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民主党政策集―私たちのめざす社会―
【2】消費者・人権・共同参画
暮らしと人権
 日々の暮らしを人間らしく安心・安全に送ることはすべての人々の願いです。しかし現在でも人権侵害や不当な差別は根絶されておらず、また、地震や台風などの自然災害のみならず、最近ではテロ行為までもが市民生活を脅かしています。民主党は、人権保障のための法整備や施策の充実、女性・子ども政策の具体化により、差別のない人間尊重の社会を築くとともに、市民の権利侵害に対する司法的救済機能を強化したリーガル・セーフティネットを構築し、市民の権利保護と公平・公正な社会のための制度改革をすすめます。さらに災害対策やテロ対策など、市民生活に関わる諸施策を具体化し、安心・安全の社会づくりをめざします。  民主党は、国民に基盤を有する身近で充実した司法を創出し、その司法制度のもと、公平で公正なルールが行きわたり、人権が保障され、安心して暮らせる社会をつくるために、司法制度改革に取り組んでいます。
(1)裁判員制度に国民が参加しやすいよう環境整備を行います。
 2009年の裁判員制度開始までに、国民の制度への理解がすすむよう広報を強化します。また、裁判員休暇制度の創設、育児・介護等への配慮を含め、国民が参加しやすいよう環境整備を行います。
(2)国民が利用しやすいよう総合法律支援制度を充実します。
 全国どこでも、誰でも、いつでも法的サービスが受けられるよう、2006年に日本司法支援センターが業務を開始するまでに、日本司法支援センターの地域事務所を全国に整備し、スタッフ弁護士を配置します。そのための財政支援を充実します。
(3)公正で透明性の高い刑事司法に改革します。
 取調べでの自白の強要による冤罪を防止するために、民主党が既に提出しているビデオ録画等による取調べ過程の可視化、取調べ段階における弁護人立会権の確立を柱とする「刑事訴訟法改正案」を制定します。また、刑事裁判での証拠開示の徹底を図る法律を制定します。
(4)国民が利用しやすい行政訴訟制度に改革します。
 行政訴訟を利用する国民の視点から、団体訴訟制度の導入、訴訟対象の拡大等を盛りこんだ行政事件訴訟法改正案を策定します。
(5)法曹養成制度を充実します。
 法科大学院への財政支援を充実させるとともに、法科大学院の学生が大学院のカリキュラムの勉強に専念できるよう、新司法試験制度を資格試験として整備・運営します。    現行の無期刑は最短10年で仮出獄できてしまうことから、仮出獄を認めない重無期刑(終身刑)を創設するなど、刑罰を見直すとともに、「死刑制度の存廃」問題については超党派での協議をすすめます。また、犯罪者それぞれの特性に応じて、更生の実効性があがり、社会復帰が円滑になるよう、刑罰のバリエーションを増やす必要があり、医療刑や社会奉仕命令等の創設について検討をすすめます。  政府が2005年の第162国会に提出した「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律案」(刑事処遇法案)に対し、民主党が修正要求した、(1)法律の目的に受刑者への個別処遇の観点の追加、(2)刑事施設視察委員会の意見に対して講じた措置の公表、(3)刑務官への人権研修、(4)5年以内の見直し、の条文修正が実現しました。刑事施設における矯正機能をさらに強化するために、過剰収容状況を解消し収容者の生活環境改善のための施設・職員体制の整備、矯正処遇プログラムの充実、社会復帰に向けた就労支援、保護観察体制の強化に取り組みます。  2000年11月に大改正された少年法について、民主党は「立ち直らせる」という法の理念を堅持する立場にたって、刑事処分にできる範囲を安易に拡大しない、少年が不利にならないよう厳正な事実認定手続きを創設する等の修正案を提出しました。今後も少年犯罪の防止には、少年を取り巻く環境(家庭、学校など)の整備、早期発見のネットワーク、安心して相談できる仕組み、家庭裁判所の充実強化、保護観察官の増員や、少年院や更生施設を出た後の就労・社会復帰支援等の立ち直り支援策の強化等、総合的な対策の更なる充実を図ります。  犯罪被害者に対し、国が給付金を支給する制度をさらに拡充するとともに、司法支援センターを通じた犯罪被害者への法律支援を充実させます。また、民主党は、犯罪被害者の権利を保障し、国や自治体に生活支援や精神的ケア等の総合的施策を義務づける「犯罪被害者基本法案」を提出してきました。この取り組みが契機となり、2004年の第161国会で「犯罪被害者等基本法」が成立(内閣委員長提案)しました。犯罪被害者に対する的確な支援が行えるよう、犯罪被害者等基本計画の段階から、被害者や支援者の声が反映されるようにします。
