税制
税制改正について「公平・透明・納得」という納税者の視点に立った原則の下で政治主導の政策決定を行うとともに、政策決定の過程も透明化します。
これまでの税制改正議論は、与党税制調査会、政府税制調査会、経済財政諮問会議によってバラバラに行われてきました。特に、与党税制調査会は不透明な形で政策決定を行い、既得権益の温床となってきました。
与党内の税制調査会は廃止し、財務大臣の下に政治家をメンバーとする新たな政府税制調査会を設置し、政治家が責任を持って税制改正作業及び決定を行います。地方税については、地方6団体、総務大臣、新たな政府税制調査会が対等の立場で協議を行います。従来の政府税制調査会は廃止し、代わりに税制の専門家として中長期的視点から税制のあり方に関して助言を行う専門家委員会を新しい政府税制調査会の下に置きます。これら意見集約の過程は公開を原則とします。
国会における審議も充実させるため、衆参両院に税制を中心に社会保険料等も含めた歳入全般の議論を行う常任委員会として「歳入委員会」を新設します。衆参両院の次年度税制改正の議論に基づいて、政府は予算の編成を行います。
厳しい財政状況の中で国民生活の安定、社会の活力維持を実現するためには、真に支援の必要な人を政府が的確に把握し、その人に合った必要な支援を適時・適切に提供すると同時に、不要あるいは過度な社会保障の給付を回避することが求められます。このために不可欠となる、納税と社会保障給付に共通の番号を導入します。
国民の納税者としての意識を高め、より強固な民主主義を構築していくための第一歩として、確定申告を原則とし、給与所得者については年末調整も選択できるという制度を導入します。また、これを実現するにあたって、納税者の権利を明確にするために「納税者権利憲章」を制定します。
納税者の権利を守るための具体的な改革として、納税額の更正等の期間制限が課税庁からの更正と納税者からの修正で異なる点について見直していきます。特に課税庁の増額更正(事後的な納税額の増額)の期間制限が5年であるのに対して、納税者からの更正の請求(事後的な納税額の減額)の期間制限が1年であることは納税者の理解を得られにくく、早急に見直しが必要です。
納税者の権利を重視し、国税不服審判所のあり方や手続きを見直します。
税が議会制民主主義の根幹であることを考えれば、個別の課税事案に対して納得できない納税者の主張を聞く国税不服審判所は極めて重要な機関です。しかし現状は、この重要な役割を果たすには十分ではありません。特に、その機能を果たすために最も重要な審判官の多くを財務省・国税庁の出身者が占めていることは問題です。
そのほかにも証拠書類の閲覧・謄写が認められていないなどの問題があることから、国税審判のあり方やその手続きについて、納税者の権利を十分に確保することを基本に見直します。
相対的に高所得者に有利な所得控除を整理し、税額控除、手当、給付付き税額控除への切り替えを行い、下への格差拡大を食い止めます。
所得控除は、結果として高所得者に有利な制度となっています。例えば、扶養控除(一般)は子育て支援の機能を有していますが、同じ38万円の所得控除を適用した場合、高所得者が10万円を超える減税になるのに対して、低所得者では2万円の減税にもなりません。
一方、所得の高低に関係なく税額から一定額を差し引く税額控除や所得控除から手当への切り替えは中・低所得者に有利な政策です。
給付付き税額控除は、税額控除の額より税額が低い場合、控除しきれなかった額の一定割合を給付するものであり、税額控除と手当の両方の性格を併せ持つ制度です。
これらの政策を適切に組み合わせることにより、下への格差拡大を食い止めます。
人的控除については、「控除から手当へ」転換を進めます。子育てを社会全体で支える観点から、「配偶者控除」「扶養控除(一般。高校生・大学生等を対象とする特定扶養控除、老人扶養控除は含まない。)」は「子ども手当」へ転換します。また、その際は、年金生活者の負担増とならないよう、年金課税の見直しも行います。
給与所得控除については、特定支出控除を使いやすい形にするとともに、現在青天井となっている適用所得の上限を設ける等の見直しを行います。
「公的年金等控除」「老年者控除」は、平成16年度改正以前の状態に戻します。「公的年金等控除」について、65歳以上の方の最低保障額を120万円から140万円に引き上げるとともに、50万円を所得控除する「老年者控除」を復活させます。ただし、適用には所得制限を設けます。本措置により、配偶者控除を整理した場合でも、年金生活者の負担増にはなりません。
