【4】社会保障・雇用
社会保障
民主党は、個人が能力を生かし、各人にふさわしい生き方を選ぶことができる社会をめざします。例えば、多くの人が高年齢期まで元気に生き生きと働くことができ、やる気と能力があれば安心して再チャレンジできる自立支援の仕組みがある社会、介護が必要になれば在宅か施設のサービスを利用者自身が選べ、バリアフリーの基盤が整う社会、患者と医師の信頼関係のうえに安心の医療が提供され、保険で広く負担しあう社会、地域で支える子育ての仕組みがあり、仕事と家庭の両立がしやすい社会です。民主党は、すべての人が「安心・安全・ゆとり・豊かさ」を実感できる国民生活実現のため、社会保障や労働・雇用政策の改革に取り組みます。
年金や生活保護、障がい者の所得確保、その他低所得者対策などの所得保障を国の責任でしっかり行います。そのうえで、医療は都道府県、介護・福祉などは市町村と、より身近な地域に分権化し、保険料・自己負担分などは国民みんなで分かちあう総合的な社会保障制度を確立します。
健康に暮らせる環境対策の推進、健康相談・健診事業、たばこ・アルコールによる健康被害防止を柱に健康づくりを支援します。そのため、アスベスト対策、バリアフリーのまちづくり、食品安全、快適な住環境の整備、通勤ラッシュの緩和や職場環境の改善、大気汚染、騒音対策などに取り組みます。また、地域における健康相談事業の推進を検討します。
診療報酬制度は、治していくら、上手に病気をコントロールしていくらという、病気ごと、月ごとの「定額払い」制を基本にします。
民主党は、患者を「医療消費者」としてとらえ、医療情報の開示・評価と、医療機関や治療方法に関する患者の選択を促すことで医療の質を向上させる改革が必要と考えます。そのため、カルテ・レセプトなどすべての医療情報の患者本人等への開示や、診療費明細書の発行義務化、患者が他の医師に意見を求めるセカンドオピニオンの保障などを内容とする「患者の権利法案」を国会に提出しました。2006年通常国会の焦点課題となる医療改革では、医療保険の財政面だけではなく、医療の質の向上も含めた改革を行います。 身近に何でも相談できる「家庭医」をつくり、いちいち大病院にかかって「3時間待ちの3分診療」にならないようにします。家庭医養成のため、2004年から医師の免許取得後研修が義務化したのにあわせ、大学中心でなく、地域で患者の立場に立った優秀な医師を育てるための研修医改革をすすめます。家庭医創設や介護施設の充実とあわせ、社会的入院をなくし、病院医療に無駄なお金がかからないよう、病院の数と機能を集約し、地域における医療のネットワークを構築します。 民主党は、多発する医療事故の再発防止のため、「医療法改正案」を国会に提出しました。第一のポイントは、病院の管理者に医療事故防止方針の作成と、都道府県知事への届出を義務づけ、医療事故防止に対するインセンティブを高めること、第二に、第三者機関としての医療事故防止センターにおいて、医療事故の事例を集めて調査・研究を行い、再発防止に活かすことです。 医師の入試制度、学部教育を抜本的に改革し、メディカルスクール導入も検討します。医師等の卒後研修、医局制、医師免許制度のあり方について検討します。家庭医の養成を重視し、地域病院での研修義務づけや定期的に卒後研修を行い、技能の向上を図ります。薬剤師の養成は6年課程、看護師教育は4年制とし、准看護師制度は廃止します。その他の有資格医療従事者についても、4年制大学教育とします。 医療保険制度を効率的に運営することはもとより、被保険者の利益を守ることを実現するためにも、保険者機能の強化が必要です。被保険者の健康維持支援策を保険者自らが行える体制づくり、医療機関の評価機能や情報提供機能の充実等を行います。 政策決定過程の問題が指摘され、また贈収賄事件を生んだ中央社会保険医療協議会(中医協)については、委員構成の見直し(診療側、支払側、公益側それぞれ同数とする等)、逐語・発言者明記の議事録作成とその全面公開などの改革をすみやかに行うとともに、中医協に代わる新たな機構を検討します。 大小5,000以上の保険者を統合し現在の10分の1以下に減らします。3,700万人の加入者を全国一本で運営する政管健保は、都道府県ごとに分割し第三者機関による運営とします。2003年4月に実施されたサラリーマン本人の3割負担への引き上げは、政府の運営失敗による政管健保の赤字が原因であり、今後の運営を政府には任せられません。整理・統合した保険者間の不公平(年齢構成等)は財政調整します。国民が保険者を自由に選べるようにします。 薬害に起因するものも含め、潜在的な患者が200万人以上と推計される肝炎が新たな国民病とも言える状況になっています。「肝炎対策5ヵ年計画」を策定し、感染者の早期発見・治療体制の充実、予防体制の確立、そして患者の生活安定を実現します。 世界の三大感染症(エイズ、マラリア、結核)等について、国際協力の観点も含めて、根絶に向けた治療研究体制を充実させていきます。