国土交通
現行の画一的・縦割り的な地域振興関係諸法を改め、地域独自の事情や特性に対応した振興策を実施します。地方分権の推進や都市と農山漁村との連携を図り、地域の自立化・多様化を実現し、安全で安心して生活ができる国土形成を目指します。
農山漁村は、超高齢化と若年労働者の流出が進み、過疎化による地域コミュニティの崩壊や農地・林地などの国土荒廃が進行しています。水源確保や土砂流出防止などの国土環境の保全機能、伝統文化や自然との共生等の文化・レジャー機能の充実など、多種多様な機能を生かすための支援策を展開します。
一方、都市部では、密集市街地の形成や交通渋滞の発生など負の遺産が解消されていません。中心市街地の空洞化問題への対策、一極集中下での大規模地震など激甚災害のリスクの解消を重点とします。
過疎地域にふわさしいインフラ整備やコスト軽減に資する施策を推進します。
面積で国土の半分強を占める過疎地域では、著しい人口減少や高齢化が進んでいます。道路等のインフラ整備のほか、携帯電話やケーブルネットワークなどIT技術等を活用して高齢者に対する生活支援策を拡充します。
交通基盤整備などの公共事業については、都市部と過疎地域の格差が解消されていません。今後は公共事業のみに頼ることなく、各地域が特色を活かし自立的に発展していくよう、地方分権の一層の推進に重点を置いていきます。
また、島しょ部では、公共施設・設備等が十分に整備されず、本土への交通にもコストがかかることから、物価高を強いられています。島民の不便、本土との物価格差を緩和するため、島しょ部の経済活動に係る揮発油税を免除します。
民主党の要求を全面的に盛り込んで成立した観光立国推進基本法を基本に観光政策を推進します。
各地域の魅力向上に向けたまちづくり、景観形成、農山村や里山づくりなどを進め、地方公共団体と地域住民が主体となった観光政策への取り組みを支援します。
各地域の歴史や伝統・文化、さらには貴重な自然の保全と活用を進め、同時に住民が学ぶ機会を提供します。休暇・休日制度を見直し、より柔軟に休暇を取得できる仕組みをつくって休日の分散化を進めます。総合的な交通体系と景観に配慮した街や交通施設の整備を進め、国内外からの観光客の視点に立った観光政策を推進します。
民主党の要求によって2008年10月に発足した観光庁については、文化の視点も加味し、観光立国の実現に関する施策を総合的、効果的かつ効率的に推進します。
これからは画一的なまちづくりではなく、自治体への大幅な権限と財源の移譲を前提に、それぞれの基礎自治体が街の特性を活かしたまちづくりを推進できるようにします。
道路や施設などインフラ整備のハードづくりと、土地の名産品や祭りなどコミュニティを盛り上げるソフトづくりを最適に組み合わせ、住民・NPO参加による行政等の運営を行い、「人の温かさが感じられるまちづくり」を進めます。
新たな発展を続ける大都市と、商店街の空洞化や人口の過疎化、社会基盤整備の衰退などに直面する地域との格差拡大の解消に努めます。
現在の法体系を抜本的に見直し、建築基準法を単体規制に特化、大胆な地方分権を前提として都市計画法をあまねくすべての地域を対象とする「まちづくり法」に再編、景観・まちづくりの基本原則を明記した「景観・まちづくり基本法」を制定することなどにより、コミュニティと美しく活気あるまちの再生・保全を図ります。
高齢化社会、人口減少社会等に配慮したまちづくりを進めます。「交通バリアフリー法」と建築物に関する「ハートビル法」は「高齢者、障害者等の移動等の促進に関する法律」に統合されましたが、さらなる改善が必要です。
具体的には、(1)移動の権利、社会参加の機会の保障(2)総合的・計画的な移動円滑化の実施を規定(3)高齢者・障がい者などの意見を反映する仕組みと利用しやすい施設の整備(4)関連施設利用については車いすの利用を拒むことができない――等です。移動制約者の自立と社会参加の促進のため、引き続きバリアフリー社会の実現を目指します。
下水道整備が各自治体の大きな負担要因になっているとの認識に立ち、硬直的な接続義務を見直す法改正を行い、下水道に偏重した汚水処理対策を正します。
合併浄化槽は、汚水処理性能が下水道と比較して遜色のない水準に達していること、過疎地域において経済効率において優れていること、循環型社会の形成に寄与する機能を有することが指摘されています。このため、下水道法を改正し、公共下水道の排水区域内において合併処理浄化槽で汚水を処理している場合、公共用水域の水質の保全や公衆衛生の見地から著しく不適切な場合を除き、公共下水道への接続義務を免除する等の措置を講じます。
