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国会レポート2003
contents contents |目次|序文|資料1|資料2|資料3|
第1章 第155回〜 156回国会の経過と特徴


対案・政策提案重ね、政権交代実現へ


 2002年9月に行われた民主党代表選挙を受けて発足した第4次鳩山ネクスト・キャビネットは、155回臨時国会において、北朝鮮による日本人「拉致問題」の真相徹底解明と核開発問題、深刻化する金融・経済問題と景気・雇用問題、さらには大島農林水産大臣の疑惑問題をはじめとする「政治とカネ」の問題で国会論戦に挑んだ。

菅代表が『次の内閣』を組閣
 2002年12月、新たに選出された菅代表のもと、菅『次の内閣』(ネクスト・キャビネット)が編成され、特に、安全保障、経済・雇用対策、子ども政策など、小泉政権の無策によって日本が危機的状況に直面している分野について、対案や政策提言を示しつつ、小泉内閣と対決していく姿勢を鮮明にする構成、布陣となった。
 この際、政府の閣議が形骸化し、官僚のお膳立てを追認するセレモニーとなっていることを反面教師として、『次の内閣』の閣議における骨太の政策議論を充実させるため、一般的な法案審査等は総括副大臣会議に委任して、政策立案能力の一層の向上に努めることとした。

155回臨時国会(2002年10月18日〜12月13日)
 155回臨時国会の焦点は、一つには北朝鮮による日本人「拉致問題」の真相解明と原状回復、核開発問題、さらには、日朝国交正常化交渉の再開問題であり、今一つは深刻化するデフレ経済、株価の低迷を踏まえ、不良債権処理、金融機関への公的資金再注入とペイオフの大幅な延期、企業倒産・失業増大への対応など、金融・経済・景気・雇用の問題であった。さらには前国会に引き続き「政治とカネ」の問題も浮上した。
 北朝鮮問題については、予算委員会等を中心に政府の姿勢を厳しく質したが、日朝国交正常化交渉でも日朝双方の主張がかみ合わず、政府は自らの方針について明確な答弁を行うことができないお粗末な実態が明らかになった。

経済対策も具体案示し論戦
 金融・経済、景気・雇用問題について、民主党は、雇用対策・中小零細企業対策に重点を置いて「経済有事」に緊急対応する「民主党経済再生プラン」を策定しその実行を迫ったが、政府・与党は何ら具体策を示すことなく、「経済対策国会」の掛け声もむなしく響いた。民主・自由・共産・社民の4党はこのような政府の責任を問い、共同で衆議院予算委員会に「竹中金融・経済財政担当大臣問責決議案」を提出した。
 「政治とカネ」の問題については、衆参で予算委員会を開会させ、大島農林水産大臣の公共事業口利き疑惑、自民党の清水達雄参院議員の党費1億円肩代わり疑惑、田野瀬良太郎衆院議員の秘書給与不正受給疑惑について追及した。
 また、前国会から継続となっていた「個人情報保護法関連5法案」は廃案に追い込み、「武力攻撃事態対処関連法案」「人権擁護法案」は継続審議となった。

156回通常国会(2003年1月20日〜7月28日)
 156回通常国会は1月20日に召集され、40日の延長を含め7月28日までの190日間開催された。この会期中に成立した法律案は、政府提出122本、議員立法16本であった。民主党は、この国会に前国会からの継続案件38法案を含め68の法案を単独または他党と共同で提出した。ヤミ金融の規制強化、性同一性障害者の性別取り扱い特例、上肢障害者等の郵便投票代筆制度などを、民主党の積極的な働きかけにより、全会一致で成立させた。

予算案でも対案を提示
 平成14年度補正予算については、(1)小泉内閣の公約である「国債発行30兆円枠」が破棄されたことに対する、国民への説明が全くないこと、(2)効果についても極めて疑わしいこと、特に公共事業は従来型事業の羅列であり、また雇用対策も以前より活用されていない制度の焼き直しが目立つこと、等の理由から反対した。
 平成15年度予算について、民主党『次の内閣』は、「100万人分の仕事を作る」「次世代への責任を果たす」「自由に使えるお金を地域に渡す」を基調とする民主党版「平成15年度予算案」を編成し、政府予算案を批判するのみに止まることなく、民主党が政権をとったらどのような予算を組むのかを国民の前に明らかにした。
 また、民主・自由・共産・社民の4党は、医療保険の本人窓口負担を2割から3割へ引き上げる健康保険法等の改正を凍結する「健康保険法等の一部を改正する法律の一部を改正する法律案」を共同で提出し、医療制度抜本改革を先行させるように主張した。

