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民主党政策集―私たちのめざす社会―
【8】外交・安全保障
安全保障
 冷戦構造の崩壊後、2001年9月11日の米国における同時多発テロを経て、各国は新たな安全保障の秩序構築に様々な模索をしています。平和への脅威も、従来の大規模な国家間紛争より、国内・地域紛争、テロやゲリラが増え、小型兵器や核・生物化学兵器、サイバー攻撃など形態も多様化し、新たな安全保障のあり方が問われています。民主党は、安全保障対話と信頼醸成による紛争の予防・和解を第一義とし、国連による国際協調体制を常に追い求めつつ、特に、アジア地域での安全保障枠組みの構築をめざして、ARF(アセアン地域フォーラム)等を充実させます。今後とも、日米安全保障体制を基軸としつつ、新たな脅威も含め、わが国と国民の平和と安全・主権・人権が脅かされるような緊急事態に対処できるよう法制・態勢を整備します。  日米安全保障条約の下で、日米が緊密な同盟関係にあることは、わが国の国益だけでなく、NATOのような地域的な集団安全保障の枠組みを持たないアジア・太平洋地域の平和と安定に大きく寄与しています。2001年9月の米国同時多発テロ以来、2003年3月のイラク攻撃に見られるように、米国には単独主義的な傾向も見られます。同盟国としての信頼関係を基礎にして、米国が国際法の諸原則を尊重し、国際社会の理解を得られる行動をとるよう、率直な協議を通じて日米安保体制の実効性を高めていきます。  冷戦後のアジア太平洋地域の安全保障における米軍のあり方や在日米軍基地の位置づけなど中長期的な視点に立って検討を行い、地域における信頼醸成と安全保障枠組みの構築とともに、在日米軍基地のあり方を不断に見直します。戦後60年を経てもなお、過度に沖縄に集中し多くの負担と犠牲を強いている現状を直視し、米軍の変革・再編(トランスフォーメーション)の機会を捉えながら、在沖米海兵隊基地の県外への機能分散をまず模索し、戦略環境の変化を踏まえて、国外への移設を含め、その整理・縮小の実現に積極的に取り組みます。  日米安保条約、日米地位協定及び特別協定によるいわゆる「思いやり予算」によって在日米軍基地労働者の労務費、光熱費、訓練移転費等を日本政府が負担しています。近年、本来の目的を逸脱している事例が散見され、不十分ながら米軍の節約努力、光熱費等の削減等の措置が採られました。わが国の財政事情は悪化する一方で、公共事業的支出は基地の固定化を高めることから、特別協定に基づく光熱水料、訓練移転費や地位協定を根拠とした提供施設整備費等について必要な削減を行うとともに、アジア・太平洋地域の平和といった中長期的な観点から、日米の経費負担のあり方、公私の区分等について、より厳格な執行と不断の検証を求めていきます。  防衛庁は、個人情報リストを違法に作成したことで国民の厳しい批判を浴び、人権意識の欠落と組織的な隠蔽体質を露呈しました。実力組織として、より厳しい規律が要求されるにもかかわらず、調達疑惑等一連の不祥事等の反省が生かされておらず、これでは、「省」への格上げどころか、安全保障に対する国民の信頼が得られません。民主党は、隊員の意識改革、再発防止の徹底など、防衛庁の刷新に厳しく対応していきます。  民主党では、1999年策定の「安全保障基本政策」で以下の原則を確認しています。(1)個別的自衛権の行使を超えた海外における武力行使は行わない、(2)専守防衛の堅持、(3)実力の保持は個別的自衛権のための必要最小限度、(4)憲法解釈の変更により集団的自衛権を行使しない、(5)核・生物・化学兵器等の大量破壊兵器を保持しない、(6)自衛権の発動は、急迫不正の侵害で他に適当な手段がない場合で必要最小限度の実力行使に限る、(7)徴兵制は採用しない、(8)文民統制、(9)武器輸出禁止三原則、(10)非核三原則など、国会審議を通じて戦後確立された諸原則の尊重。