 また、ヤミ金融等が不正に得た犯罪収益が没収・追徴された際に、被害者に分配して損害を回復する手続きを定めるための法整備を行います。  民主党は、2005年の第162国会に「人権侵害による被害の救済及び予防等に関する法律案」(人権侵害救済法案)を提出しました。法案は、内閣府の外局として中央人権委員会、各都道府県に地方人権委員会を設置し、人権侵害に係る調停・仲裁等の手続きを定めています。報道機関等については、特別救済手続の対象とせず、自主的な救済制度をつくる努力義務を課します。  1981年にわが国は国連の難民条約を批准しましたが、日本の入管・難民認定行政および難民への生活支援はあまりにも難民に対して冷たく厳しいのが実態です。難民条約の趣旨にのっとり適正かつ迅速な難民認定を行うために、難民認定行政を法務省から切り離し、内閣府外局に難民認定委員会を設置するとともに、在留難民等の生活を支援する制度を構築します。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が認定した難民(マンデート難民)は、原則として受け入れることとします。そのために民主党は「難民等の保護に関する法律案」を成立させます。  2004年の第159国会において行政事件訴訟法が改正されましたが、行政訴訟を利用する国民の視点で、行政に対するチェックが実効的に行えるよう、更なる改革が必要です。団体訴訟制度の導入、訴訟対象の拡大等、行政事件訴訟法改正案を策定します。  政府は、2004年の第159国会に共謀罪を新設する「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」を提出しました。共謀罪は、団体の活動として犯罪の遂行を共謀した者を処罰するものですが、(1)越境性に関係のないものを含め600以上の犯罪が対象となること、(2)犯罪の実行の着手、準備行為がなくても相談をしただけで犯罪となること、(3)対象となる団体の性質が特定されておらず、市民団体、労働組合等にも適用されるおそれがあること、(4)実行に着手する前に自首した者は刑を減免されるので「陥れ」に利用されるおそれがあること、(5)捜査方法として通信傍受等の拡大を招きかねない危険性があること等から、民主党は法案に強く反対しました。2005年の第162国会の終盤に審議入りしたものの、実質的審議を殆ど行わないまま、衆議院解散により廃案になりました。  残虐な暴力や性暴力などの有害情報から子どもを守るため、書籍の区分陳列や放送時間帯の配慮などによって、普通に暮らす子どもたちが有害情報に触れないですむ環境をつくります。さらには、第三者機関(中央子ども有害情報対策委員会)を設置し、子どもの有害情報にかかる規制について事業者が自主的に取り組むこと等を内容とした「特定暴力情報等からの子どもの保護に関する法律」の制定をめざします。また、大人社会のモラルと保護者の責任感を強め、子どもの権利を擁護します。今後、情報との付きあい方についても単に情報を与えないのではなく、与えつつ、情報化社会に生きる子どもが、情報のもつ意味を正しく理解し活用できる能力(メディアリテラシー)を持てるような教育をすすめます。  大人社会の権利や利益に対して、子どもの権利利益に関する取り組みは後まわしにされています。民主党は、子どもの持つ「生命・生存・発達の権利」を明確にし、学校でも家庭でもどこにいても、子どもが伸び伸びと育つことができる環境づくりをめざして、「子ども政策」をまとめていきます。また、2004年4月開催の「子ども国会」の提言を踏まえ、世界中の子どもたちが等しく質の良い教育を受けられる権利の保障と、その環境づくりに取り組みます。また、子どもや家庭の問題について、一元的に政策立案・遂行する「子ども家庭省(仮称)」の設置に取り組みます。  児童虐待防止法は、民主党が先駆けて検討に着手し、衆議院青少年問題特別委員長提案(全会一致)により2000年5月に成立しました。これは児童虐待の防止に一定の成果をあげましたが、虐待事件の増加・深刻化の前に様々な限界も明らかになってきました。そこで2004年の第159国会では、(1)児童虐待の定義拡大(保護者以外の同居人も対象、子どもの前でのドメスティック・バイオレンスなど間接的被害も虐待に含む)、(2)国及び地方公共団体の責務明確化、(3)児童虐待を受けたと思われる児童を通告義務の対象とする、(4)児童の安全確認・一時保護の際の警察署長に対する援助要請、などの法改正を全会一致で行いました。民主党は、今後も児童虐待防止対策の充実に取り組んでいきます。  子どもを補助いすに乗せた自転車(ママチャリ)の事故が増えています。