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国会レポート2006

第二章 『次の内閣』の活動

7 法務
焦点課題・焦点法案


共謀罪・サイバー法案
話し合っただけで犯罪に

 政府は「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」を163回特別国会に再提出した。この法案で新設しようとする「共謀罪」は、国連国際組織犯罪防止条約の締結のための国内法整備として、長期4年以上の懲役・禁錮刑が定められている犯罪を対象に、団体の活動として実行を合意することを犯罪とするもの。犯罪の実行への着手がなくても話し合いだけで既遂の犯罪となること、対象となる犯罪には組織的な凶悪犯とは言えない文書偽造や公職選挙法違反など619もの犯罪が含まれること、労働組合や市民団体などにも適用のおそれがあるなど重大な問題を含んでおり、民主党は慎重な審議と抜本的な修正を求めた。与党は2006年4月末、5月中旬と2度にわたり質疑打ち切りと採決強行を目論んだが、河野洋平衆議院議長から採決の見送りを求める裁定も出され、結局163回特別国会での審議入りから164回通常国会に至るまで計14回35時間20分に及ぶ審議を経ながら継続審議となった。

修正めぐる混乱踏まえ、法案撤回を主張

 与党は4月下旬の審議再開時、「団体」を「その共同の目的が重大犯罪を実行することにある団体」に限定、対象犯罪の「実行に資する行為」が行われた場合に限り処罰することとするなどの修正案を提出。しかし、対象犯罪の広さなどの問題点を解決するものでないため、民主党は独自の修正案を提出した。

 民主党修正案は、(1)対象犯罪を死刑・無期または長期5年を超える懲役・禁錮の刑が定められている罪(合計306)であり、かつ条約で言う性質上国際的な犯罪に限定、(2)対象犯罪が組織的な犯罪集団の活動として行われる場合に限定、(3)対象犯罪の予備をした場合に限り処罰されることとする、(4)憲法の保障する国民の自由・権利や労働組合その他の団体の正当な活動が制限されないよう明文で規定、など原案の全面的修正を求めるもの。

 これに対し与党は5月中旬、「団体」を組織的犯罪集団に限定するなどとした第二次修正案を提出した。さらに議長裁定を受けて開始された実務者協議を経て6月はじめ、民主党案の全面受け入れ表明に至ったが、「次期国会で再改正すればいい」「民主党案のままでは条約の批准はできない」等の自民党幹部や外務大臣の発言が報じられるなど政府・与党内での不一致が明らかとなった。こうした混乱も踏まえ、民主党は会期末、法案の政府自身による撤回または廃案を主張したが、与党の賛成多数により継続審議が決まった。

活動の経過

衆議院法務委員会にて、共謀罪法案審議再開強行に抗議する民主党委員 法務部門では、共謀罪・サイバー法案(詳細→)のほか、重要法案として位置づけた入管法改正案、未決拘禁法案、犯罪被害者給付金2法案など多数の法案に取り組み、2法案に修正案を提出して反対、7法案に附帯決議を付して賛成、また取調べ可視化法案など3法案を提出した。内閣提出法案のうち共謀罪・サイバー法案など4法案は継続審査となった。

指紋強制採取盛る入管法改正案に反対

 政府は、(1)「テロ未然防止」のための規定の整備として、外国人の上陸審査時に指紋等の個人識別情報の提供を義務付けるとともに、法務大臣が関係省庁と協議してテロリストと認定する者等を退去強制の対象にする、(2)「出入国管理の一層の円滑化」のための規定の整備として、指紋等の個人識別情報を利用した自動化ゲートを導入する、等の内容の「出入国管理及び難民認定法の一部を改正する法律案」(入管法改正案)を164回通常国会に提出した。

 民主党は、テロ対策の必要性は認めるものの、指紋の強制採取は人権上問題が多いこと、入国審査時や自動化ゲートで採取した指紋が容易に犯罪捜査等に流用されかねないことなどから、生体認識情報のうち指紋採取については凍結すること、取得した個人識別情報は出国後ただちに削除すること、取得した個人識別情報の利用範囲を出入国管理業務に制限すること等を内容とする修正案を衆参両院法務委員会で提出し政府原案には反対したが、法案は成立した。

