自殺対策に政府を挙げて取り組む

前内閣府副大臣 大島敦衆議院議員

自殺防止は政権の最重要課題

――何でこんなに自殺者が多いのか。

 1997年の大手金融機関の倒産をきっかけに社会不安が増大した。翌年から自殺者数が3万人台に急増し、以後13年連続で3万人台を切ることができず、世界的にも高水準。戦争が外交の失敗だとすれば、自殺者数が多いのは内政の失敗だ。

――自殺防止の対策は。

 2006年に自殺対策基本法が施行されてから自殺対策への関心は高まったが、政府全体で取り組むようになったのは政権交代後だ。民主党政権にとって自殺対策は最重要課題の一つである。
 担当の副大臣になって、実態に基づく対策の立案、失業者等のハイリスク群を対象とした支援、自殺多発地を拠点にした総合的支援のほか、マスメディアを使って集中的な広報活動、全国のハローワークで心の健康相談や法律相談を実施した。

――それで効果は表れたのか。

政権交代後、平成21年9月から本年2月まで18カ月のうち、15カ月が対前年同月比減となり、2010年の自殺者数は9年ぶりに3万2千人を割った。

――今後どんな対策を。

 今までは、本人や家族に気づいてもらい、専門家に相談に行ってほしいとお願いする運動を実施してきた。今後は、「大切な人の悩みに気づいて下さい」と呼びかけて、「声をかけてほしいとお願いするキャンペーン」を推進していこうと思っている。


消費者行政も政治主導で推進

――消費者庁ではどんな活動をしたのか。

あるメーカーが指を挟みやすい構造のベビーカーを販売していた。役所任せでは対応が遅れるため、政治主導で直ちにそのメーカーに注意喚起書を出した。メーカーも早急に改善し、以後の事故を防ぐことができた。他にも、地味なテーマだが「トランス脂肪酸の情報開示に関する指針」の策定も積極的に進めた。

――トランス脂肪酸とは。

不飽和脂肪酸の一種で、マーガリンなどに含まれ、それらを原材料とする洋菓子や揚げ物に使われる。自然界に少量しか存在しないため、食品から摂取する必要もない。
 トランス脂肪酸を多量に摂取した場合、血液中の悪玉コレステロールが増加し、善玉コレステロールが減少することが報告されている。欧米では動脈硬化など心臓疾患のリスクが高まるとして、規制や食品への表示義務、摂取基準を設けている国も多い。

――日本での対応は遅れていたということか。

 酸化や劣化がしにくく保存性も高いという特性がある。関係者はトランス脂肪酸の規制はもとより含有表示にも後ろ向きだったが、政治が関心をもつことで情報開示に関する指針を策定できたし、消費者庁もそれに応える仕事をしてくれた。


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