第二章 『次の内閣』の活動総務 |
公務員制度改革案
国のあり方を見直す |
ネット選挙運動解禁法案
4度目の法案提出 |
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地方分権と国家公務員総人件費削減2006年3月、公務員制度改革等調査会は「国の事業の見直しと公務員制度改革に関する基本的な考え方」を取りまとめた。 本報告の特徴の第一は、国の役割を大幅に限定して事務事業の多くを地方へ移譲することにより改革を進めるという基本的考え方にある。その結果、国家公務員の定数も大幅に減少することになり、国家公務員総人件費を3年間で2割以上削減することが可能であるとした。 労働基本権の回復と天下り規制の見直し第二に、国際労働機関(ILO)勧告を厳粛に受け止め、公務員の労働基本権を回復して民間と同様に労働条件を交渉で決められるようにすることを盛り込んだ。ILOは、1965年以降、公務員の労働基本権を制約する日本の法令及び慣行がILO条約の規定に違反しているとの厳しい勧告を出している。 第三に、政官業の癒着を招き、税金の無駄遣いをもたらしている天下りの是正策を打ち出している。具体的には、実効性に乏しい現行の天下り規制を大幅に強化し、早期退職慣行を見直すことを求めている。 |
誰もがあらゆるツールで今日、選挙期間中にインターネットを使って選挙運動を行うことは公職選挙法上認められていない。インターネット選挙活動調査会は2006年5月に中間報告を取りまとめ、6月に「公職選挙法等の一部を改正する法律案」(インターネット選挙運動解禁法案)を提出した。 民主党案は、政党や候補者に加え、第三者もホームページ・ブログ・メール等あらゆるインターネットの形態を使って選挙運動をすることができるようにするものであり、4度目の法案提出となる。これに対して自民党は2005年の総選挙後にようやくネット利用解禁に向けた検討を始めたものの、164回通常国会時点で法案提出にすら至らなかった。 誹謗・中傷やなりすましへの対策を充実今回の法案では、従来と比べて不正行為への対応策をより詳細に盛り込んでいる。具体的には、(1)誹謗・中傷を抑制するためにホームページやメール等を使って選挙運動をする者に対して氏名・メールアドレスの表示を義務付ける、(2)なりすましに対する罰則を設ける、こと等である。本法案は継続審議となり次期国会での成立を期すことになった。 |
総務部門では分権調査会、公務員制度改革等調査会、インターネット選挙活動調査会と連携して、民主党としての考え方や法案の取りまとめを行った。
2006年3月、分権調査会は従来からある分権政策の基本的考え方を深化させ、「民主党分権革命ビジョン」と題する中間報告を取りまとめた。本中間報告は、補完性の原理(=基礎自治体にできる事務事業は基礎自治体が担い、基礎自治体にできない事務事業や、基礎自治体が行うには非効率な事務事業は広域自治体が、広域自治体にできない事務事業や、広域自治体が行うには非効率な事務事業は国が行う、という考え方)に基づき、基礎自治体・広域自治体・国それぞれの役割やあり方を提示した。
基礎自治体は、個人の生活や家族・家庭生活を補完するサービス(子育て、基礎教育、障がい者福祉、高齢者介護等)を担う。合併を望まない小規模な市町村については広域連合を活用して基盤を強化する一方、合併によって大きくなった自治体や政令指定都市については住民ニーズを公共サービス等に的確に反映させるため、合併前の市町村や政令指定都市の区などを単位に自治区を設けられるようにする。
広域自治体は、地域の活力を引き出して地域コミュニティーを補完するサービス(産業振興、高等教育、広域的インフラ、警察、都市計画等)を担う。道路・河川など特に広域で扱った方が合理的な事務については、府県の自主的な判断に基づき、府県合併や府県連合(=府県の枠組みを残す)によって州を設置する。
