【7】国土・社会資本
公共事業改革
不要不急の公共事業の実施は税金の浪費のみならず、土木建設業をはじめとする産業構造改革の妨げになっています。またダムのように自然環境を大きく破壊し、将来に負の遺産を残すものも存在します。いま行われている公共事業のすべてが不必要であるという訳ではありませんが、今後はこれまでより少ない予算で効率的に、しかも情報化・高齢化・バリアフリー・自然再生型などの事業に転換する必要があります。民主党は、以下の点を中心に、新しい公共事業のあり方をめざします。
道路や港湾などの社会資本整備については、社会資本整備重点計画法により国土交通省関連の計画が一本化されましたが、計画が閣議決定事項とされているために国会のコントロールが及びません。また、相変わらず省庁縦割りの計画であるために、重複による無駄もあります。民主党は社会資本整備関連計画を一本化し国会承認事項とするとともに、再評価・事後評価の仕組みを盛り込んだ「公共事業コントロール法」を制定します。
PFI(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)とは、道路や橋、刑務所や役場庁舎などといった公共施設の建設や運営を、資金調達を含め民間事業者に委ねることにより、公共事業のコストを削減する手法です。PFIの一番の目的は、事業にかかるリスクを民間事業者に負わせることで、民間の経営感覚を活用し、効率的かつ高品質な公共サービスを提供することにあります。このPFI制度を積極的に活用するため、モデル事業の展開やPFIの数値目標を定めるとともに、PFIの促進を阻害する法律・政省令・条例等の改正をすすめます。
川辺川ダム建設事業や諫早湾干拓事業、長良川河口堰など、全国各地で大型公共事業事例のあり方が問題になっています。例えば川辺川ダム建設事業は、数千億円の費用をかけて利水や治水などを目的とした多目的ダムを建設する計画ですが、多くの人家の水没という犠牲を強いる一方で、受益者である地元農家の多くが利水事業計画に反対して訴訟を起こし勝訴が確定、ダムによる治水は不要であるとして学者から代替案が示されるなど、ダム計画の必要性が著しく疑問視されています。民主党はこれらの無駄な公共事業事例について、今後も厳しく追及していきます。
ガソリンの購入価格に含まれるガソリン税、自動車を購入する際に徴収される自動車取得税、車検の際に納入する自動車重量税、これらはいずれも使途が道路整備に限定される「道路特定財源」です。一方でわが国の道路整備の水準は、十分ではないにしろ既に高いレベルにまで達していることから、道路に特化された特定財源の存在は、無駄な道路建設や財政硬直化の原因との批判が高まっています。民主党は道路特定財源を一般財源化とするとともに、複雑な自動車関係税制を簡素化します。
ダムは河川の流れを寸断し、自然生態系に大きな悪影響をもたらすばかりか、堆砂(砂が溜まること)により数十年間から百年間で使い物にならなくなります。このように環境負荷の大きいダム建設を続けることは、将来にたいへん大きな禍根を残すものであると言わざるを得ません。今後はダム建設をやめるとともに、森林の再生を通じ、森林のもつ保水機能や土砂流出防止機能を高めること、つまり「みどりのダム」へと治水政策の転換を図ります。現在計画中または建設中のダムについては、これをいったんすべて凍結し、2年以内をめどにその必要性の再検討を行います。
生産性・効率性向上を掲げて整備をしながら利用されていない農地や水揚げのない漁港、一般車両ばかりが通行する農道や高規格林道など、本来の事業目的とまったく関連がない農林関係公共事業があまりにも多すぎるという問題が指摘されています。それらは、農林水産業を目的に掲げると予算獲得ができるために、その抜け道を使用しているにすぎません。これらの公共事業の計画にあたっては、農林漁業者の要望と生産見通しに基づくこととし、生産性・効率性の向上に結びつく事業に重点化していきます。
諫早湾干拓事業については、住民・漁民・自治体の意見を聞きながら、農業・漁業の現状、防災、有明海の再生等の観点を踏まえて、今後のあり方を凍結を含めて見直します。事業の目的の一つである防災については、潮受け堤防の利用を含めた諫早湾周辺地域の防災対策に積極的に取り組みます。また周辺の漁業者から懸念が示されている漁業、ノリ養殖等への影響については、海域の環境と水産資源に関し、中長期開門の是非を含めた総合調査を実施する「有明海・八代海再生調査委員会」を、官僚OBを排除し、地元住民・漁民・有識者を中心としたメンバーで設置し、速やかに原因究明を行います。