的に管理し、製造規制・表示の徹底・使用後の回収など、リスクに応じた化学物質対策をすすめます。
現在の大量生産・大量消費・大量廃棄の社会を省資源型の循環型社会へと転換させるために、また、不法投棄や不適正処理を防ぐためにも、現在の法制度を変える必要があります。民主党は、(1)廃棄物・リサイクル法制度の統合、(2)有価・無価に影響されない廃棄物の定義、(3)リサイクル施設に対する環境規制の適用、(4)製造者の製品引取義務(拡大生産者責任)の明記、(5)デポジット・埋立税・焼却税・資源税等の導入(経済的措置)を内容とする「資源循環・廃棄物管理法案」を提出します。また、生ごみの堆肥化を主な内容とする「食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律」(食品リサイクル法)の改正案を2003年の第156国会に提出しました。
環境負荷の少ない持続可能な社会を築くためには、事業者・消費者などの各主体が自主的に取り組むことが重要ですが、それが十分に行われない場合には、経済的措置による誘導や法的規制により環境への負荷を低減する必要があります。製品の販売にあたり預り金(デポジット)を価格に上乗せし、回収の際にそれを返却するデポジット制度は、不法投棄の防止や回収率の引き上げのために一定の効果が認められることから、民主党が提案している「資源循環・廃棄物管理法案」の中に位置づけるとともに、飲料容器の再使用促進のための制度として検討をすすめています。
現在、容器包装リサイクル法をはじめとして、家電、自動車など多くの個別リサイクル法が制定されています。個々の製品リサイクルシステムは、その製品の特性に応じて一定程度の違いが認められるべきものではありますが、同様な製品(家電とパソコン)であっても、その費用負担の時期が異なるなど、リサイクル法制度自体が複雑化しており、事業者や消費者が混乱するケースも考えられます。これからのリサイクルは、製造事業者に一定のリサイクル責任が課される(=拡大生産者責任)場合が増えることになり、そのためのリサイクル費用についても製品販売時に徴収されることが多くなると考えられます。しかし、製品が廃棄されリサイクルされるまでにはタイムラグがあるため、事業者が徴収したリサイクル費用についてはその一定額について引き当てを認め、リサイクルによる経済的負担を軽減します。特に、容器包装リサイクル法は、再使用容器(リターナブル容器)の経済的負担が相対的に重いことから、環境負荷の大きいリサイクル容器(ワンウェイ容器)の割合が増加しています。これらの問題を解決するために、民主党が提案している「資源循環・廃棄物管理法案」の考え方に沿った形で個別リサイクル法を改正します。
先進国と途上国間の不公平、現世代と将来世代間の不公平、自然と人間の間の不公平を解決し、持続可能な社会を構築するためには、ライフスタイルの変革や意識改革が不可欠であり、家庭をはじめ、学校、地域、職場などあらゆる場と機会を通しての環境教育の推進が重要です。民主党は、学校における環境教育、環境教育へのNGOの参加、教員に対する研修制度などを柱とする「環境教育振興法案」を2003年の第156国会に提出しました。この民主党案に促され、超党派案が成立しましたが、環境教育の推進という観点は十分とは言えず、今後も環境教育のあり方について、国民的な議論を喚起し、幅広い検討をすすめていきます。
2005年の第162国会において、「動物の愛護及び管理に関する法律の一部改正法」(衆院環境委員長提案)が成立しました。法律策定過程において民主党は、特に動物実験の規制に取り組みました。そして具体的に、(1)動物実験の3R(代替法、数の削減、苦痛の軽減)の明文化、(2)動物虐待に対する罰金増額、(3)動物由来感染症の予防と生態に応じた飼養の努力義務化、(4)動物取扱業の範囲に移動販売業・理美容業等を追加、(5)犬猫引取り後のNPO等への譲渡推進などの考えをまとめ、超党派案に盛り込むよう主張し、今回その一部が反映されました。民主党は今後も動物愛護の取り組みをすすめます。
