第二章 『次の内閣』の活動外務防衛 |
米軍再編
過重な基地負担の解消にむけて |
北朝鮮人権法の成立
国際連携にもとづき毅然とした対応を |
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日米同盟は、わが国の安全保障の基軸であるが、安定した同盟関係を維持するためには、米軍再編問題についても、国民の支持と基地負担を抱える地元の理解が必須である。シビリアン・コントロールを徹底する見地と納税者の視点から議論を進めた。 日米合意及び閣議決定について国会や自治体・住民の頭越しに政府間合意を優先させた手法は、日米同盟の最大の基盤である国民の信頼を損ねるものであり、政府は、(1)日米地位協定の改定、(2)普天間飛行場閉鎖の早期実現、(3)自治体との協議推進体制の確立、(4)騒音対策、(5)日米同盟の将来ビジョンの策定、等を通じ、国民の懸念に応えるべきである。 また、海兵隊のグァム移転、座間への司令部移転、厚木の艦載機の岩国移転等の動向は、既存のSACO関連経費や思いやり予算との整理が必要であり、政府は、経費負担の全体像を明示し、新たな法的枠組を構築すべきである。 今後、新たな負担を負う自治体や住民への手厚い支援や地方の特色をいかした産業振興等が重要であり、地元の住民・自治体の意思を十分に尊重して、過重な基地負担を実質的に軽減していくことが重要である。 |
民主党は、与党に先駆け「北朝鮮に係る人権侵害の救済に関する法律案」を提出し、成立を訴えてきたが、与党も同趣旨の法案を提出したため、与野党で修正協議を開始した。このなかで民主党は、家族会をはじめ拉致問題に取り組む諸団体と協議の上、国際的な連携強化に向けた脱北者への人道的支援等は譲れないと主張し、政府・与党がこれを受け入れたため「拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題への対処に関する法律案」(北朝鮮人権法案)が成立した。 今後の展開この法律は、北朝鮮の人権状況に関する国連総会決議を踏まえ、北朝鮮当局による人権侵害問題への対処が国際社会の課題となっている状況を踏まえたものである。わが国のこうした法的枠組みの構築が、北朝鮮当局による人権侵害問題の実態解明および抑止につながることを期待する。 政府はこの法律の適用も背景に、サミットや各国首脳との会談、六者協議、国連や内外世論への訴えかけ等を通じ、多角的な外交を進めつつ、毅然とした北朝鮮外交を進めるべきである。 民主党は、拉致被害者など関係者の方々との連携強化に加え、議員ネットワークやNGO等との連携など、拉致事件・脱北者問題等の解決に今後も全力で取り組む。 |
外務防衛部門は、歴史認識や領土・資源問題などにより硬直化する日中・日韓関係や、国際社会の警告を無視した北朝鮮の瀬戸際外交により膠着状態に陥った六者協議をはじめ核・ミサイル・拉致問題、イランの核開発問題や中東情勢など、内憂外患を抱えた我が国の外交について積極的に議論を行った。
また、防衛施設庁官製談合などの不祥事、地元自治体や住民の頭越しに決められた在日米軍再編問題(詳細→)、陸上自衛隊のイラク撤退などについて、政府を厳しく追及した。
小泉外交の失敗により、中国や韓国との関係は冷え切っている。中国とは東シナ海ガス田開発、尖閣諸島問題、上海総領事館員の自殺問題、軍事力の透明化、環境問題などが、韓国とは竹島問題、対北朝鮮問題での連携など、多くの懸案が存在するにもかかわらず、両国とは首脳間対話が途絶えた状況にある。
民主党は2005年に前原代表、2006年に小沢代表の訪中で、中国共産党との定期協議「交流協議機構(仮称)」設置に合意した。日中関係の再構築とアジア・太平洋地域の安定的発展に向けて議論を重ね、政府に対しても両国首脳による定期協議を提唱してきた。また韓国へは、鳩山幹事長が訪問し、政府要人や国会議員等との意見交換を通じて、両国首脳の信頼関係構築が諸問題の解決につながることを確認した。両国との関係はきわめて重要であり、特に、エネルギーや環境など共通の利益に基づく協力関係の深化をめざしていく。