また、医原病とも言われるC型肝炎については、検査受診率の向上、新薬保険適用の迅速化等、急務のものとして対策を断行していきます。 覚せい剤、大麻のみならず、MDMAなど錠剤型合成麻薬や、いわゆる脱法ドラッグの乱用が、青少年を中心に拡がっています。民主党は、薬物乱用の低年齢化を防ぐため、薬物依存からの回復者の体験談等を通じて、薬物依存のおそろしさが実感できる中高生への教育・啓発活動を実施します。また、薬物依存・中毒者への治療と自立支援、家族への相談支援等の体制を整備します。省庁横断的な薬物取締体制を強化し、薬物の供給源の根絶に取り組みます。 被爆60年という節目の年にあたり、民主党は、在外被爆者にも被爆者援護法が適用されることを明確にし、在外公館での各種申請を可能とする「被爆者援護法一部改正案」を2005年の第162国会に提出しました。現行法では、都道府県で申請を行うため、高齢や病気のため訪日できない被爆者には適用されません。高齢化が進む在外被爆者問題の解決に向けて、一刻も早い成立をめざします。 精神障がい者に対する保健医療・福祉全体のレベルアップをめざして、「病院から地域へ」という流れを確実なものとします。そのため2003年度から開始された「新障がい者プラン」の着実な実施、とりわけ7万2千人の社会的入院患者の社会復帰に向けて、関連施設の整備を含む諸施策の拡充に取り組みます。 治療するほど利益を得るという現在の診療報酬体系を是正し、予防歯科への転換が図られるような診療報酬体系に見直します。また、歯科衛生士とケアマネージャーの連携を図る等、介護現場における予防歯科・歯科医療を充実させていきます。全般的な歯科保健体制の整備については、医科・歯科の診療報酬上の格差是正、患者が安心できる環境づくり等も含め実施していきます。また法改正により介護保険に取り取り入れられた口腔ケアを徹底し、身体状態の改善につなげます。 現行の年金法では、2004年度から基礎年金に対する国庫負担(税金投入)を、「3分の1」から「2分の1」に引き上げることになっていますが、小泉政権は財源の裏づけができないまま、5年後に「2分の1」に引き上げると言っているだけです。民主党は政権を担うと同時に徹底した予算改革を行い、それによって生み出される財源を段階的に基礎年金に充て、2008年度までに国庫負担率を2分の1に引き上げます。
また、将来にわたって持続可能な年金制度として、全国民が共通して加入する一元化した年金制度へ移行します。税を財源とする「最低保障年金」を設け、老後の最低限の年金(月額7万円)を保障します。すべての人を対象に、所得をもととした拠出額を財源とする「所得比例年金」を設けます。 民主党は、2004年に成立した「特定障害者特別障害給付金支給法」の救済対象(元学生、主婦)を、すべての無年金障がい者(在日外国人、在外邦人、未納未加入者)に広げる改正案を提出しました。無年金となった理由ではなく、現に障がいを負っているという事実を受け止め、政権獲得後速やかに法律を改正し、無年金障がい者全員に基礎的な所得保障を行います。
また、国籍要件などにより年金制度から排除されて、無年金、低年金となった高齢者(在日外国人、在外邦人)がいます。国民年金法創設時点で高齢であった者や、加入期間が極めて短い者に対して行われた老齢福祉年金等に準じた給付を行うよう、法整備を行います。 2005年の第162国会における介護保険法改正により、介護予防が強化されました。新たに導入される介護・痴呆予防の各事業については、その効果の検証を行い、費用対効果等にも配慮しつつ取り組みます。介護保険法改正の審議を通じ、今後のケアプラン策定において、介護予防のための筋力向上トレーニング等が、本人の意思に反して強制されないこと、在宅生活を継続するために必要なホームヘルプサービスの水準を切り下げないことを確認しました。 介護サービスの充実は、地域に雇用を生み、地域の活性化を実現する効果をもたらします。従来の土木型公共事業に比べ約2倍の経済・雇用効果が期待できるとの指摘もあります。民主党は、より良い介護保険制度にするため、財政が厳しい状況ではあっても、介護基盤整備を最優先ですすめます。特に在宅介護推進のため、ホームヘルパーやケアマネージャーの増員や質の改善、グループホームや宅老所の増設などを速やかに行います。 2005年の第162国会における介護保険法改正により、サービスの質の確保・向上が取り上げられ、情報開示の標準化、事業者規制の見直し、ケアマネジメントの見直し等が盛り込まれましたが、今後の運用においてもサービスの質の向上が行われているかを検証します。 65歳以上の高齢者の保険料は、市町村ごとに所得段階(5段階)に応じた定額保険料が設定され、低所得者には軽減された保険料が賦課されます。しかしなお、低年金層には、過重な負担となり生活を圧迫しています。また、2005年の法改正では、在宅と施設の自己負担格差を是正するため、施設介護におけるホテルコストの負担が加わりました。
