【2】消費者・人権・共同参画
男女共同参画
人生80年時代、ライフスタイルの多様化は、いまや男性にも及び、性別・年齢にかかわらず多様なライフスタイルを生きる時代になりました。しかし、私たちの社会システムは、旧態依然としたままで、社会の活力を失わせています。時代と社会の変化に適合した新しい男女共同参画政策が必要とされています。多様なライフスタイルを前提に、リスクを分かち合うことで個人として自立し、人と人との関係、家族、社会との関係を広げていける社会システムづくり、そして変化の激しい時代に、個人が全方位で柔軟に生きることをサポートする社会システムづくり、そんな新しい男女共同参画政策は、女性のための女性政策を超えて、性別・年齢にかかわらず、あらゆる人の自立と安心をつくります。女性も男性もみずから選択し、「自分らしく」活躍することこそ、日本を再創造するカギとなります。
自営業者、被用者、公務員等就労形態によって別々になっている制度を一元化し、就労形態やライフスタイルの変化に対応できる年金制度へと改革します。世帯の所得は夫婦が共同で獲得したものとみなして、夫婦間の年金権分割案を採用し、年金の個人単位化を図ります。育児・介護期間を年金額に反映させること、遺族年金のあり方についても検討します。
働く女性に不利な税制を改め、個人所得税を性的役割分業に固定しない税制に変え、ライフスタイルの選択に中立な税制にします。配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除(老親控除以外)を廃止して、税の増収分で子ども手当(児童手当)を充実します。手当は、所得水準にかかわらず、義務教育終了年齢までの子ども一人当たりに月額1万6千円支給します。特定扶養控除(16歳以上23歳未満)は廃止し、学びたい子が学べるように奨学金制度を充実します。激変緩和のために、基礎控除の引き上げなどを検討します。
時間外勤務手当の割増率を国際水準に引き上げます。サービス残業の法的規制強化を検討するとともに、育児休業・介護休業法を改正して両立支援法を制定し、男女とも仕事と家庭を両立できる環境を整備します。パート労働者と正社員との均等待遇の実現は喫緊の課題であり、また、ワークシェアリングの前提ともなるため、民主党は「パート労働者の均等待遇推進法案」を2004年の第159国会に提出しました。さらに、人員削減による長時間労働化を抑制し、時間外や休日労働分を新規の雇用へ振り向けます。政府調達事業の女性起業家への一定比率の発注枠確保、NPO等による起業を推奨し、女性起業家を増やします。
低年齢児保育、延長保育、休日保育、夜間保育、障がい児保育、病児保育など、多様な保育ニーズに対応するための基盤整備や保育サービスの充実を図ります。保育所と幼稚園の連携強化、一体化を図り、就学前の希望するすべての子どもに質のよい居場所をつくります。また、NPOなどによる保育の質チェックの仕組みをつくります。民法を改正し、協議離婚の際の養育費の取り決め等を明記します。
生活の様々な場面で知らず知らずのうちに刷りこまれていく固定的な性別役割分業意識の克服に向け取り組みます。自立能力の形成を教育目標に据え、職業体験学習、男性の家庭参加促進教育などをすすめます。人権に密接に関わる仕事(例えば教員、医療福祉関係、警察、入管職員等)に従事する人への男女平等教育をすすめるとともに、政策・方針決定過程へ女性の参画を拡大するためクォータ制(割当て制)を含む積極的差別是正措置(アファーマティブアクション)を講じます。また、女性に対する固定観念に基づく社会制度や慣行を改めます。
2005年の第162国会において介護保険法の見直しが行われましたが、厚生労働省は生活援助型サービスがあたかも生活機能を低下させるかのような評価を下し、厳格に見直すとの方針を打ち出していました。これは、ホームヘルプサービスを受けている高齢者には自立生活ができなくなるのではないかという心配や、現場で働く人たちにとっては職を失うのではないかという大きな不安をもたらしました。しかし、介護保険財政の持続可能性を高めるために制度を改めるにしても、必要な家事援助までカットしては在宅で自立した生活を送ることはできません。民主党は、生活援助型のサービスの必要性を正当に評価し、介護保険制度に位置付けていきます。また、介護職員の専門性を高めるとともに、職員や短時間労働者の待遇改善にも取り組みます。
それぞれの女性が自分らしい健康を生涯にわたって保障される環境づくりに取り組みます。性と生殖に関する女性の権利と健康を守るための法整備をすすめるとともに、年齢にふさわしい性教育を男女ともに行います。また、新しい医療の領域である「ジェンダー・スペシフィック・メディスン」(性差を考慮した医療)の考え方を、医学教育の段階から徹底します。不妊治療については、治療の効果と安全性を、漢方治療なども含めて適正に検証し、適応症と効果が明らかな治療法については医療保険の適用を検討します。また、産前・産後のケアを地域の保健所で行う体制を整備します。その一方で、「女性は子どもを産んで一人前」「子どもを持つことが男の甲斐性」というような画一的な価値観に縛られない社会をつくっていきます。
紛争国や開発途上国において、女性の教育水準向上と仕事の充足を図ることは、貧困を是正し、男女格差、国際間格差の解消のために重要な方策です。開発援助においては、ジェンダー主流化*が中心的な考え方になっていますが、日本の援助はジェンダー政策などを重点とする指導力に欠けています。民主党は、ODA予算配分とODAの実施に際して、調査、計画、立案、推進、評価の全ての段階にNGOの参加を求めます。また、いまだ国際スタンダードに達していない女性や子どもに関わる条約と関連法案を精査し、条約の締結促進と法制化を図ります。 *ジェンダー主流化=経済開発、人間開発のすべての過程に女性が主体的に関わる援助のあり方。