国は、国際関係にかかわる仕事、立法、司法、国民の生存に関わる最低水準を確保する仕事、市場を監視し制御する仕事、所得の確保と再配分のための現金給付サービス等にその役割を限定する。
以上の内容のうち基本的なものは、民主党提出の「行政改革推進法案」に盛り込まれた。
164回通常国会では、政府提出の「独立行政法人情報通信研究機構法の一部を改正する法律案」「独立行政法人消防研究所の解散に関する法律案」の審議が行われた。前者は情報通信研究機構の役職員の身分を非公務員化するものであり、後者は消防研究所を解散し消防庁に統合するものである。法案の審議にあたり、総務部門では両独立行政法人の現地視察を実施するなど慎重に検討を進めた。
その結果、「独立行政法人消防研究所の解散に関する法律案」については、国民の生命・財産に関わる消防・災害救助活動を充実強化させるためには国の関与が不可欠であることから賛成した。一方で「独立行政法人情報通信研究機構法の一部を改正する法律案」については、研究成果の検証や情報公開が不十分で無駄な事業が継続的に行われている懸念があることや、非公務員化することで現行の天下り規制の枠から外れ民間企業との癒着の温床となる可能性が高まることから反対した。なお、両法案ともに成立した。
通信技術の著しい発達等により通信・放送分野を取り巻く環境が劇的に変化する中、誰もが安心できる豊かな情報社会を構築することが喫緊の課題となっている。
総務部門では通信と放送の融合勉強会を設置し、通信・放送関連事業者や有識者等からのヒアリングを行い、「通信と放送の融合を展望した将来ビジョン」と題する中間報告を取りまとめた。
本中間報告は、(1)誰もが情報社会を安心して享受できるためのインフラ整備推進、(2)多様性のある情報文化創造のための環境整備、(3)偏りのない中立的で信頼性の高い情報発信源の確保、(4)世界に向けた情報発信力と国際競争力の強化、という4つの基本方針を利用者の視点から打ち出している。
これまで住民基本台帳(住所・氏名・生年月日・性別の4情報が記載されたもの)は公開が原則とされ、基本的に誰でも市区町村の窓口で閲覧することができた。民主党は2005年3月に住民基本台帳の閲覧制度を悪用した犯罪が明るみになったことを契機に、同年6月、政府・与党に先がけて住民基本台帳の閲覧者を国・地方公共団体・公益上特に必要と認められる者に制限する「住基台帳・大量閲覧制限法案」を提出した。しかし与党は国民の安心と安全を守る民主党案を無視し、審議しなかった。
事件発覚から1年も経った2006年3月、政府は民主党案に類似した「住民基本台帳法の一部を改正する法律案」を提出した。民主党案が公益上特に必要と認められる者の範囲や4情報のうち公開できる情報の種類について地方公共団体が条例で定めるというスキームを採用していたのに対し、政府案は国が一律に基準を定めるというものであった。
しかし、本法案によっても閲覧した情報の商業目的の利用や犯罪への悪用等を防ぐ効果を期待できると判断、民主党も政府案に賛成した。本法案は成立し、民主党の主張してきた住民基本台帳の閲覧制限が実現することになった。
最高裁判所は2001年の参議院選挙における選挙区間の議員1人当たりの選挙人数の最大較差が5.06倍であったことに対して合憲と判断したが、漫然と現状が維持されたままであれば違憲の余地がある、との補足意見を付した。
この最高裁判決を踏まえ、民主党及び与党がそれぞれ参議院の定数を是正する「公職選挙法の一部を改正する法律案」を164回通常国会に提出した。与党案は栃木県と群馬県の定数を減らすとともに東京都と千葉県の定数を増やし、較差を4.84倍(平成17年国勢調査の速報値に基づく)にするだけの小手先の修正であった。一方で、民主党案は議員1人当たり人口の最も少ない選挙区を隣接する選挙区と合区するもので、較差を3.80倍(平成17年国勢調査の速報値に基づく)に縮める、より踏み込んだ改革案である。参議院において両案が審議され、与党案が成立した。
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