これらの原則にもとづき、党憲法調査会での議論も踏まえて、今後とも、不断の見直しをすすめ、自衛隊の体制・装備・運用などを見直して、ミサイル、テロ、ゲリラ、サイバー攻撃、不審船・武装工作員などの多様で新たな脅威に対応できるようにします。  政府は、2004年12月、新しい防衛大綱及び中期防衛計画を、国民に対する説明責任を果たさないまま閣議決定しました。自衛隊の活動について、明確な指針に基づく法的課題の整理も先送りにしたまま、所要の装備・態勢の整備の推進が謳われており、防衛大綱・中期防の拠って立つ基盤を欠くものです。あらためて、わが国が直面する「脅威」、国を守ることの意味、日米同盟、中・長期的防衛力や自衛隊の国際的な活動のあり方などについて見直し、大綱及び中期防に反映させていきます。  2003年通常国会において、民主党の主張を大幅に採り入れた武力攻撃事態法等が成立しましたが、冷戦が終結した現在においては、テロ攻撃やミサイル飛来、原子力事故や大規模自然災害など、国民が直面する危機の形態は様々に変化しています。これら緊急事態に関しては、国の責務や対処指針を明確にするとともに、国家権力の濫用・暴走を防ぐため、侵してはならない基本的人権や民主的統制の原則が担保される必要があります。民主党はこれらの点を明記した「緊急事態基本法(仮称)」を制定するとともに、緊急事態への迅速な対応を可能とする「危機管理庁(日本版FEMA)」の設置や情報収集・分析機能の強化を含めた態勢整備をめざします。  有事の際には、自衛隊等が武力攻撃事態に対処する一方で、国民・住民に被害が及ぶ可能性が生じます。現在、国民保護法には、住民の避難・救援・被害最小化などが定められます。国民の基本的人権が侵害されないよう、必要な措置の実施を求めていきます。また、民主党は、政府案に対して、シビリアン・コントロールを強化する観点から、国民保護の実効性をより確実にするための法案修正を行いました。今後とも国民の立場に立って、議論をすすめるとともに、「危機管理庁(日本版FEMA)」の設置などにより、国民保護措置が円滑に行われるよう、万全の態勢を整えます。  拉致の手段、様々なスパイ工作、麻薬等の禁制品の密輸等に使われた疑いのある不審船や武装工作船に対しては、毅然たる対応が必要です。不審船に対する警戒態勢、重武装をした工作船に対する武器使用基準、官邸の危機管理体制のあり方、海上保安庁、警察庁、防衛庁及び外務省との連携等について、さらなる検証を行います。また、改正「外為法」、「特定船舶等入港禁止特別措置法」の適用も視野に入れた取り組みを強化するとともに、わが国の領土、領海、排他的経済水域を守る対策を推進します。  2001年9月11日の米国同時多発テロ以降、テロ撲滅への国際社会での協調がすすんでいます。憲法上、海外での自衛隊の活動は慎重でなくてはいけませんが、わが国も国際社会と協調して、憲法の枠内で毅然とした対応をしていくことが必要です。一方、テロの背景には、社会的格差や不平等などがあり、わが国としては、紛争予防の観点で、テロの原因を取り除くために、国際的な対話や協力の促進、貧困問題や人間の安全保障、中東和平への取り組み、人道援助、復興開発支援等など、日本の特性を活かした外交努力を第一義とするべきです。  民主党は、「テロ特別措置法」には、自衛隊の海外派遣への民主的統制の観点から、国会の事前承認を求めて反対しました。しかし、2001年11月の自衛隊による「対応措置」は、期間・活動範囲等が妥当と判断し承認しました。政府は、2度の延長後、2002年12月、イージス艦の派遣を決定しましたが、民主党は、派遣の必要性、憲法・法律上の疑義、イラク問題等との関係、現地での運用の問題点、国会での説明、派遣決定の手続き等を総合的に判断し、シビリアン・コントロールを徹底する観点から反対しました。    イージス艦の派遣も加え、政府はテロ対策特別措置法に基づく「協力支援活動」を継続し、2003年5月に再延長しました。アフガニスタンにおける作戦行動も事実上収束に向かったと見られることから、もっぱら海上における給油活動に主眼を置く活動だけでなく、元兵士の職業訓練などアフガニスタンの人々の目に見える支援が重要です。