政府・与党が審議拒否
 野党が徹底審議を求め、自民党が審議を拒否する構図も今国会の1つの特徴となった。予算審議でも、国民が将来に不安を感じ消費を抑える中で、国民により多くの負担を強いる政府案に対し、民主党案は公共事業や特殊法人向けの支出を大幅に見直し、これを年金・医療・介護・雇用など、国民の安心を生み出す分野に重点的に配分しており、審議をすればするほど、政府は追い詰められるばかりとなった。医療費自己負担3割化凍結法案や、日本銀行総裁・副総裁選任に当たっての国会招致、大島農林水産大臣疑惑に関する元秘書などの参考人招致など、いずれも国民の信を受けた民主党の主張を前に、政府・与党は論戦を忌避し、多数の横暴をもって審議を打ち切った。

国民の視点に立った国会論戦
 今国会では国民生活に直結する重要法案が相次いで審議された。その中でも、いわゆる有事関連法制については人権規定の明確化、国民保護法制の1年以内整備、国会による民主的統制などの抜本的修正を勝ち取った。また、解雇権の濫用を招きかねなかった労働基準法改正においても、使用者側の責任を明記するなどの抜本的修正で、改悪を阻止することができた。さらに、個人情報保護法案については自己情報のコントロール権などを明記した対案を示し、生命保険会社が勝手に予定利率を引き下げることを可能とする保険業法改悪や、国立大学への文部科学省の関与・統制を一層強める法案、非戦闘地域の特定もできずニーズも明確でないままにイラクに自衛隊を派遣しようとする法案などには、国民の視点に立って反対の論陣を展開した。

変わらぬ自民党の腐敗体質
 国会審議を通じて、大島農林水産大臣の数々の疑惑、小泉首相のファミリー企業が公共事業受注でリベートを受け取っていた疑惑、自民党長崎県連の違法献金事件、保守新党の松浪健四郎衆院議員の暴力団関係企業秘書給与肩代わり事件など、数々の疑惑・事件があぶり出されていくなか、3月4日に元労働政務次官の自民党の坂井隆憲衆院議員がヤミ献金事件で逮捕された。2001年にKSD事件の村上正邦参院議員、2002年に鈴木宗男衆院議員、と毎年続く汚職事件による自民党議員の逮捕で頂点に達した国民の怒りを背景に、民主党によるさらなる追及の結果、大島農林水産大臣は2003年3月31日、辞任に追い込まれた。
 しかし、同時に任命責任を厳しく問われた小泉首相は、「他人事」の姿勢を貫き、国民の批判に応えようとしなかった。そればかりか、このような不祥事の連続にもかかわらず、小泉首相は自ら明言した公共事業受注企業の献金禁止を棚上げにし、逆に、政治資金の公開基準を引き上げて政治資金の透明性を低下させようとする自民党の目論見に組する発言を重ね、もはや政治改革の分野においても小泉首相が「抵抗勢力」と成り果てている姿をさらけ出した。

お粗末内閣による相次ぐ「暴言」
 予算委員会や党首討論などの質疑の中で、小泉首相は自らの公約違反について「この程度の約束は守られなくても大したことはない」と言い放ち、小泉政権には国民不在であることを自ら認めた。また、イラク特措法案審議においては「どこに非戦闘地域があるかなんてわかるわけはない」と断じるとともに、米国のイラク攻撃を支持する根拠であったはずの大量破壊兵器の存在に関しては支離滅裂の詭弁を弄し続け、そのあまりのお粗末さに政府・与党内からも失笑を買う始末であった。
 また、竹中金融・経済財政担当大臣の「ETFは絶対もうかる」発言、森山法務大臣の名古屋刑務所受刑者死亡事件をめぐる国会答弁の変節、イラク特措法案に関する福田官房長官・川口外務大臣・石破防衛庁長官の杜撰な答弁、男女共同参画担当大臣でもある福田官房長官のレイプ擁護発言、鴻池防災担当大臣の「犯罪者の親は市中引き回しのうえ打ち首」発言など、枚挙にいとまがないほどお粗末発言、暴言が相次いだ。
 これらの事態を受けて国会最終盤には、福田官房長官、竹中金融・経済財政担当大臣、川口外務大臣、石破防衛庁長官に対する問責決議案を提出するとともに、小泉内閣不信任決議案を提出した。

政権公約=マニフェストつくりへ

 『次の内閣』では、これらの国会論戦への対応と同時に、政権担当期間中に必ず実施する政権公約である「マニフェスト」づくりに着手した。結党以来積み重ねてきた議員立法は既に百数十本に達しているが、これらの実績のうえに、インターネット政策公募をはじめとした市民との共同作業、党の地方組織・議員からの提案、各界・有識者からの提言を折り重ね、政官業癒着の既得権益構造を打ち破る政策と、その実行能力を国民の前に示すための取り組みを続けている。




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