役所の意識改革でムダ削減
前厚生労働大臣 長妻昭衆議院議員
「消えた・消された年金問題」解決へ

私が一番注力したのはマニフェストの実現はもちろん、役所の古い体質、古い役所文化を変えること。
消えた・消された年金記録問題については、約5千万件の未統合記録の統合・解明を進め、最新の数字では実人数で1200万人の年金記録、少なくとも1・4兆円の年金額が回復。これからも毎月3万人のペースで記録を戻していく。加えて、政権交代後に紙台帳とコンピュータ記録の全件照合を開始。今の試算では75歳以上の厚生年金の受給者であれば1人平均101万円、受給者の方の8・5人に一人の記録が戻ることになる。
解決のメドがついたところ。政権交代後4年間かけて全件照合することで一定程度の出口が見えるのではないか。そのうえで、必要であれば法的な措置をして残りの方を回復する。
税金のムダづかい
削減と天下り廃止へ

例えば、天下り団体の補助金カットについて、当初「削れない」としていたものが、大臣の職務命令で天下りの補助金2割カット、5代連続して天下りしている団体は全額カットと指示したところ、すぐに年間1013億円を削ることができ驚いた。つまり「絶対にできない」というものでもきちんと指示をすれば可能になると。
その後も省内事業仕分けを行い、厚生労働省だけで1年に約1・2兆円を捻出することができた。
こういうおかしな役所文化を仕組みとともに変えていくことが重要だ。
政官業の癒着によって暗黙のルールの下、官と政の都合のいい役割分担ができていたのではないか。政権交代により緊張関係が生まれ、政治主導で役所の業務をチェック、事業仕分けにより公開の場で事業の必要性が問われ、きちっと説明できなければ廃止になるというマインドが官僚の方に芽生えたことも大きい。
――税金のムダ削減はできたのか。一定程度はできた。これからも「事業仕分け」の地方自治体への拡大と同時に、行政でも「ムダを無くすと評価される」という意識改革を進めることが必要。一番ムダの在りかを知っている現場の官僚からムダを削減させる努力を引き出す人事評価基準をつくることが、民主党政権の最大のポイント。
――政権交代で天下りはなくなったか。天下り団体への補助金を廃止し、独立行政法人の天下りポストを公募化した。鳩山総理(当時)の決断により全省庁で役員ポストの公募化を決定。厚生労働省でも昨年4月、天下り役員の12ポストを公募した結果、民間人の就任やポスト自体の削減により12ポストがゼロになった。
――今後はどうなるか。厚労省で取り組んでいる財団法人、社団法人の役員選考の公募化を全省庁に広げ、公正な判断の下、一般の優秀な方に就いていただくことが必要。少しでも効果をあげる行政を実現していきたい。