国内の生態系を破壊する外国からの移入種が全国的な問題となっています。これらを規制するため、民主党は、国内生物種台帳の整備・公表、規制対象の拡大などを盛り込んだ「外来生物種規制法案」を政府案への対案として2004年の第159国会に提出しました。今後も予防原則に基づき移入種規制の強化に取り組みます。
干潟や湖沼などの湿地は多様な生物の生息地となっていますが、開発などにより多くの湿地が失われています。湿地の開発を抑制し、保全を図る法律の制定をすすめなければなりません。また、農作物の被害対策や狩猟を優先する現在の鳥獣保護法では、野生生物の保護・生物多様性の保全は十分ではありません。絶滅の危機にある希少種の保護回復のためにも、野生生物の生息区域の保全を含めた包括的な「野生生物保護基本法(仮称)」の制定をめざします。
日本の自然公園は、国や自治体が所有する部分はごくわずかで、大部分が民間の所有となっており、十分な管理ができていません。こうした自然的価値の高い核心地域は、生物が自由に移動でき、遺伝子的な生物多様性が確保されるよう、孤立した形ではなく、「緑の回廊」になっていなければなりません。民主党は、日本に残された価値の高い自然を保護するため、こうした地域の指定を行なうとともに、その所有・管理を国・自治体ですすめ、取得については国の費用で計画的にすすめます。
人の手の入らないありのままの原生的自然を将来世代のために保全していくことは言うまでもありませんが、人が手を入れることによって維持されてきた里地や里山の自然が、過疎化の進展や廃棄物処分場の建設などにより急速に破壊されている現状にも対応が求められています。地域にある文化や伝統を活かし、地域の循環を基本とした地産地消の経済システムをつくることで、世界に誇ることのできる日本の里地・里山の自然を保全する必要があります。環境体験学習、グリーンツーリズム(自然や農業に親しむ観光)、都市と農村との交流などを導入しながら、ビオトープ(生物生息空間)・ネットワークとして整備をすすめるとともに、地域の経済・物質循環を推進します。
日本は、たび重なる公害による大気汚染・水質汚濁等を様々な技術により解決してきており、公害対策では世界一の技術立国となっています。その一方で、大気の窒素酸化物や湖沼における水質汚濁など、環境基準を上まわる状況が今なお続くなど、対策が進展していない部分も残されています。民主党では、大気・水・土壌などの環境基準を速やかに達成するため、排出基準の強化や規制対象の拡大を、経済的措置の導入などにより実地します。2004年10月の水俣病関西訴訟最高裁判決を受け、民主党は2005年3月に「民主党水俣病問題対策」を発表しました。これは、「公害健康被害の補償等に関する法律(以下公健法)」上の認定拡大を図り、公健法で救済できない被害者は特別法で救済することで被害者救済解決を図ることとしており、現在、この概要に基づいて「水俣病被害者救済法案(仮称)」の策定をすすめています。また、2005年7月からはアスベスト健康被害対策についても具体的な検討をすすめています。
現在の環境アセスメント制度は事業アセスであり、計画自体の見直しや代替案の検討、累積的な環境影響への配慮をより効果的に行うためには、政策立案・計画段階から環境に対する影響を評価する「戦略的環境アセスメント」の導入が不可欠です。計画段階でのアセスメント導入により、市民参加・市民合意がより早期の段階で図られることから、環境と開発の調和を図ることが可能となります。民主党は、国レベルでの戦略アセスメント導入をめざします。
再生資源を原材料として使用する製品、温暖化ガスの排出抑制に資する製品を製造する事業その他の地球環境保全に資する産業の振興を図ります。また、地球環境への負荷の低減に資する製品等の利用の促進を図ります。さらに、温室効果ガスの排出の抑制、ダイオキシン類等有害な物質の無害化や汚染の除去、廃棄物の減量や資源の再利用等に関する科学技術の振興を図ります。