従来の持ち家取得への偏重を是正し、ライフスタイル・ライフステージに合った住宅政策への転換を図ります。
生活・住宅困窮者にとって、公営住宅などは重要なセーフティネットです。高齢者や障がい者、子育て世帯にも対応できるよう、賃貸住宅の機能の充実、賃貸市場の活性化、家賃補助等の支援策を講じます。
長期優良住宅の普及促進をはじめ、省エネ化、バリアフリー化、耐震化を目的とした既存住宅の活用・改修と、そのための記録管理・審査・診断などのシステム整備を推進することにより、持続可能な安全かつ安心できる住生活を確保します。
建築基準法などの関係法令の抜本的見直し、住宅建設に係る資格・許認可の整理・簡素化、関連組織の整理・縮小に取り組みます。また、よりきめ細かな住宅政策を推進するため、必要な予算をすべて地方自治体に一括交付します。
これからの新築住宅は、長寿命・耐震・断熱・バリアフリーで建て替えずに長期の使用に耐える仕様を基準とし、中古住宅のリフォーム・改築も推進します。外断熱・高断熱・窓の改修などを促進するとともに、住宅性能表示の一つの方法として、その住宅の年間のエネルギー消費量を表示する「エネルギー証明書」を普及させます。
トイレ・浴室の改良、屋内の段差解消、階段の勾配緩和など高齢者が住みやすい住宅リフォームを重点的に支援します。
太陽光パネルの設置を助成し、電力の電力会社による買い取り制度も拡充します。低炭素社会へ向け、国産材を使った木造りの長寿命住宅を推進します。
シックハウス対策やアスベストの暴露対策などやさしい家づくりを徹底します。
中古住宅物件に瑕疵がないか等を正しく診断できる人(ホームインスペクター)を育成することで、中古住宅を安心して取引できるようにします。このため、施工現場の記録を取引時に添付することを推進します。
一つの業者が売り手と買い手の両方から手数料を取る両手取引を原則禁止とします。
高齢者、障がい者、子育て世帯も住みやすい優良で多様な賃貸住宅を整備します。賃貸居住者に対する家賃補助や所得控除などの税制支援も創設します。定期借家制度の普及を推進します。
住宅ローンをノンリコース(不遡及)型にする環境も整えます。現在は土地の価値のみでなされている「リバースモーゲージ」(住宅担保貸付)は利用しやすくなります。
木材住宅産業を地域資源活用型産業の柱とし、地域の自立と振興を推進します。伝統工法を継承する技術者、健全な地場の建設・建築産業を育成するとともに、施工者の技能が客観的に分かる仕組みを作り、消費者が安心して注文できるようにします。
間伐が遅れているところは、集約化施業によって山村を活性化し、近くの山で採れた木で家づくりができるようにします。
以下の三つの視点で総合交通ビジョンを策定し、その実現を目指します。(1)自動車中心の街づくり政策を転換し、路線バスや軌道系交通(鉄道、路面電車、次世代型路面電車システム(LRT)等)を充実(2)道路を整備する費用をバス事業者等に補助し、サービスが向上するインセンティブを与えることにより移動困難者の利便性を確保(3)路線バスや軌道系交通機関などのマス・トランスポーテーションを見直し、環境負荷の低減につながるモード(交通機関)の整備――などに努めます。
「交通基本法」を制定し、国民の「移動の権利」を保障し、新時代にふさわしい総合交通体系を確立します。
その内容は、(1)国民の「移動の権利」を明記する(2)国の交通基本計画により総合的な交通インフラを効率的に整備し、重複による公共事業のムダづかいを減らす(3)環境負荷の少ない持続可能な社会を構築する(4)都道府県・市町村が策定する地域交通計画によって地域住民のニーズに合致した次世代型路面電車システム(LRT)やコミュニティバスなどの整備を推進する――等です。
各地域の特性やニーズに応じた航空政策を展開します。
現在、国際拠点空港は、成田、関空、中部で、旅客ベースで日本全体の9割弱、貨物ベースで95%のシェアがあります。今後、国際的に大交流時代を迎えることを考え、この三つの空港にだけ集中させるのではなく、北海道、福岡、沖縄等の空港の機能を向上させます。
着陸料や航空機燃料税など、国際的に比較しても高い費用を軽減して障壁をなくし、オープンスカイ政策を進めます。