低所得者対策は、根本的には、年金など所得保障と、医療費等も含めた生活費全体との関わりで総合的に対処しつつ、世帯の状況に応じた減免措置等を行います。
法改正の審議においても、第5段階(年金80万〜266万)の所得のうちの低い所得層や税制改正で利用料が急増する層に対するきめ細かな対応を行うこと等の低所得対策の実施を政府に確認しました。 2005年の法改正においても、介護保険の被保険者およびサービス受給者の範囲の拡大は見送られ、サービス受給者は、原則65歳以上の高齢者だけとなっています。
民主党は、年齢の区分を無くし、65歳未満の被保険者も保険料を払うだけでなく、平等にサービスを受けられるよう、条件を整備しながら介護保険の被保険者と受給者の範囲の拡大(介護保険のエイジフリー化)を実現します。
今後高齢化が進展するなかでも制度の持続可能性を維持するために、要介護者の掘り起こしや不適正・過剰な給付等を排除し、効率的で質の高い介護保険にしつつ、被保険者と受給者の範囲の拡大を行います。
その際障がい者施策として独自に必要なサービスは、別途受けられる制度体系を構築します。 現在、急速に顕在化しつつある障がい者のニーズの動向を見極めます。その水準を把握した上で、より高水準で、総合的な障がい者福祉制度を構築します。精神障がい者についても、同じ水準をめざします。
その際には、障がい者が自立した生活をするための基礎となる所得保障制度の確立を含めて障がい者福祉予算の拡充を行うとともに、身体・知的・精神と障がい種別ごとに分かれ、その他の障がいや難病等に対応できていない現在の障がい者政策・法制度を抜本的に見直し、包括的な障がい者福祉法を制定します。 認知症または障がい等の理由により、本人の判断能力が欠ける場合において、家族の反対があっても、本人の自己決定権、選択権を実質的に保障していくことができるよう、成年後見制度をはじめとした権利擁護事業を充実します。介護保険の利用に際し、成年後見によらない契約を無効とするなど、法的な対策をすすめます。2005年の介護保険法改正において、民主党は、高齢者の権利擁護事業を市町村の必須事業として位置づける法案修正を実現しました。 民主党は2005年の162回通常第162国会に、施設・家庭における悲惨な事件を無くし、安心して生活ができる環境をつくることを目的として、「高齢者虐待防止・養護者支援法案」を提出しました。政権獲得後速やかに法律を成立させ、市町村に虐待問題の相談窓口を設置するとともに、虐待が疑われる場合の通報・確認・立ち入り調査等を行う根拠と手続きを定めます。また、虐待があった場合に緊急保護のためのショートステイを確保する一方、養護者のサポート等により虐待の原因を根絶することをめざす総合的対策を行います。
また、高齢者虐待防止・養護者支援法案は、相談や関係機関の紹介等を通じて、現在社会問題化しているリフォーム詐欺など財産侵害行為に対応できるようにし、総合的な窓口機能を持たせます。
さらに、速やかに障がい者に対する虐待の防止法を制定します。 民主党は、低年齢児保育、延長保育、一時保育、病児保育、学童保育など多様な選択肢を用意し、安心して子育てができる環境をつくります。同時に、子どもにとってより良い保育の質を追求します。また、育児休業制度や、仕事と家庭の両立支援策、小児医療の充実を図ります。さらに、子育ての孤立化や不安解消のための相談・支援体制も充実させます。 子どもを持つか持たないかは、夫婦・個人の選択ですが、次代を担う子どもを産み育てる家庭の様々な負担は個人の責任にのみ帰せられるべきものではなく、社会全体でこれを分かちあい、支援すべきです。この観点から、所得水準にかかわらず、義務教育終了までの子ども一人あたり月額16,000円の子ども手当を支給します。また出産時には、保険給付による現行の出産一時金に加え、国庫を財源として、一人あたり20万円の助成金を給付し、ほぼ自己負担なしに出産できるようにします。 核家族化がすすむ一方、母親の就労率はますます高まる傾向にあります。学童が放課後に安全に過ごせる居場所づくりの確保を図るべく、希望するすべての小学生に学童保育サービスを提供できる体制を構築します。 離婚の増加に伴い、ひとり親家庭が増加しています。特に母子家庭にとっては、雇用や住宅、子育ての問題などで、安心して自立生活できる環境にはありません。民主党は、実効性ある就労保障、子育て支援、離婚時の養育費支払いの履行確保策など、ひとり親家庭に対する自立支援に取り組みます。今後、児童扶養手当の支給水準を変更する場合は、母子家庭の経済状況等に十分配慮します。 障がいのあるなしにかかわらず、誰もが安心して暮らせるバリアフリー社会を実現します。バリアフリー住宅の普及やバリアフリーのまちづくりなどをすすめます。障がい者と健常者がともに学ぶ統合保育・統合教育を推進します。誰もが利用しやすいIT機器の普及をすすめます。選挙情報の提供や投票補助など政治参加のバリアフリーをすすめます。また福祉・医療・雇用などを横断的につなぐ新たな障がい者プランを策定し、すべての人が生き生きと暮らせる社会をつくります。