学校耐震改修促進法案の提出 民主党は、155回臨時国会の冒頭に議員立法「公立の小中学校等における地震防災上改築又は補強を要する校舎等の整備の促進に関する臨時措置法案」(学校耐震改修促進法案)を衆議院に提出した。 同法案は、現在の公立小中学校施設の65%が現行耐震基準施行以前の建築であり、4割以上の施設が耐震性がないと推計されることから、早期の耐震改修を促すことを目的とするものである。その柱は、(1)耐震診断実施と結果公表の義務化、(2)耐震改修に係る国庫補助率のかさ上げ、である。 同法案は未審議のまま156回通常国会終了時点で継続となっているが、2003年7月の宮城県北部地震でも学校施設の避難所としての役割があらためて明確になったことから、民主党は今後とも同法案の早期成立を図っていく考えである。 見せかけの改革・義務教育費国庫負担法改正 156回通常国会では、まず政府提出の「義務教育費国庫負担法及び公立養護学校整備特別措置法の一部を改正する法律案」が争点となった。 同法案は、義務教育国庫負担金の負担対象経費のうち共済費長期給付及び公務災害補償に係る部分を一般財源化するというものである。しかし、地方分権改革を国庫補助金、交付税交付金、税源移譲の三位一体で行うとする政府の建て前とは裏腹に、実際には税源移譲への道筋がまったく示されないままの改正案であった。民主党は委員会質疑においてこのような矛盾点を徹底的に追及し、採決において反対の姿勢を明らかにした。 国立大学法人関連法案への対応 156回通常国会では、「国立大学法人法案」等大学改革関連6法案が大きな争点となった。自律的な環境のもとで国立大学をより活性化するという政府の説明とはまったく異なる、これまで以上に文部科学省の支配を強くする政府案に対し、民主党では大学改革ワーキングチームが中心となり対案並みの修正案を作成し、国会論戦に臨んだ。民主党修正案は否決され政府案は原案通り可決成立したが、民主党は今後とも同法の改正を求めて行く。(詳細p.39) スポーツ政策の立案 民主党は2003年3月に「スポーツ政策に関するプロジェクトチーム」を設置、6月に「民主党・スポーツ政策」を取りまとめた。 同政策は「企業・学校・競争型から地域・クラブ・共生型スポーツへの転換」をコンセプトに、地域密着型クラブスポーツの振興、高齢者・障害者スポーツの振興、校庭の芝生化推進、学校施設の開放と複合利用の推進などを主な内容とする。民主党では同政策の個別具体化に加え、さらに包括的なスポーツ政策の立案に向けて検討を進める予定である。 拡大教科書実現への取組み 弱視児童生徒が使用する拡大教科書の作成は、これまで著作権法上の制約から作成者が数多くの著作者から許諾を得る必要があるなど、作成にたずさわる人々(多くはボランティア)にとって大きな負担を伴ってきた。 民主党はかねてよりこの問題を重視、文部科学部門会議を中心に院内外で課題の是正に向けた取り組みを行ってきた。その結果、拡大教科書を作成する場合には、あらかじめ検定教科書等の発行者に通知すれば権利者の許諾なしで作成可能とする改正を含む「著作権法の一部を改正する法律案」が、156回通常国会に政府より提出された。 同改正法でも拡大教科書作成の費用を作成者が負担しているという問題が依然残るが、もっとも大きな障壁であった手続上の簡素化が実現したことは、民主党や多くの関係諸団体・個人の運動の成果として評価できる。 外国人学校卒業生の大学入学資格問題 2003年3月、文部科学省は、大学入学資格を与える外国人学校の対象を、英国と米国の学校評価機関の認証を受けた学校にのみ認めるとの方針を示した。これによれば、英米系の外国人学校修了者には大学入学資格が認められるが、アジア系などの学校の修了者は従来通り大学入学資格検定に合格する必要があり、両者の間に重大な制度上の差違が生じることになる。 民主党は、即刻文部科学大臣に対し、文科省方針の全面的見直しを求める申し入れを行うとともに、複数のアジア系外国人学校への視察の実施や委員会での一般質疑を通じて同問題を積極的に取り上げつづけた。 その結果、8月に文科省の中央教育審議会大学分科会は、先の文科省方針を改め外国人学校修了者にも大検を受けずに大学受験できる道を開く内容の文部科学省案を取りまとめるに至った。これについては一歩前進と評価できるが、外国人学校をめぐる残された課題はまだ多い。民主党は今後とも外国人学校問題について積極的に取り組んで行く考えである。