住宅ローン減税については、いたずらに最大控除可能額を拡大するのではなく、バリアフリー化や省エネなどの社会ニーズの高い分野に対して重点的な負担軽減策を講じます。また、自らの資金で住宅を新改築・購入した場合でも、住宅ローン減税と同程度の負担軽減を受けることができる制度(投資減税)を創設し、団塊世代などの建て替えやリフォームのニーズに応えます。
生損保など民間保険会社の保険料控除については、社会保障制度を補完する遺族・医療・介護・老後(年金)といった保険商品に対応した、新しい保険料控除制度を創設した上で、所得控除限度額を所得税において15万円程度に引き上げます。
相対的に高所得者に有利な所得控除を整理し、必要な人に確実に支援ができる給付付き税額控除制度を導入します。
生活保護などの社会保障制度の見直しと合わせて、(1)基礎控除に替わり「低所得者に対する生活支援を行う給付付き税額控除」(2)消費税の逆進性緩和対策として、基礎的な消費支出にかかる消費税相当額を一律に税額控除し、控除しきれない部分については給付をする「給付付き消費税額控除」(3)就労への動機付けのため、就労時間の伸びに合わせて「給付付き税額控除」の額を増額させ、就労による収入以上に実収入が大きく伸びる形で「就労を促進する給付付き税額控除」――のいずれかの目的若しくはその組み合わせの形で導入することを検討します。ただし、不正還付・不正受給を防ぐためにも所得の正確な把握が必要であり、納税と社会保障給付に共通の番号制度の導入が前提となります。
なお、税額控除額全額を控除するだけの税額がなく、給付を受けることになる場合は、その給付額はまずは年金や医療等の社会保険料負担分と相殺することを検討します。
本来すべての所得を合算して課税する「総合課税」が望ましいものの、金融資産の流動性等にかんがみ、当分の間は金融所得については分離課税とした上で、損益通算の範囲を拡大することとします。証券税制の軽減税率については、経済金融情勢等にかんがみ当面維持します。
消費税に対する国民の信頼を得るために、その税収を決して財政赤字の穴埋めには使わないということを約束した上で、国民に確実に還元することになる社会保障以外に充てないことを法律上も会計上も明確にします。
具体的には、現行の税率5%を維持し、税収全額相当分を年金財源に充当します。将来的には、すべての国民に対して一定程度の年金を保障する「最低保障年金」や国民皆保険を担保する「医療費」など、最低限のセーフティネットを確実に提供するための財源とします。
税率については、社会保障目的税化やその使途である基礎的社会保障制度の抜本的な改革が検討の前提となります。その上で、引き上げ幅や使途を明らかにして国民の審判を受け、具体化します。
インボイス制度(仕入税額控除の際に税額を明示した請求書等の保存を求める制度)を早急に導入することにより、消費者の負担した消費税が適正に国庫に納税されるようにします。
逆進性対策のため、将来的には「給付付き消費税額控除」を導入します。これは、家計調査などの客観的な統計に基づき、年間の基礎的な消費支出にかかる消費税相当額を一律に税額控除し、控除しきれない部分については給付をするものです。これにより消費税の公平性を維持し、かつ税率をできるだけ低く抑えながら、最低限の生活にかかる消費税については実質的に免除することができるようになります。
租税特別措置の抜本的な見直しを行いますが、これを進めて課税ベースが拡大した際には、企業の国際的な競争力の維持・向上などを勘案しつつ、法人税率を見直していきます。
なお、租税特別措置の見直しにあたっては、研究開発の促進など真に必要な措置については、現在の時限措置から恒久措置へと転換していきます。また、温暖化を中心とする環境対策、雇用の維持・拡大、自治体の工夫や努力などによる地域活性化などの重要課題への対応を法人税制の中で図ることも検討します。
欠損金の繰戻還付制度は凍結を解除します。
租税特別措置について、減税措置の適用状況、政策評価等を明らかにした上で、恒久化あるいは廃止の方向性を明確にする「租税特別措置透明化法」を制定します。
特定の企業や団体が本来払うはずの税金を減免される点で、租税特別措置(租持)は実質的な補助金であると言えます。しかし、民主党の調査の結果、税務当局も要求官庁も各租特の必要性や効果を十分に検証しておらず、国民への説明責任を全く果たしていない実態が浮かび上がってきました。
租特の透明化を進める中で、租特を含めた実質的な負担水準を明らかにし、それにより課税ベースが拡大した場合には、法人税率の水準を見直していきます。
中小企業は団塊世代がリタイア時期を迎える中で事業承継に不安を抱えており、これを重点的に支援することによって安定的な活動を支えます。
