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国会レポート2006

第二章 『次の内閣』の活動

3 憲法調査会
焦点課題・焦点法案


憲法改正国民投票法案
中立的な手続法めざす

 民主党は164回通常国会終盤の5月26日、「日本国憲法の改正及び国政における重要な問題に係る案件の発議手続き及び国民投票に関する法律案」を衆議院に提出した。与党も「日本国憲法の改正手続に関する法律案」を同日提出した。

 両案に共通する国民投票制度の概要は以下の通り。(1)国会が憲法改正を発議した日から起算して60日以後180日以内で国会の議決した期日に行う、(2)国民投票の執行に関する事務は中央選挙管理会が管理する、(3)国民投票広報協議会を設置し、国民投票公報の原稿の作成など改正案の広報に関する事務を客観的かつ中立的に行う、(4)国民投票無効の訴訟、再投票及び更正決定について規定する、(5)憲法改正原案の提出は、衆議院100人以上、参議院50人以上の議員の賛成を要する、(6)発議は内容において関連する事項ごとに区分して行う、(7)日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制について広範かつ総合的に調査を行い、憲法改正原案、日本国憲法の改正手続に係る法律案等を審査するため、各議院に憲法審査会を設ける、(8)この法律は、公布の日から起算して2年を経過した日(国会法改正に係る部分は公布の日以後初めて召集される国会の召集の日)から施行する。

民主党案は国民投票運動を幅広く保障

 一方、与党案に対する民主党案の特色は以下の通りである。(1)憲法改正国民投票だけでなく国政の重要問題に関する国民投票制度も一体として導入するとしていること、(2)原則として18歳以上の日本国民が投票権を有するとしていること。また、公職選挙法の選挙権年齢や民法の成年年齢なども18歳に引き下げることを基本に、本法律の施行の日までに関係法令の規定の見直しを行うとしていること、(3)賛成する者は投票用紙に○印を付け、投票総数の過半数の賛成があった場合に国民の承認があったものとするとしていること(所定の投票用紙を用いない投票以外は、他事記載などもすべて反対票とみなす)、(4)国民投票運動をすることのできない特定公務員を選管職員などに限り、裁判官や警察官も運動を行えるとしたほか、公務員・教育者等の地位利用による運動についても特別な禁止規定を設けないとしていること、(5)政治的表現と国民投票運動の厳密な区別が困難であることから、国民の自由闊達な議論や表現を保障するため、国民投票運動に関する規制は最小限とし、買収罪の規定もおいていないこと。

 両法案ともに6月1日に衆議院本会議で趣旨説明と全会派による質疑を行い、継続審議となった。

活動の経過

 民主党は1998年に憲法調査会を設置し、過去4回の報告書を発表してきた。2004年6月には「創憲に向けて、中間提言」を取りまとめ、2005年10月には「民主党『憲法提言』」を公表した。これらは主権者であり憲法制定権者である国民の間で憲法に関する論議が今後活発に行なわれるために、議論のたたき台となるよう提案したものである。

全国で憲法対話集会を開催

徳島市内にて、憲法対話四国集会を開催 民主党は、この「憲法提言」を踏まえて2006年中に全国11ブロックで憲法対話集会を行うことを決め、第1回目の四国集会を4月22日に徳島市で開催した。基調報告で、憲法9条の改正をめぐる議論について、国民の多くが自衛隊の存在や万が一の場合の自衛権の行使を容認している現状を踏まえたうえで、「自衛」や「国際協力」と名がつけばいかなる軍事力の行使も認める自民党改憲案を厳しく批判し、内閣法制局の解釈だけに頼らず、憲法に自衛隊の活動の明確な歯止めを盛り込む必要性を提起した。

 会場の参加者からは、現行の憲法9条を維持すべきだとの意見が表明されたほか、象徴天皇制の今後のあり方や首相の靖国神社参拝についての民主党の考えを問う質問が出された。

 続いて5月14日、北関東集会を宇都宮市で開催した。「はたして憲法改正という問題を国民の判断に委ねて大丈夫か」という参加者の質問に民主党側は、「国民に対する悲観的な発想がこれまでの霞が関の官僚主導の政治を許してきた。だからこそ、それを乗り越え、国民の意思決定力を鍛え、しなやかに、強くしていくことに真剣に取り組まなければならない」と、国民による直接的な意思表示の重要性を強調した。

