政治主導で国民主導の政治を

前内閣官房副長官 松井 孝治参院議員

――なぜ政権交代が必要だったか。

 同じ政権で長年同じ官僚や業界の人たちを相手にすると、よどみが生まれ、特定の部分でいろいろなつながりが生まれる。そこを1回リセットして、与野党が互いに責任政党として健全な政権を作るための競争だと思う。


政治主導のあるべき姿

――政治主導で何が変わったか。

 役人に政策を丸投げするのではなく、政治家自らが考え、政策決定に責任を持ち、役人と議論する文化が今、根付きつつある。政治家同士が話をすることで政策方針の議論や方向性の転換が容易になったことは政治主導のプラス面だと思う。
 ただ、もう少し政治主導=国民主導にしなければならない。議論をオープンにし、政治家同士がどういう経緯でどういう議論をしたか、官僚ともどういう議論をしたか、国民に見える形にしなければならない。


――民主党政権での政治主導のもう少し分かりやすい例はあるか。

 従来の総理大臣の所信表明演説は各省が短冊と呼ばれるパーツを作り、例えば農政や財政、外交についてはこういう事を言って下さい、と、それを組み合わせて演説原稿を作っていた。
 私が担当した鳩山内閣の最初の所信表明演説では、「そういうパーツは一切要りません」と。鳩山内閣として「コンクリートから人へ」と宣言することを総理が決める。どういうキーメッセージを置くかは政治家が決め、具体的な部分は官僚にも助言をもらうという形で演説の作り方を全部変えた。
 結果、22年度予算は、公共事業は前年比18%削減し、教育関係全体で8%増、社会保障も増やした。政治のリーダーシップがあったからこそ、メリハリのある予算編成ができた。

――政治主導は日本の政治・行政に根付いたか。

 政治家の意識は変わった。ただ結果を出すというところまでいっていない。こういう政策を実現するために、この議論をしているということをもっと表に出していかなければ。まだ途中だと思う。ここでわれわれが踏ん張って国民に伝える努力をしていくことだ。

「新しい公共」が
目指すもの

――「新しい公共」とは。

 日本の行政は中央に権限を集めて官僚主導でやった方が良いという時代が続いた結果、霞が関や永田町の一部がどこに補助金を配るかを支配する構造になった。地域の人たちが公のことをやりたくても、霞が関に陳情して補助金をつけてもらうしかない。しかし現場では、地域の消防団やPTAなどが公のことをやっている。そこにスポットを当て、当事者意識を持った地域の人たちが、安全な町をつくる、災害に強く互いに助け合う組織をつくる、学校教育の質を良くするというところに寄付税制でお金が回る仕組みをつくる。地域の草の根の自助共助に光を当て、そこを応援する運動だ。

――なぜ地域の人たちがやる方が良いのか。

 地域で見返りのない貢献をし、人を助け、支えること自体を喜びと感じる。そのことに生きがいを持つ人が増えている。それを少しでも後ろから応援しようということだ。


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