また、地方空港については、近距離の国際便、特にアジア圏内の交流を中心に、国内効率の容易性を高めるよう、総合的な航空政策を進めるとともに、経営収支の開示を進めます。
国際物流と国内物流の拠点の棲み分けを明確にした機動的な政策を確立します。
国際物流については、釜山、シンガポールや香港などのアジア地域の港湾が物流のハブとしての地位を高めていることにかんがみ、日本の港湾の国際競争力回復に努めます。
国内物流については、海外から日本に到着したモノ、そして日本から海外へと出て行くモノの流れを円滑にすることと、生産地ならびに消費地としての日本の魅力を向上することに重点を置きます。
物流面での玄関口としての空港と港湾に関しては、すべての窓口において効率化を進めることを前提としつつ、特定重要港湾のうち複数の港湾、特に消費地への近接性や高規格道路等との接続性を考慮し、選択と集中の考え方のもとで特定の国際物流拠点の24時間化を進めます。なお、その他の空港および港湾は国内物流の環境負荷の小さい輸送手段への転換(モーダルシフト)を進めます。
東シナ海のガス田等、わが国の海洋権益・資源を守るために、民主党が主導して成立させた海洋基本法等を厳正に執行します。
また、海上保安庁の体制強化を図る見地から、海上保安庁職員の適正な確保、海上保安庁の巡視船艇・航空機の整備を行います。
なお、わが国の海洋権益にとって重要な位置を占める沖ノ鳥島の保全等に全力を尽くします。
国際海上コンテナの輸入貨物については、外国で積み込まれ、積み付けの状態や重さ、内容物が荷主以外には分からない状況です。
国際貨物コンテナ輸送の特殊性にかんがみ、国際貨物コンテナ輸送における輸送の安全を確保するため、以下の措置を定めた法律を制定します。
(1)荷主がコンテナの重量、貨物の品目、積み付けの状況などが記載されたコンテナ情報書面を作成し、トラック事業者に交付する(2)トラック事業者はコンテナ情報書面をトラックドライバーに交付する(3)トラックドライバーは、コンテナ情報書面を受領しなければコンテナの運送をしてはいけない。
民主党は、「タクシー改革ビジョン」を取りまとめ、(1)タクシーは、公共交通機関である(2)タクシー行政の地方分権を行う(3)利用促進と需要拡大に向け、悪質事業者排除と供給調整の実効ある仕組みを構築する(4)安全に配慮した適正な運賃を原則とする――という基本方針に基づきタクシー関連改革2法案を提出しましたが、運賃・料金の許可基準の見直しなどその提案が全面的に受け入れられ、政府提出の特措法案が修正成立しました。この改正タクシー関連法の厳正な執行を図り、検討条項に盛り込まれた課題について成案を得るなど、今後ともタクシー行政の改革に取り組んでいきます。
また、バス・船舶・鉄道をはじめ、次世代型路面電車システム(LRT)などの導入も含めて、地域の公共交通の維持・再生・活性化の施策を充実させます。
物流分野において、トラックによる輸送との共存を図りつつ、環境負荷の小さい船舶や鉄道輸送へと転換(モーダルシフト)する政策を展開します。荷主が輸送機関を選択する立場にあることを重視し、荷主等にモーダルシフト推進計画の策定と実施状況の報告を義務付けます。
自転車は、環境負荷を低下させるとともに、健康増進などの点で大きな利点がある一方で、交通事故の発生、放置自転車などの問題も見られます。自転車に係るルールやマナーの理解・順守が進むよう、自治体、民間ボランティアとも連携しつつ、安全・快適な自転車利用に向けた啓蒙活動を強化します。あわせて、自転車道の適正な整備、自転車の通行ゾーン設置に関する明確な指針づくりに努めます。また商店街の空き店舗利用などにより駐輪場の整備を図ります。
国全体の総合交通体系を確立し、その中で新幹線整備のあり方を位置づけた上、国民の理解を得ながら整備を進めます。
実現に向け、東京・名古屋間において実験・協議・整備が進められている中央リニア新幹線についても、世界の先端技術を伸ばし、活かす観点から支援します。
経済的な発展と温暖化対策との両立が求められる国際的な状況において、日本の鉄道技術を世界に発信します。
道路をめぐる政策を中央集権の国のかたちを変える突破口と位置づけ、道路その他の社会資本整備に関わる行政を根本的に改革します。
揮発油税等の暫定税率の完全廃止、本則税率部分の一般財源化を図ります。国は高速自動車国道を、地方は自らが必要とする道路を担うこととし、直轄国道、補助国道等の管理区分を見直して道路整備の権限を大胆に地方に移すことを基本とします。
