緊急事態法制の整備 民主党は結党以来、「緊急事態に際する対処にあたって、シビリアンコントロールと基本的人権を確保しつつ、国民の生命・身体、財産を守るために超法規的行為がとられないよう、関係法制の整備が必要」と主張して来た。緊急事態プロジェクトチーム等での検討を基本に党内論議を重ね、2002年3月「緊急事態に対する民主党の基本方針」を策定した。154回通常国会に政府が提出した「武力攻撃事態における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律案」を含む有事関連3法案に対しては、2002年7月に「有事関連3法案をめぐる問題点」として10項目にわたる論点を整理し、2003年4月には「緊急事態への対処及びその未然の防止に関する基本法案」及び武力攻撃事態対処法案に対する修正案を156回通常国会に提出し、政府案の問題点を明らかにしたことで、与党が法案修正協議に応じるところとなり、大幅な修正を実現した。(詳細p.36) わが国の安全保障の根幹に関わる極めて重要な法案について、熱心かつ真摯な議論を重ね、法案の成立という成果を得ることができたことは、日本の政治史上、大変意義深いことであった。 なお、1年以内に今後整備される国民保護法制や、本法附則の緊急事態対処のための組織の検討、与野党合意により今後4党間で実施する基本法制の検討等、残された課題は数多い。今後とも国民の視点に立った真摯な取り組みを行っていく。 北朝鮮問題への対応 2002年9月の日朝首脳会談によって日朝平壌宣言がなされたにもかかわらず、拉致事件の解決や大量破壊兵器の問題は頓挫している。 民主党の基本的な考え方としては、次の2点が確認されている。(1)拉致事件及び大量破壊兵器問題等の全面解決を見るまで、国交正常化はすべきではなく、経済援助はあり得ない。北朝鮮の核保有・拡散は絶対に認められない。(2)核拡散防止条約(NPT)脱退、ミサイル発射実験、核兵器保有表明など、危険な瀬戸際政策をエスカレートさせている北朝鮮に対しては、日・米・韓をはじめ、中・露などとの政策調整が一層重要である。関係諸国の連携によって、『対話』と『圧力』により平和的解決をめざし、北朝鮮が国際社会において民主的な国の一員となるよう、積極的に働きかける。 北朝鮮問題の解決には、日韓両国を加えた枠組みの構築、国連の関与、関係法令の改正、NGO等との連携、多角的な信頼醸成のための枠組みの模索など、強力な取り組みが重要である。武装工作船・不審船・万景峰号対策、脱北者問題についても、わが国の主権と国民の生命・財産を守る立場から、積極的に取り組んでいく。 テロ対策特別措置法への対応 2001年9月に米国で発生した同時多発テロに対して、自衛隊の後方支援等を内容とするテロ対策特別措置法が2003年11月1日に2年の期限を迎える。 民主党は9.11テロが国際社会に対する新たな脅威であると認めたが、政府案がPKO以外で、海外での自衛隊の活動を認める内容でありながら、基本計画を事後承認としたことから、国会の民主的統制を徹底するため、事前承認を認める修正案を提出した。 与党の思惑により修正要求が拒否され、政府案に反対した。しかし、法律に基づく派遣期間・活動範囲等は憲法の枠内であり、妥当と判断し、自衛隊による対応措置の承認には賛成した。 その後、政府は国会への説明責任を放棄したまま、イージス艦の派遣を強行し、また、156回通常国会での法律延長の必要がないにもかかわらず、自民党総裁選や解散日程等の思惑から、2年の再延長を内容とする法案を提出した。その際、アフガニスタン情勢の事実上の終息を受けても、政府は、各国の諸活動を抽象的に挙げるのみで、具体的な法律延長の必要性の説明はなかった。 テロの脅威に対する意識は共有するとしても、インド洋・アラビア海における自衛隊の活動のあり方については、改めて厳しく検討すべきである。 イラク対策特別措置法案への取り組み 民主党は、国連安保理等を通じた国際協調体制による平和的解決を訴えてきた。イラクに対して、累次の国連決議の履行、特に大量破壊兵器の完全廃棄を強く要請し、米国等に対しても、国連憲章に定める武力行使に関する国際法の原則に基づき、単独主義的な行動の自制を促した。2003年3月の米国等による武力行使に対しては、国連憲章など国際法に照らし問題があるとして、対イラク攻撃に反対した。しかし、戦争が事実上終了し、政権崩壊に至った現状では、被災したイラク国民に対する人道的見地のほか、イラクの安定が及ぼす中東和平ひいては中東全体の平和と安定への影響、国連安保理決議1483号の採択、米国からの支援要望等を考慮し、イラク復興支援には積極的に取り組むべきであるとの立場を明確にした。 民主党は、2003年6月、与党に先駆けイラク調査団を派遣し、現地の復興ニーズの特定に努めた。調査団報告も踏まえ、占領軍の性格や海外での武力行使の可能性等の憲法上の問題、対イラク・対中東政策に関する戦略等を総合的に考慮し、156回通常国会に政府が提出したイラク対策特別措置法案に対して、自衛隊の活動を削除する等の修正案を衆議院に提出した。政府・与党が自民党総裁選等の思惑から「自衛隊派遣ありき」で政府案の成立を強行したため、民主党は反対した。 舞台が参議院に移っても、現地情勢は悪化を続け、政府がイラク攻撃支持の根拠とした大量破壊兵器は発見されず、米英両国での情報操作の疑惑が深まった。国会終盤、民主党は廃案をめざした取り組みを強化し、関係大臣等の問責決議案を提出したが、政府・与党の頑なな姿勢は崩れず、法案は強行採決され成立した。(詳細p.37)