2003年の第156国会においては、政府はイラク特別措置法案の提出にあわせ、11月初めに期限を迎えるテロ特措法の延長法案を敢えて提出しましたが、民主党は、自衛隊派遣の継続も含めた抜本的な見直しが必要であると主張し、政府案は継続審議となりました。インド洋に展開する自衛隊の活動について、政府が説明責任を果たしていない状況は極めて問題であり、民主党は2003年の第157国会において、国会による民主的統制を徹底する見地から、自衛隊による対応措置の実施を事前承認事項とすること等を内容とする修正案を提出しましたが、政府は延長を強行し現在に至っています。  ブッシュ政権は、大陸間弾道弾の核弾頭削減をする一方で、対弾道弾迎撃ミサイル制限条約(ABM条約)から脱退し、ミサイル迎撃システムの再構築など新たなミサイル防衛構想に踏み出しています。「日米共同技術研究を引き続き推進」とのわが国の立場も、大幅な修正を迫られる可能性があります。弾道ミサイル防衛については、その必要性を踏まえ、抑止的・政治的効果や日米同盟強化の面と技術的可能性や費用面など、総合的観点から検討をすすめてきました。今後、他の技術の可能性や費用対効果、シビリアン・コントロールを徹底する見地から、国会の関与、国民への公表、迎撃の原則等について検証していきます。  専守防衛を国是とするわが国は、情報収集・分析・対応能力の向上が喫緊の課題です。不審船・武装工作船やミサイル発射の意図を知るのも、専門家による継続的かつ徹底的な情報収集・分析が前提です。十分なチェック機能を付与したうえで、情報収集衛星の主体的な運用、情報本部の充実、国連、各国政府、NGO等との連携を積極的に進めるべきです。  PKOは、国民の間にも理解と支持が定着しており、東ティモールにも、かつてない規模でPKOを派遣しました。紛争停止・武装解除の監視、緩衝地帯における駐留・巡回等のPKF活動が法改正によって認められたことを受け、武器使用基準の緩和の検討も含め、国際的な平和の維持に対して貢献していくべきです。また、多様化するPKOの要請に応じ、派遣基準の緩和や参加条件・規模・期間等に関する国会の関与のあり方を見直すとともに、国連の要請に対しては、新たな「国際平和協力隊(仮称)」の創設などについて検討をすすめ、日本として国際平和の維持・構築に正面から関与できるようにします。  民主党は米国、アジア諸国、ロシア、EU、豪州などと、安全保障関係者の交流、基地や施設への相互訪問、演習などの事前通報・情報公開、通信連絡手段の設置などの信頼醸成措置を積極的に実現していきます。また国際テロや海賊情報も含めて安全保障情報の共同管理や情報交換、情報衛星の共同運営の提案などについて、憲法の枠内で主体的・積極的にイニシアティブをとるべきです。  アジア太平洋地域の安全保障では、日米安保体制を柱としつつ、多国間安全保障対話の枠組み構築をめざします。アセアン地域フォーラム(ARF)、ASEAN+3など、既存の枠組みを充実・発展させるとともに、いまだ枠組みのない東アジア地域において「東アジア共同体」等の構築に向けて、同地域における信頼醸成を進め、安全保障対話をすすめるようリーダーシップを発揮していきます。また、インドの影響力の増大とそのインド洋における制海権の拡大を想定し、わが国のシーレーン防衛という観点から、インドをこの地域の地域協力に取り込んでいく努力を行うべきです。  国連の安全保障に対しては、安全保障理事会の改革、拒否権行使のあり方について検討する一方、国連のPKO、紛争予防・和解等の活動には、日本も主体的・積極的に取り組むことが重要です。今回、米国のイラク攻撃に際し、国連安保理のあり方が問題にされたところであり、改めて、国際平和の維持に関する安保理の役割について再検討するとともに、国際社会の平和と安全に積極的に寄与していくためにも、国内世論と加盟国の支持を前提に日本の安保理常任理事国入りをめざします。
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