北朝鮮の瀬戸際外交に小泉政権は翻弄され、2006年2月の日朝政府間協議は具体的な進展がないまま終了した。7月、北朝鮮が国際社会の警告を無視してミサイルを発射したため、わが国は万景峰92号の入港を禁止する措置を発動し、国連安保理では北朝鮮のミサイル発射を非難する決議が採択された。
拉致事件は、国際的な人権・人道に係わる重大な問題であり、一日も早い解決が不可欠である。民主党は、拉致事件の解決なくして国交正常化はありえないという立場から、「拉致問題その他北朝鮮当局による人権侵害問題への対処に関する法律案」を成立させた。(詳細→)政府は拉致事件、核・ミサイル問題の解決のため「改正外為法」などの適用も含め、国連やサミット、アセアン地域フォーラム(ARF)等を通じ、国際社会への働きかけを強めていくべきである。
民主党は、海上自衛隊がインド洋等で行う給油活動の必要性を確認できないとして、テロ特措法の期限延長には反対したが、国際的な連携によるテロ対策の重要性は認識している。テロとの闘いの舞台となったアフガニスタンでは、ようやく国家統治機構整備のための政治プロセスが進展したが、テロ等の発生も続いている。2005年の民主党派遣団の成果も踏まえ、アフガニスタンの復興を積極的に支援していく。
中東では、2006年1月にパレスチナ立法評議会選挙が実施され、地域の安定化が期待されたが、7月にはイスラエルとレバノンの間で紛争が再発し、多くの死傷者が出ている。8月、停戦を求める国連安保理決議が採択されたが、国際社会の一致した取り組みが重要である。
また、ウラン濃縮・再処理活動の継続を主張するイランに対し、民主党は岡田元代表らによる訪問団を派遣、モッタキ外相等との会談を通じ、国際社会全体の懸念を伝えるなど自制を求めた。イランは、採択された国連安保理決議を踏まえた対応を取るべきである。
「日・マレーシア経済連携協定」や「マルチチップ集積回路無税待遇協定」は、アジア地域において相互協力と信頼醸成を進めるものであり、民主党は、経済連携協定(EPA)/自由貿易協定(FTA)の締結等を推進する立場から賛成した。今後、WTOのドーハ・ラウンドの合意を目指した取組みを強化するとともに、「東アジア共同体」を視野に入れた経済外交を積極的に推進していく。
日中・日韓間の海洋権益問題を解決するため、民主党が提出していた「海洋権益関連2法案」は、与党から独自の法案も提出されたが、調整がつかず、両案とも継続審議となった。関係国との冷静かつ建設的な議論を通じ、問題解決を促す努力を継続する。
防衛施設庁の発注工事に関して入札談合が行われた。これに対し民主党は、廃案となっていた「官製談合防止法案」(詳細→)や「天下り規制法案」(詳細→)を直ちに再提出するとともに、官製談合に対する政府の姿勢を厳しく追及した。
民主党は、自衛隊のイラク派遣について、(1)戦争の大義が不明、(2)国連中心の支援体制が不十分、(3)「イラク特措法」の「非戦闘地域」をめぐる無理な解釈、などにより反対してきた。2006年7月、陸上自衛隊が撤退したが、安全性に問題のある航空自衛隊の活動範囲が拡大され、全面的な撤退は先送りとなった。
イラクでは、国民議会選挙による新政府の発足など政治プロセスの進展や治安権限の移譲が進んだが、テロ等により多くの死傷者が出ており、多国籍軍も事態を収拾できていない。
今後のイラクへの人道復興支援は、わが国にふさわしい「人間の安全保障」の視点に立って、企業、NGOなどの「民」と連携して切れ間なく継続していくことが重要である。
民主党は、緊急事態基本法の制定、情報収集・分析態勢の強化等について、与党と合意したが、政府は慎重な姿勢を崩していない。イギリス政府が航空機テロを未然に防いだように、情報収集態勢の強化は重要である。今後ともテロ対策などの緊急事態に関する議論を進めていく。
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