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国会レポート2005

第2章 『次の内閣』の活動

10.農林水産

農林漁業再生プランのバージョンアップ

 民主党が2004年に策定した「農林漁業再生プラン」は、農林漁業関係者のみならず大きな反響を呼んだが、現場の声をより一層反映させるため、162回通常国会では「農業再生プランバージョンアップワーキングチーム」を設置し、新たな「農業再生プラン」を策定した。策定にあたっては、党農林漁業再生運動本部とともに、19回にわたって現地視察を重ね(長崎・茨城・山口・横浜・北海道・兵庫・沖縄・愛媛・鳥取・愛知・高知・香川・青森・岩手・鹿児島・福井・熊本・宮城等)、現場の声を新たな政策に反映させた。

 新プランの主な柱は、販売農家に対する 1兆円の直接支払いについて、(1)国が米・麦・大豆・雑穀・菜種・飼料作物など自給率強化に資する6品目に対して5千億円を直接支払いする、(2)地方分権の観点から、野菜・果物・果樹などの地域特産品や地方が独自に行う農業支援策などについて、地方が独自に5千億円を直接支払いするというもの。このほか(3)農山漁村活性化のための施策の充実、(4)主要な食品輸出国に輸入国の立場から調査を行う国際食品調査官(仮称)を配置する等、食の安全対策の強化を盛り込んでいる。

 また、「森林・林業再生プラン」「漁業再生プラン」についても再検討を行い、骨子案を策定した。

米国産牛肉輸入再開への対応

photo 米国におけるBSE(牛海綿状脳症)の発生に伴う米国産牛肉の輸入禁止は、日本経済に大きな影響を及ぼし、国民生活に大きな不安を与えた。民主党は、 162回通常国会において野党3党で再提出した「牛海綿状脳症対策特別措置法案」及び「輸入牛肉に係る情報の管理及び伝達に関する特別措置法案」(BSE対策特別措置法案)の審議を求め、輸入牛肉についても国産牛肉と同様にトレーサビリティー(情報伝達)を義務付け、食の安全を確保すべきと強く主張した。しかし、政府・与党は自らの政策の矛盾点を認めつつ、野党案の審議入りに抵抗し、廃案となった。163回特別国会においても、民主党は3野党共同で法案を再提出したが、継続審議となった。

 米国産輸入牛肉のリスク評価について、厚生労働省及び農林水産省は 2005年5月、食品安全委員会に対して諮問を行ったが、10月31日に出された審議結果は 「農林水産省・厚生労働省から提示された輸出プログラム(特定危険部位の除去や20カ月齢以下の牛)が遵守されるもの」という仮定を踏まえれば、「リスクの差は非常に少ない」という内容だった。これは事実上、米国等の管理・検査体制に問題があれば、輸入は危険であると言っているに等しい。

 民主党は 2004年及び2005年、米国とカナダに2回にわたってBSE調査団を派遣し、その報告書において、米国の現行の管理・検査体制の下では、輸入解禁は拙速であると指摘した。食品安全委員会の審議結果は、民主党の報告書内容と合致するものである。民主党は今後も国民の食の安全を守るため、輸入牛肉についても日本と同様のトレーサビリティーを求め、現段階での米国産輸入牛肉解禁に反対をしていく。

JAS法等改正案への対応

photo BSE問題に限らず、食の安全の問題は国民の最大の関心事の一つである。 162回通常国会では、政府から「JAS法等の一部を改正する法律案」が提出され、流通JAS規格の新設や、JAS規格の格付けなどが議論となったが、民主党は加工食品の原産地表示の問題等について、早急に見直すべきとの観点から、 「JAS法等の一部を改正する法律案」を別途提出した。

 現在、 加工食品については、「名称、原材料名、内容量、賞味期限、保存方法、製造業者名」の6つの表示が義務付けられており、さらにこのうち昆布、干物、こんにゃくなど20食品群について、「原産地表示」(国内産においては産地名、外国産においては国名)が義務付けられている。民主党はこの原産地表示を、原則すべての加工食品に義務付け、技術的に表示が不可能なものや困難なもの等について例外規定を設けるべきと主張した。

 民主党案は否決されたが、政府案は民主案と改正部分が異なり、また、民主党の従来の主張と相違がないため、政府案には賛成した。

経営所得安定対策に向けて

  162回通常国会に政府が提出した「国の補助金等の整理及び合理化等に伴う農業近代化資金助成法等の一部を改正する等の法律案」については、三位一体改革関連法案ではあるものの、民主党が主張する補助金削減案に沿うことから、賛成した。

 また、政府が提出した「農業経営基盤強化促進法等の一部を改正する法律案」については、民主党の主張する抜本的な農地制度の改正にはなっていないことから、反対した。

 さらに、政府が163回特別国会において策定した「 経営所得安定対策大綱」は、日本農業の多くを占める小規模農家や兼業農家などを農業の担い手として認めず、結局は切り捨てていく政策であるなど問題点が多いことから、民主党は2006年の通常国会に向けて対案を策定していく。