【6】教育・文化・科学技術
教育・文化
学級崩壊や不登校、いじめ、学力問題など学校現場が抱える様々な問題に対し、現在の教育行政は有効な方針を示すことができずにいます。民主党は、従来の官主導の画一的な教育を改め、学びの現場からまず徹底的に検証し直し、地域や学校の個別状況に応じた学びの環境をつくり出すことを提案します。高等教育においては、改革を促すために国立・私立間の公平な競争を喚起し、効果的な研究支援システムを確立するとともに、意欲を持つ人が誰でもいつでも学べる機会を提供します。また2001年に民主党が中心となって制定した「文化芸術振興基本法」を足がかりに、地域を立脚点とする芸術・文化活動の支援と伝統文化の保護・育成をすすめます。
文部科学省のうち教育に関わる部局を廃止し、これに代わって独立行政委員会としての「中央教育委員会(仮称)」を設置します。国=「中央教育委員会」の役割は、各年齢段階の最低基準・基本方針を定めることに限定し、その他の権限は最終的に地方自治体が行使できるものとします。
学習指導要領は大綱化を促進します。学力向上には情報処理力と情報編集力の双方を相乗的に引き上げるとの視点が必要です。設置者及び学校の裁量を尊重し、地域・学校・学級の個別状況に応じて、学習内容・学校運営を現場の判断で決定できるようにします。また、高校の学習指導要領については速やかに廃止します。
地域・保護者・教職員・設置者である教育委員会・校長等から構成される「学校理事会」が主な権限をもって経営・運営を行う地域立学校(コミュニティースクール)制度を実現します。コミュニティースクールは、民主党が従来から主張している仕組みで、公立小中学校の建て直しが急務とされる現在、有効な改革手段の一つと考えられています。地域社会と保護者が協力して学校を運営に参画することが、学校との信頼関係・絆を深め、学校との有機的連携・協力が生まれ、同時に地域コミュニティーの再生、強化につながります。
子どもたちの生きる力を伸ばすため、地域・保護者、学生ボランティアなどの力を最大限活用した土曜学校(体験学習や野外活動含む)、放課後学習、読書推進などの実施を支援します。また、共同生活、職業体験、異年齢間交流、都市と農山村地域の交流、国際交流、自然体験、農業体験、社会奉仕体験など、子どもたちが自らプログラムを考え、教職員、保護者、地域住民や児童生徒で構成する協議会がサポートする形で体験学習を実行します。
民主党は、「30人以下学級法案」を提出するなど一貫して少人数学級の実現と拡大をめざしてきました。今回はさらにOECD先進国並の教員配置(教員一人あたり生徒16.6人)をめざします。学力問題や不登校、学級崩壊など学校現場での様々な問題に対応するためには、児童生徒の抱える問題を教師が把握でき、わかる授業を行う態勢にしていくことが重要です。民主党は、少人数学級を原則とする教育をめざし、さらに強く働きかけをしていきます。
地域や子どもたちの個性に適した多様な教育を実現するために、教科書も様々な工夫を取り入れた多様なものが存在すべきであり、民主党は将来的に、文部科学省が現在行っている教科書検定制度を段階的に見直します。教科書の誤記・事実誤認の訂正などについては、世の中全体で是正していくための仕組み・プロセスの構築を検討します。
教科書採択にあたっては、保護者や教員の意見が確実に反映されるよう、現在の広域採択から市町村単位へ、さらには学校単位へと採択の範囲を段階的に移行します。このような分権的採択制度が確立されるまでの間、教科書検定制度は維持しますが、検定過程は公開します。
子どもたちが、安全で安心な学校生活をおくることができるよう、学校安全対策を総合的かつ計画的に推進するため、「学校安全基本法案(仮称)」を策定し、国や自治体が、安全基準策定や体制整備の責務・役割を積極的に担い、防犯、防災、老朽化・事故防止、環境衛生(アスベスト対策含む)対策に万全を期します。
いじめや不登校などの問題や、職業選択などの進路指導について児童生徒の相談に応じることができる仕組みを充実させる必要があります。民主党は、専門的知識をもって指導及び助言を行う専門相談員を全国の小学校、中学校、高等学校等に配置するための「学校教育法の一部改正案」を2001年の第153国会に提出しました。学校現場での相談体制と指導力の充実に向け、引き続き制度の充実を求めていきます。
