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活動
民主党パキスタン地震支援対策本部
民主党パキスタン地震支援対策本部現地調査団報告書
6. 調査総括
6-1. 被害状況
今回の地震は、阪神大震災の11倍のエネルギー、ホームレスの数が約330万人、数百キロ平米におよぶインフラや生活基盤の破壊度などで、スマトラ沖地震・津波を上回る「想像を絶する被害状況」であった。町全体がプレスにかけられたようにペシャンコになったり、山がばっくり割れたり、地すべりでえぐられていたり、停車中の大型バスが横倒しになっていたりした。そして瓦礫の下には多くの遺体が埋もれたままで悪臭もあった。
 国連の救援活動の中枢を担う緊急援助調整官室のイゲランド事務次長は被災地視察後、「これはわれわれの知る限り最も悲惨な悪夢だ。冬直前のヒマラヤ地帯を大地震が襲い、数百万が影響を受け、100万人以上が自宅を失っている」と語っている。また、世界保健機構(WHO)が実施した震災発生後数日経過した時点での調査によれば、昨年のスマトラ沖津波災害のホームレス者数は150万人に対して、今回はそれを大きく上回ると指摘した。
 パキスタン政府は犠牲者数を震災1週間後までは2万5千名としていたが、10月17日現在で4万名を超えたと発表している。これは倒壊した建物の下敷きになった行方不明者の生存率が極めて低くなったために急上昇しているからだ。
 政府発表の数値に対してパキスタン最大のNGO代表は「政府はうそをついている。犠牲者数は10万名に上るだろう」と反論する。ヒマラヤ地方を含む山岳地帯で数百キロ平米の広範囲にわたり震災がおよび被害の全体像がいまだ掴みきれていない。今後、救援活動が山岳地帯の奥地に到達するにつれて、犠牲者数や被害規模がますます拡大していくだろう。
 民主党のパキスタン地震支援対策本部の現地調査団は、被害の甚大であったムサハラバード、バラコートをはじめ、首都イスラマバード、マンセーラ、ハダル、バタグラム、カリハヒブラ、バラールコートの被災状況、ニーズの把握に努めた。ラマダン(断食)期間でもあるので、朝・昼食もほとんど取らずに寸暇を惜しんでの視察になった。
 被害の甚大であったバラコートは元々、渓谷沿いの国内有数のリゾート地だったが、崖崩れにもあい、斜面のホテルや家屋は悉く倒壊し、見渡す限りの瓦礫地帯へと変貌していた。他の被災地はバラコートほどではないにしろ、町や村の大半が爆撃後のように瓦礫の山と化していた。今回パキスタン北東部を中心に発生した大地震の被害は言語に絶する未曾有の災害と認められるものである。
6-2 救助・救援活動上の問題と課題
●中央政府及び地方政府は大規模地震を想定した対策を全く準備していなかったため、震災発生後政府は救援ビジョンを描けず、組織的対応ができずに機能不全に陥った。したがって国内外からの緊急援助を適切にコーディネートする能力に欠け、救助・救援活動を迅速に行えなかった。
●災害が山岳地帯を中心とした数百キロ平米におよぶ極めて広範囲であり、道路も遮断されて、被害状況の把握や救助活動の初動体制が遅れ、現在も物資の輸送等をヘリコプターに頼らざるをえない状況にある。
●8千の学校、1千の病院、行政府や軍などの施設が倒壊し、多数の警察官や軍関係者、学校の教師等が亡くなった。本来救援活動の拠点であるはずの公共機関が倒壊したことにより、その機能を果たせず、被害を拡大させてしまった。
●被災地では約330万人がホームレスとなっており、本格的な冬を目前に控え、テントや毛布などシェルター(避難所)の確保が喫緊の課題である。
●被災範囲が数百キロ平米に及ぶのに応じて住居や建物の倒壊範囲も広範囲にわたるため、瓦礫の撤去が大半の地域で進んでいない。シェルターの確保に並んで瓦礫の撤去作業が復旧・復興に向けて優先課題である。
●中長期的な復旧・復興に向けて、我が国が有する仮設住宅等、中期的な生活支援に資するノウウや技術の移転、更には建築物の耐震基準、地震の予知や警報体制の構築が重要な課題になる。
●日本の国際緊急援助隊がパキスタン入りするのに商用機を乗り継いだため、被災地に到着するのに相当な時間を要し、いわゆる生存率の境目である72時間以内の救助活動を十分に行えず、救出のあり方に課題を残した。
●救出・救援活動に次ぐ緊急人道支援の場面で最も顔の見える形で活躍しているのがNGOである。しかし日本政府のNGO支援体制は他国に比べて極めて低いままであり、早急に支援のあり方の検討が必要である。

6-3 救助・救援活動上の問題と課題
民主党のパキスタン地震支援対策本部の現地調査団の結果を踏まえて「パキスタン等における地震災害への今後の対応について申入れ」をとりまとめた。前原誠司代表らが10月20日、その申入れを細田博之官房長官に行った。内容は以下の通り。
2005年10月20日
内閣総理大臣
小泉 純一郎 殿
民主党パキスタン地震支援対策本部
本 部 長 前原誠司(代表)
調査団長・副本部長 若林秀樹
事務局長 田嶋 要

パキスタン等における地震災害への今後の対応についての申し入れ


 10月8日パキスタン北東部で発生した地震は日を追うごとに被害が拡大し、人類史上未曾有の地震災害になった。民主党は10月11日から17日まで被害の実情を把握してどのような支援が有効かを検討するため、パキスタンに調査団を派遣した。同調査の結果を踏まえ、政府に対して以下のことを重点的に取り組むことを要請する。