走行中だけでなく停車中でも自転車が転倒することで、補助いすの乳幼児は頭を打って深刻なケガを負うケースもあります。民主党は、こうした事故から小さな子どもたちを守るため、補助いす付き自転車に子どもを乗せるときにはヘルメットを被らせることを3年後に義務化する「道路交通法改正案」を2004年の第159国会に提出・(2005年の第162国会に再提出)しました。あわせて関係省庁に対して、事故の実態把握や幼児用ヘルメットの普及・啓発を要請しました。  従来、夫婦間の暴力事件は民事不介入として扱われていましたが、頻発するドメスティック・バイオレンス(DV)事件は現在では社会問題にまで発展し、「心的外傷後ストレス障がい」(PTSD)の被害者を多く生みだすなど、無視できない状況に至っています。2004年の第159国会の「DV防止法」の改正では、配偶者からの暴力の定義規定の変更、保護命令制度の拡充等が図られました。しかしながら加害者更正プログラムの導入など、さらに検討しなければならない課題も存在することから、民主党は引き続き見直しに向けた取り組みを行います。  現行法では、本人が希望しても夫婦別姓が認められず、女性が「改姓したくない」と思っても、「女は結婚したら夫の姓を名乗るのが当たり前」という価値観を押しつけられるのが現状です。民主党は、希望すれば夫婦が別の姓を選択することができる制度をつくるとともに、自らが何ら責任を有さない出生の事情によって子どもが不利益を被らないよう、婚外子(非嫡出子)の相続差別をなくすため、「民法改正案」を提案しています(1998年の第142国会以降4回提出)。  個人情報を適正に取り扱うため法律による規制は必要です。しかし、2003年の第156国会で成立した個人情報保護法には、(1)自分に関する情報の閲覧、訂正等を請求する権利である「自己情報コントロール権」が明記されていないこと、(2)主務大臣が民間の個人情報取扱事業者を監督する仕組みとなっており、公権力の恣意的介入や業界との癒着が懸念されること、などの看過できない問題点があります。民主党は、(1)「自己情報コントロール権」を明確にする、(2)第三者機関が事業者を監督する仕組みを導入する、(3)行政機関に対する罰則を強化する、等を内容とする対案を提出しました。今後も法制度の改善に取り組みます。  地方公共団体の窓口で大量に閲覧された個人情報(住所、氏名、生年月日、性別)をもとに、ダイレクト・メールが勝手に送られてきたり、犯罪に悪用されたりする問題が起きています。民主党は、住民基本台帳の閲覧者を国、地方公共団体、公益上特に必要と認められる者に制限する「住民基本台帳・大量閲覧制限法案」を成立させます。  行政が個人情報を勝手に収集・蓄積して活用していたという事件や、企業による個人データ漏洩事件が多発しており、国民の多くは、行政や企業の個人情報取扱いについて、不安と不信をいだいています。政府提案の個人情報保護法は成立しましたが、不備な点が多く、国民の不安や不信に応えるものではありません。しかも、現行の住民基本台帳ネットワークはシステムに欠陥が多く、重大なプライバシー侵害が起きる危険性があるとの指摘もあり、実施主体である自治体からも凍結を求める声が多くあります。よって、住民基本台帳ネットワークについては、凍結も含め、慎重に検討するべきと考えます。  民主党は、2002年12月、自立と参加の共生社会づくりをめざす「新たな障がい者基本計画と障がい者プランの提言」を発表しました。2004年の第159国会では「障害者基本法の一部改正法」を全会一致で成立させました。改正のポイントは、(1)障がいを理由に差別してはならない旨を基本理念に追加、(2)障がい者基本計画の策定について、都道府県は義務、市町村は努力義務とすること、(3)障がいのある児童と障がいのない児童との交流及び共同学習をすすめること、(4)難病等の調査・研究の推進、(5)法施行後5年目途の検討規定、などです。今後、民主党は、すべての障がい者に「完全参加と平等」を保障し、具体的な差別の禁止を規定する「障がい者差別禁止法」の制定など実効性ある法整備に取り組みます。  様々な文化、宗教、価値観を認め、憲法で定める人権の尊重、世界人権宣言、人権関係国際条約などの趣旨にもとづいてあらゆる不当な差別をなくすことは国民の等しい願いです。このような視点から、民主党は現行の「人権教育・啓発推進法」を見直し、国や地方自治体、国民の責務を明確にし、さらに充実した教育・啓発を実施します。  性同一性障がい者とは「心の性」と「体の性」が不一致の状態であるために、他者による本人確定や自己の証明が困難で、職場や学校で偏見と差別的な取扱いを受けるなどの問題をかかえている方々です。