中小企業に係る法人税の軽減税率は当分の間11%とします。
「一人オーナー会社(特殊支配同族会社)」の役員給与に対する損金不算入措置は廃止します。
中小企業はわが国経済の基盤であり、地域経済の柱であり、雇用の大半を支える存在です。このような観点から税制により、中小企業の規模に応じて、その活性化や競争力の向上を支援することは必要です。
官に過度に依存することなく、国民それぞれが公益実現に直接貢献する社会を創造するために、税制で大胆な支援を行います。
認定特定非営利活動法人制度については、要件緩和、認定手続等の簡素化、みなし寄附の損金算入限度額引き上げ、寄附の税額控除制度創設など、支援税制を拡充します。
所得税の寄附優遇税制については、税額控除制度を創設し、現在の所得控除制度との選択制とします。
相続税については、「富の一部を社会に還元する」考え方に立つ「遺産課税方式」への転換を検討します。
相続税の課税ベース、税率の見直しについては、わが国社会の安定や活力に不可欠な中堅資産家層の育成に配慮しつつ検討します。税収を社会保障の財源とすることも検討します。
さらに、相続税の課税方式の見直しに合わせて、現役世代への生前贈与による財産の有効活用などの視点を含めて、贈与税のあり方も見直します。
国境を越える特定の経済活動に課税し、集まった収入を貧困撲滅・途上国支援などを行う国際機関の財源とする「国際連帯税」について検討を進めます。
単一の経済行為に消費税と2本立ての課税を行うことになる個別間接税は速やかに整理し、間接税は消費税に一本化すべきです。
一方で、税によって社会に益をもたらす特定の品目の普及や使用を促進したり、社会的コストを生じる特定の品目の普及や使用を抑制したり、あるいはその社会的コストの一部の負担を求めたりすることは、適当であると考えます。このような観点に立って、残存する嗜好品やエネルギーに係わる個別間接税は「グッド減税・バッド課税」の考え方に基づいた課税体系に改めます。
酒税・たばこ税は国民の健康確保を目的とする税に改めるべきであり、その際には国民に分かりやすい仕組みにすることが必要です。
その観点から、酒税については、特に清酒・焼酎などの現行の税負担に配慮しつつ、基本的に致酔性に着目してアルコール度数に比例した税制とすることを検討します。
たばこ税については財源確保の目的で規定されている現行の「たばこ事業法」を廃止して、健康増進目的の法律を新たに創設します。「たばこ規制枠組み条約」の締約国として、かねてから国際約束として求められている喫煙率を下げるための価格政策の一環として税を位置付けます。具体的には現行の「1本あたりいくら」といった課税方法ではなく、より健康への影響を考えた基準で、国民が納得できるような課税方法を検討します。その際には日本たばこ産業株式会社(JT)に対するさまざまな事業規制や政府保有株式のあり方、葉たばこ農家への対応を同時に行います。
わが国の自動車関係諸税は、あまりに複雑で、一部が二重課税となっている等、自動車ユーザーに過重な負担を強いており、抜本的な整理が必要です。整理にあたっては、間接税の基本的な考え方に基づいて二重課税の排除等を行います。同時に、自動車の資産性や温暖化ガスの排出、交通事故、騒音などの社会的なコストに着目し、負担を求めることとします。
以上のような考え方から、自動車関係諸税について以下のように整理します。
自動車取得税は消費税との二重課税回避の観点から廃止します。自動車重量税および自動車税は、保有税(地方税)に一本化し、その税収を自動車から生じる社会的負担に広く対応する地方の一般財源とします。ガソリン等の燃料課税は、一般財源の「地球温暖化対策税(仮称)」として一本化します。
なお、上記の改革を実現する第一歩として、暫定税率は地方分を含めてすべて廃止します。国直轄事業に対する地方自治体の負担金制度を廃止して、暫定税率廃止後においても、地方における道路整備事業は従来水準を維持できるようにします。
毎年、1兆円弱の新規滞納が生じている現状にかんがみ、徴税の適正化を図ります。また個人・法人合計で1000億円近くも加算税が生じている状況を是正するため、罰則の強化や重加算税割合の引き上げを行います。
消費税の還付額が年間3兆円にも達していますが、その中に相当額の不正な還付が存在します。これを防止するため、還付に係わる調査機能を強化します。
企業活動の国際化に伴い、「移転価格税制」が課題となっています。企業活動の円滑化を図るため、速やかに関係各国と調整を行う体制を整えると同時に、一部に見られる租税条約の乱用等不適切な事案の摘発を強化します。