札幌市内にて、憲法対話北海道集会を開催 6月3日には北海道集会を札幌市で開いた。基調報告の後、参加者からは「現状を変えることで、現行憲法の理念に近づけていくべきだ」「憲法が風化したのではなく、9条を作った国民の心が風化した」「憲法を変える必要はない」という意見が次々に出された。これに対し民主党側は、「現状を変えるよう言い続けても変わらなかったのがこの50年」であり、「自衛隊は憲法上の存在なのか、そうであれば憲法上どのように位置づけるべきなのか」などと問いかけた。

 今後、残る地方でも集会を開催する。

憲法改正国民投票法制をめぐる論点整理

 衆議院では、2005年9月に憲法調査会を「日本国憲法に関する調査特別委員会」へと改組した。164回通常国会では憲法改正国民投票法制をめぐる審議を13回にわたり開催、全党が国民投票法制についての意見表明を行うとともに2回の自由討議、放送・出版・広告業界の参考人から意見を聴取した。これと並行し、理事懇談会の場で国民投票法制に関する論点整理の議論が続いた。参議院の憲法調査会では、164回通常国会中3回会議が開催され、「憲法改正等国民投票制度の主要論点」について各会派の意見陳述、意見交換などを行った。

 民主党は、2005年10月末にまとめた国民投票法制大綱をもとにこれらの議論に臨んだ。

 衆議院の特別委員会理事懇談会での論点整理をめぐる議論がほぼ一巡し、最終的に、一般的国民投票制度を同時に整備することの是非、投票年齢を18歳に引き下げることの是非、公務員・教育者の地位利用国民投票運動規制や買収罪規定を設けることの是非等について民主党と与党の見解の相違は埋まらず、また共産党や社民党は「改憲につながる」として国民投票法制の整備そのものに反対を主張し続けた。民主党は、国民投票法を改憲や護憲という立場を超えた公正・中立なルールを定める手続法として制定するためには、さらに議論を積み重ねて全会一致で制定できるよう努力すべきだと主張し続けてきたが、通常国会会期末をにらみ与党が単独での法案提出に動いたため、民主党も独自案を提出することとなった。

国民投票法案2案の審議入り

衆議院本会議にて、民主と国民投票法案を審議 5月末に提出された民主党案、与党案の両案について6月1日、衆院本会議で審議がスタートした。

 民主党案提案者は、一般的国民投票手続について、「国民が直接意見表明するためのもので、間接民主制を補完する諮問的なもの」「憲法で国会が国権の最高機関であり間接民主制を採用していることを尊重しつつも、国会が自らの意思で重要な国政問題について国民の意思を問うことは、憲法の趣旨にかなうもの」とその意義と位置づけを説明。

 「国民投票法案の制定を改憲と表裏一体で位置づけているのか」との問いには、「この法案は憲法改正の肯定も否定も含めて国民の自由な議論を保障し、国民の意思表明に道を開くためのもので、改憲に直結するものではない」「民主党は改憲を決めているわけではない」と民主党の立場を明確にした。

 与党案が国民投票の年齢要件を20歳以上としているのに対し、民主党案が18歳以上としている理由についての問いには、「民主党は選挙権も18歳にまで引き下げることを主張しており、若い世代の声を政治に反映させるため」と答弁した。

 憲法改正の成立に必要な国民投票の過半数を計算する際の分母をどのようにとるかについて、与党案が○×以外の記載をしたものは無効投票として分母に算入しないとしているのに対し、民主党案が○印以外の記載をしたものなども有効投票として分母に算入する理由については、複数の候補者から選択する選挙における無効投票の考え方との違いを指摘した。

 他の野党からは、最低投票率制度を設けるべきとの質問もあったが、憲法に定められていない要件を加重することの問題や「棄権運動」を誘発する懸念を指摘し、この考えを斥けた。

 国民投票に関する運動の規制のあり方については、特に裁判官・検察官等特定の公務員の国民投票運動禁止、公務員や教育者の地位利用国民運動規制、買収罪の規定を設けるかどうかについて、与野党で鋭く見解が分かれた。民主党提案者は、自由闊達な憲法論議を保障するため国民投票運動への規制を最小限にすべきであり、地位利用運動規制や買収罪は正当な運動と違法な運動の切り分けがきわめて困難であること、また規制しなくとも特段の弊害は生じないとの考えを明らかにした。