2003年の第156国会で、このような性同一性障がい者について戸籍法の「性別記載」の訂正を認める「性同一性障害者の性別取扱い特例法」が全会一致で成立しました。今後、民主党は、子どもがいても性別の変更ができるようにするなど、更なる当事者の人権を確立します。  民主党は、インターネットでの市民からの政策提案(「インターネット政策公募」)を受けて、2001年の第153国会に「テレビ字幕普及法案」を提出しました。この法案は、聴覚障がい者の利便を増進させるため、(1)放送事業者に対して字幕番組の提供計画を義務化する、(2)総務大臣への同計画達成状況の報告を義務化する、(3)総務大臣の勧告を可能とすること等を内容としています。さらに、事業者等に対しては財政上及び税制上の支援措置を講じるものとし、字幕付与可能番組については100%の字幕付与を達成するものとしています。  現在、外国籍の人は、日本国籍の人と結婚して一緒に暮らしていても住民票には名前すら記載されないため、様々なトラブルが生じています。本人が希望した場合には外国籍の人も住民票記載を行えるよう、住民基本台帳法の改正を検討します。  わが国においてもテロ対策は焦眉の課題です。民主党は、情報収集・分析体制を内閣官房に一元化するとともに、危機管理に関する権限を持つ「危機管理庁(日本版FEMA)」を創設します。原子力施設へのテロ対策、ハイジャック対策、核・生物・化学兵器テロ対策、在外邦人や在日外国人の安全対策、テロ資金対策など、広範囲にわたるテロ対策の整備を行います。  災害発生後の救急活動や情報伝達、交通規制や応急復旧などを円滑にすすめるため、国・地方公共団体・警察・消防・自衛隊・民間企業・ボランティア・NPO等の役割分担、協力体制の整備をすすめ、情報伝達システムを確立するなど、民間の諸活動を強力に支援します。あわせて大規模災害時の首都機能のバックアップ体制も検討します。また大規模災害に迅速に対応するため、内閣総理大臣の権限を強化するとともに、「危機管理庁(日本版FEMA)」を活用します。
 災害による心身的ダメージを被災者が一刻も早く克服するには生活基盤の回復が必要です。「被災者生活再建支援法」について、住宅本体への支援金支給、支給限度額の引き上げ、支給要件の緩和などの改正を行います。
 全国各地で大規模地震の危険性が指摘されています。特に都市部には、密集市街地が多く、倒壊や火災による被害は甚大なものになると予測されています。このような被害を減らすため、既存不適格住宅の耐震改修をすすめます。  快適さや便利さを求めるあまり、私たちの住環境は人工の化学物質に取り囲まれ、それによる健康被害が生じています。建築物由来の化学物質被害を防止するために、民主党は、建物完成時の化学物質濃度測定義務づけと、大規模建築物における化学物質の定期的測定を義務づけたシックハウス対策2法案を2001年の第153国会に提出しました。今後、化学物質過敏症対策として、メカニズムの解明や治療体制の確立、療養所の建設、学校(シックスクール)対策の徹底などもすすめます。  未成年者に対するたばこ、アルコール飲料の販売、提供の禁止を徹底するとともに、健康、公衆道徳、教育、国民の安全等の観点から、行きすぎた喫煙、飲酒が行われないような環境を整備します。民主党提案の「軽犯罪法の一部を改正する法律案」を成立させ、公共の場における分煙や禁煙を徹底し、危険で迷惑な歩きたばこをやめさせます。  わが国と近隣諸国の建設的関係の土台を構築するためにも、歴史的事実の真相究明は必要です。その観点から、国会図書館に恒久平和調査局を設置する「国立国会図書館法改正案」の成立をめざします。また、当事者の方々が高齢化していることに鑑み、アジア等の女性に対する旧日本軍による「慰安婦」問題の解決を図るための「戦時性的強制被害者問題の解決の促進に関する法律案」、シベリア抑留者への未払い賃金問題解決のための「戦後強制抑留者に対する特別給付金の支給に関する法律案」の成立を急ぎます。また、在日の旧植民地出身軍人軍属の救済を図るため「平和条約国籍離脱者等である戦傷病者等に対する特別障害給付金等の支給に関する法律案」は民主党の提案を契機として成立しました。戦後処理問題は幅広く存在しており、今後も民主党として積極的な取組みをすすめます。  国民が自由意思により靖国神社を参拝することは何ら問題ありませんが、国家の機関である首相や閣僚が公式参拝することは、憲法で保障している「信教の自由」や「政教分離」に抵触する可能性があります。民主党は、何人もがわだかまりなく戦没者を追悼し、非戦・平和を誓うことができるよう、特定の宗教性をもたない新たな国立追悼施設の設置に向けて取り組みをすすめます。
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