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国会レポート2005

第2章 『次の内閣』の活動

2.憲法調査会

民主党「憲法提言」

photo  民主党は1998年に憲法調査会を設置し、過去4回、報告書を発表してきた。2004年6月には、「創憲に向けて、中間提言」を取りまとめ公表。その後の議論も踏まえ、2005年10月、「民主党『憲法提言』」を調査会総会で提案し了承された。その内容の概略は以下の通り。

(1)総論

 民主党は「日本国憲法の根本規範に基づいて築き上げてきたものを堅持、さらに強化・発展させるための憲法論議」という土台を明確にし、未来志向の新しい憲法を構想する。

 そもそも憲法とは、主権者である国民が国家機構等に公権力を委ねる一方、その限界を設け、これを自らの監視下に置いてコントロールするための基本ルールである。しかし、過去わが国では、時々の政権の恣意的解釈によって憲法の運用が左右され、同一の内閣においてすら憲法解釈が平然と変更されてきた。いま最も必要なことは、この傾向に歯止めをかけ、憲法を鍛え直して「法の支配」を取り戻すことである。

(2)統治機構

 (1)首相主導の政府運営を実現する、(2)国会に議会オンブズマンや行政監視院などを設置し、議会 (国会)の権限を強化するとともに行政監視機能を充実する、(3)新たな憲法裁判所の設置の検討も含め、司法権の強化と違憲審査機能を拡充する、(4)公会計や財政に関する諸規定を整備する――等。

(3)人権保障

 「人間の尊厳」の尊重と「共同の責務」の実現を基本とした人権保障体制の確立をめざす。(1)ドメスティック・バイオレンス等に見られる「人間の尊厳」を破壊する一切の暴力からの保護、犯罪被害者の人権の擁護、子どもの権利の保障、政教分離の原則を厳格に維持する、(2)環境保全のような社会的広がりを持つ課題の解決について、国・地方公共団体、企業その他の中間団体、家族・コミュニティーや個人の協力がなければ達成し得ないという基本認識の下、「共同の責務」を果たす社会をめざす、(3)情報社会の到来と価値意識の変化に対応した「知る権利」「対話の権利」「学習権」などを確立する、(4)日本国民として主体的に国際人権保障の責務を果たしていく――等。

(4)地方分権

 「補完性の原理」に基づく分権国家への転換をめざす、(1)基礎自治体優先の考えをベースに、基礎自治体では完結できないものについて広域自治体がこれを補完する、(2)国・地方の間の権限配分を明確にする、(3)地方政府の多様性を承認する、(4)財政自治権・課税自主権を確立する――等。

(5)安全保障

 いわゆる憲法9条問題については、次の「四原則・二条件」を提示する。わが国の安全保障活動に関する四原則とは、(1)戦後日本が培ってきた平和主義の考えに徹する、(2)国連憲章上の「制約された自衛権」を明確にする、(3)国連の集団安全保障活動を明確に位置づける、(4)「民主的統制」 (シビリアン・コントロール)の考えを明確にすることを基本とする。また、安全保障に係る原則を生かすための二つの条件は、(1)武力の行使については最大限抑制的である、(2)憲法附属法として「安全保障基本法(仮称)」を定める。

 民主党は、この「憲法提言」を素材に、主権者であり憲法制定権者である国民の間で、憲法に関する論議が今後活発に行われるよう、引き続き真摯に努力をしていく。

憲法改正等のための国民投票法制度

 憲法改正のための国民投票法制度についても民主党としての論点整理を 2005年4月に公表し、同年10月、大綱草案が調査会で大筋了承された。その概略は、(1)国民投票制度がカバーする範囲については、憲法改正に限らず、皇室制度など国民の重大な関心事、政策テーマについても含める、(2)憲法改正の限界については、平和主義、国民主権、憲法改正規定など、根本規範として中核をなす部分については、改正できないものとする、(3)発案権の所在については、国会による発案(96条1項)のほか、「国民による発案」も一定の条件下で認めるべきである。内閣の発案権は認めない――など等である。これらの論点につき、今後議論をさらに深め、民主党としての見解を明らかにしていく。

衆参憲法調査会報告書

 一方、国会では2000年1月衆議院・参議院にそれぞれ憲法調査会が設置された。5年に及ぶ調査、議論を経て、2005年4月に衆参それぞれの調査会として報告書が取りまとめられた。

 本報告書は、今後の本格的な憲法議論のための素材となるものである。民主党は、憲法全体にわたる論点を明確にし、報告書としてまとめたことは、大きな意義を有すると考える。

 2005年9月、衆議院ではこれまでの調査会を「日本国憲法に関する調査特別委員会」(憲法改正国民投票制度に係る議案の審査等及び日本国憲法の広範かつ総合的な調査を行う)に改組し、参議院では引き続き「憲法調査会」で憲法について広範かつ総合的な調査を行うこととなった。