政府原案は財政の辻褄合わせ
介護保険法施行5年後の見直しにあたっての焦点は、現行40歳以上の被保険者・受給者範囲を拡大することにあった。しかし、162回通常国会に政府が提出した「介護保険法等の一部を改正する法律案」は、対象年齢拡大が先送りされ、介護保険財政の辻褄合わせに終始する内容だった。また、「介護予防」と称して高齢者に「筋力向上トレーニング」を強制する一方、家事援助サービスが大幅にカットされる恐れがあった。法案の条文も抽象的で、実質的な内容は160項目にわたる政省令に委ねられており、国会審議を軽視する内容だった。
介護保険のエイジフリー化に道筋
数多くの問題を含む政府案だったことから、民主党は、介護保険財政の健全性を維持し、要介護者等に対するサービス水準を維持するため、与党と修正協議を行った。その結果、(1)市町村が行う地域支援事業に権利擁護事業を必須化する、(2)予防給付・地域支援事業を 3年後に見直す等で合意した。また、衆議院で4項目、参議院で24項目の附帯決議を付し、とくに民主党が強く求めた介護保険の「エイジフリー化」については、「平成18年度末までに結論が得られるよう新たな検討の場を設ける」こととした。さらに厚生労働大臣から、(1)家事援助の一律カットは行わない、(2)筋トレは強制しない、(3)新たな自己負担が過剰にならないよう負担軽減措置を講ずる等の答弁を引き出し、適切なサービス実施や要介護者の負担軽減を明らかにしたうえで、法案に賛成した。 |
2004年10月、突如政府が新たな障害者施策として「改革のグランドデザイン案」を発表し、当事者を含めた十分な議論のないまま、162回通常国会に「障害者自立支援法案」を提出した。同法案は(1)障害者の基本的な生活を維持するためのサービスを障害者の「益」と捉え、(2)サービス受給に一律1割負担を求める等、大きな問題を含んでいた。
与党から異例の「修正協議要求」
民主党は当事者との意見交換を重ねた結果、障害福祉制度の一元化、在宅支援制度における国の支出の義務化等については評価しつつも、政府案のままでは、障害者の生活が成り立たないと判断した。そこで(1)定率負担の凍結・所得保障の導入、(2)移動の保障、(3)自立支援医療の凍結、(4)重度障害者の長時間介護サービスの保障等 9項目の修正を与党に要求したが、実質的にゼロ回答だった。それにもかかわらず与党は「修正協議を継続するべきである」との異例の声明を発表し、自ら「修正」を求めざるを得ない欠陥法案であることを明らかにした。民主党は与党に強く抗議し、政府案に反対した。
障害者自立支援・社会参加促進法案を提出
政府案は解散により廃案となったが、政府は法の欠陥を正すことなく 163回特別国会に再提出した。民主党は、現行の支援費制度の継続を前提に、(1)裁量的経費の義務化、(2)精神障害者への支援費制度導入、(3)障害者の社会参加促進等を内容とする対案を提出したが、否決され、政府案が成立した。 |