代用監獄恒久化もたらす未決拘禁法案に反対

茨城県内の少年院を視察 1908年に制定された監獄法では被収容者の権利義務関係等が法律上明確にされていないなどの問題があったことから、政府は同法のうち、まず刑事施設の基本的事項と受刑者の処遇について2005年の162回通常国会で法整備を行い、次いで164回通常国会で未決拘禁者の処遇、留置施設に関する事項について法整備する目的で「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律の一部を改正する法律案」(未決拘禁法案)を提出した。

 民主党は、同法案が未決拘禁者を留置施設に収容するいわゆる代用監獄を事実上恒久化するものであり、これまでも自白強要など違法な取調べの温床となってきたこと等の重大な問題を含むものであるとの観点から、留置施設における未決拘禁者の収容を漸減すること、留置施設における留置業務と犯罪捜査の分離を徹底すること、未決拘禁者の処遇の原則は無罪の推定を受ける未決の者としての地位にふさわしい処遇であること等を内容とする修正案を衆参両院法務委員会で提出し政府原案には反対したが、法案は成立した。

犯罪被害回復給付金法制定を主導

 資金洗浄のためスイスの銀行口座に蓄えられていた指定暴力団山口組五菱会のヤミ金融による犯罪収益約51億円をスイスの州当局が没収し、その一部を日本側に返還すると申し出たことを受け、民主党は2005年6月、被害者に対し民事訴訟によらずに当該財産を分配することにより犯罪被害の回復を図るための法整備を提唱した。政府も同様の観点から立法化を検討し、「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律の一部を改正する法律案」「犯罪被害財産等による被害回復給付金の支給に関する法律案」(犯罪被害回復給付金2法案)を164回通常国会で参議院に提出した。

 民主党は政府原案に基本的に賛意を表しつつ、より被害者救済に資する制度とする観点から、犯罪被害財産を没収・追徴できる場合を広げること、犯罪被害財産の没収保全を国税の滞納処分に優先させること、支給手続の開始を広報活動等を通じて周知すること等を内容とする修正案を参議院法務委員会で提出した。修正案は否決されたが附帯決議を付して政府原案に賛成し、法案は成立した。

取調べ可視化法案、選択的夫婦別氏法案提出

 民主党は、未決拘禁法案の審議にあわせ、いわゆる代用監獄を存続させる場合には最低限、自白強要などの無理な取調べが行われないよう、取調べの可視化を義務づけるべきとの観点から、164回通常国会で議員立法提案として「刑事訴訟法の一部を改正する法律案」(取調べ可視化法案)を衆議院に提出した。法案では、取調べの際の弁護士立会い権を認めるとともにビデオ等の録画を義務づけ、これらなしに行われた自白の証拠能力を否認するとしている。法案は審議入りせずに継続審議となった。

 民主党はまた、選択的夫婦別氏制度の導入、婚姻適齢を男女とも18歳とすること、再婚禁止期間を100日に短縮すること、非嫡出子の相続分を嫡出子と同一にすることなどを盛り込んだ「民法の一部を改正する法律案」(選択的夫婦別氏等法案=衆法)、同(同=参法)を野党共同でそれぞれ再提出した。いずれも審議入りせず、衆法は継続審議、参法は廃案となった。

予算関連法案などに附帯決議を付け賛成

 政府はこのほか164回通常国会に判事・判事補など裁判所職員の定員を増やす「裁判所職員定員法の一部を改正する法律案」(※予算関連法案)、地方更生保護委員会委員の人数の上限を引き上げる「犯罪者予防更生法の一部を改正する法律案」(同)、窃盗罪・公務執行妨害罪等に罰金刑を新設する「刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案」(参議院先議)、国際私法ルールを定めた「法例」を現代化し諸外国の国際私法と調和させる「法の適用に関する通則法案」(同)を提出した。民主党はいずれも基本的に妥当な改正内容と判断し、附帯決議を付して賛成し、法案は成立した。犯罪者予防更生法改正案の審議に先立ち、関東地方更生保護委員会の視察も行った。

国会内にて、共謀罪反対集会を開催 また、執行猶予で保護観察期間中の者の転居・旅行の許可制、保護観察所への出頭などの特別遵守事項を導入すること等を盛り込んだ「執行猶予者保護観察法の一部を改正する法律案」を衆議院法務委員長提出とすることに賛成し、法案は成立した。

 共謀罪・サイバー法案審議が衆議院法務委員会で1ヶ月半近くにわたり紛糾したあおりを受け、政府提出の「信託法案」「信託法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案」「少年法等の一部を改正する法律案」はいずれも実質審議入りしないまま継続審議となった。