1.短期的支援の大幅拡大
(1)

日本政府の緊急援助決定以降も被害が拡大していることに鑑み、政府はさらに現地のニーズを踏まえて無償資金協力等の援助の規模を拡大すること。また、被災国政府や国際機関に集中している援助の受け皿を拡大して、きめ細かで効果的な援助を実践すること。さらに、より多くの被災者に少しでも早く援助が行き渡るよう支援体制を強化すること。

(2)

被災地では約330万人がホームレスとなっており、パキスタン政府が当面の救援策として最優先課題に挙げているのは、本格的な冬を目前に控え、「シェルター(避難所)」の確保である。政府は単に「テント」、「毛布」を供与するだけではなく、自衛隊によるテントの設置も含めて検討し、早急に避難所の確保や防寒対策を講じること。また、緊急医療支援の体制を拡充すること。

(3)

被災地では住居や建物が倒壊し、未だに遺体が手つかずで埋もれている地域が多い。復興のためにはまず瓦礫の撤去、遺体の収容が必要であり、重機の提供のみならず自衛隊による瓦礫撤去、整地作業、道路修復などを含め、パキスタン政府のニーズに応じ、早急に必要な支援を提供すること。

(4)

パキスタン政府が震災の被害状況を正確に把握できていない実情を踏まえ、在留邦人の安否確認に一層の努力を傾注すること。


2.中長期的支援の実施
(1)

パキスタン政府はわが国の仮設住宅等、中期的な生活支援に資するノウウや技術を求めており、わが国の民間セクターと連携しつつ、必要に応じて支援していくこと。

(2)

世界銀行やアジア開発銀行と連携し、インフラを中心とする復興事業支援を行うこと。当面の対象は病院・診療所や学校の建設、道路補修等、生活基盤を支えるインフラ整備などを中心とする。

(3)

今回の地震でパキスタン政府の震災対策の欠如が露呈し、被害が拡大した面がある。今後の震災対策の立案にあたり、わが国の経験や技術を生かしたード・ソフト両面の支援を行うこと(例えば、建築物の耐震基準の確立、地震の予知や警報体制の構築など)。


3.国際緊急援助隊の能力強化
(1)

生存者の救出は時間との勝負である。そのためには国際緊急援助隊の召集・態勢の確立のみならず、現地への最短時間での到着に最大限の努力を払うべきである。したがって今回のように商用機を乗り継ぐことなく現場に直行できるように、機動力ある中型機を購入あるいは調達すること。

(2)

緊急援助隊が救出・捜索活動を機動的に実施できるよう、平時から在外公館に体制・機材等の要件等を通知し、災害発生後即座に在外公館等が適切な現場選択や調整等が行える体制を敷くこと。

(3)

国内外の大規模地震・災害に備え、緊急援助隊・レスキュー隊などの人員、機材等を整備し、その能力や規模を大幅に拡大すると共に、緊急援助隊の医療チームの人員、医薬品輸送体制も拡大すること。


4.NGO支援
(1)

救出・救援活動に次ぐ緊急人道支援の場面で最も顔の見える形で活躍しているのがNGOであるが、日本政府のNGOに対する支援体制は他国に比べて極めて劣る。今回もジャパンプラットフォーム(JPF)傘下の財政的支援を受けているNGOは素早い行動がとれたが、日赤なども含め、それ以外のNGOに対する緊急人道援助の財政支援体制を早急に確立すること。

(2)

日本政府は、スマトラ沖地震発生時同様、直ちに相手国政府や国際機関に財政支援を約束したが、その約束を早急に実施すると共に、その一定割合をインフラ支援、トラウマ支援など中長期的人道支援を含めたNGOによる支援に割り当てること。

(3)

NGOによる緊急人道援助を支援するために、在外公館もしくはJICAは当該国の援助に関する情報を集約し、必要に応じて相談に乗れる体制を整えること。現地公館やJICAの体制が弱いところは、日本から外務省関係者やコンサルタントを含む人材を派遣して対応すること。


5.地域の平和と安定 〜 震災を転じさせて和平に

今回の震災が発生したカシミール地方は、パキスタンとインドが半世紀以上にわたり領有権を争ってきた地域である。パキスタン政府はインド政府からの支援表明に対し受け入れ姿勢を示し、両国の和解に向け良好な兆候が表れている。スマトラ沖地震・津波はインドネシアのアチェ問題の進展のきっかけになった。インド政府がインド側のカシミール地方に国際機関やNGO等からの支援をより積極的に受け入れ、地域の平和と安定が促進することを期待する。また、日本政府は国際社会と連携し、和平の進展に積極的な貢献を行うこと。


以上
6-4 その他
今回の調査は、地震発生翌日(9日)の対策本部会議で「外務省の便宜供与は求めず、自己完結で現地入りができる段取りができれば実行する」という方針で動き出した。錦織淳元衆議院議員のアドバイスもあり、民主党のアフガニスタン支援事業等でお世話になったコックス・アンド・キングス社がアポ設定からホテル手配を含め全ての調査コーディネートを担当することになった。
 民主党現地調査団は同社の有するパキスタン政府閣僚とのネットワークを最大限活用し、数日にわたり、被災地視察への同行や会談を行った。担当閣僚との率直かつ真剣な意見交換を通じて、パキスタンの被災民や政府が真に求めるニーズについて把握することができ、その成果を日本政府への申し入れや民主党独自の救援活動に反映することができた。
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