「学習者・研究者本位の大学」、「創意ある不断の改革を現場から自発する大学」、「社会に開かれ、社会と連携・協働する大学」をキーワードに、「象牙の塔」から「時代が求める人づくり・知恵づくりの拠点」として大学改革をすすめます。その際、世界的にみて低い高等教育予算の水準見直しは不可欠ですが、従来の学校単位の支援から個別研究プロジェクト単位の支援に転換します。また産業振興的な側面ばかりでなく、学問的な価値にも十分な配慮を払っていかねばなりません。2003年の第156国会で成立した国立大学法人法について、民主党は、大学への霞ヶ関の関与がますます強まり大学の自主性を損なうものと考え、その再検討をすすめます。 大学生・大学院生に対する奨学金制度を大幅に改め、希望する人なら、誰でも、いつでも利用できるようにします。学費のみならず最低限の生活費も貸与することで、親の支援を一切受けなくても、またいったん社会人となった人でも、意欲があれば学ぶことができるシステムをつくります。新奨学金制度の普及にあわせて、大学・大学院そのものへの助成は、順次縮減します。 今日、専修学校や各種学校は社会の実学を支え、広く産業・社会の人材養成の基盤となっています。これら学校の自由な発展を促すため、財政支援を充実するなど、教育制度上での位置づけを明確にします。 児童・生徒の学習・生活の場であり、震災時の防災拠点でもある公立学校施設の4割以上が耐震基準を満たしておらず、老朽化による事故なども増加しています。民主党は、施設の安全性を確保するため、既に2002年の第155国会において、耐震診断の義務づけと補強・改築費用の補助のかさ上げを図るなど危険校舎の改修促進のための「公立学校耐震改修促進法案」を提出しました。また、アスベスト対策に取り組み、学校施設の環境衛生の改善をすすめます。 子どもの読書活動は、子どもが言葉を学び、感性を磨き、表現力を高め、創造力を豊かにするうえで欠かせないものです。2001年成立の「子どもの読書活動推進法」を足がかりとしながら、全国の学校図書館の整備・充実をすすめ、子どもの読書環境を改善します。また、文字・活字文化の振興に取り組みます。 技術の高度化、転・再就職の準備、地域活動のリーダー養成、教養講座など多様な教育ニーズに対応する生涯学習社会を実現します。子どもから大人までが利用しやすい施設の整備、公民館活動の活性化、公立図書館の一層の充実を図ります。また、大学・短大を卒業し社会で働く人に、本人の希望で再び大学や大学院で教育を受けることができる制度(リカレント教育制度)を確立します。 学童保育の充実に向けて、希望するすべての小学生が放課後、安全に楽しく過ごせるための居場所づくりをすすめます。学校施設の整備・開放をすすめ、地域が一体となって子育てを支える環境づくりをすすめます。 学校教育において障がい者と健常者がともに学ぶ機会を増やし、障がい者への偏見をなくす「こころのバリアフリー化」をすすめます。このため、保育園・幼稚園の段階から小中学校教育まで統合保育・統合教育に取り組み、障がいを持つ子どもと持たない子どもとの分離を前提とした教育を見直します。また、学校施設のバリアフリー化や弱視者用の拡大教科書導入のための制度改正、発達障がい児への支援など、障がい者の視点に立った教育環境をつくります。 人々の創造性や表現力、コミュニケーション能力を高めるうえで、芸術文化の振興は極めて重要です。民主党は、従来の文化ホール建設といったハコモノ中心の行政を改め、人材を活かす文化政策へと転換します。様々なジャンルの芸術文化に対する地域住民のニーズや取り組みに応えて、芸術家・専門家がソフト・マンパワーを用意できるように行政が支援していく地域住民主導型の文化政策をめざします。 日本の伝統文化を保存し、そのうえにさらなる新たな文化を創造する基盤を整備します。文化財の保護、地域に固有の伝統芸能・工芸の継承、教育における体験鑑賞など、文化・伝統を保護、育成するための環境整備を行います。 国内における日本語教育を充実させるとともに、海外の日本語学習者への日本語専門家の派遣や、外国人日本語教師の訪日研修など、海外における日本語教育を支援します。