そのため、(1)特別会計の廃止(2)地方財源の確保(3)国として整備すべき高速道路の選定(4)国土開発幹線自動車道建設会議(国幹会議)の廃止(5)道路整備における国と地方の役割の抜本的見直し(6)費用便益分析の厳格な実施を含むコストの徹底した見直し(7)新たな事業評価方式の策定(8)独立行政法人や公益法人など天下り団体の徹底整理――などを図ります。道路、河川、港湾など公共事業の地方分権を進め、あわせて関係出先機関を原則廃止・縮小します。
高速道路は、原則として無料とします。これにより、(1)生活コスト・企業活動コストの引き下げ(最大2.5兆円の国民負担の軽減が可能、家計消費増や企業の設備投資・賃金引き上げ等で内需拡大)(2)地域活性化(生活道路、地域道路としての利用、サービスエリア・パーキングエリアの活用を含む観光産業活性化など)(3)温暖化対策(渋滞の解消・緩和、CO2の発生抑制など)(4)ムダづかいの根絶(バイパス建設抑制による財政負担の軽減など)――を図ります。
首都高速・阪神高速など渋滞が想定される路線・区間などについては交通需要管理(TDM)の観点から社会実験(5割引、7割引等)を実施して影響を確認しつつ、無料化を実施します。
実施に当たっては、道路会社の職員の雇用、首都高速・阪神高速の株主たる自治体の理解、競合交通機関への影響及び交通弱者等に対する十分な配慮を講じます。
政府の規制緩和の結果、安全が軽視され、労働条件が悪化しました。民主党の要求で修正成立した法律に基づき運輸安全委員会を厳正に運用し、公共交通等の安全対策の総点検などに取り組みます。
省庁縦割りのムダを省くため、社会資本整備関連計画を一本化し国会承認事項とするとともに、再評価・事後評価の仕組みを盛り込んだ「公共事業コントロール法」を制定します。これにより、ムダを省き効率的で地域の実情にあった、本当に必要とされる公共事業を推進します。
現下の厳しい経済情勢をふまえ、機動的な中小建設業再生策を講じます。
整理統合・協業化、災害復旧への知見をはじめとする本業を生かした取り組み、新分野への進出、取り組み実績の入札資格要件等での評価、きめ細かなセーフティネットの確保など構造転換への支援策を強化します。また、官公需法の適用推進、公正さを目指した入札方式の確立などにより中小建設業の受注機会の確保につとめます。さらに、建設業法の順守等による元請け・下請け関係の適正化、高齢化・担い手不足に対応するための技能承継等に係る支援、専門学校と地域建設業が連携した人材育成策の強化、各種の貸付制度や保証制度を活用した公的融資制度による支援の拡充などを図ります。
川辺川ダム、八ッ場ダム建設を中止し、生活再建を支援します。そのため、「ダム事業の廃止等に伴う特定地域の振興に関する特別措置法(仮称)」の制定を目指し、国が行うダム事業を廃止した場合等には、特定地域について公共施設の整備や住民生活の利便性の向上および産業の振興に寄与する事業を行うことにより、当該地域の住民の生活の安定と福祉の向上を図ります。
プライベート・ファイナンス・イニシアチブ(PFI)とは、道路、橋、刑務所や役場庁舎といった公共施設の建設や運営を、資金調達を含め民間事業者に委ねることで、公共事業のコストを削減する手法です。一番の目的は、事業にかかるリスクを民間事業者に負わせることで、民間の経営感覚を活用し、効率的でコストと品質のバランスのとれた公共サービスを提供することにあります。
PFI制度をさらに積極的に活用するため、導入する数値目標を定めるとともに、促進を阻害する法律・政省令・条例等の改正を進めます。これにより、民間の創意工夫を活かした質が高く効率的な事業を取り入れ、税金のムダづかいをなくします。
ダムは、河川の流れを寸断して自然生態系に大きな悪影響をもたらすとともに、堆砂(砂が溜まること)により数十年間から百年間で利用不可能になります。環境負荷の大きいダム建設を続けることは将来に大きな禍根を残すものです。自然の防災力を活かした流域治水・流域管理の考え方に基づき、森林の再生、自然護岸の整備を通じ、森林の持つ保水機能や土砂流出防止機能を高める「みどりのダム構想」を推進します。
なお、現在計画中または建設中のダムについては、これをいったんすべて凍結し、一定期間を設けて、地域自治体住民とともにその必要性を再検討するなど、治水政策の転換を図ります。