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国会レポート2007

第三章 焦点となった法案への対応

1社会保険庁改革関連法案
保険料流用・「消えた年金」
放置は許されない

 

1政治資金規正法改正案
事務所費等の透明化

看板掛け替え・保険料流用の政府案

 政府は、166回通常国会に「日本年金機構法案」、「国民年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部改正案」を提出した。

 民主党は、不祥事が相次ぐ社会保険庁の廃止を求めてきた。しかし政府案の中身は、社保庁を「日本年金機構」という特殊法人に看板を掛け替えただけである。特殊法人は「経営の責任が不明確」、「業務運営が非効率・不透明」などの理由から整理合理化が進められてきたが、政府案はこれに逆行するものである。

 政府案は、(1)非公務員といいながら職員の給料は税金から支払われる、(2)見かけ上非公務員となることで天下りが自由化される、(3)機構の理事長には国会への出席義務がなく、不祥事に対する国会の監視が利きにくくなる、(4)納付率向上の具体的な手段が無いなど、公的年金に対する国の責任が曖昧で、国民の年金不信を一層高める可能性が高い、など問題が多かった。

 また、これまで年金保険料から約6兆円がグリーンピアの建設等に充当され、加えて1998年以降は特例措置として年間約1,000億円の保険料が年金事務費に流用されてきた。民主党は保険料の流用は即刻やめるべきと重ねて主張してきたが、政府案は流用を永久に可能とする内容となっていた。

「年金信頼回復3法案」を提出

 政府の見せかけの改革に対して、民主党は、年金への信頼を回復することが社会保険庁改革の本質であると考え、「歳入庁設置法案」、「年金保険料流用禁止法案」、「『消えた年金』被害者補償法案」を提出した。とりわけ、保険料のムダづかいや年金記録消失問題については、早くから地道な調査を進め、これらの解決なくして社保庁改革はありえないとの認識に立ち、2006年から法案の検討に入った。

 「歳入庁設置法案」は、社会保険庁を廃止し、国税庁に吸収合併して「歳入庁」という組織にするものである。社会保険庁と国税庁はいずれも公金を扱う組織として類似の業務も多く、統合すればスリム化・効率化が実現できる。これに伴い人員も削減でき、また社会保険庁の体質の抜本的な改革、国税庁の持つ所得情報・徴収ノウハウを活用した納付率向上も可能となる。社会保険庁から歳入庁へ移る職員について、厳選することも法案に明記した。

 国会審議では、民主党が2006年6月から指摘していた「消えた年金」問題で政府・与党に対する国民の批判が急速に高まった。政府・与党は国会での年金議論の切り上げるため、「消えた年金」問題、社保庁改革いずれについても十分な審議を尽くす前に、衆議院・参議院両院で強行採決に踏みきり、政府案が成立した。

1万円超の支出に領収書添付等を義務づけ

 民主党は、全ての政治団体の1万円を超える事務所費等の支出に収支報告書への領収書の添付や支出明細の記載を義務づけることを柱とする「政治資金規正法の一部を改正する法律案」を2007年3月に衆議院に提出した。民主党に遅れること約3ヶ月、資金管理団体に限定して5万円以上の事務所費等に領収書添付を義務づけ、不動産の新規取得を禁止する与党案が提出された。与党案では、資金管理団体以外の政治団体を通して政治資金の実態を隠蔽したり、不動産を取得するという抜け道が残っており、実効性は疑わしい。

与党に修正協議を呼びかけ

 民主党は、与党案の抜け道を塞ぐべく、与党に政党間の修正協議を呼びかけるとともに、領収書添付等の義務については全ての政治団体、不動産と有価証券の取得制限については政党を除く政治団体を対象とする内容の与党案に対する修正案を国会に提出した。しかし、与党は民主党の提案を拒否し、衆議院では採決を強行した。民主党は参議院でも対案を提出するとともに、与党案に反対したが、与党案が可決・成立した。